バックナンバー一覧 >> 2016 Vol.28 No.6 >> 特集 |
NTT物性科学基礎研究所では、生体分子やソフトマテリアルを用い、生体情報処理の基本原理を理解し、その応用として日常生活における生体信号計測や生体との情報通信を可能とするインタフェースの実現をめざしている。本特集では、NTTにおけるバイオ・ソフトマテリアル研究の概要、および将来展望について紹介する。 |
NTTにおけるバイオ・ソフトマテリアル研究の概要
NTT物性科学基礎研究所では、生体分子やソフトマテリアルの素材を活用しながら、生体の深層にある情報処理の基本原理を明らかにし、生体との直接的なアクセスを可能とするインタフェースの構築をめざして研究を進めています。本特集では、ナノテクノロジとバイオテクノロジを組み合わせた生体関連素子や、生体情報の高感度・常時センシングの基盤技術となるバイオ・ソフトマテリアル研究について紹介します。 |
膜タンパク質の機能を利用した微小井戸型ナノバイオデバイスの創出
膜タンパク質は生体膜上において細胞内外の物質輸送や免疫機能など多くの生理現象に関与している分子であり、工学的な観点からは超高性能な「ナノマシン」といえます。シリコンなどの半導体と膜タンパク質を融合させたナノバイオデバイスが実現できれば、さまざまな生理的なメカニズムの解明につながると考えられます。本稿では、生体内のシナプスを模倣した、膜タンパク質の機能で動作するナノバイオデバイス作製の試みについて紹介します。 |
固体支持膜の形成位置制御と分子操作への応用
固体表面を支持台としてその上に形成した人工生体膜(あるいは人工細胞膜とも表現できます)を、固体支持膜と呼びます。NTT物性科学基礎研究所では、固体表面の特定の位置だけに選択的に固体支持膜を作製する独自技術を発表しています。本稿では、この技術を武器に展開してきた新しい研究成果について紹介します。1つは、タンパク質を検出する固体支持膜マイクロアレイの提案です。もう1つは、固体支持膜内の特定の分子を1つずつ操作する技術の提案です。 |
神経細胞の培養基板との界面評価とナノ構造上の細胞成長
人工シナプスを実現するためには、デバイスである人工ポストシナプスに神経細胞の軸索を誘導する必要があります。NTT物性科学基礎研究所では、集束イオンビーム・電子顕微鏡を用いて、神経細胞の培養基板との界面を詳細に観察することで基板材料と神経細胞との親和性を単一細胞レベルで評価する方法を確立しました。さらに細胞との親和性の高い材料を用いてナノ構造物を作製し、ナノ構造物を用いて神経細胞の成長を制御する可能性について検討しました。 |
細胞機能と形態の相関解明をめざした神経細胞のライブイメージング
ヒトは数10兆個の細胞が集まり、それぞれが適切に働くことによって生命活動を行っています。その中で神経系は、各細胞が協同的に働くための司令塔であり、この機能を解明することは生体内での情報伝達を理解するために重要です。本稿では、神経系を構築するために重要となる神経ネットワーク形成過程でのアポトーシスに注目し、バイオイメージングによるアポトーシス初期過程での神経細胞の機能と形態の相関性解明に関する研究を紹介します。 |
オンチップ型グラフェンアプタセンサ
NTT物性科学基礎研究所では、マイクロデバイス技術との融合により、オンチップ型センサへの展開が可能となり、同一チップ上での複数タンパク質の同時検出や定量分析に成功しました。本稿では、グラフェン表面を特殊なDNA分子で機能化し、1 µL以下の微量サンプルをチップに滴下するだけで、ガンマーカなど生体内で重要なタンパク質を1分以内に選択的に検出するバイオセンサについて紹介します。 |
生体信号計測に向けた導電性複合材料
近年、健康への関心が高まるにつれ、病気の診断や予防、生活習慣の改善のための生体情報モニタリング技術が注目されています。NTT物性科学基礎研究所では、さまざまな生体適合性の基材に導電性樹脂を塗布・混合することで、生体組織に直接張り付けて生体信号を高感度に検出できる複合素材の研究開発に取り組んでいます。本稿では、導電性樹脂の一種であるPEDOT:PSSとシルクなどの複合材料を電極として用い、皮膚や生体内組織に貼り付ける生体信号計測に向けた導電性シルク基板について紹介します。 |
□主役登場 |
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