2025年9月号
グループ企業探訪
お客さまのデータを価値へと変える、バリュープラットフォームパートナー企業
インターネットがグローバルでシームレスなプラットフォームとして広く浸透してきている現在、デジタル技術を介して多様なプレイヤがつながり、価値を共創・循環させるデジタルエコシステムの構築が必要不可欠なものとなっています。NTTスマートコネクトは高い技術力とスピード感で、お客さまのデータをさまざまなプレイヤと最適かつ安全につなぎ、価値へと変換する「バリュープラットフォームパートナー」として、デジタルエコシステムの発展を支え、お客さまのイノベーションを加速させることを使命としています。今回、NTTスマートコネクト宮奥健人社長に、最新のホットな話題を通じた先進的なソリューションについて伺いました。
NTTスマートコネクト株式会社
宮奥健人社長
自社データセンタを基盤にハウジング、メディア、クラウド、データ分析・活用を推進する、バリュープラットフォームパートナーをめざして
◆設立の背景と会社の概要について教えてください。
NTTスマートコネクトは、NTT西日本グループにおける先進技術やサービスを、社会の変化のスピードに合わせて提供できる会社をめざし、2000年3月に設立されました。
現在、設立から約25年、大阪都市部におけるNTT西日本のアセットを活用した、堅牢なファシリティと高速接続環境を誇る「データセンタ事業」を基盤に、信頼性の高いコンテンツ配信を実現している「メディア事業」、基盤サービスからSaaS(Software as a Service)型サービスまで幅広く提供している「クラウド事業」、そして近年はAI(人工知能)を活用したデータ分析・活用事業などエッジの効いた先進的なソリューションも展開しています。また導入前のコンサルティングから、24時間365日の運用監視までお客さまへ常に寄り添ったサポートを通じ、お客さまのビジネスを幅広く安心にサポートしていきます。
さらにこれら一連の事業を通じ、お客さまの大切なデータを安心してお預けいただくことだけにとどまらず、そのデータを流通させ、価値あるものへと変化させるバリュープラットフォームパートナーとしての役割も担っていきます。
大阪・関西万博ではIOWNのユースケースに多数参加し、高い先端技術力をアピール
◆最近実施されたホットな話題を教えていただけますでしょうか。
NTTスマートコネクトにとって今年もっとも大きな取り組みの1つが大阪・関西万博になります。ここではさまざまな企業の皆様と連携しながら、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)のユースケースについて9つのプロジェクトに携わらせていただきました(表)。具体的には、パビリオン間でのネットワーク接続などメイン会場内でのシステム構築に加え、例えば関西国際空港など会場外とのネットワーク接続における環境構築など、グループ内外のさまざまな企業様と連携しながらユースケースの実現に貢献いたしました。
この9つのプロジェクトの中からいくつかの例を紹介させていただきます。まず2025年4月13日のオープニングイベントを飾った「1万人の第九 EXPO2025」においては、広大な場所において著名指揮者による音楽演奏会を実施するにあたり、遅延のない音を歌い手の皆様へ届けることやその音や映像を編集するための番組制作(リモートプロダクション)実現の肝となる、IOWN APN(All-Photonic Network)の構築を実施しました(写真1)。
ここでNTTスマートコネクトは、回線会社との契約、現場の終端装置までの工事調整や立ち会いをはじめ、ネットワークの設計、機器類の選定や準備、ルータ・スイッチ等の設定までを担当させていただきました。このイベントでは、毎日放送(MBS)様と連携しながら、オーケストラの音声をIOWN APNでウォータープラザとリング上を囲む1万人の合唱団に届け、会場一体となる合唱をサポートすることができました。さらに、合唱の映像は夢洲会場から茶屋町にある毎日放送局舎のサブコントロールルームへも伝送路を構築し、遠隔で番組制作ができるようにしました。
2番目は大阪に拠点のある放送局*1それぞれが、夢洲の混雑した会場に中継車を持ち込むことなく番組の制作ができる環境を構築できたというユースケースです。ここでは万博会場にあるメディアセンタと、堂島のデータセンタにある次世代ライブ映像制作プラットフォーム設備とをIOWN APNでクラウド接続し、会場のライブ映像を堂島データセンタに集約させ、4つの放送局がこの設備へ各々接続することで、リモート環境でも各放送局が効率的に番組制作できる、いわゆるリモートプロダクション環境を実現したものです。
NTTスマートコネクトは他のユースケースで担ってきたIOWN APNの回線手配やネットワークの設計、各種機器の準備、ルータ等の機器設定に加え、ここではライブ映像や音響などをリモートで編集するシステム環境まで構築するという、このプロジェクトの中では大変重要な役割を果たしています。
3番目は“ふれあう伝話”です。これは身体コミュニケーションを実現することにより、人と人が自然につながる未来を創造することを目的としたプロジェクトです。ここでは映像と音声に加えて、触覚・振動をIOWN APNにより遅延なく送り合うことができ、離れた人とハイタッチするなど、触れ合う感覚を伝え合うことができます。例えば、関西空港に降り立った外国からの来場者と日本館にいる来場者がこれを通じて出会い、ハイタッチした感覚を遅延なくリアルに伝えます。またNTTパビリオン側には聴診器型のデバイスが設置され、自分の心臓の鼓動を一緒に送ることもできます。
NTTスマートコネクトでは、会場の中だけにとどまらず、関西国際空港と会場とをIOWN APNでつなぎ、音や映像に加え触覚を伝送するネットワークの設計から機器類の設定までを実施してきました。
4番目はGLION ARENA KOBEで行われる、兵庫県唯一のプロバスケットボールチーム“神戸ストークス”の試合模様を、NTTスマートコネクトによる現地と万博会場間のIOWN APN接続サポートにより、試合の映像はもちろん、コートや観客席の“振動”も収音させ、遅延のない通信を実現する取り組みです。万博会場側ではFEEL TECH*2を仕込んだ椅子により臨場感にあふれたライブビューイングが可能で、アリーナの振動を万博会場でも共有できる、新しいスポーツ観戦体験を提供していきます。
5番目の「One World、One Planet。」は光と音とテクノロジの織りなすスペクタクルショーであり、毎日1000機のドローンショー、光に包まれる体験ができる大屋根リングのライトアップ、EXPO ホールの外壁面に映し出される、プロジェクションマッピング、セレモニーに合わせてLEDビジョンへ映像が映し出されるCUBEモニュメントなどのイベントが繰り広げられる中で、NTTスマートコネクトはEXPOホールでの壁面プロジェクション、LED CUBEでの4面LEDによる演出、そしてNTTパビリオンでの透明サイネージなど、さまざまな操作を同期させる演出を支援するためのIOWN APN構築を実施しました。
6番目のぬくもりある触感伝送「Remotouch」*3はNTTパビリオン内に設置されているタッチセラピーが受けられるブースと、遠隔地にいるセラピストとの間をIOWN APNでつなぎ、絶妙な手技や感触(力加減)と声や表情を双方向でリアルタイムに伝え合い、遠隔にいても手のぬくもりや優しいタッチを肌で感じることができる、癒しの時間を提供しています。「One World, One Planet.」、触感伝送「Remotouch」ともにNTTスマートコネクトでは回線会社との契約、現場の終端装置までの工事調整や立ち会いをはじめ、ネットワークの設計、機器類の選定や準備、ルータ・スイッチ等の設定までを担当させていただきました。
そのほかのユースケースにおいても、NTTスマートコネクトはIOWN APNの構築を中心に一人称でサポートしてきました(写真2)。例えば、アバターロボット「newme(ニューミー)」*4による遠隔接客サービスのネットワーク構築では、万博会場内のセブン-イレブン2店舗(西ゲート店、ウォータープラザ店)に設置されたロボットと、NTTパビリオンとの間をIOWNで接続し、遠隔からでも遅延のない、自然な接客を実現することができています。また自動運行バス支援では舞洲万博パーク&ライドシャトルバスの安全・円滑な自動運転を支援するため、走行ルート上に設置されるITSスマートポール*5のセンサーデータを、IOWNで接続したネットワークサーバで処理することができています。
大阪・関西万博のこれら一連のユースケースのような、大容量帯域でも遅延を生じさせないIOWN APNの構築時では、通常のネットワークをつくる際には使用しないスイッチやルータの設計技術が必要であり、高スキルのSEにとっても大変難易度が高くチャレンジャブルでした。今回の万博は世界中から注目される一大イベントであり、絶対に失敗が許されないというプレッシャーから、開幕前の数カ月間の関連メンバの皆さんは、高い緊張感と重圧との戦いで、とても苦しい時期でもありました。
そのような中で、NTTをはじめ、NTT西日本やパートナー企業の皆様からは手厚いご協力をいただき、共に困難を乗り越えることができました。このプロジェクトの一体感はNTTスマートコネクトの各メンバの大きな達成感へとつながっていったと思います。さらに、社内においても映像配信などを所掌するメディア事業チームと、クラウドなどの各種サービスの基盤運用を担当する技術者チームとが強いタッグを組み、事業部間の垣根を越えて大きな案件をやり遂げることができたと感じています。
*1 日本放送協会、朝日放送テレビ株式会社、関西テレビ放送株式会社、讀賣テレビ放送株式会社。
*2 FEEL TECH:NTTドコモが開発した、触覚や味覚などの感覚を記録し、遠隔地にいる人と共有できる技術。
*3 Remotouch:トヨタ紡織株式会社が開発した人肌のようなぬくもり、タッチセラピーの繊細な力加減で、肩を優しく撫でる動きによりリラックスさせることを実現したリラックスシート。
*4 newme:avatarin株式会社が開発した、遠隔地を自由に動きまわり、自分の目で見て、話すことができる、コミュニケーションに特化したロボット。
*5 ITSスマートポール:交差点周辺の車両や歩行者を検出するカメラやセンサ、通信機器、およびLED表示板などの情報機器を搭載した多機能型電柱。
◆今後の展望についてお聞かせください。
IOWNについて、NTTとして2030年ごろの社会実装をめざしている中、今回の万博での各ユースケースは未来社会の実験場と掲げており、全世界に対するアピールとして大きな意味を持っていると感じています。その中でNTTスマートコネクトとして、IOWNの現場構築にかかわれたという実績は、非常に大きな財産であり、今後はさまざまな日常社会の案件についてもこの技術を活用していきたいと思っています。またNTTグループトータルとして今後IOWNを社会実装していく中、当社はこれを具現化できるスペシャリスト集団として、高く認識していただけたと考えています。
担当者に聞く
大阪・関西万博では、各企業さまとチーム一体となりIOWNユースケースを実現
メディアビジネス部 担当課長
津曲 俊之さん
◆担当されている業務についてお聞かせください。
大阪・関西万博では、全体のプロジェクトマネージャーとして、各ユースケースで連携させていただいているNTTグループ会社や、外部の企業との連携を担当させていただきました。
IOWNを活用した取り組みは多くの方々が初めての経験であったこともあり、定例会等における細かなスケジュールの意識合わせや、さまざまな技術検証等にかかわる調整を実施させていただきました。今回のユースケースでは、NTTとして実施していきたい内容と、各企業が実施していきたい内容とのすり合わせが必要な中、日々、万博会場の建設状況や運用ルールが変化していったこと、スケジュールの前倒しや後倒しが連日のようにあったこと、設置場所や細かな必要機器等の変化にも柔軟に対応する必要があったことなど、多くの苦労がありました。
このような中、毎週定例会を開くことで、密なコミュニケーションを図り、協力企業様をはじめとした万博対応チーム全員が気持ち良く、柔軟にご協力いただけたことにより、一丸となって本プロジェクトを目標どおり構築することができました。
◆今後の展開についてお聞かせください。
IOWNについては、具体的な使われ方がまだ模索中の段階で、放送局等での利用に加え、街づくり、eスポーツ等、低遅延の特性を活かしたさまざまな利用シーンが検討されており、本格利用に向けた実証実験が活発に行われています。
NTTスマートコネクトは、高度な案件にスピーディに取り組めるところが魅力の企業です。今後ますます、IOWNの利用等を具現化できるNTTグループの中核企業として、プレゼンスを高めていけるようにしていきたいと思います。
ア・ラ・カルト
■新オフィスでリフレッシュ
NTTスマートコネクトは、2024年10月にアーバンネット御堂筋ビルに移転しました。ここでは1フロアにすべての事業部(約250名:一部は東京オフィス)が入居しています。平均年齢は30代前半とNTT西日本グループの中ではとても若い会社です。そのため今回の大阪・関西万博でのユースケース案件に限らず事業部間での連携がとてもスムーズで、組織の垣根を越えた若手メンバ間の議論もとても活発です。このような社員の雰囲気が、新しい技術やサービスを生み出す原動力にもなっています。
また、新オフィスはとてもキレイでリフレッシュできる場所や、1人で集中できる場所、皆でディスカッションできる場所などが用意されており、メリハリのある時間を過ごすことができています(写真3、4)。
