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from NTTデータ

カーボンニュートラル実現をビジネス機会に変えるNTTデータグループの取り組み

ここではNTTデータで展開しているグリーン関連のコンサルティングサービスやソリューション、プロダクトのうち、2022年度上期でもっとも注目された2つのトピックを紹介します。1つは、企業のCarbon Footprint of Products情報を算定する基盤構築例です。もう1つは、Science Based Targetsのバリューチェーンを超えた緩和として、2022年7月時点では未認定ですが、今後の認定の可能性を含めて注目されているブルーカーボンの例を紹介します。

はじめに

近年、自社内の温室効果ガス(GHG)の排出量管理に加え、サプライチェーン、さらには業界全体を含めた排出量管理が期待されています。そこでNTTデータは、カーボンニュートラル実現をめざす顧客に対し、デジタル技術を最大限活用して戦略立案から実行支援を行うグリーンコンサルティングサービスを提供しています。図1はグリーンコンサルティングサービスでの対応範囲を示しており、組織内での環境分析から始まり、対外施策や実行支援を含んでいます。また、図2で示すとおり、当社独自の5段階レベルに基づき、顧客のGHG排出量を可視化する仕組みも提供しています。それに加え、ローコード・ノーコードプログラミングなどのソフトウェア工学を活用したソフトウェア省エネ開発や、AI(人工知能)やセンサを活用した空調などの設備稼働の最適化などを通じ、顧客の事業実態に即してGHG排出量の削減を支援します。さらに、カーボンクレジットや、Science Based Targets*1のバリューチェーンを超えた緩和として、2022年7月時点で未認定ではありますが、今後の認定の可能性を含めて注目されているブルーカーボンにも取り組んでいます。
ここでは、まず最終製品別のCarbon Footprint of Products(CFP)*2情報を提供するためのCFP算出基盤を旭化成株式会社とともに構築したことについて紹介します。同基盤により、同社の機能性樹脂製品のうち1万品目を対象に、製品ごとの材料やプロセスの違いを反映した製品別CO2排出量が算出可能となります。
続いて、熊本県上天草市およびNTTデータ経営研究所(データ経営研)とともに、海草の一種であるアマモ*3のCO2吸収量を測定した実証事業について紹介します。アマモはカーボン除去の可能性について世界的にも注目されています。

*1 Science Based Targets:パリ協定(世界の気温上昇を産業革命前より2 ℃を十分に下回る水準(Well Below 2 ℃)に抑え、また1.5 ℃に抑えることをめざすもの)が求める水準と整合した、5~15年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標。
*2 Carbon Footprint of Product:商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組み。
*3 アマモ:甘藻は、北半球の温帯から亜寒帯にかけての水深1~数メートルの沿岸砂泥地に自生する海草の一種であり、日本各地に分布します。

旭化成とともに取り組んだ、CFP算出基盤の構築

昨今GHG排出量の管理ニーズが高まっており、自社活動からのCFPであるScope1およびScope2に加え、サプライチェーンにおけるCFPであるScope3を網羅した総排出量の管理が求められています。そのため、CFPの管理は自社内の管理に適した単位ではなく、会社間の管理に適した最終製品別の単位で行う必要があります。さらには、CFPに基づくコスト金額を見極め、GHG排出量を下げる最新設備を適宜導入するという投資判断も行う必要があります。
当社は旭化成とともにこれまで、同社の経営情報をグローバルで一貫把握する基盤を構築していました。そこで今回新たに、自動車や電子部品等の部品材料として使用される機能樹脂製を取り扱う機能材料事業において、原料調達から生産までに排出したCO2を可視化し、サプライチェーン下流の顧客に対する製品ごとのCFP情報を提供する機能拡張を行いました。

■特長1:サプライチェーン全体像の排出量を網羅

図3に示すとおり、CFP算出基盤はサプライヤーから仕入れた原料別CFP(Scope3)に、外注加工(Scope3)や自社の製造プロセスで発生したGHG排出量(Scope1/2)を加算し、製造プロセス全体を網羅したCFPを算出します。さらに、各拠点に散在するCFP関連データを集約するとともに最終製品別に紐付けて連結管理し、CFPを製品別に可視化します。原料CFPの算出には、国立研究開発法人産業技術総合研究所が提供するLCIデータベース「IDEAv2.3」を利用しています。

■特長2:最終製品別にCFPを月次で算出

旭化成では、機能樹脂製品の生産品目が細分化し、生産拠点も世界中に分散し、さらに生産プロセスも多段階に分かれており、その結果としてサプライチェーンが複雑化していました。そこで、複雑なサプライチェーンを網羅するため、高速演算を強みとする計画・分析ツール「Anaplan(アナプラン)」を採用しました(図4)。同社の原料、製造拠点のさまざまなデータをAnaplanに入力すると、製品構成表を用いて製品別の連結排出量を自動的に数秒内で集計します。これにより、これまで決算のタイミングでしか把握できなかった製品別排出量を、月次などの高頻度で把握できるようになります。

■特長3:価格とCFPを組み合わせた総合的な分析

旭化成の経営情報基盤にCFP可視化機能を追加したことにより、価格とCFPを組み合わせた総合的な分析が可能となります。具体的には、自社で独自に設定したCFPコスト単価を用いて、自社のCFPを金額に換算したインターナルカーボンプライシングを算出し、財務情報として取り扱います。これにより、将来の製品別の収支計画コストと、投資に伴うCFPの削減コストを比較し、投資対効果を評価できるようになります。また、製造プロセス別のICP(Internal Carbon Pricing)から、最新の省エネ機器や自然エネルギーに転換する投資優先度の判断も行えるようになります。これらの分析にはBI(ビジネスインテリジェンス)ツールである「Tableau(タブロー)」を用いて可視化し、製造工程別や製品種別ごとに分析します。

上天草市とデータ経営研とともに取り組んだ、アマモのCO2吸収量の実測

ブルーカーボンとは、大気中のCO2が浅海域に生息する海洋生態系に光合成を通じて取り込まれ、有機物として隔離・貯留されたものです。海洋生態系が枯死して海底に堆積すると、取り込まれていたCO2も底泥に埋没し続けます。近年、大気中のCO2削減手段として「ブルーカーボン」が注目されていますが、一方で海洋生態系の吸収量の定量測定が進んでおらず、それゆえに、日本においてCO2削減手段として認定されていません。定量測定が進まない原因は、海草の種類や海域の違いによってCO2吸収量が異なり、広大な海上で海草の種類や海域の違いを視認することが難しいからです。そこで当社は上天草市とデータ経営研と協力し、上天草市が海洋生態系としてアマモ場を提供し、データ経営研が本プロジェクトを統括するとともにアマモのCO2吸収量を定量的に算定・評価し、当社がドローンの空撮画像を用いて海草の種別や密度を分析する実証実験を行いました。
アマモの年間CO2吸収量は先行文献で下記のとおりに定式化されています。

年間CO2吸収量(kg-CO2/年)
面積 × 吸収係数
吸収係数 = 湿重量 × (1-含水率) × 炭素含有量 × 炭素固定係数 × 44/12)
(44/12:炭素量を二酸化炭素量へ換算する係数)

そこで今回は、上記の式を踏まえつつ、文献に基づくパターン1、および実測に基づくパターン2のCO2吸収量について表1のとおりに比較しました。また、表2はパターン1とパターン2の環境条件の違いを示しています。面積と湿重量はどちらのパターンも実測値を用い、同様に炭素固定係数はどちらのパターンも文献値を用い、含水率と炭素含有量のみ文献値と実測値で異なる値を用いています。実験結果として、パターン1の年間CO2吸収量は41.29 kg-CO2/年となり、一方のパターン2の年間CO2吸収量は31.75 kg-CO2/年となり、実測値を使う場合と文献値を使う場合とで約20%の差があることを実証しました。
また、ドローンの空撮を活用することによって当初の課題が軽減できることも実証しました(図5)。一方、より精緻に把握するためには、土地ごとの特性、算定時期を考慮に入れなければならないほか、波や太陽光反射といった気候条件による海草の種別や密度の誤認を防ぐために水中でのドローン活用などの複数のモニタリング手法も活用しなければならないことも併せて確認できました。

今後に向けた取り組み

CFP算出基盤については、製造業を皮切りにしてより幅広い業界に対応していく予定であり、機能拡張を進めています。一方、ブルーカーボンについては、国交省や自治体の取り組みが加速していることを踏まえ、ブルーカーボンのCO2吸収量のさらなる精緻化を進めていきます。

問い合わせ先

NTTデータ
サステナビリティ推進本部 グリーンイノベーション推進室
TEL 080-1005-4780
E-mail yukio.tsukishima@nttdata.com