特集2
テレプレゼンスロボットを活用したデータセンタ運用保守
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- データセンタ
NTTコミュニケーションズ イノベーションセンター テレプレゼンスプロジェクトでは、人口減少に伴う省人化の要請、ルーチンワークのAI(人工知能)自動化へのニーズ、リモートワークなどの新たな働き方への変革にこたえるべく、世界初となる商用環境におけるIT機器を対象とし、テレプレゼンスロボットを活用した運用保守業務の実証実験を開始しました。docomo business Forum'23(dbF’23)ではロボットの実機展示およびNexcenter Labに設置したお客さま環境での遠隔操作体験デモを展示しました。本稿では、実証実験の内容とお客さまの声から見えた市場ニーズについて紹介します。
丸山 純平(まるやま じゅんぺい)/上村 芳徳(うえむら よしのり)
照屋 保幸(てるや やすゆき)
NTTコミュニケーションズ
テレプレゼンスプロジェクトが掲げるミッションとめざす世界観
NTTコミュニケーションズ イノベーションセンター テレプレゼンス*1プロジェクトは、物理的な距離を障害とせず、誰もが自由に活動できる社会の実現をミッションとして掲げています。また、どこにいても、誰でも、ロボットを介して世界中を旅することや、どこからでも効率的に仕事を行うことが可能な世界をめざして活動しています。この取り組みにより、地理的な制約を超えた新たなコミュニケーションと作業環境の創出をめざしています。
2019年度よりさまざまなユースケースを検証する中の1つとして、データセンタにおける運用保守業務の遠隔化がありました。およそ2年の基礎技術開発を経て2023年度下期からお客さま商用環境での実証実験に着手しています。
*1 テレプレゼンス:遠隔地にあるロボットや機器を通じて、そこにいるかのように感じることができる技術です。これにより、遠く離れた場所での作業やコミュニケーションが可能になります。
データセンタにおけるリアルタイムテレプレゼンスロボットソリューションの実証実験内容
本プロジェクトは、実証実験の開始に先立ち、自社のデータセンタをご利用いただいているお客さまにヒアリングを行いました。お客さまの声から得られた、障害発生時の対応スピードの向上、省力化および省人化の重要性に加え、技術面・ビジネス面での実現可否の観点に基づき、テレプレゼンスロボットを用いて以下の4つの業務の運用可否を検証します。
① 故障・トラブル発生時の駆けつけ:システムに故障・トラブルが発生した際に、従来の駆けつけに代わり、保守拠点からデータセンタへ配置したテレプレゼンスロボットへアクセスし、遠隔から一次切り分け業務を実施します。また、一次切り分け業務実施時の映像を録画データとしてクラウド上に保管します。
② 現地作業の事前事後確認:メンテナンス作業実施の前後で行っている確認作業を、テレプレゼンスロボットを用いて行います。
③ 遠隔からのサポート作業:現地作業において、熟練作業者のサポートが急遽必要となった場合に、保守拠点の熟練作業者がテレプレゼンスロボット経由で現地とコミュニケーションを図り、対応の迅速化を実現します。
④ 定期巡回:ロボットへの巡回予約設定により、早朝、夜間帯などに自動で監視対象の機器を確認します。
本実証実験において使用されるテレプレゼンスロボット(図1)は、データセンタ内のアイルコンテインメント出入口を開閉する機能を備えたロボットアームを装備しています。この技術により、ロボットはサーバラックまで人の介入なしに自律的に移動が可能です。さらに、そのロボットアームの先端には、カメラや照明が搭載されており、ラック内の機器のLEDや、配線の状況をさまざまな角度から確認することができます。
テレプレゼンスロボットの操作は、保守作業担当者のPCを介して行われます(図2)。データセンタ内の概要図やサーバラックの実際の映像を遠隔地からリアルタイムで確認しながら、作業を進行することが可能になります。加えて、テレプレゼンスロボットには手動による遠隔制御だけでなく、自動巡回機能も具備しています。あらかじめ設定された時間にサーバラック内の確認作業を自動的に実施する効率的な運用が実現可能となります。
docomo business Forum'23(dbF'23)の展示ブースでは、自動巡回デモのほか、お客さまがリアルタイム遠隔操作可能なデモを通じて、操作の簡便性やレスポンスの速さ、ラックの扉越しにおいても運用保守可能となるクリアな映像を体験していただきました。
また、実機展示においては、ラック上部から下部への対応に伴うアームの伸縮機構、狭い通路幅での作業や移動へ対応するためのタイヤの構造など、一見して分かりにくい部分への工夫や適用されている技術の高さ、今後の機能追加を見越した拡張性についても提示しました(図3)。
データセンタ向けソリューションの今後の展望
本ソリューションの今後の展望として、今回の実証実験で採用した保守運用業務以外にも、テレプレゼンスロボットを介して、ラック内に設置したサーバのディスク交換や、各種ケーブルの抜き差し等のリモートハンド業務だけでなく、ベンダ作業時のアテンドや、立ち会い対応等、データセンタで実施するさまざまな業務にも着手していく予定です。
また、将来的には、NTTグループのIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想に基づくオールフォトニクス・ネットワーク(APN)*2を活用することで、通信遅延が大幅に低減され、遠隔地からの操作ストレスが解消されることが期待できます。
これまで「24時間365日稼働」が必要なデータセンタ事業では、物理的保守においては深夜の勤務が求められていました。しかし、保守スタッフと対象設備の物理的な距離が問題とならない社会を実現すると、時差を利用し、複数の地域にいるスタッフが業務を分担することが可能になります。
このような技術の進歩は、深夜勤務を必要とせず、より効率的な業務体制を実現し、従業員のワークライフバランスの改善にも寄与すると考えられます。
*2 オールフォトニクス・ネットワーク:ネットワークから端末まで、すべてにフォトニクス(光)ベースの技術を導入し、これにより現在のエレクトロニクス(電子)ベースの技術では困難な、圧倒的な低消費電力、高品質・大容量、低遅延の伝送を実現します。
テレプレゼンスプロジェクトの今後の展望
本プロジェクトでは、データセンタ向けソリューションだけでなく、今後は農業・介護・プラント業界等、さまざまな領域へのアプローチも考えています。
また、テレプレゼンスロボットの技術は、業務用途にとどまらず、観光やエンタテインメントの領域においても観光地の疑似体験や、遠隔地からのコンサート参加において新たな価値提供の可能性があると考えています。
dbF'23の展示を体験していただいた多くの業種のお客さまからも、提供価値や技術要素に着目いただき、お客さまの領域で活用するためアイデアや共創へ向けた声をいただきました。これらの市場ニーズを踏まえ、物理的な距離を超越した世界の実現へ向けて取り組み続けます。
世界観に共感いただけるお客さま、パートナーの方々との共創による加速もぜひとも進めたいと考えています。ご賛同いただける方がいましたら、本プロジェクトまでお気軽にお声掛けください。
(左から)丸山 純平/上村 芳徳/照屋 保幸
問い合わせ先
NTTコミュニケーションズ
イノベーションセンター
テレプレゼンスプロジェクト
E-mail ic-telepre@ntt.com
テレプレゼンスプロジェクトは、通信、ロボティクス、センシングなどの先端技術を結集し、誰もがどこにいても自由に活動できる、距離や時間の制約を受けない世界をめざしています。