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グローバルスタンダード最前線

ASTAP38参加報告

2026年4月20~24日に第38回ASTAP(Asia-Pacific Telecommunity Standardization Program)会合が、タイのバンコクにおいて、対面形式にて開催されました(昨年と同様、インダストリーワークショップならびにプレナリのみハイブリッド形式にて開催)。本会合には、18のAPT加盟国等から計148名が参加し、標準化会議に加えて、AI(人工知能)と新興技術をテーマとしたインダストリーワークショップが開催され、産業界関係者の取り組みが紹介されました。本稿ではASTAP38の開催概要について報告します。

井上 朋子 (いのうえ ともこ)†1/山本 浩司 (やまもと ひろし)†1
中島 和秀 (なかじま かずひで)†2

NTT研究企画部門†1
NTTアクセスサービスシステム研究所†2

ASTAP概要と会議構成

アジア・太平洋電気通信共同体(APT:Asia-Pacific Telecommunity)(1)は、1979年に設立された同地域における電気通信の均衡した発展、研修やセミナーを通じた人材育成、および地域的政策調整を担う国際機関であり、現在38カ国が加盟しています。このAPTが1997年に設立したのがアジア太平洋電気通信標準化機関(ASTAP:Asia-Pacific Telecommunity Standardization Program)(2)であり、1998年の第一回総会以降、毎年1~2回の会合を継続的に実施しています。その主要な目的は、アジア・太平洋地域諸国の協力体制を確立し、国際舞台での影響力を高めて、その意向や施策を効率的に国際標準に反映させることです。
第38回ASTAP全体の会議構成としては、初日のインダストリーワークショップ(後述)に続いて、4日間の日程でオープニングおよびクロージングのプレナリ、各WG(Working Group)およびEG(Expert Group)会合、将来の方向性に関するアドホック会合、各国代表団長(HoD:Head of Delegation)会合が開催されました。
表1にASTAPの会議構成を示します。ASTAPの会議体は、WGとEGの単位で構成され、3つのWGの配下に、複数のEGが所属するかたちとなっています(なお、表1記載のWG議長副議長国はASTAP38時点のものです)。

■WG PSC

WG PSC(Policy and Strategic Coordination)は、電気通信に関する各加盟国の政策・戦略について議論・共有を行うグループで、①国際電気通信連合-電気通信標準化部門(ITU-T:International Telecommunication Union-Telecommunication Standardization Sector)に関するトピックを扱うEG ITU-T、②途上国支援と技術普及をスコープとするEG BSG(Bridging the Standardization Gap)、③政策・戦略等に関する議論を行うEG P&R(Policies and Regulations)、ならびに④グリーンICTと電磁界防護に関する課題を扱うEG GICT&EMF(Green ICT and Electro-Magnetic Field Exposure)、の4つのEGで構成されています。

■WG NS

WG NS(Network and System)は、①次世代網の議論を行うEG FN&NGN(Future Network and Next Generation Networks)、②災害対策に関する議論を行うEG DRMRS(Disaster Risk Management and Relief System)、ならびに③アクセスエリア通信に関する課題を扱うEG SACS(Seamless Access Communication Systems)、の3つのEGで構成されています。

■WG SA

WG SA(Service and Application)はサービスとアプリケーションに関する課題を所掌し、①IoTサービスに関する課題を議論するEG IoT(Internet of Things Application/Services)、②セキュリティを議論対象とするEG IS(Information Security)、③マルチメディアに関するトピックを扱うEG MA(Multimedia Application)、および④情報の利便性・可用性について議論を行うEG AU(Accessibility and Usability)、の4つのEGで構成されています。加えて、以下の会合が開催されました。

■ASTAPの将来の方向性に関するアドホック会合

ASTAP Management Team for Future Direction(MTFD)による、ASTAP組織再編の検討について、本会議前にバーチャル会議を開催していたものの合意に至っていなかったため、ASTAP会期中にアドホックグループを設置して議論し、議論成果をクロージングプレナリで報告することとなりました。

■代表団長(HoD)会合

代表団長(HoD)会合においては、事前に候補者として指名された次期議長・副議長に関して議論・調整が行われました。

主要成果と次回に向けた計画

各EGにおいては、アジェンダの承認の後、リエゾンのレビューや、寄書および作業計画の審議などがなされました。
WG PSCのEG ITU-Tにおいては、ITU-T Study Group議論の報告(SG11、SG2、SG3、SG5、SG15)、ITU-T SG11からのリエゾンのレビューがありました。EG BSGにおいては、韓国のCapacity Building Program提案および日本のTraining Courseの報告がなされ、ASTAP40に向けてハンドブックの作成を計画しました。EG P&Rにおいては、進捗報告、入力文書、Update Strategy等について議論されました。EG GICT&EMFにおいては、4つのWork Itemについて議論され、the adoption of standardized power-data interfaces in the Asia-Pacific regionの質問状、およびGreen data center practices and climate resilienceのAPT Reportが提出され、プレナリにて承認されました。
WG NSのEG FN&NGNにおいては、韓国からの、the use of ITU-T Recommendations related to ICT trustのガイドライン(Final reportはASTAP39で承認予定)、New Work Item “Guide on the use of ITU-T Recommendations related to ‘Enhancement to NGN’ for APT members”などの議論がなされました。EG DRMRSにおいては、NTN for Resilient Communicationsのレポートについて議論されました。またLiaison statement to AWGがプレナリにて承認されました。EG SACSにおいては、Seamless Access Systems for Wideband THz ServicesのレポートおよびSeamless Access Systems for Wideband THz Servicesのレポートの作業文書、さらにROFおよびIEEE802.15.3 THz規格を用いたVRネットワークに関する初期調査に関して議論が行われました。また、Revised ToR(Terms of Reference) for EG-SACSがプレナリで承認されました。
WG SAのEG IOTにおいては、アジア太平洋地域におけるシティバースの概念、技術、ユースケースに関する質問状が、EG ISにおいてはRevised ToR for EG-ISが、それぞれプレナリにて承認されました。EG MAにおいては、Liaison Statement of ITU-T JCA-MV、およびRevised ToR of EG MAがプレナリにて承認されました。EG AUにおいては、Revised ToR of EG AU、それからAccessible IoT Application and Smart City Services in the AP RegionならびにDeveloping accessible mobile applications for APT countriesのレポート、さらにAI-enabled accessibility services in smart communities in the Asia-Pacific regionの質問状がプレナリにて承認されました。このように多くの議題について議論され、今後の計画がたてられました。表2に今会合の各WG・EGにおいてApprovedとなった、主要な成果であるドキュメントを列挙します。また、表3にASTAP39に向けた各WG・EGの主要トピックを示します。なお、ASTAP39は新任議長による新たな会期のスタートとなるため、各WGおよびEGではToRの見直しもなされる予定です。
その他、ASTAPの将来の方向性に関するアドホックグループによる会合の議論としては、ASTAPが新興技術に対応していくため、戦略的ケイパビリティ強化の重要性を認識し、複数の加盟国がEG ETS(the Expert Group on Emerging Technology Strategy)の設立を支持しましたが、日本は効率性、業務範囲、リソース制約、既存グループとの重複の可能性に懸念を示し、既存のグループの任務拡大を代替として提案しました。また、ハイレベルの分析・助言機関として機能すべきだと提案がありました。結論として、戦略的ケイパビリティ強化に対しては広範な支持があったものの、具体的なアプローチに関する完全な合意はまだ達成されていません。さらに、ASTAPの再編成に関しては、技術変化への対応性、効率性、包摂性を向上させるために必要だという一般的な合意はありましたが、新たなASTAPリーダーシップの下でさらなる議論が必要であることが合意されました。
次期ASTAP議長副議長の選出に関しては、代表団長(HoD)会合にて選出された方々について、プレナリにて全会一致で承認されました。結果、日本のTTC(一般社団法人情報通信技術委員会)岩田秀行専務理事がASTAP次期議長に選出されました。また、地域間のバランスや開発途上国の参加促進をねらって、ASTAP副議長は4名に拡大され、中国、カンボジア、韓国、ベトナムの体制が承認されました。さらに、各WGに関しては、関連諸国の連携・協調活動促進のため副議長は3名設けることが合意され、WG次期議長副議長は3年間の任期付きでプレナリにて任命されました。今後の主な新体制は表4のとおりです。

インダストリーワークショップ

本会合の初日4月20日には、「Industry Workshop on AI and Emerging Technologies」と題して、インダストリーワークショップが開催され、日本、中国、インド、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの8カ国のほか、欧州電気通信標準化機構(ETSI)、国際電気通信連合(ITU)から計17名の専門家が登壇し、表5のような先端技術および具体的なユースケースを紹介しました。参加者は対面で81名、リモートで50名でした。主なテーマとしては、Embodied AI、AI(人工知能)ネイティブネットワーク、6G(第6世代移動通信システム)、人間中心のガバナンス、グリーンデータセンタなどの分野における急速な進歩に加え、相互運用性、高信頼性、および持続可能な開発の重要性が挙げられました。登壇者からは、技術革新を政策や標準化活動と整合させること、産業界・政府・標準化機関の間の連携を強化すること、そして、台頭しつつある先進的な取り組みを公式の国際標準へと昇華させていくことの必要性が強調されました。

今後の予定

ASTAP39は2027年の開催を予定していますが、現時点で開催日と開催場所は未定となっています。次回もインダストリーワークショップとともに、ASTAP38と同様の形態で議論が行われる予定です。

■参考文献
(1) https://www.apt.int/APT-Introduction
(2) https://www.apt.int/APTASTAP