グループ企業探訪
建設業界に対してインサイドとアウトサイドの両方の視点からアプローチできる唯一無二の会社
ネクストフィールドは、少子高齢化に伴う就業者数の減少が進み、2024年4月の労働基準法改正の残業上限規制への対応が必須となる2024年問題という大きな課題を抱える建設業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、建設業界にイノベーションをもたらすために設立された会社です。「DXの力で建設業界すべての人たちに、最高の場を提供する」というビジョンを掲げ、建設業界にかかわるすべての人たちに利用されるサービスを提供することをめざし、建設業界全体の発展に貢献したいと語る渡邉文隆副社長に話を伺いました。
ネクストフィールド
渡邉文隆副社長
建設現場のDXトータルサポート企業として、建設会社にとってなくてはならない立ち位置をめざす
■設立の背景と会社の概要について教えてください。
国内の生産労働人口減少は業界にかかわらず共通の課題で、建設業界も就業者数の減少が進んでいますが、それに加え、2024年4月には労働基準法改正により残業上限規制が施行される建設業界では、DX推進による建設現場の生産性向上により残業時間を抑制し、働き方改革をしなければという気運が高まっています。
一方で、建設現場のDXはまだまだ他の業界に比べて遅れていて、特に、建設市場の大半を占める中堅・中小の建設会社における建設現場のDXは依然として進んでおらず大きな課題となっています。
こうした中、建設DXの取り組みを加速させるために、自らが建設会社でありながら、建設業界に向けたDX事業に取り組み、建設現場の業務改善の実績を持つ飛島建設と、ICTをはじめとした最先端の技術・ノウハウを持ち業界DXを進めようとしているNTTグループ(NTT、NTT東日本)の3社出資による建設DX事業を行う会社として、2022年4月1日にネクストフィールドを設立しました。
ネクストフィールドは、新しい会社として建設DXにより建設業界を変革するために、社員1人ひとりがプロフェッショナルな意識をもって、前例のないものにチャレンジし自ら変革することができる企業をめざしています。また、建設業界に対して同業他社である飛島建設のノウハウによるインサイドからのアプローチと、建設業界ではないNTTグループによるアウトサイドからのアプローチにより建設業界を変革できる唯一無二の会社であることを強みに、建設業界に価値を提供していきたいと思っています。
■具体的にどのような事業展開をしているのでしょうか。
建設会社のノウハウを活かし、「IT監督」というブランドでICT業務の現場監督を担う建設BPO事業と、NTTグループの技術を活かしたネットワークソリューションによる建設現場のインフラ構築を強みとして、建設現場に必要なダッシュボードサービス「e-Stand」を提供しています。
建設現場では1つの現場で複数の会社の作業員が働いているため、元請けであるゼネコンだけでなく協力会社も含めて取り組まなければならない点や、工期に応じて人の入れ替わりが発生する流動的な環境である点から、建設現場にICTツールやアプリを導入しても、なかなか定着しないという悩みをもたれている会社が多くいます。
そこにネクストフィールドの「IT監督」が操作説明やヘルプデスクなどの伴走型の現地サポートをすることで、ICTツール、アプリの活用・定着化を実現する支援をしています。ネクストフィールドのIT監督は、建設現場の仕事も熟知し、ICTのことも分かっているので、現場からは受け入れられやすく、まさにこの建設BPO事業がネクストフィールドの大きな強みになっています。
また建設現場は工事が始まってから終わるまでの一定期間しか存在しない一時的な場所であるため、通信インフラも脆弱なケースが多く、そもそもICTツールを使うための通信インフラが整っていないことが多いのですが、衛星通信や5GなどNTTグループの新たな通信技術を活かしたネクストフィールドのネットワークソリューションにより建設現場の通信インフラを整備することで、建設現場がDX推進するためのベースをつくっています。ネクストフィールドとしては今後、当たり前に建設現場で通信インフラが整備され、ICTツールを活用できる世界になることをめざしています。
そして「e-Stand」は、建設業界で使われるさまざまなアプリケーションとAPI(Application Programming Interface)連携することで、気象情報、騒音・振動などのセンサ情報、現場のカメラ映像や就業者情報など、建設現場で必要な情報を一元的に可視化することと、SSO(Single Sign On)機能により、ダイレクトに各アプリケーションにアクセスできるようにするのが特徴の建設ダッシュボードサービスです。この「e-Stand」は、建設現場に導入されるさまざまなICTツールを誰でも便利に使えるために必要だというお客さまの声を基に開発した新たな領域のサービスで、この建設ダッシュボードが、建設現場の仕事の入り口になり、全国の建設現場で利用されることをめざしています(図)。
これら事業を複合的に組み合わせることで、建設現場のDXトータルサポート企業として、建設会社にとってなくてはならない立ち位置になりたいと考えています。
参考URL) https://nxtfield.co.jp/service/dx/e-stand/
建設会社のDX推進だけではなく、文化や社員の意識改革につなげる変革のパートナー
■事業を取り巻く環境はどのような状況でしょうか。
建設DXも各社からさまざまな業務領域でかなりの数のアプリケーションサービスが開発・提供されてきていて、大手建設会社を中心に導入している建設会社も増えてきていますが、まだまだ現場への浸透は遅れている状況です。また、地域の中小の建設会社は何から始めればいいのか分からず、依然として旧来の仕事の仕方から脱却できてない会社が多いのが現状です。
一方で建設市場は首都圏を中心とした都市開発や、リニア新幹線、大阪・関西万博、また大型の半導体工場の建設など、市場規模は維持されているため、労働力を補うためにも建設DXの取り組みによる生産性向上を進めなければならないと考えている会社は多いと思っています。
こうした環境の中で、ネクストフィールドは、「IT監督」、「ネットワークソリューション」、「e-Stand」を中心に建設DXを進めていきますが、それにとどまらず、コンサルティングや人材教育サービスを通じて、建設会社の文化や社員の意識改革につなげる取り組みも進め、真のDXを実現する変革のパートナーとして存在していきたいと考えています。またネクストフィールドがパートナーである建設会社どうしをつなぐことにより、建設業界における共創グループを形成し、その中心となり業界全体の変革につなげていくこともめざしています。
■今後の展望についてお聞かせください。
まずは、[e-Stand]を建設業界に普及させ、建設現場の仕事は「e-Stand」から始まるといった世界をつくるつもりです。そのためにお客さま1人ひとりの声を大切に、サービス開発を進め「e-Stand」を日々進化・改善させていきたいと思います。
また「e-Stand」を中心に、業界共通で映像、音声、センサや各種アプリケーションから得られるデータ活用を進め、ゆくゆくは建設業界の購買活動や、受発注まで一気通貫で完結させられるプラットフォームにまで成長させ、建設業界を横串で変革する企業にしていきたいと考えています。
建設業界はゼネコンだけではなく、専門会社や一人親方、職人など、裾野が広い業界です。現在のB2Bビジネスにとどまらず、将来的には建設現場で働く1人ひとりにDXの世界を提供し、建設業界全体の発展に貢献したいと思います。
担当者に聞く
建設ダッシュボードサービス「e-Stand」で建設業界のDX推進に貢献する
サービス企画・開発部
小島 聡子さん
■担当されている業務について教えてください。
サービス企画・開発部で、建設現場の業務効率化、および品質・安全管理業務の向上に向けた新たなDXサービスの企画・開発に取り組んでいます。現場課題のヒアリング、ソリューション相談などを基にサービスのコンセプト立案、具体的なサービス内容や価格の検討、技術検証、パートナー企業との協業折衝、運用フローの策定、さらなるサービス内容の改善など、サービスにかかわるすべてを一気通貫して行っています。
具体的には、「e-Stand」の操作コンソール画面であるUI(User Interface)開発、カメラやセンサ等のデバイス接続設計、アプリとして利用する他社システムとのAPI連携を行い、メーカやレンタル会社との協業体制によりサービスとして提供することで、現場に必要な情報を可視化し、管理業務の効率化を実現しています。新たなDXサービスの企画・開発には、幅広いテクニカル知識(ネットワーク、クラウド、IoT等)が必要であり、前職までのSEやサービス開発に取り組んできた知識・経験を活かしています。
利用するICTツール・アプリの全体統一が難しい建設現場において、お客さまであるゼネコンの各建設現場のニーズにきめ細かく対応していくことで、「e-Stand」を現場の状況に依存しない標準的なサービスにするため、サービス検討から開発、リリースまでのプロセスを短いサイクルで回しています。自身の所掌範囲が広く、責任が大きく、さまざまな現場課題やソリューションを並行して検討する中で各現場の差分を吸収するために、試行錯誤を繰り返しながら進めていますが、自身が開発したサービスが現場でうまく活用されていることを通して、DXの成果、事業のインパクトを実感することができます。また、サービス企画・開発部に所属していながら、お客さまのご意見を直接伺うことができる環境であることも有意義です。
■今後の展望について教えてください。
2024年度の労働基準法改正に伴う残業上限規制の対策として、建設現場における施工管理のリモート化や効率化に向けたニーズは拡大しており、建設DXの推進は急務です。「e-Stand」はまさにこの課題解決に向けたサービスです。
「e-Stand」を多くのお客さまにご利用いただくためには、建設現場に導入されているさまざまなサービスやデバイスとつながって一元的に管理、運用、データ連携等ができることが必要と考えます。また、将来的にはそれらのデータを蓄積し、活用することで、工程の予測や品質管理、安全管理に役立てたいと考えます。
そのためにも、私は開発者ではありますが、机上の空論ではなく、建設現場に足を運び、お客さまの生の意見を収集しながら課題やニーズを抽出し、サービスへの展開に取り組んでいます。何十年も建設業界にいる方々とはベースの建設現場の知識が異なりますので、独学での知識研鑽も含めて、建設業のプロとして対等に話せるように努力し、信頼されるサービス開発をめざしています。
ネクストフィールドが提供するサービスの利用拡大により、建物や工事の品質を担保しながら現場の生産性や安全性を向上させ、労働環境の改善や人手不足の解消を実現したいと思います。
長いスパンでお客さまに選んでいただける「IT監督」となることをめざす
経営企画部
田口 貴大さん
■担当されている業務について教えてください。
経営企画部で建設BPO事業「IT監督」の推進に取り組んでいます。
「IT監督」は建設現場の知見とICTのノウハウを持つ人材が、お客さまのコンサルティングから建設現場への適切なソリューションのコーディネート、各ベンダへの対応、導入支援から運用保守までをトータルでサポートするものです。
私は建設会社時代の現場監督業務の経験を活かし、「IT監督」の業務内容・運用整理や社内展開業務などに加え、現場それぞれの工程・規模・工事内容に応じた着工前段階でのICTサービス導入支援や着工後の各ICTサービスの導入・定着をめざしたサポート業務も積極的に行っています。
現場着工後のサポート業務では単にサービス利用マニュアルを配布するだけでなく、各現場の利用方法や現場の一日の流れを踏まえた説明会を元請の建設会社社員や協力会社社員に対しても現場監督に代わって実施することで建設現場にかかわるすべての人たちへのICTサービスの活用・定着を支援します。また、現場で利用しているさまざまなICTサービスの問合せ対応は、「IT監督」が一元的な問合せ窓口となることで、現場監督の問合せ対応業務の削減に貢献します。
建設会社では本社主導での全社的なサービス導入の決定後、全現場へ展開することがありますが、実際には本社の方針と現場の利用状況とが異なっていることが多く、利用方法についても現場独自の要望があります。また、日々入れ替わる協力会社の方にも元請会社の取り組みを理解して、利用していただく必要があります。
私が建設会社の本社・現場間や元請・協力会社間に入り、ICTサービスの活用や建設現場特有の課題にきめ細かく対応することで、元請のお客さまだけでなく協力会社の方々を含めた建設現場にかかわるさまざまな方から、感謝のお言葉やご意見をいただけることに大変やりがいを感じています。
■今後の展望について教えてください。
「IT監督」は単にICTサービスの導入だけで終わるのではなく、導入後の伴走により得られた新たな気付きや課題を糧とし今後の新たなテクノロジも積極的に吸収・活用しながら、お客さまのお役に立つための進化・深化が必要です。お客さまのDX推進に寄り添い、長期的なスパンでお客さまに選んでいただける存在になりたいです。
ア・ラ・カルト
■第3回建設DX展 東京に出展
2023年12月13〜15日に東京ビッグサイトにて、「第3回建設DX展 東京」が開催されました。本展示会は建設業界の課題を解決する最新の製品が一堂に出展する、日本最大級の専門展示会です。
出展コンセプト「NTTグループとともに、建設現場にイノベーションを」のもと、NTTグループ5社(NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェア、NTTソノリティ、NTT東日本、ネクストフィールド)合同で出展準備を行い、建設業界向けには初めてNTTグループとして出展を行いました。
ネクストフィールドは建設現場ソリューションとして、e-Stand、e-Sense IoT、点検アプリ、ネットワークソリューション等の展示を行い、社員はほぼ全員参加して、日替わりでお客さまの対応を行ったそうです(写真)。
今後もNTTグループ各社のソリューションとネクストフィールドのソリューションを連携・組み合わせ、建設業界向けソリューションとして展開していきたいそうで、ぜひ豊富な技術力を有するNTTグループ各社の皆様と協業したいとのことでした。