バックナンバー一覧 >> 2017 Vol.29 No.5 >> 特集 |
NTT物性科学基礎研究所では、量子情報処理技術の黎明期より30年以上にわたり研究を続けている。これらの技術はここ数年で大きく進展し、いくつかのテーマでは応用に向けて動き出している。本特集では、最新の研究成果概要、および将来の展望について紹介する。 |
量子情報処理技術における新時代の幕開け
昨今、イジング型量子計算や量子センシング、トポロジカル量子計算など、これまでとは全く異なる概念が量子情報処理技術の研究に導入され、従来のアプローチより現実性の高いさまざまな応用技術が提案されています。本稿ではこれらに関連してNTT研究所で行われている研究成果を例とし、最近の量子情報処理技術の進展について紹介します。 |
複雑な組合せ最適化問題を解く量子ニューラルネットワーク
通信網、交通網、ソーシャルネットワークなど、複雑化するさまざまな社会システムの解析や最適化を行うためには、組合せ最適化問題を効率良く解く必要があります。本稿では、光パラメトリック発振器と呼ばれる光の発振状態をスピンとして見立て、相互作用する多数のスピンが全体のエネルギーを最低とするようにその向きをとる現象を利用して組合せ最適化問題の解を探索する量子ニューラルネットワーク研究の進展状況について紹介します。 |
単一光子の無損失波長変換
量子情報通信に必要不可欠な技術である単一光子の波長変換に関する新手法を提案し実証しました。本手法により、単一光子の波長やスペクトル形状を無損失に(光子を失うことなく)制御することが可能になります。本手法は光ファイバ中で実現可能であり、既存の通信設備との親和性を有し、高度な量子情報ネットワークの実現に向けた光子波長インタフェースの構築に寄与するものです。 |
巨視的スケールでの実在性の破れを実証
量子力学では、日常の常識に反する量子重ね合わせ状態などが起こるとされ、単一の電子など微視的な環境では、その確認がされてきました。しかし、巨視的なスケールでも量子重ね合わせ状態が発現するか、ということは理論的には予測されていても実際に確認することは困難と思われていました。NTTではこのような量子力学の基本原理が巨視的なスケールでも成り立つかどうかを実験的に調べました。 |
4300個の超伝導磁束量子ビットとマイクロ波共振器の協調的な結合
量子絡み合いとは、古典的な世界には存在しない強い相関を意味します。超伝導磁束量子ビットは磁場を検出できることが知られていますが、もし多数の超伝導磁束量子ビットの間に量子絡み合いが生成できれば、従来の素子とは桁違いに感度の高い磁場センサが実現できると期待されています。本稿ではそのような量子磁場センサの開発に向けた取り組みを紹介します。 |
量子計算実現に向けた新たな2次元トポロジカル絶縁体の創出
2次元トポロジカル絶縁体を用いることでスピン自由度を活用したデバイスやトポロジカル量子計算に向けた新奇準粒子探索の可能性が拓けます。2次元トポロジカル絶縁体の母材となる材料系はこれまで2種類に限られていましたが、NTT物性科学基礎研究所では新たに歪み量子井戸を用いたトポロジカル絶縁体を提案しました。本稿では、従来の2次元トポロジカル絶縁体よりも優れた特性を持つ歪み量子井戸について紹介します。 |
量子暗号におけるサイドチャネル対策
量子暗号は理論的には、任意の盗聴に対しての安全性を保証する究極の暗号です。この究極の安全性が注目され、現在、日本をはじめ世界各国で量子暗号ネットワークの構築が行われています。しかし、期待されている究極の安全性は理論的なものであり、実際にそのような安全性を実現するためにはさらなる研究が必要です。本稿では、究極の安全性を実際に達成することをめざした最近の研究の状況を紹介します。 |
□主役登場 |
|