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特集2

docomo business Forum'23開催報告

ドコモビジネスがめざす、空から実現する産業DX

docomo business Forum'23(dbF’23)では、点検・巡回、物流などの用途で活用できる空中ドローンや自律飛行時に正確な位置制御を可能とするサービスを紹介しました。点検・巡回の分野ではインフラ設備の点検や建設現場の進捗確認でドローンの活用が進んでおり、中でもSkydio,Inc.(Skydio社)のドローンは、AI(人工知能)による自律飛行技術、360°の障害物回避技術により、非GPS環境下でも安定した飛行ができます。また、上空でモバイルネットワークを利用するドローン「セルラードローン」では、医薬品配送の実証実験にも取り組んでいます。

筧 慎吾(かけい しんご)/佐藤 茉理奈(さとう まりな)
NTTコミュニケーションズ

点検・巡回ソリューション

■Skydio Dock and Remote Ops.

「Skydio Dock and Remote Ops.」は、Skydio,Inc.(Skydio社)製ドローンの遠隔操縦や自動巡回を実現するソリューションです。docomo business Forum'23(dbF’23)では、「Skydio Dock for S2」を用いたデモ飛行を実施しました。従来のドローンはコントローラによる手動飛行が一般的でしたが、「Skydio Dock」と呼ばれるドローンポートを活用することで、2.4GHz帯のWi-Fi環境下において、PC操作であらかじめ空間上に設定したルートの自動巡回・スケジュール飛行や、機体の遠隔操縦が可能となります。
Skydio社ドローンはAI(人工知能)による自律飛行技術、360°の障害物回避技術を搭載しており、GPSが取得しづらい環境下でも安定した飛行ができる点が特徴です。dbF’23では地下2階の屋内会場で延べ40回のデモフライトを実施し、非GPS環境下での安定飛行および、パイロット不在での自動巡回飛行性能を紹介しました(図1)。この点検・巡回ソリューションは、実際の建設現場における日々の工事進捗確認用途ですでに試験運用が始まっています。また、これまで人が巡視確認していたプラント内の計器読み取り作業の代替検証も進んでおり、現場作業の省人化、無人化が期待されています。

■新機体「Skydio X10」

2023年9月20日(米国時間)に発表されたSkydio社ドローンの新機体「Skydio X10」を日本でいち早く展示し、ご来場いただいたお客さまに実機とともに性能を紹介しました(図2)。
Skydio X10は、従来のSkydio 社ドローンと比較して、解像度やズームなどのカメラ性能が大幅に向上しており、映像の品質向上および効率的な撮影が見込まれます。
また、防水・防塵性能(IP55)、暗所における自律飛行技術が新たに搭載されたことで、雨天時や暗所等、これまで以上に幅広いシーンでの活躍が期待されます。

医薬品配送事例

dbF’23では、セルラードローン*による医薬品配送の実証実験について紹介しました(図3)。本実証実験では、大規模災害が発生し陸路が利用できない場合や、遠隔医療と組み合わせた地域医療への貢献などを見据え、空路での医薬品配送の実用化に向けた課題の抽出や運用ルールについて検証しました。検証においては、事前に上空の電波シミュレーションを行い、上空のモバイルネットワークの状況を確認したうえで飛行ルートを決定しました。加えて、ドローンに装備した専用の保冷ボックスの内部に温度センサと加速度センサを搭載し、内部が適切な状態で輸送できているかを確認しました。また、到着したドローンから、関係者が偽薬を受領する直前に、AI顔認証ソフトウェア「SAFR」を用いて顔認証による受領者認証を行い、関係者が適切に受領していることを確認するなど、実運用を想定した検証を行うことができました。
セルラードローンおよび、ドローン向け専用料金プランである「LTE上空利用プラン」を活用することで目視外での長距離飛行やリアルタイムデータ伝送が可能となり、遠隔地への長距離配送のほか、広範囲の農薬散布や生育監視、災害発生時における遠隔地のリアルタイム映像伝送などへの活用が見込まれます。
今後は、天候などの外的要因による飛行条件や、一度に運搬できる積載量の制限など、残された課題への対応を進めるとともに、有人地帯での目視外飛行であるレベル4での飛行検証や和歌山県内に複数あるへき地診療所およびその周辺に在住する患者への医薬品提供を想定した実証実験を行う予定です。

* セルラードローン:上空でモバイルネットワークを利用するドローン。

docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス

ドローンの自律飛行を行う際や、撮影した映像や、レーザスキャンデータを位置情報とともに管理等するにあたり、ドローン機体の位置を正確に把握することが重要になります。
「docomo IoT高精度GNSS(Global Navigation Satellite System)位置情報サービス」は、誤差数cmの位置補正情報を提供するサービスです。地上に多数設置した基準点をベースにドローン側に位置補正情報を送信(Network-RTK方式)することで、高度情報も含めた高精度測位が可能となります。これにより、ドローンによる農薬散布において、圃場内の正確な自律飛行や、ドローンによる各種点検・測定業務において、あらかじめ決められたルート・対象個所に沿って自律飛行させつつ、撮影・測定結果を位置情報と紐付けた把握・管理が可能となります。
dbF’23では、Network-RTK方式に対応した自律飛行が可能となるドローンとして、NTT e-Drone Technologyの農薬散布ドローン「AC101 connect」、ソニーグループ株式会社の映像制作・産業用ドローン「Airpeak」を紹介しました(図4)。

今後の展開

空中ドローンを活用したソリューションは、インフラ設備や建設現場の点検・巡回、医薬品などの緊急性や迅速性が求められる配送、また作業効率化やGX(グリーントランスフォーメーション)を実現する農業などの分野でも広まってきています。
今後は、これまで培ってきたネットワーク技術など、さまざまな技術アセットやノウハウを活用して、ドローンで取得したデータをAIによる分析やクラウド上の多様なアプリケーションと組み合わせることによって、さらなる付加価値を提供していきます。

(左から)筧 慎吾/佐藤 茉理奈

ドローンで取得したデータをAI分析などの先進技術と組合せ、データ利活用による省力化や効率化によりDX化を加速するとともに、他業種・業態への展開もめざしていきます。今後もより高度なドローンビジネスを推進していきますので、ご期待ください。

問い合わせ先

NTTコミュニケーションズ
5G & IoTサービス部
ドローンサービス部門第一グループ第一担当
TEL 050-3464-6525
E-mail drone-support@ml.ntt.com