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グループ企業探訪

第252回 株式会社NTT DXパートナー

地域のお客さまのDXに寄り添い、地域を元気にする

NTT DXパートナーは、地域の企業や自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)をスタートからゴールまで寄り添いながら支援する会社だ。言葉が先行しているDXを現実のものとするため、コンサルティングから実装までをお客さまとともに推進していくことで地域の活性化をめざす思いを近藤俊輔取締役兼DXコンサルティング部シニアマネージャーに伺った。

NTT DXパートナー 近藤俊輔
取締役兼DXコンサルティング部シニアマネージャー

DXコンサルティングでスタートからゴールまでお客さまに伴走してDXを推進

◆設立の背景と会社の概要について教えてください。

NTT DXパートナーは、NTT東日本で非通信領域の事業にチャレンジしている中で、DX(デジタルトランスフォーメーション)に関するコンサルティングを中心に事業展開する会社として2022年1月31日に設立されました。
NTT東日本は自治体や地域企業とのお付き合いが多いのですが、昨今DXという言葉が広く使われるようになり、こうした自治体や企業の関心が高まっています。一方で、その多くがDXに向けて何をどのようにすればいいか分からない、誰に相談していいか分からない、といったようなその入り口の課題に直面しているという現状もあります。そこで、こうした課題に対してコンサルティングというかたちをきっかけとして寄り添い、地域の企業や自治体を元気にしていくことを目的として事業を始めました。
こうした設立の経緯を具体的なものにしていくために、図1のように「Vision」「Mission」「Value」からなる企業理念を掲げ、社員24人一丸となって地域の活性化に向けて取り組んでいます。

◆どのような事業をしているのでしょうか。

事業としては、DX人材育成を含むDXコンサルティングから、DXの実装・推進までをNTTグループ、ビジネスパートナーが有するノウハウや技術を活用して、DXのビジョンとゴールをお客さまと考え、共創・伴走することで実現します。DXの実現に向けては、単なるコンサルティングだけではコンセプチュアルなところで終わってしまうので、ゴールの形態に応じて各企業、自治体に対するBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)やデータ連携基盤などの実装に加え、地域という観点ではコミュニティやプラットフォーム等を構築しながら参加者全体も底上げし、DXを推進します。
まもなく会社設立1年になるところですが、すでにいくつか事例も出てきています。
山梨県では、県内の金融機関、IT企業等を中心とした民間企業、経済団体、商工会議所、商工会、教育機関等でコンソーシアムを結成し、「やまなしDXエンジン」というポータルを立ち上げて県内企業のDX推進を支援しています。
また、新潟県佐渡市、新潟大学と連携した地域活性化モデルとして、担い手不足の解消、地域活性化、安心で快適なまちづくりに向け、地域住民、学生、社会人が一体となり取り組む、佐渡イノベーション共創拠点にコミュニティプラットフォームを構築し、ソーシャルイノベーションをめざす佐渡ローカルイノベーションプログラムを推進しています。
さらに、信金中央金庫様と連携して中小企業の経営課題、事業活動をサポートしていくDXプラットフォームを構築し、中小企業が金融機関とキャッシュフローの状況等を共有し合うことで、資金繰りサポートを受けられたり、勤怠管理や経費精算といった日常業務をデジタルで完結させることができるなど、中小企業のDXを推進する取り組みを始めています。

地域のDXは思いを共有する仲間づくりが大事、NTTグループの本領発揮

◆DXに対する世の中の関心も高くなってきていますが、市場はどのような状況にあるのでしょうか。

特に地域においては、DXという言葉は知っているものの、具体的に何から始めていいか分からない、相談先がいないなどの課題があり、DXを実装する前の段階でのご相談をいただくことも多いです。経営や事業課題の可視化や実業務の棚卸など、課題の抽出からご支援させていただくのですが、より幅広い領域をワンストップでご支援するため、自治体をはじめ金融機関、経済団体など、地域企業をサポートしたいと考えている方々とコミュニティをつくりながら地域全体を支えていき、地域が自走できる仕組みをつくっていくことが重要だと考えます。
NTT東日本の各支店は、地元自治体や企業とのお付き合いの中で、地域の課題発見から解決まで取り組み、信頼関係も構築しています。こうした課題の中にDXも含まれており、まさに私たちの真価を発揮できるフィールドではないかと考えています。

◆今後の展望についてお聞かせください。

地域においては前述のとおり、DXへの関心は高いものの、その多くがDXに向けて、緒に就いたばかりの状況です。またDXそのものもめざすゴールが広範にわたっています。こうした潜在需要やゴールを1つでも多く掘り起こしていくことに当面取り組んでいきます。その先には、地域のDXをコンサルティングから推進まで支援するビジネスを通して、地域を活性化する、元気にするエコシステムがあることを確信しています。

担当者に聞く

「山梨DX推進コミュニティ」で地域の皆が元気に

DXコンサルティング部
ビジネスデザイナー
小林 和貴さん

◆担当されている業務について教えてください。

山梨DX推進支援コミュニティが発足し、山梨県内企業のDX推進を支援しています。県内の中小企業はDXという言葉は知っているものの、それが何なのか知らない、あるいは業務効率化をめざすいわゆるデジタル化と混同して、DXの本質である価値創造に至れないといった現状にあります。こうした企業は金融機関や商工会議所、場合によってはIT企業等の支援企業に相談を持ち掛けるのですが、支援企業の方々も新しい分野でもあり知見やノウハウもないことから、その対応に苦慮していました。
そのような現状を解決するため、コミュニティをつくって皆で取り組むという提案をしたところ、多くの賛同が得られ、金融機関1、商工会議所3、地元経済団体3、地元企業2、NTT東日本、NTT DXパートナーの11団体で山梨DX推進支援コミュニティを発足するに至りました。また、その活動の中心として、図2の「やまなしDXエンジン」というコミュニケーションプラットフォーム(ポータルサイト)をオープンし、コミュニティの活性化を図る仕組みづくりを行っています。

◆コミュニティでは具体的にどのようなことが行われているのでしょうか。

やまなしDXエンジン(NTT DXパートナーが運用)ではDXに関するセミナーや研修、個社別DX相談の受付、DX事例共有、ビジネスマッチング、ソリューション紹介、等を提供する機能を具備しています。
県内企業がやまなしDXエンジンにアクセスし、開催されているセミナーの受講や掲載されているDX事例や各種ソリューション情報などから情報を収集していただき、個別に相談をしたい場合はポータル上の相談窓口からコミュニティメンバへコンタクトをとることができます。「個社別のDX相談」ではコミュニティメンバの実例を含むさらに詳細な事例の紹介、戦略策定や業務改善の支援、また補助金の相談、申請等各種支援を受けることができます。コミュニティには参加者がお互いに意見交換する場も設けられており、それが他社のDXへの支援情報になる等、いい循環もできてきています。

◆今後の展望について教えてください。

立ち上げから2カ月たった2022年10月現在では30社にご登録をいただいており、今後は2022年度中に100社をめざしたいと思います。
コミュニティを盛り上げていくことで、多くの実例や意見も出てくるとともに、実際にDX推進活動も活発になり、それがさらなる参加者増を誘引することにつながります。成功する企業をどんどん生み出していき、その方々が自ら他のコミュニティ参画企業を支援していく好循環を創出していくことで、新たな価値創造、ビジネスにつなげていきたいと考えています。この取り組みもまさにDXそのものなのです。そして、その先には他の地域への水平展開も視野に入れていきます。

睡眠課題解決が経済損失からの脱出

プラットフォームビジネス部
ビジネスデザイナー
梅田 貴大さん

テックリード
中村 元さん

◆担当されている業務について教えてください。

睡眠医学の専門医が創業したブレインスリープ社と共同で、デジタル技術を活用した睡眠分野のソリューションを「スリープテックプラットフォーム」として提供しています。
Well-beingや健康経営といった言葉をしばしば目にするようになりましたが、これらの分野では睡眠が非常に重要なファクターとなっています。そこで、ある意味DXの創造価値や課題解決の対象として睡眠に着目し、それをプラットフォームとして構築しました。
このプラットフォームは、スタンフォード大学生体リズム研究所所長の西野教授が創業したブレインスリープ社の医学的知見とNTTグループのICTを連携させ、睡眠ステージやいびき、寝姿勢等のデータの分析レポート、これらのデータが平均値とどのような位置関係にあるのかを可視化した「睡眠偏差値forBizやブレインスリープコイン」、睡眠時無呼吸症候群(SAS)に関する簡易スクリーニング結果等の情報や各種API(Application Programming Interface)、EC機能を提供するものです。
このプラットフォームを活用して、健康経営推進企業には分析レポートを含む「従業員睡眠改善プログラム」、睡眠商品開発企業には睡眠事業プロデュース(コンサルティング)、医療・警察・運輸関連にはSAS簡易スクリーニング(開発中)、個人・企業社員・自治体職員には睡眠改善サポートとしての睡眠改善コンテンツや睡眠専門クリニック連携、快眠グッズ販売等のソリューションを多角的に展開しています。
また、Sleep Network Hub「ZAKONE」という企業や個人をつなぐコミュニティ兼メディアを立ち上げ、「睡眠にかかわる、かかわりたい企業どうしがつながる機会の提供」「共創プロジェクトを生み出すイベントやプログラムの開催」「睡眠に関するプロダクトの先行体験機会の提供・啓蒙活動」を通して、睡眠関連業界のDX推進を支援しています。

◆睡眠を測定・可視化するとは、具体的にどのようなことでしょうか。

「ブレインスリープコイン」という上下、左右、前後の3軸に対する加速度や温度を計測する小型のセンサデバイスを腰付近に装着し、寝ている間の寝床内温度と加速度による3次元の体の動き(寝姿勢や寝返り回数)を測定します。ブレインスリープコインはスマートフォン(アプリ)と接続されており、同時に環境音やいびき音も測定します。これらの時系列データをスマートフォンの画面に表示します。
また、定性的な観点から全国1万人以上から収集されたアンケートベースの測定アルゴリズムも持っており、偏差値/平均値を基準として客観的に見た自身の睡眠の質が可視化できる「睡眠偏差値forBiz」も提供しています。

◆今後の展望について教えてください。

日本人の5〜6割程度が睡眠、特に睡眠の質に悩んでいるといわれており、経済産業省の調査では生活習慣病やメンタル等の一般的な健康問題よりも、睡眠問題による経済損失が一番大きいといった結果も出ており、睡眠問題は日本の社会課題となっています。一方で、健康経営に積極的に取り組んでいる健康優良法人認定取得企業の中でも、睡眠問題に取り組んでいるところはまだまだ少ない状況です。
こうした社会課題解決を支援するのが、「スリープテックプラットフォーム」や「ZAKONE」であり、これにより健康経営の促進、経済損失の解消等につなげていきたいと考えています。

ア・ラ・カルト

■全社員でつくる企業理念・スピリッツ

一般的に会社の企業理念は、会社設立時にその背景をベースに定められることが多いと思いますが、NTT DXパートナーは会社設立後に、初期メンバー10人を中心に何を成し遂げたいのかというビジョン、そのためにどんなことをミッションとするのか、価値・バリューは何かについて週1回リモート会議で意見を出し合い、そして、全社員からの意見を集約して企業理念に紐付くスピリッツをつくり上げたそうです。スピリッツは10項目で、その裏側には幾多のメンバー1人ひとりが考えたスピリッツがあり、それらをまとめあげたものになります。なおスピリッツは社会環境等の変化に応じて入れ替わっていくことも考えているようです。

DXコンサルティング部
ビジネスデザイナー
熊坂 英莉さん