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2026年11月号

トップインタビュー

自分に矢を向け、手を抜かず、自分ならではの「一番」を磨く 歴史的転換期に「提言・実装・成果」でオンリーワンをめざす

「デジタルの力で日本を元気にする」を掲げ、企業や社会の「変革パートナー」として新たな価値創造を推進するNTTデータ。最先端AIや強固な次世代インフラを一体で提供し、お客さまの本質的なビジネス成果の創出へ導く取り組みをグローバルに展開しています。コンサルティングとテクノロジーの融合や、組織や国の「枠をはみ出した」強固な連携を推進する鈴木正範NTTデータ代表取締役社長に、NTTデータの現在地と今後の展望について伺いました。

NTTデータ
代表取締役社長 CEO
鈴木正範

PROFILE

1988年日本電信電話株式会社に入社。2016年NTTデータ執行役員、2020年取締役常務執行役員、2023年取締役副社長執行役員を経て、2025年6月より現職。

変革を加速させるため「枠をはみ出して」強固に連携

NTTデータの現在地、そして今後の成長に向けた価値提供の考え方を教えてください。

NTTデータの現在地は、まさに「次の成長ステージへの転換点」にあると考えています。私たちは1988年にNTTから分社独立し、当時は売上高2千数百億円からのスタートでした。それが、私が担当する国内事業において、昨年度の売上高が2兆円を超えるまでに成長しました。分社独立から30数年をかけて一桁上の規模に達し、さらに2023年には国内のITサービス市場でナンバーワンという栄誉ある地位をいただくことができました。これは1つの大きな節目であり、お客さまと社員に心から感謝しています。
しかし、単に規模が拡大したことに甘んじるわけにはいきません。現在は、第4の産業革命ともいわれる「AI時代」が到来し、お客さまから求められる価値の本質が激変する重要な歴史的転換点でもあります。
これからの時代、言われたとおりのシステムを高品質につくるだけではお客さまの期待には応えられません。そこで私たちは、お客さまの経営課題そのものから「何を変えるべきか」を能動的に提言し、それを確実に実装して、実際のビジネス成果まで責任を持って共にお届けする「提言・実装・成果」モデルを強力に進めています。
この変革を加速させるため、私は「3つの役割」と「3つの連携」を掲げてきました。「3つの役割」とは、NTTデータグループ全体のQuality Growthをけん引すること、国内外の社員20万人の知見を結集して「グローバルスタンダードな価値」を日本のお客さまに提供すること、そして「デジタルの力で日本を元気にする」ことです。これらを実現するために、①NTTグループ、②NTT DATA, Inc.、そして③NTTデータ社内の事業分野とグループ会社とが、従来の組織の壁や国境という「枠をはみ出して」強固に連携していく。これが、私たちがめざす企業や社会の「変革パートナー」としてのあり方であり、今後のさらなる成長を確かなものにする価値提供の考え方です。

「枠」をはみ出して、どのような技術テーマに取り組まれるのでしょうか。

重点的に取り組む技術テーマとして、今年度から「AI-empowered New Value & Productivity」と「Next-Gen Infrastructure(次世代インフラ)」という2つの大きな成長エンジンを掲げています。
まず、AIは単なる業務の効率化やコスト削減のツールではありません。お客さまのビジネスプロセス、そしてビジネスモデルそのものを根本から変革し、新たな付加価値を生み出すための極めて強力な技術です。私たちは、単に「こういう優れたAIモデルがあります」と技術を単品で売り込むのではなく、お客さまの経営課題や社会課題を解決するための強力なツールとしてAIを位置付けています。
そして、この高度なAIが頭脳としてフルに真価を発揮するためには、それを安全に、安定して、かつ適切なコストで動かすための「次世代インフラ」が不可欠です。インフラを伴わないAIは成立しません。そこで重要になるのが、データセンタ、クラウド、ネットワーク、セキュリティなどを統合した基盤です。特にネットワーク分野においては、超高速・低遅延の次世代通信技術IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)や、2026年4月に発表したAIネイティブインフラ「AIOWN」の実装を進めています。
このように、「AI」と、それを強力に支える「次世代インフラ」をフルスタックかつ一体で世に提供できることこそが、競合他社にはないNTTデータならではの絶対的な強みだと考えています。既存ITをモダナイゼーションし、AI活用を前提とした基盤に変革することで、お客さまの投資対効果(ROI)を最大化します。

業界知識×コンサルティング×テクノロジー×エンジニアリング

NTTデータが培ってきた技術や組織の強みが満を持して発揮されるのですね。

「提言・実装・成果」という新たなビジネススタイルを全社で具現化し、AIと次世代インフラを社会やお客さまに実装していくための実践的な組織として、私たちは「コンサルティング」と「テクノロジー」のセグメントを新設いたしました。
NTTデータには、公共、金融、法人というお客さまの業界に根ざした非常に強力な「縦軸」の3本柱があります。これらはそれぞれの業界における深い知識や強固な信頼関係を長年培ってきた、私たちの大きな強みです。しかし、AI時代の社会課題の解決やお客さまの変革は、業界ごとの個別最適(ボトムアップ)では決して実現できません。そこで、縦軸を全社横断的に貫く「横軸」の役割として2つのセグメントを新設し、マトリックス構造によるシナジー創出を狙いました。
コンサルティングセグメントは、主に「提言」を担います。お客さまのIT部門だけでなく経営トップに深くリーチし、最重要アジェンダから逆算して変革の全体構想(WHAT)を描きます。そしてテクノロジーセグメントは、その提言を具現化する「実装(HOW)」を担います。どのようなAIを適用し、それをどのインフラ上で動かすべきかという高度な技術と知恵を全社横断的に提供する役割です。これに縦軸が持つ深い業務知識が融合することで、「業界知識×コンサルティング×テクノロジー×エンジニアリング」の一気通貫の伴走体制を確立しました。
さらに、AIのビジネス展開では、現場からの取り組みに加え、経営トップが信念を持って取り組むことが重要になります。組織をつくって社員に命じるのではなく、私、コンサルティングセグメントトップの池田和弘副社長、そしてテクノロジーセグメントトップでCAIOである西村忠興常務の3人が一体となって、お客さまのトップ層に直接お会いし、真摯にご提案と議論を重ねています。

トップ自らが新しいフォーメーションの先陣を切ることで、社内に新たな風が吹き込まれ、グループの一体感が増しているのですね。

私たちがグローバル市場や日本社会でお客さまに唯一無二の価値を提供していくうえで、NTTグループやグローバルとの緊密な連携は極めて重要な鍵となります。
現在、日本が直面する少子高齢化、地域課題、GXの推進、セキュリティ脅威といった複雑極まる社会課題は、個社や1つの業界の最適化だけで解くことは不可能です。だからこそ、組織や会社の枠を越えた強力な連携を通じて「NTTグループだからこそできる社会実装」を具現化し、一社一業界では解けない課題に総力で挑む必要があります。
また、グローバルに広がるネットワークも大きな武器です。現在、グループ全体20万人の社員のうち、海外メンバーが15万人を占めています。世界各地で先行するAIやデジタルの先進的なユースケースやビジネスモデルの知見を、日本のお客さまへ迅速に還元します。
その一方で、日本のお客さまの海外進出を現地で直接的かつ一元的にサポートします。そのために昨年、NTT DATA, Inc.に「JMNC(Japan Multi National Company)」という専門チームを立ち上げました。各国の現地担当者と日本の顧客担当者が密に連携をとり、グローバル一体となってお客さまを支援できる体制が整っています。
さらに、NTTグループには世界トップレベルのR&D、強力なネットワークやデータセンタ、NTTドコモビジネスが持つ巨大な顧客基盤など、圧倒的なアセットがあります。
私たちはこうしたグループの力をお客さまや社会の課題に合わせて選定・調和させる「結節点(ハブ)」の役割を担っています。「IOWN」「AIOWN」などのインフラをフルスタックで結びつけ、最適なアプリケーションとして提供することで、高い安全性と主権性をしっかりと担保し、お客さまのビジネス成果を最大化させることが可能です。

システムでもっとも重要なのは、業務そのものを深く理解すること

鈴木社長は1988年に入社され、NTTデータとともに歩んできたと伺いました。道程とそこから得た教訓を教えてください。

私がNTTに入社した1988年は、NTTデータが分社独立した年でした。そこから私のキャリアがスタートするのですが、NTTデータはNTTグループから離れて上場し、そして再びTOBで100%子会社としてNTTグループに戻るという経緯をたどります。まさに会社が一巡するタイミングで私が社長に就任したことには、運命的な因果を感じています。
入社のきっかけは就職活動中に全国のATM網や決済ネットワークといった、社会を根底から支えているシステムをつくっていると知ったことで、「これは非常に面白そうだ」と心が動いたからでした。
希望していた金融の開発現場に配属され、現場で得た最大の教訓は「システムでもっとも重要なのは、業務そのものを深く理解することだ」という点でした。金融機関がどのようなビジネスをし、どのようなサービスを提供しているかを徹底的に学び、それをシステムに落とし込むという経験を通じて、技術力だけでなく、業界や業務を理解する素養こそが最大の武器になると実感しました。
この歩みにおいて、私の心に深く刻まれている「3つの言葉」があります。人のせいにせず常に自分の課題として省みる「自分に矢を向けろ」、自分にしかできない独自の役割を極める「職場で1番になれ」、そしてどんな仕事にも真摯に向き合う「手を抜くな」です。この3つの教訓は、新入社員のときも、社長になった今でも、私の大切な経営判断の軸であり、ブレない尺度です。

お客さま、社員の皆さん、技術者・研究者の皆さんへメッセージをお願いいたします。

今年度、私たちはAI時代の新しいビジネスモデルを体現する「スタートの年」を迎えました。現在、AIと次世代インフラを掛け合わせた「AIビジネスプラットフォーム」の構築を進めており、お客さまの経営課題をAIで解決するためのサービス基盤づくりを進めています。
私たちは、単に出来上がったパッケージやシステムを持ち込むだけの存在ではありません。経営課題の段階から共に考え、AI時代の新しいビジネスや社会システムを共創する「変革パートナー」をめざしています。そのためには、組織や会社、そして国境の壁を越えて連携し、それぞれの強みを掛け合わせることが重要です。
社員、技術者・研究者の皆さんにも、お客さまや社会のリアルな課題から出発し、AIをはじめとする技術を課題解決につなげながら、自らの可能性を広げ、新しい価値を生み出していってほしいと思います。

(インタビュー:外川智恵/撮影:大野真也)

インタビューを終えて

鈴木社長の表情がもっとも和らいだのは、趣味のカメラと旅のお話でした。旅先で見つけた切符売場の張り紙の写真を手に、「便利さの裏にある生活者の不安こそ、私たちが本当に解決すべき社会課題」と熱く語られた鈴木社長。経営者としての厳しい視点の一方で、ファインダー越しに街を眺め、社会課題を見出すご姿勢や四季の移り変わりを愛しむご様子は、鈴木社長の仕事に対する使命感や社会への愛情をも感じます。生活者視点に寄り添うことや人間力を何よりも大切にされる鈴木社長の温かな経営哲学の本質を垣間見たひと時でした。

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