バックナンバー一覧 >> 2015 Vol.27 No.6 >> 特集 |
近年の半導体結晶成長技術や微細加工技術の進展により、電子を低次元に閉じ込めることが可能となり、0次元(量子ドット、単電子箱)、1次元(量子細線、エッジチャネル)、2次元(量子井戸、量子ホール状態)等、さまざまな系の電子・光物性研究が行われている。本特集では、NTT物性科学基礎研究所で行われている低次元物性研究とそのデバイス応用を紹介する。 |
低次元半導体を用いた電子物性の極限制御
ICTを支える半導体テクノロジの進歩は著しく、近年、高度な微細加工や結晶成長の技術を駆使することにより、電子1個や原子1個といった究極レベルの制御が可能となってきています。特に、電子を微小領域に閉じ込める低次元半導体を用いることにより、粒子や波としての電子の極限的な制御が実現されつつあります。本特集では、NTT物性科学基礎研究所で進めている低次元半導体に関する最新の研究成果を紹介します。 |
高精度電流標準の実現につながる高速な単電子転送
単電子転送は正確な電流を生成できる技術であり、電流標準への応用が期待されています。これにより、基礎物理定数の正確性を確かめる量子計測三角形の実験や近年提案されたアンペアの再定義につながる可能性が考えられます。NTT物性科学基礎研究所ではシリコントランジスタを利用した単電子転送に取り組んできました。本稿では、トランジスタで電気的に形成した微小領域やシリコン中に存在するトラップ準位を介した高速単電子転送を紹介します。 |
超微小デバイスのノイズ — 単一電子レベルでの分析
集積回路などを構成する電子デバイスの縮小化とともに、ノイズがデバイスに与える影響が大きくなっています。特に、これまで問題にならなかった単一電子に起因するノイズも顕著になると予想されています。本稿では、ナノメータ・サイズのシリコン・トランジスタを用いて、ノイズを単一電子の分解能で分析する技術を紹介します。 |
シリコンの直接・間接光学遷移の電気的制御
シリコンは今日のエレクトロニクスを支えるもっとも重要な半導体材料の1つであり、代表的な間接遷移型半導体として知られています。間接遷移型半導体では、電子と正孔の運動量が異なるため効率的な発光が望めず、発光デバイスの実現は困難と考えられています。NTT物性科学基礎研究所では、特殊なシリコン・シリコン酸化膜界面で発現するバレー分離と発光の起源の類似性に着目し、バレー分離がゲート電界により制御可能であることを利用して、シリコンの直接・間接光学遷移のゲート電界制御を実現しました。 |
核磁気共鳴による電子の結晶状態の観測
半導体中の電子は「自由電子」と呼ばれ、半導体の中を波のように広がって自由に動き回っています。一方で電子は負の電荷を持っているためお互い反発し、低温・強磁場下では結晶を構成する原子のように互いに距離を保って整然と並び、動かなくなると考えられています。本稿では核磁気共鳴を用いて半導体中の電子が結晶化する様子を観測した実験について紹介します。 |
原子1個の違いもない半導体量子構造
原子操作とは、原子の数と配列を精密に制御して微細構造を形成する技術です。高品質な半導体結晶をエピタキシャル成長した基板にこの手法を適用すると、これまで不可能であった、原子精度で均一な量子構造の作製や集積化が可能になり、シリコン技術の限界を超えた次世代電子技術への応用が期待できます。本稿では、化合物半導体表面における原子操作と、原子操作で実現した超精密量子ドットおよびその結合構造に関する実験を紹介します。 |
半導体ヘテロ接合によるトポロジカル絶縁体の実現
従来の物質の分類には当てはまらない新しい物質の形態であるトポロジカル絶縁体は、特異な電気伝導が期待され電子デバイスや量子コンピュータへの応用に向けて注目を集めています。本稿では半導体材料を用いた人工的なトポロジカル絶縁体の実現について紹介します。 |
□主役登場 |
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