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2025年4月号

特集 主役登場

NTT C89(NTTグループの宇宙ビジネス)の研究開発

事業開発と研究開発の2軸をマーケットインで推進。宇宙を身近な存在に

榮永 道子
NTT研究開発マーケティング本部 アライアンス部門
宇宙環境エネルギー担当 担当課長

2024年6月3日、私たちはNTTグループ各社の宇宙ビジネスのブランド「NTT C89」(エヌ・ティ・ティ シー・エイティ・ナイン)を立ち上げました。「NTT C89」の“C”はConstellation(星座)を意味しており、天文学においては88個の星座が定義されていますが、NTTグループ各社が“宇宙統合コンピューティング・ネットワーク”という「新たな89個目の星座をつくっていく」という想いを表しています。これにより、宇宙というフィールドを活用してさまざまな産業の課題解決や日本の宇宙ビジネスの発展に貢献していきたいと考えています。キーメッセージは「未来に、新しい星座を。」です。
“宇宙統合コンピューティング・ネットワーク”は、2021年にスカパーJSAT株式会社との宇宙事業に関する業務提携の際にこの実現が掲げられ、私たちは実現に向け「NTT C89」のもと、「観測ビジネス」と「通信ビジネス」の領域において、NTTグループ各社による市場創造・拡大に向けた“事業開発”と、これらをけん引するNTT研究所による“研究開発”の2つの軸で推進しています。

■事業開発

観測ビジネスの領域では、画像データに関して、観測衛星が撮影する撮影データをさまざまな産業の課題解決に活用するためデータの提供を行っています。NTTデータでは、観測データを3Dの地図に変換する「AW3D®」を提供しています。また、HAPS(High Altitude Platform Station)を活用したリモートセンシングにより海洋状況の的確な把握や災害対策等への活用をめざして、株式会社Space CompassとNTTドコモが開発を進めています。
また、デジタルツインプラットフォームに関して、2024年7月1日に株式会社Marble Visionsを設立し、高頻度かつ高精度な撮影が可能な観測衛星システムを整備し、サイバー空間上で現実空間を表現し、未来予測やシミュレーションを行うデジタルツイン市場の創設に挑戦していきます。
さらに、光データリレーに関して、Space Compassが観測衛星が撮影したデータをGEO(Geostationary Earth Orbit)経由で地上に高速伝送する、大容量・準リアルタイムのデータ伝送を実現する光データリレーを開発しています。
通信ビジネス領域では、衛星とスマートフォンとの直接通信サービスに加え、成層圏のHAPSによりさらなる高速・低遅延な直接通信を提供していく予定です。
衛星通信に関して、NTTドコモが専用アンテナ・端末を活用した、衛星電話・データ通信サービス「ワイドスター」、Starlinkを活用した衛星ブロードバンドインターネットサービスを提供しています。さらに、Amazonが提供する低軌道衛星ブロードバンドネットワーク「Project Kuiper」と戦略的協業に合意し、より広範囲かつ深いビジネス連携を進めています。
TN(Terrestrial Network)とNTN(Non-Terrestrial Network)に関しては、地上通信と衛星通信を統合したシームレスな相互運用をTransatelが開発し、いつでもどこでも最適な通信環境を提供していきます。

■研究開発

これまでNASAやJAXA(宇宙航空研究開発機構)が中心に宇宙開発を進めてきましたが、宇宙産業の急成長が期待されるようになり、民間主導が活性化してきています。例えば、月探査計画「アルテミス計画」は、月面での持続的な活動や火星探査をめざしていますが、すでに民間企業の技術を活用し研究開発が進められています。NTT研究所においても宇宙に関するさまざまな分野で研究開発に注力しており、本特集ではその中から「非地上系ネットワークを用いたモバイル通信のサービス品質向上技術」「宇宙DC向けAI推論技術」「電界表面波を使った電力伝送技術」を紹介しました。マーケットのニーズやインサイトを取り込んだ研究開発を今後も推進し、マーケティングの融合による新たな価値創造をめざしていきます。
宇宙開発は決して遠い将来の話ではなく、身近な存在として私たちの生活に多くの影響を与えていくものです。現代における89個目の新しい星座「NTT C89」を“事業開発”と“研究開発”の2軸で発展させ、農業、林業、インフラ、災害対策などさまざまな産業・分野の方々に宇宙というフィールドの活用により課題解決に役立てることで、日本の宇宙ビジネスに貢献していきます。

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