特集2
水中ドローンの概要とドコモビジネスの取り組み
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2023年10月12~13日に開催されたdocomo business Forum'23(dbF’23)では、ドコモビジネスが取り組んでいる沖縄サンゴ礁保全活動への取り組み(OISTサンゴプロジェクト)を通して水中ドローンソリューションを出展しました。本稿ではその内容を紹介します。
塩田 幸平(しおた こうへい)
NTTコミュニケーションズ
水中ドローンとは
水中ドローンとは、潜航が可能な有線式の小型無人潜水機(ROV:Remote Operated Vehicle)の通称となっており、機体とコントローラを有線ケーブルで接続して遠隔操縦を行います(図1)。コントローラとデバイス(スマートフォン、タブレット)をWi-Fiで接続し、機体内部に搭載されている各種センサやカメラなどから得られる深度や方位、機体の傾きなどの情報、撮影された水中映像をリアルタイムに確認しながら操縦を行います。操縦者は主に船上や陸上から機体の操縦を行うことで、リアルタイムに水中映像を見ることができます。インフラ設備点検や水産業での資源調査などさまざまな場面での活用が広がっており、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想にある「超カバレッジ拡張」に併せてさらなる発展が期待されています。
水中ドローンを潜水士の目と手の代わりに
水中ドローンは主に潜水士の「目」としての役割と「手」としての役割に分けられます。搭載されている高精度カメラが水中の対象物を撮影することで、水中に設置された構造物や漁具の点検、生物の生態調査などに活用できます。従来は潜水士が水中カメラを手に撮影を行っていましたが、潜水士が潜ることのできる深度以上の深さでも、安全にかつリアルタイムに状況の把握が行えます。それに加え、音波を用いたソナーを使用することで、濁度が高く視界が悪い中でも対象物を的確にとらえることも可能となります。「目」としての役割はすでにさまざまな業界で活用されおり、今後も広がっていくことが予想されます。また、水中ドローンにアームやマニピュレータを搭載することで水中の物体をつかむことができます。水産養殖現場では網底にいる死魚を発見し、回収するまでをアームを取り付けた水中ドローンで行っている事例があります。ほかにも、採水や採泥などのサンプル採集用途や網を使った水中での運搬用途など、ユーザの目的に合わせたマニピュレータも多く見られようになりました。人の手ほどの滑らかな動きはできないことや、操作難易度が高いといった課題は存在するものの、今後の技術開発に伴う「手」としてのさらなる発展に期待が高まっています。
潜水士不足を補う水中ドローン
近年、我が国の潜水士は高齢化による離職者が増加する中で、新たな若手後継者の確保が難しい状況にあります。そのため潜水士不足が大きな問題となっており、それを解決する一手として水中ドローンに注目が集まっています。また、潜水士の安全確保の面からも、過酷な環境下においても長時間稼働することのできる水中ドローンはこの問題を解決するのに有用なものと考えられるため、潜水士に代わり水中ドローンが代替できる作業は水中ドローンが行うなど、潜水士と水中ドローンで業務のすみ分けを行うことが重要と考えています。
ドコモビジネスでは、沖縄科学技術大学院大学(OIST)と共同でサンゴ礁を保全する取り組みを行っています。「海の森」として豊かな生物多様性を育み、人間に多くの恵みをもたらしている美しいサンゴ礁を保全する本プロジェクトにおいて水中ドローンが活用されています。2023年7月17日にNTTドコモを含む国内企業8社が当初のスペシャルパートナー企業として参画し始動した、世界初最新のゲノム情報を駆使したサンゴ礁保全プロジェクト「OISTサンゴプロジェクト」では、当社にしかない水を採取するためのオプション品(採水サンプラー)を付けている水中ドローンが活躍しています(図2)。従来の潜水士が行う調査と比較し、より広範でかつ網羅的にサンゴの実態を調べることが可能となりました。引き続き持続可能なサンゴ礁の保全に向けた取り組みを進めていきます。
水中ドローンの活用で潜水士の安全性向上
水中ドローンはサンゴの生態調査だけではなく、水中構造物や施設の調査・点検にも活用されています。例えば、防波堤や海底ケーブルの点検において、撮影映像や目的に合ったセンサ、ソナーなどを活用しながら対象物の損傷や劣化個所を検出し、必要な修理ポイントを早急に発見し、的確な点検計画を立てることができます。水産現場では台風や時化などによる網の損傷具合の確認や資源の生育状況の把握を行っています。近年は水難現場での活用も広がっており、潜水士に先行して水中ドローンが対象物の捜索を行うことで、潜水士の省力化および安全性向上に寄与しています。
水中ドローンの需要は今後増加することが見込まれます。海洋資源の有効活用や海洋保全への関心が高まっていることから、活用の場はさらに広がりをみせることが予想されます。さらに、エネルギーや通信などの海底インフラの需要も増加しており、水中ドローンの活用はそのメンテナンスや点検作業において不可欠な存在となるでしょう。
今後の展開
NTTグループが提唱したIOWN構想では「超カバレッジ拡張」が謳われています。現在の通信システムがカバーしきれていない洋上や海中での高速無線通信の実現に伴い、水中ドローンを含む海洋IoT(Internet of Things)ソリューションは一気に加速し、注目を集めることになるはずです。通信キャリアとしての強みを活かしたさまざまな技術を用いて、私たちにしかできないオリジナルの海洋IoTソリューションを実現していきたいと考えています。
塩田 幸平
問い合わせ先
NTTコミュニケーションズ
PS本部 5G & IoTサービス部
IoTサービス部門
E-mail iot_ocean_service@ntt.com
海洋資源の有効活用や海洋保全への関心が高まっていることから、水中ドローンは今後さらなる活躍が期待されています。水中ドローンを含むドコモビジネスらしい海洋IoTソリューションの実現に向けて取り組んでいきます。