グループ企業探訪
フルターンでサービス提供をする地域密着のトータルICT工務店
NTTデータカスタマサービスは全国に195の拠点を擁し、お客さまに設計・構築から運用・監視・保守までのすべてのバリューチェーンにおいてサービスを提供している。デジタルトランスフォーメーションが進展していく中、環境の変化に対応していく取り組みと今後の展望について渡辺守孝社長に話を伺った。
NTTデータカスタマサービス 渡辺守孝社長
全国195の拠点でお客さまに寄り添う「トータルICT工務店」
◆設立の背景と目的、事業概要について教えてください。
NTTデータカスタマサービス(NTTデータCS)は、NTTデータが金融機関や官公庁等に対して提供していた、データ通信設備サービス(端末を含むシステムの設備をNTTデータが保有・運用してお客さまに利用していただくサービス)の端末系の工事・ハードウェア保守を担当する会社として、1998年にNTTデータから分社するかたちで設立されました。当時のシステムは、メインフレームベースのセンタを中心としたもので、その中で端末系は業務ごとに異なる端末が利用されているため、必要とされるスキルセットが少し異なっており、端末系の保守・運用を新たなビジネスモデルとして事業化し、この分野を伸ばしていこうという経緯で分社されました。
その後、システムがサーバ・クライアント型になり、端末もPCベースの汎用的なものに代わり、それに伴い必要とされるスキルセットも変わってくる中で、当初の端末系の工事・ハードウェア保守から、お客さまのシステム全体の開発、構築から運用・監視・保守まですべてをフルターンで提供するところまで事業展開するようになりました。
NTTデータCSは会社設立当初から全国に拠点を構えており、2020年6月現在で全国195カ所の拠点、1100人超の社員により、「ネットワーク/基盤インフラ設計・構築サービス」、「導入・工事サービス」、24時間365日のカスタマサポートセンタ(コールセンタ)やお客さま拠点における「統制・運用・監視サービス」、そして「保守サービス」を、お客さまに寄り添う地域密着の“トータルICT工務店”として提供しています。
◆事業を取り巻く環境はどうですか。
ICTの進化・発展に伴い、さまざまな業務をリモートで行うことができるようになってきました。しかし、工事やハードウェア保守のような業務は現場に行かなければ成立しないため、当社が実施しているような拠点ベースのビジネスは縮退していく会社が多い中、その必要性は依然高い状態にあります。
こうした環境において、多くのお客さまの会社は地域ごとに点在している中、システム・コンピュータベンダやSIerのグループ会社が全国に拠点を構え、または地域ごとに分散した保守会社を束ねることで、その親会社の提供するシステム設計・構築から運用・監視・保守までのバリューチェーンの一部を担うかたちで事業を行っています。
当社の場合はNTTデータのバリューチェーンの一部としてサービスを提供することはもちろんですが、設計・構築から運用・監視・保守までのすべてのバリューチェーンにおいてサービスを提供しているのが特長です。また、特定のベンダのグループ会社ではないため、ベンダフリーで、マルチベンダ対応が可能です。さらに、全国1社体制で事業展開しているため、全国一律のQCD〔品質(Quality)、コスト(Cost)、デリバリ(Delivery)〕でマネージメントできます。お客さまによっては工事等の作業をどうしても夜間や休日に行わなければならないことも多々ありますが、それも全国一律のQCDで対応しています。
こうした特長を活かして、これまでの金融機関・官公庁のほか、全国に多く店舗を持つアパレルメーカー等の店舗系のシステム工事・保守、10万サイト以上の公衆無線LANの監視・運用・保守、減災コミュニケーションシステムのネットワーク構築、東京国際空港(羽田空港)の駐車場における満空車管理システム、IoT活用型の車両誘導システム、駐車場予約システム(Web・アプリ)の開発・構築といった事例も増えてきています。
環境の変化への対応を支える人材育成
◆デジタルトランスフォーメーション(DX)が進展していく中で、事業にはどのようなインパクトがあるのでしょうか。
DXの進展により、例えばインターネットバンキングの普及が進み、金融機関の窓口業務や印鑑照合のような業務の変化、縮小、場合によっては消滅といったことが発生します。さらに、リモートワークの推進により、支店やオフィスの統廃合、縮小、移転といった動きもある一方で、IoT(Internet of Things)やAI(人工知能)が普及することで、各所へのセンサの設置、AIを活用した新しい業務・サービスの登場等の新たな動きもあります。
こうした動きの中で、銀行の支店は統廃合されてもATMはなくならず、リモートワークであっても端末はなくなりません。さらにはIoTによりセンサが各所に設置されるようになると、端末の種類や設置場所も増えてきます。拠点ベースのビジネスという観点からは、この先も形を変えながら続いていきます。
当社はDXの登場以前から、端末やシステムそしてお客さまの業務の変化に対応していくことを目的として、端末系からサーバ系やネットワーク系といった領域まで対象を拡げてきており、業務についても保守・運用中心から設計、構築、工事、運用、保守という一連のバリューチェーンにわたって展開するようにしてきました。最近ではオフィス移転に伴う引越しまで対応するようになりました。環境の変化に対応していけるような仕組みをつくり、さらには全国の拠点というリソースを活かした
“トータルICT工務店”として、世の中や技術の新しい流れに対してお客さまに寄り添ってサポートしていきます。
◆今後の展望についてお聞かせください。
“トータルICT工務店”として事業展開していくためには、資格の取得や社員のスキルアップといった人材育成が重要です。事業所として業務に必要な資格という点では、建設業法関連の監理技術者・主任技術者をすべての分野にわたり取得しており、そのほか電気工事士等の取得、そして2020年4月には一級建築士事務所も開設しました。社員のスキルという点では情報処理技術者関連の資格、ネットワーク系ではCCNP/CCDPやCCNA/CCDA等、プロジェクト管理としてはPMP、システム運用としてはITIL Expert等があります。これらの資格取得をはじめ、こうした資格の技術を実務で活かしていくためにも、NTTデータのP-CDP(Professional Carrier Development Program)という仕組みにより、設計、構築、工事、運用、保守という一連のバリューチェーンに対応できる人材育成に注力していきます。
これまで、全国にある拠点を活用して、NTTデータとの連携により全国展開型のお客さまとのお付き合いが多かったのですが、地域のお客さまとのお付き合いを増やしていきたいと考えています。そのためにも、地域における「顔」でもある、NTT東日本・西日本の各支店様との連携強化に注力していく必要があります。当社は端末だけではなく、サーバやネットワークに関するスキルもあり、企画・設計・構築段階から運用・保守までのすべてのバリューチェーンに関するサービスを提供していることから、それぞれの持ち味を活かした補完関係を築き、win-winのビジネス展開をしていきたいと思います。
担当者に聞く
NTT東日本・西日本との連携で高まる支社への期待
取締役執行役員 東日本支社長
浪瀬 時彦 さん
◆支社として担当されている業務について教えてください。
NTTデータCSには、エリアごとに8支社(北海道、東北、東日本、東海、北陸、西日本、中国、九州)があり、その中で東日本支社は関東エリアと信越エリアを担当しています。東京都内にはNTTデータCSの本社があり、NTTデータとの連携や大規模で全国的なお客さまについては本社営業本部の担当で、東日本支社はそれ以外の金融機関や自治体、法人等地域のお客さまを担当しています。
各支社には、設計、構築、工事、運用、保守という一連のバリューチェーンに対応する機能が備わっており、本社が獲得した全国的なお客さまに関するエリア内の業務を実行面で担当しているほか、支社独自の営業部隊も配置して支社ごとにそのエリアのお客さまへの営業活動も行っています。もちろん、支社で獲得したお客さまのプロジェクトに対しては、支社に一通りの機能があるので、それを活用して本社で提供しているサービスのダウンサイジングバージョンのようなかたちによりフルレンジでサービス提供しています。
こうした環境において、支社の収益向上が期待されており、支社独自の営業活動を強化しているのですが、エリアにおけるNTTデータCSの知名度や支社内のヒューマンリソースにおいて厳しい面もあり、それを補強するためにNTTデータの地域会社と連携してサービスを提案しています。今後は、NTT東日本・西日本の各支店様との連携や他社との連携を増やしていくつもりです。
◆ご苦労されている点を伺えますか。
NTT東日本・西日本の各支店様との連携における糸口をつくるところに苦労しています。
NTTデータの地域会社との連携においては、当社はNTTデータから分社した会社であり、同じNTTデータグループということで、ある程度は業務内容や業務の進め方も相互理解できて、スムーズに連携することができます。
一方、NTT東日本・西日本との連携においては、同じNTTグループではあるのですが、NTTデータCSが、何ができる会社なのかも知られていないのが実情です。1988年のNTTデータ分社の経緯にさかのぼってみれば、その段階ですでに事業の形態をはじめ会社の雰囲気等、すべてにわたってNTTとNTTデータでは異なっていたため、無理もない話です。
当社の支社は本社と同じように、設計・構築といった上流工程から工事・保守などの現場に根差した工程まで幅広い領域を手掛けられる強みを活かし、各地域で独立して活動できる、いわば1つの会社のような存在です。だからこそ、より地域に寄り添い、それぞれの地域のニーズを踏まえたご提案ができると考えています。これまで当社が着実に積み上げてきた品質と実績を、お客さまとNTT東日本・西日本に付加価値として提供できる地域密着の会社であることをしっかりと説明しながら、一歩一歩誠実にお付き合いすることで信頼関係を構築していくことが大切だと思っています。
◆今後の展望について教えてください。
自治体をはじめとする地域のお客さまとのお付き合いを増やしていくことが当面の目標です。
NTT東日本・西日本の各支店様は、まさに地域の“顔”であり、自治体とのお付き合いにおいても豊富な知見があります。当面の目標を現実のものとしていくために、NTT東日本・西日本の各支店様との連携構築はそのキーファクターです。
まずは、当社を知ってもらうことが入口にはなりますが、そのときにNTT東日本・西日本および関連するグループ会社と当社が補完関係にあること、それによりお客さまとNTT東日本・西日本等に付加価値をつけることができることを説明し、ご理解をいただく中で、1つでも多くの成功事例をつくっていきたいと思います。
ア・ラ・カルト
■驚きの受賞
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)から、官公庁のお客さまの大規模全国ネットワークへのネットワークスイッチ導入実績が評価され、“FY20 Experience Edge Solution Partner of the Year”というパートナー表彰を受賞しました(写真1、2)。
この賞は、アジア・オセアニア地区においてNTTデータCSの受賞が日本における初受賞であり、日本HPでさえも驚きを隠せなかったそうです。ネットワーク機器の導入という、社員が頑張ってスキルをつけてきたところが認められたうえ、このようにグローバルな賞をいただけたことは大変嬉しく思います。
■GIGAスクール構想
「多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、子供たち一人ひとりに個別最適化され、資質・能力を一層確実に育成できる教育ICT環境の実現」を目的とした、文部科学省のプロジェクト“GIGAスクール構想”において、ネットワーク構築と端末導入を行いました。担当社員自身が経験したことのない環境で学習できる子供たちをうらやましく思うとともに、そこに貢献できることを誇りに思うという意見があちらこちらで聞こえたそうです。
その一方で、工事はコロナ禍で休校になった2020年4~5月にかけて行われたのですが、もう少し早く導入されていればという悔しい思いと、授業のある日には工事はできないという現実のジレンマを感じつつ整備に励んだそうです。
■CSファミリー活動
新入社員の配属先を超えた人脈形成を図ることを目的に、「CSファミリー活動」を行っています。職場をまたいで入社10年目前後の社員が父母役、5年目前後の社員が兄姉役、新入社員が弟妹役の7~8名のファミリーを構成し、各種勉強会、職場の悩み相談のほか、最高裁判所、豊洲市場見学、犬カフェ体験、釣り堀居酒屋体験等も行っているとのことです。また、合同ファミリー大会もあり、花見やボーリング大会を行ったとのことですが、2020年はコロナ禍の影響で全ファミリー参加のオンライン懇親会になったそうです。
入社後の研修終了後からの1年間の取り組みで、新入社員にはなかなか評判がいいようです。就活生の中にもCSファミリー活動が魅力の1つという学生もいるそうで、今後も継続・発展できることを願っています。