2026年5月号
グループ企業探訪
お客さまとともに進化し続けるバリューパートナー――未来を拓くチカラと技術

1976年の創立以来、NTT研究所の先端技術のビジネス化を中核的に担ってきたNTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)は、本年で創立50周年を迎えました。混沌とするビジネス環境の変化に正面から向き合い、組織体制を刷新するとともに、長年培ってきた技術力と豊富な導入実績を礎に、生成AI(人工知能)という新たな潮流にも積極的に挑んでいます。さらに昨年は、「人と技術の協奏で持続可能な社会の実現へ」というパーパスを策定し、技術開発支援にとどまらず社会への貢献をより強く意識した集団へと進化していくことを掲げています。今回、伊東匡社長に、創立50年の歩みと組織変革、生成AIへの注力や今後の展望について伺いました。
NTTアドバンステクノロジ株式会社
伊東匡社長
創立50年の歩みと4つの事業領域を柱とした事業展開
■設立の背景と会社の概要について教えてください。
NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)は、1976年に日本通信技術株式会社として設立されました。その後、1985年にNTT技術移転株式会社に社名を変更し、NTTグループの技術的中核企業として、NTT研究所が生み出すネットワーク・メディア処理・日本語処理・環境・光デバイス・ナノデバイスなどの多岐にわたる技術のビジネス化を支援してきました。そして1990年に現在の社名であるNTTアドバンステクノロジへと改称し、2026年で創立50周年を迎えました。
現在は「アプリケーション」「マテリアル&ナノテクノロジ」「ソーシャルプラットフォーム」「トータルソリューション」の4つの事業領域を柱に、幅広いビジネスを展開しています。コーポレートミッションに掲げる「未来を拓くチカラと技術。」のもと、NTT研究所の技術をはじめとする世界の先端技術を広く取り入れ、それらを融合することで、お客さまの課題解決と価値創出を継続的に追求しています。
変化する市場環境への対応と、新たな事業運営体制への再編
■注力している事業や組織体制の変革について教えてください。
ビジネスを取り巻く環境は、以前にもまして混沌としており、将来を見据えることが一層難しくなっています。ネットワークからサービスへ、国内からグローバルへと、NTTグループ全体の戦略も大きく変化する中、NTT-ATもまた、世の中の動向を踏まえ事業の方向性を変化させ続けています。一方でNTT-ATは、1976年の創立以来、ビジネス環境の変化やNTTグループにおける事業構造の変革へ柔軟に適応し、先進的かつ実用的な技術力をコアとして事業を進め発展を遂げてきた企業でもあります。今後もNTTグループにとって、そして社会にとって、必要不可欠な存在であり続けることをめざしています。
こうした中で、中期事業計画においては「先進的ICTプロバイダ」としての確立を目標に掲げ、マーケットの動きに柔軟かつダイナミックに対応する体制づくりを推進しています。その一環として、2024年7月にはこれまでの13事業本部を4つのビジネス本部と1つの戦略室に再編しました。この新体制のもと、各組織が自らの判断で動き、その責任を自らが担う事業運営へと転換を図っています。
まず「アプリケーション・ビジネス本部」では、AI(人工知能)技術やRPA(Robotic Process Automation)・エネルギー分野・データ流通・解析など最先端のデジタル技術を、戦略的なIP(Intellectual Property)調査分析もダイナミックに掛け合わせながら、さまざまな産業界と連携した製品・サービスを創出し、持続的かつ抜本的なCX(Customer Experience)の向上を実現していきます。次に「マテリアル&ナノテクノロジ・ビジネス本部」では、ナノエレクトロニクスや光、環境分野において他社には成し得ない革新的な材料・製品・サービスを開発・提供します。IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)をはじめとするネットワークビジネスや、エネルギー、カーボンニュートラルビジネスに対応した、安心・安全・高性能・高効率・高信頼な材料・製品・サービスの創出を通じ、グローバルへの展開も図っていきます。さらに「ソーシャルプラットフォーム・ビジネス本部」は、レガシーを含むネットワークとセキュリティの設計・構築・運用・監視にわたる高い技術力により、安定的かつ効率的な社会インフラの実現に貢献します。また、IOWNや国内外の社会インフラにおいて、最新の技術開発からそのインフラへの導入・運用・維持にわたるライフサイクルにかかわり続けることで、サービスやプロダクトビジネスを牽引します。そして「トータルソリューション・ビジネス本部」は、ビジネス本部の枠を越え、全社の製品・サービスと市中製品とを活用したGo-to-Marketによる統合的ソリューションビジネスを展開し、お客さまの課題へタイムリーに対応し続けることでベースロード事業としての拡大を図ります。
「アライアンス戦略室」では、最新の技術動向や市場動向の把握とカスタマーボイスの収集を基にビジネス化戦略を策定し、さまざまな企業や団体などとの戦略的アライアンスを通じてアクションプランの策定と実行のPDCAを回します。そして、ビジネス本部が持つコアコンピタンスと他社アセットとのコラボレーションによる製品・サービスを創出し、ビジネスを拡大します。
生成AIを起点とした新たな成長ドライバーの創出
■最近のホットなテーマについて教えてください。
中期事業計画では、技術力で他を先行するコアコンピタンスを基軸に、新規ビジネスや自社商材といった新たな成長ドライバーを世に出し続けることを掲げています。そのような中、2025年は生成AI関連で成果が生まれ始めました。
(1) RelAiTM(リライ)ナレッジアシスタント
まず、生成AIを活用した新たな自社ブランド「RelAi(リライ)」を立上げ、その第一弾として「RelAiナレッジアシスタント」の提供を2025年8月に開始しました。RelAiは、NTT-ATが40年以上にわたり培ってきた言語処理技術と、生成AI・大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)に関するノウハウを基に、Reliable(信頼できる)、Relational(関係を築く)、Relaxing(安心感のある)の3つをコンセプトとした、自治体・企業向けのAIブランドです(図1)。
RelAiナレッジアシスタントが解決をめざす課題は明確です。自治体では現在、住民サービスの拡充に伴い業務量が増える一方、ベテラン職員のリタイア増加や人材確保の難しさから、業務ノウハウの引き継ぎが滞りやすい状況にあります。「以前にも対応したはずなのに資料が見つからない」といった情報共有の課題に加え、多くの生成AIサービスが登場する中、自治体固有の知識を踏まえた回答が得られない、RAG(Retrieval-Augmented Generation)*の精度が不十分で活用が前進しないといった悩みも多く聞かれます。こうした状況に対し、RelAiナレッジアシスタントは、自治体内に蓄積された議事録・対応履歴・マニュアル・所内報など膨大な文書をAIが解析し、自然な言葉で入力するだけで必要な情報を迅速に提示するソリューションパッケージです。
標準提供シナリオとして、「問い合わせ対応」「PR文の提案」「過去事業の課題検討」「新事業の提案」「議会議事録の抽出・議会答弁案の生成」「起案文書の作成・添削」の6種類を提供しており、いずれも導入済みの自治体の利用実績を基に標準化されています。例えば「問い合わせ対応」では、自治体独自の文書やデータを基に、住民からの問い合わせへの回答案を生成します。「議会議事録の抽出・議会答弁案の生成」では、議会議事録から指示したテーマに関連する発言を抽出・要約し、想定質問や答弁案の作成まで一括して支援します(図2)。
システム面では、WebデータのほかPDF・Word・Excelなど既存の資料をそのまま活用できます。データ投入やRAGのチューニングはNTT-ATの言語処理・AI専門家が担当するため、自治体側に専門知識は不要です。運用開始後も、要件定義からサービス設計・精度改善に至るまで一貫してサポートします。セキュリティ面では、AIの学習内容が閉じたシステム内で完結し外部に漏れる心配がなく、LGWANとの閉域網接続にも対応しています(図3)。さらに、ローカルLLMを用いたオンプレミスでの提供も可能です。すでに東京都葛飾区での先行導入を皮切りに、「安心と信頼のAI」として自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)の新たなスタンダードを創出しつつあります。
(2) WinActor®AI連携ライセンス(AL)
一方、2014年から国内RPA市場を牽引してきた「WinActor(ウィンアクター)」においても、生成AIとの連携機能を標準搭載した新ライセンス「AI連携ライセンス(AL)」を2025年に発表しました。WinActor はVer.7.5より生成AIとの連携機能を標準搭載し、定型業務の自動化にとどまらず、従来のRPAでは対応が難しかった「判断を伴う非定型業務」の自動化にも対応できるようになっています。ALはその生成AI連携機能を、より手軽で、より柔軟に活用できるようにした新しいライセンス形態です。
ALの特長は、生成AIベンダとの個別契約やお客さま側でのライセンス管理製品の準備が一切不要な点です。ALの契約にNTT-ATが管理するAzure OpenAIの利用契約とライセンス管理サーバの利用が組み込まれており、購入後すぐに生成AI連携機能を利用開始できます。またフローティングライセンス方式を採用しているため、端末を固定せず複数の端末で共有利用でき、端末1台からのスモールスタートにも対応しています。なお、お客さまのデータが生成AIの学習に利用されることはなく、情報漏洩のリスクなく安心して活用できます。
ALで利用できる生成AI連携機能は3種類です。まず「対話によるシナリオひな形作成」は、チャット形式により指示するだけでシナリオのひな形が自動生成される機能のため、シナリオ作成が初めての担当者でも簡単に作業を進められ、開発期間の大幅な短縮と業務の標準化・属人化解消が期待できます。次に「帳票操作の簡単化」は、生成AIが帳票の内容を自動で理解し、バラバラなフォーマットの帳票でもフォーマットを意識することなく変数名・値・位置情報などを抽出してシナリオを作成できる機能です。これにより入力ミスの削減と作業時間の大幅短縮を実現します。さらに「シナリオ内生成AI応答利用」では、テキスト生成と画像認識の活用が可能です。テキスト生成では問い合わせへの回答案作成、文書の要約、AI翻訳などをシナリオの中で自動化でき、画像認識ではFAXや手書き申請書などから必要な情報を生成AIが自動で認識・抽出し、システムへの入力までを一貫して自動化できます。このように8500社を超える導入実績を誇るWinActorに生成AIの力が加わったことで、業務効率化における新時代の幕が開かれたといえます。
* RAG:外部データの検索結果を組み合わせることで、生成AIの回答精度を向上させる技術のこと。



■今後の展望についてお聞かせください。
創立から50年を振り返ると、規模も事業内容も大きく進化し、NTTグループにおけるNTT-ATの役割は、創立当初には全く想像し得なかったものになっています。ハードからアプリケーション、DX・AI・ネットワーク・ソリューション・セキュリティ・光・ナノテク・環境などへと技術分野を拡げながら歩んできた50年は、時代の変化と真摯に向き合い続けてきた歴史そのものです。今後のあるべき姿を見据えたとき、技術開発支援というNTTグループの一員としての役割に加え、社会への貢献をより意識した集団へと進化していくことが必要であると考えています。
こうした考えのもと、昨年、企業活動における飛躍的成長と持続可能な社会の形成への寄与を掲げたパーパス「人と技術の協奏で持続可能な社会の実現へ」を策定しました。社員1人ひとりが自らの存在意義を、パーパスに掲げる“環境・暮らし・ヒト”の3つの視点から問い続けることで、社会に貢献する意志を育み、その意志の結集こそが企業成長の原動力になると確信しています。こうした活動の積み重ねが、私たちがめざす「先進的ICTプロバイダ」への進化につながっていきます。NTT-ATは、次のステージに向けてその歩みを加速させていきます。
担当者に聞く
NTT研究所支援や自治体PoC検証から得た知見・ノウハウで社会のDX化に挑戦
アプリケーション・ビジネス本部
AIストラテジビジネス部門
ビジネス開発担当
統括マネージャ 博士(工学)
富田 準二さん

■担当されている業務についてお聞かせください。
生成AI事業において、NTT研究所からの受託による開発支援・技術検証や、自治体とのPoC(Proof of Concept)を通じた検証を担当しています。そこで得られた知見をサービス企画・商材化に反映させることが主な役割であり、具体的にはRelAiナレッジアシスタント、窓口AIエージェント、シソーラス辞書を対象に、企画開発や販売促進から、チーム運営、他部署との連携まで幅広く担っています。また、NTT研究所案件や自治体PoCで蓄積した実証的なノウハウを、再利用可能な生成AIサービスとして展開することにも注力しています。これら1つひとつの業務を個別の検証で終わらせることなく、事業として継続的に提供できるかたちに昇華させていくことが重要だと考えています。
■今後の展開についてもお聞かせください。
変化の激しい最新技術への継続的なキャッチアップとして、他社にはない価値を持つサービスをかたちにすることが課題です。こうした課題に対し、NTT研究所からの受託および自治体とのPoCで培った知見を統合し、技術と実装を両立することによって自治体DXに実効性をもたらすサービスを実現していきます。
ア・ラ・カルト
■バラエティ豊かな社内サークルが、タテヨコの関係を育む
2023年度の社内制度見直しによりサークルの発足や運営のハードルが下がり、新規サークルの設立や各サークルの情報発信が一気に活発化してきたようです。以前から継続していた6つのサークルに加え、新たに11のサークルが発足し、現在は17のサークルが活動しているとのこと(写真)。
ジャンルは陸上・テニス・草野球といった定番のスポーツはもちろん、着物・ワイン・靴磨き・ダーツ・AI学習・ボードゲーム・健康麻雀などバラエティに富んでいるとのことで、「ソデフルズ」「ワインを嗜む会」「ブラシ道場」「国士無双」といったユニークなネーミングのサークル名も目を引きます。サークル活動はあくまで有志による取り組みながら、部署や年齢を超えた交流の場となり、気軽に話せるタテヨコの関係づくりに大きく貢献しているようです。
また、最近ではグローバル社員の参加も増えており、社内コミュニケーションの活性化という面でもその効果を実感しているとのことです。

