from NTTフィールドテクノ
社会インフラ設備の管理省力化に向けたNTTフィールドテクノの取り組みについて
NTTフィールドテクノ(フィールドテクノ)とジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW)では、NTT西日本の通信設備に関する維持メンテナンス業務を営む過程で得たノウハウを活用した「点検代行」や、プラットフォームサービス等を活用した「社会インフラ設備の維持管理・修繕DX」により社会基盤を支え、社会インフラの課題解決・スマートシティの実現に向けて取り組みを加速させています。このたび、2023年8月よりこの両社にて、社会インフラ設備の画像データを用いてAI(人工知能)による台帳整備・劣化診断を行うクラウドサービス「Audin AI」の提供を開始しました。ここでは、両社のこれらの取り組みとそのねらいなどについてお伝えします。
社会インフラが抱える課題
道路や電柱といった高度経済成長期に整備された社会インフラは、今後20年で「建設後50年以上」を経過する施設の割合が大きく増加していきます。これらの徐々に老朽化する社会インフラの維持管理コストを社会全体の負荷としないためにも、事故や破損が生じてから対処する事後保全ではなく、定期的な巡視巡回により設備の状況を把握し適時適切な対処を行いつつ設備を運用していく予防保全型管理の必要性が高まるとみられています。
その一方で、社会インフラを維持・管理する主体である自治体などでは、設備の巡視巡回に必要な労働力の減少や、維持・管理コストの増大にどう対応するかが大きな課題となっています。実際、地方部を中心とした多くの自治体では、社会インフラの巡視巡回に充てる体制の維持が難しくなってきているという声も聞かれ始めています。
私たちNTTフィールドテクノ(フィールドテクノ)の取り組みにおいては、この課題を重要なものととらえ、電気通信設備業務で蓄積・収集したノウハウやデータを“シェアリング”することや、新たな価値を加えて提供することで、自治体やインフラ事業者が抱える課題を共に解決し、安心・安全なまちづくりに貢献します。
これまでの取り組み
フィールドテクノでは、これまでも自社のデータや業務をシェアリングし社会の課題解決につなげるという取り組みを進めてきました。私たちは、西日本エリアの約200拠点、約4000のビルに及ぶ広いエリアでの多くの電気通信設備の保守・点検業務において、多くの業務用車両を保有しており、日々の業務ではかなりの距離の道路走行を行っています。これらの車両で、日常の業務の過程で“移動しながら”設備データを収集することで、低コストで広範囲のデータを獲得し効果的な点検を実現することをめざし、数度の実証実験等を実施してきました(図1)。
その中でも、広島県北広島町とNTT西日本グループらが共同で実施した実験においては、高度な撮影設備ではなく市販でも入手可能な簡易なカメラを両者(北広島町、NTT西日本)の所有する普通自動車に設置し、その撮影画像を用いて設備点検ができるかどうかの検証を行いました。
この実験の中では、いわゆる“ながら”で収集したデータによる点検で、自治体にとって十分な品質が担保できることを確認いただけたため、フィールドテクノとしても今後の取り組みに向けて十分な安心材料とすることができました。
フィールドテクノでは、これらの取り組みで得られたノウハウ・知見を活かし、新たな人手も特殊な機材も増やすことなく点検業務を実施するための準備を進めてきたところです(1)。
新サービス「Audin AI」の取り組み
前述の取り組みを経て、フィールドテクノでは業務車両に搭載したドライブレコーダーの映像により収集した市中のデジタルデータを活用し、かつジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW)の劣化診断を掛け合わせることで、道路構造物等の台帳のデジタル化および道路構造物の錆、路面塗装の剥離、路面等のひび等の劣化診断をポータルサイト上で提供するプラットフォーム型サービス「Audin AI」*をリリースしました。本サービスのリリースにあたり、これまで一緒に取り組んできた多くの実証実験での知見を活用しています。
このAudin AIは、JIWが管路点検などで活用してきたクラウドシステム(PQRSシステム)の上で、NTTアクセスサービスシステム研究所(AS研)が開発したAI(人工知能)などを実行させることで実現しています。このAS研のAIは、画像認識技術により社会インフラ設備の抽出が高精度でできるだけでなく、錆の検出においても優れた精度を発揮するものであるため、道路標識・ガードレール等の社会インフラの台帳整備・劣化診断等に課題を抱えられている自治体・警察などのお客さまに対しては、非常に有用なサービスであると考えています(図2〜4)(2)。
また、Audin AIにおいては、お客さまの日常の業務との親和性を踏まえ、お客さまの既存の設備管理台帳のレイアウトに極力沿うような、柔軟性に富んだレポートフォーマットの作成を実現しています。AIを用いたサービスと聞くと、ややもすると技術面での先進性を前面に出しすぎて、現業の運用との乖離が生じがちですが、その間を埋める柔軟性を意識した仕様としています(図5)。
なお、私たちのサービスの圧倒的な強みは、お客さまが本サービスを利用開始される前に、すでに必要な画像データが8割方揃っている点です。前述のとおりAudin AIはフィールドテクノの業務車両に搭載したドライブレコーダーから日々の走行時のデータを集めています。これにより、西日本エリアのほとんどの道路構造物に関するデータが日常的に得られ、わざわざデータ取得を目的として設備のある現地に行く回数を大幅に減らすことができます。
この点は類似するサービスを提供する他社とは明確に違う点であり、スピードや費用の面での優位性につながっていると考えています。
特に、巡回点検・診断という業務を考えたときに、余力のある大規模な自治体よりも、人的リソースが足りない小規模な自治体の方が業務の継続性が課題となっているケースが多いと考えており、そのような小規模な自治体においては、Audin AIが持つスピード感や費用面のアドバンテージは、大きくお役に立てるものと考えています。
* サービス名称は、知識に対して貪欲な神話の神「Ordin」に由来し、Automatic digital inspection to future prediction(点検DXから「未来予測」へ)、とのメッセージを込めています。
今後の意気込み
Audin AIは、老朽化する社会インフラ設備の維持・管理をどうするのか、という日本全国が抱える社会課題に対する「打ち手」となり得るものであると考えています。他社サービスとは一線を画した存在として仕立てることができましたので、しっかりと戦略を練り、ビジネス営業の皆様とも連携して着実に販売していきたいと考えます。
今後も、本サービスにとどまらず、電気通信設備業務で蓄積・収集したノウハウやデータをうまくシェアリングして、地域のあらゆる課題解決につなげる取り組みを進めていきます。
■参考文献
(1) https://www.nttbizsol.jp/newsrelease/202208101000000728.html
(2) https://group.ntt/jp/newsrelease/2022/05/16/220516a.html
問い合わせ先
NTTフィールドテクノ
ビジネス推進部 ビジネスコーディネート担当
E-mail audin_ai_info@west.ntt.co.jp