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テクニカルソリューション

所内通信設備の定期的な清掃の必要性――ファンの目詰まり、カビの発生リスク

通信設備は高度情報社会の重要なインフラであり、適切な保守が必要不可欠です。例えば、サーバ装置ファンの目詰まりによる温度上昇や通信機器室でのケーブル外被のカビ発生などの問題が実際に起こることがあります。ここでは、これらの事例を紹介し、通信設備の正常な機能と信頼性を確保するため、適切な保守として定期的な清掃の必要性について考えていきます。

はじめに

NTTグループは、数多くの通信機器室を運営しており、高度な技術と厳格な管理によってこれらの重要なインフラを維持しています。通信機器室は、情報社会における信頼性と安定性の要として位置付けられており、継続的な運用と適切な保守が欠かせません。NTT東日本技術協力センタでは、通信機器室で起こったさまざまな問題について技術協力してきました。その中でも、定期的な清掃が適切な保守点検の重要な要素であることを示す2つの事例を紹介します。

事例1 : サーバ装置ファンのフィルタ目詰まりによる温度上昇

■依頼背景

あるお客さまの通信機器室において、サーバ装置の騒音および温度上昇が報告されていました。また、この温度上昇によりサーバ装置のアラームが鳴り、お客さまにとって予期せぬ対処をしなければならなくなりました。サーバ装置ファンのフィルタ交換によりアラームは収まったものの、原因については不明でした。技術協力センタは、この原因調査と予防策の策定について依頼されました。

■現地調査

温度上昇のアラームが鳴ったサーバ装置において、アラーム以前から騒音が大きいと報告されていました。同様の騒音報告がなされている同型サーバ装置がお客さまの通信機器室にあったため、そのサーバ装置の騒音原因および装置温度について調査しました。
現地調査を行い、騒音の原因はファンの回転数が高いことだと確認しました。サーバ装置の温度と連動して、サーバ装置ファンの回転数は調節されています。そのため、装置フィルタの交換を行い、ファンの回転数および温度推移を計測しました(図1)。このフィルタ交換によりサーバ装置の温度が下がり、ファンの回転数が低くなったことにより騒音が解消されました。

■原因と予防策

フィルタ交換の頻度を確認したところ、装置を設置してからこれまでフィルタ交換を行っていなかったことが分かりました。つまり今回の騒音および温度上昇は、フィルタ交換を行っていなかったことによるフィルタの目詰まりが原因でした。
予防策として、ファンの回転数にしきい値を設け、これを超過した場合にはフィルタ交換または清掃を行う運用を組み込みました。

事例2 : 通信機器室におけるケーブル外皮でのカビ発生

■依頼背景

NTTグループの通信機器室において、伝送設備の電源ケーブルに白い付着物が発見されました。この付着物への対応策を検討するため、当該付着物の分析によるヒト・設備への影響調査を、技術協力センタは依頼されました。

■現地調査

現地の環境調査および白い付着物の回収を行うべく、現地調査を行いました。白い付着物は伝送設備の電源ケーブル部に発見され、現場は現状維持されていました。
現地の環境調査として、ケーブルの設置状況確認および温湿度測定を行いました。また白い付着物を回収し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、形態観察および元素分析を行いました。
ケーブルの設置状況を確認したころ、白い付着物発見現場は二重床構造になっており、床下配線されたケーブルは白い付着物で一面覆われていました(図2(a))。また、伝送設備のファンカバーが白い付着物とホコリで塞がっており(図2(b))、装置の冷却能力が下がるリスクのある状況を確認しました。加えて温湿度を測定し、湿度の高い場所では相対湿度(RH)65%以上であることを確認しました。RH65%以上の湿度は、測定時期が秋で天気が晴れていたことを考えると、湿度が高い状況でした。
白い付着物についてSEM*により形態観察および元素分析を行ったところ、カビの特徴である“胞子”と“菌糸”を確認し(図3(a))、有機物の元素である炭素C(黄色表示部)が多く検出されました(図3(b))。ゆえに、白い付着物はカビと推定できました。当該カビのヒトへの健康リスクを判断するため、DNA解析によるカビの同定を行いました。その結果、Aspergillus属(コウジカビ)と判明し、この属は病原性や毒性の報告がないため“ヒトへの健康リスクは低いカビ”であることを確認しました。

* 走査型電子顕微鏡(SEM):SEMは物体を高倍率で拡大観察する技術であり、元素分析も可能です。電子ビーム照射によってサンプルから放出される電子を検出し、表面形態観察や元素の分布を調べることができます。

■原因と対策

今回、二重床内のケーブルがカビで一面覆われていた状況、伝送設備のファンカバーがカビとホコリで塞がってしまっている状況を確認しました。
現地調査および依頼元へのヒアリングにより、原因となり得る要素を3点発見しました。1点目は、高い湿度環境であったこと、2点目は、二重床内の清掃が保守項目になく、ホコリが溜まっていたこと、3点目は、エアコン清掃周期が延長されたことでした。高い温湿度環境およびホコリの存在は、カビの発生環境として最適です。またカビは空調設備のフィルタ中でも繁殖しやすいため、発生したカビが空調設備から二重床内に拡散および繁殖し、本事例の状況になったと推察します。
本件の対応として、二重床内のホコリの清掃および、ケーブルについたカビのふき取り、加えて空調設備のフィルタ清掃を同時期に行うこととなりました。また予防策として、空調フィルタ清掃頻度の再考および該当ビル内の二重床内清掃運用について提案いたしました。

まとめ

両事例も、原因は清掃不足によるものでした。事例1では定期的なフィルタ交換が行われていなかったこと、事例2では二重床内を清掃していなかったことが問題の原因となりました。ゆえに適切な保守として定期的な清掃は、通信設備の正常な機能と信頼性を確保するために必要不可欠な要素の1つと考えられます。設備で問題が生じた場合に清掃について不備がなかったか、本記事が今一度考えるきっかけになればと思います。

問い合わせ先

NTT東日本
ネットワーク事業推進本部 サービス運営部
技術協力センタ 材料技術担当
TEL 03-5480-3703
E-mail gikyo-ml@east.ntt.co.jp