バックナンバー一覧 >> 2017 Vol.29 No.11 >> 特集 |
高度経済成長期以来、さまざまな社会インフラが構築されてきたが、現在、その設備の維持管理や更改にかかるコストが課題となっている。本特集では、この維持管理や更改作業を効率化する、センシング技術、診断技術、およびリスク評価技術について紹介する。 |
ライフサイクルメンテナンスにおける研究開発の方向性
高度経済成長期以来、さまざまな社会資本が構築されてきました。現在、その設備の老朽化が進行しており、維持管理や更改にかかるコストが課題となっています。そのコストは膨大で、維持管理サイクルの効率化や長寿命化を図る必要があります。本稿では、通信インフラにおける保全計画から点検、診断、補修・補強・更改までの維持管理のライフサイクル全般をライフサイクルメンテナンスととらえて実施している研究開発の方向性、およびその事例について紹介します。 |
自動劣化度判定技術によるマンホール点検効率化への取り組み
自動劣化度判定機能を有するマンホール未入孔点検技術を開発しました。これにより、作業者が入孔することなく安全な作業が可能になるとともに、従来必要であったマンホールの排水作業を削減できるため、点検稼働を大幅に削減することも可能となります。このような安全性向上、点検効率化に加え、高解像度な点検画像を、高精度な設備劣化予測を実現するためのデータとして活用できるため、メンテナンスサイクルの高度化という観点からも重要な技術となります。 |
吸水挙動を模擬した防食塗膜の促進腐食試験に関する取り組み
本稿では、鋼構造物用塗料の耐食性評価に用いる促進腐食試験を改善するため、実環境における塗膜の吸水・乾燥挙動を再現することに着想を得て新たに開発した複合サイクル試験条件について紹介します。本試験法を用いることで、腐食に強く、長寿命な塗料を短時間で効率的かつ正確に選定できるようになり、鋼構造物の塗装コスト低減へつながることが期待されます。 |
劣化メカニズムに基づく通信設備のリスク推定の取り組み
インフラ設備の老朽化問題を解決するにあたっては、今後一斉に老朽化する大量の設備に対して優先順位を付けて、長期的かつ効率的な保全計画を立案することが必要です。NTT先端集積デバイス研究所では優先順位付けの指標としてリスクの概念を導入し、通信設備のように多様な設置環境にあるインフラ設備に対応できるリスク推定技術を研究しています。本稿では、通信設備の1つである下部支線アンカを対象とした研究を紹介します。 |
□主役登場 |
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NTTグループでは、災害対策にかかわる基本方針のもと「ネットワークの信頼性向上」「重要通信の確保」「サービスの早期復旧」を柱として大規模災害に備えている。NTTアクセスサービスシステム研究所では東日本大震災発生以降、新たな災害対策用無線システムの研究開発に取り組んでいる。これまで開発された無線システムを東西事業会社が活用することによって、通信サービスの早期復旧と通信孤立の早期解消を強化することが可能となった。本特集では、南海トラフ地震や首都圏直下地震等の広域災害によって引き起こされる、広範囲な通信設備の被災の復旧を目的として開発した地上系災害対策用無線システム、および無線システムの運用をサポートする置局設計ツールについて紹介する。 |
長距離化と小形軽量化を両立した災害対策用可搬形デジタル無線システムの開発
NTTアクセスサービスシステム研究所では災害対策用可搬形デジタル無線システムとして11/15P-150M-Nシステムを開発しました。アンテナおよび無線送受信装置への利得配分を最適化することで、従来システムと比較して無線区間距離を最大30%向上しつつも、重量と体積はそれぞれ約50%削減しています。本システムによってループ化等による信頼性対策が困難な地域の伝送路が被災した場合において、156Mbit/s、52Mbit/s SDHインタフェースまたはイーサネットインタフェースを用いた迅速な救済が可能となります。 |
他社網に依存しない安定した連絡手段を提供する業務用無線システムの開発
NTTアクセスサービスシステム研究所では業務用無線システムとしてTZ-161Aを開発しました。本システムは、使用周波数帯が全国エリアのライセンスバンドであることから他者と混信することがなく、さらに音声通信品質を劣化させることなくGPS受信データの疎通が可能です。また、通信経路が他事業社網に依存しないことから、広範囲な災害時においても安定して業務用通信に利用することが可能です。 |
お客さまに安心・安全を届ける災害対策用加入者系無線システムの開発
東日本大震災以降さまざまな災害が多発する中で災害対策用無線システムの重要性が再認識されましたが、既存システムでは、データ通信や広域災害に対応できないという問題が顕在化しました。そこで、デジタル化し同時収容端末数を増加させた災害対策用加入者系無線システムとしてTZ-403Dを開発し実用化しました。さらに、小型軽量化による可搬性の向上、小型部品の落下防止、ケーブル数の削減や単一工具による組立てなど、安全性や運用性の向上も図っています。 |
災害対策用無線システムの運用をサポートする置局設計ツールの開発
東日本大震災以降さまざまな災害が多発し、災害対策用無線システムの重要性が再認識されています。その高度化が進む一方、災害時に災害対策用無線システムの設置場所を最適化する置局設計が重要となります。また、置局設計においては設計者の技術力によらず、誰が実施しても同じ設計を可能とする技術が必要となっています。今回、災害対策を考慮した置局設計ポリシー・技術の確立およびツール化により、災害発生時の置局設計を容易にしました。 |