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グループ企業探訪

第267回 株式会社Actibaseふくい

観光サービスと町並み整備を通じて、「古き良き三国湊」の価値を高め、国内外へその情報を発信することで、観光客誘致とエリア内消費の促進を図る

Actibaseふくいは、福井県坂井市三国湊エリアを拠点に、地元企業、住民、自治体と協働で地域独自の課題探索・解決、歴史・文化を反映した施設等の建設・運営、観光による地域活性化に取り組む会社です。国内外でリスペクトされる町としての三国湊エリアのブランド化、地域の存続・発展への貢献をめざす樋口佳久社長に話を伺いました。

Actibaseふくい
樋口佳久社長

「オーベルジュほまち 三國湊」を中核とした課題解決で地域貢献

■会社の設立目的と概要について教えてください。

Actibaseふくいは、福井県坂井市三国湊エリアを拠点に、地元企業、住民、自治体の皆様と協働で地域独自の課題探索・解決に取り組む会社として、NTT 西日本、NTT アーバンソリューションズ、熊谷組、住友林業、福井銀行、福井信用金庫、セーレン、福井新聞社、福井放送、フクビ化学工業、北陸電力の11社による共同出資により、2022年10月19日に設立されました。
三国湊エリアは、江戸時代から明治時代にかけて活躍した「北前船」の寄港地として栄え、歴史的・文化的観光資源が多数存在し、世界的にも有名な東尋坊や永平寺を周遊できる環境、また「食の國ふくい」として、毎年皇室に献上される越前がにや甘エビなどの新鮮な海の幸など、観光客を引き寄せる魅力を有しています。一方で、年々加速する人口減少や少子高齢化等により、地域経済の縮小が予見され、課題解決が急務となっている中、こうした観光資源を活用した「三國湊プロジェクト」として、地元団体・企業等とともに、持続可能な地方創生に向けた新たな仕組みに取り組んでいます。
三国湊を、「世界から選ばれる魅力的な観光地として活性化させていく」「地方のインバウンド観光を、ここ三国湊から活性化させていく」「わたしたちActibaseふくいは、これらを実現していくための拠点として活動していきたい」。その思いを、「Activate+Base=Actibase」の名に込めて、「お住いの方々の現在の暮らしと旅行者の皆様が求められる異日常との心地良い共存と感情的つながりの創出」「観光を起点とした地域に喜ばれる地域課題解決への貢献」をとおして、「国内外からリスペクトされるまちとしての三国湊エリアのブランド化」「地域の存続・発展への貢献」をめざして、「地域の活性化に対して責任を持って1つでも2つでも答えを出していきたい」という思いで事業を展開しています。

■具体的にどのような事業展開をしているのでしょうか。

福井県北部の坂井市の九頭竜川河口付近の三国湊エリアにおいて、分散型ホテルの思想を参考として、NTT三国ビルをホテルフロントに、広場はロビー、通りは廊下、町家を利用した客室・レストランというかたちで「オーベルジュほまち 三國湊」を形づくっています(図1)。オーベルジュ(Auberge)はフランス語で、レストランと宿泊場所を兼ねた施設のことです。この「オーベルジュほまち 三國湊」を舞台に社員3名(2024年4月現在)で、「宿泊運営事業」「料飲事業」「アクティビティ事業」「町並み等整備事業」の4事業を展開しています。
宿泊運営事業では、歴史と文化を併せ持つ「かぐら建て」を中心とした三国湊の伝統的町家を、平均延床面積68m2のホテルの客室としてリノベーションし、客室には町家オーナー所有の伝統家具、調度品を備え、部屋ごとに三国湊の歴史や文化を感じられる工夫を施しています(図2)。計画中を含め9棟16室の客室で、1日最大40名程度を収容します。町のほぼ中心に位置するNTT三国ビルを、三国湊の玄関口であるホテルフロントとして活用し、外観も周囲の建物と一定程度の統一感を保つよう改修し、宿泊者向けにフィットネスジムも配置しています。インバウンドや国内アッパー層の顧客をメインターゲットとし、24時間スタッフ常駐により宿泊関連サービスを提供しています。
料飲事業は20席程度のフレンチレストラン、「タテルヨシノ 三國湊」におけるサービス提供です。世界からのゲストの期待を超えるべく、福井県の最高の食材を最高のかたちで提供したいという思いから、「メゾン タテル ヨシノ」を含む多くのワールドクラスのレストランを成功させたフレンチの巨匠である吉野建氏にプロデュースをしていただきました。
アクティビティ事業は、三国湊を存分に楽しんでいただきたいという思いから、世界から訪れるゲストに本物の日本を体験していただくことをキーワードに取り組んでいます。三国湊は、その歴史や文化を受け継いでいる方が非常に多く、すでに、三味線の体験、提灯づくりの体験、盆栽、写経といった三国の文化体験ができる場所が多くあります。船釣りやマリンアクティビティのSUP(Stand Up Paddleboard)も楽しむことができ、タクシー事業者による県内観光地巡りのタクシーツアーもあります。こうした既存のアクティビティを観光客への紹介や地元の皆様への取次ぎをしています。さらに、私たちも、ガイドに導かれながら町を歩き三国の文化歴史を体験する、町歩き体験ツアー、三国ならではの季節食材を使った調理体験といったメニューも開発しました。そして、特に注力しているのが、三国神社をベースとした、特別祈祷。三国の町の皆様の協力による「帯のまち流し」という踊りや、浴衣着用で三国神社の中で舞いや雅楽の見学、境内でのお食事といったオーダーイベントとして提供中です。
町並み等整備事業は、三国湊には元来町の一部に「飾り盆」を飾る文化があるのですが(図3(a))、これに加えて、北陸電力様にご協力いただき、景観になじむようコンクリート柱へのラッピングを施したり、街頭のライティングを利用して影絵を楽しめるようにしたり(図3(b))、三国神社のライトアップを実施する等、自治体とも連携しながら、町の魅力を活かせるような統一感のある景観づくりを主体とした事業です。

地元の応援と協力を背にして地域貢献・活性化の期待にこたえる

■全国各地で繰り広げられている地域活性化の事例として面白い取り組みですね。経緯を教えていただけますでしょうか。

NTT西日本は、西日本30府県を対象に、地域の社会課題解決を通じて地域活性化に貢献する取り組みである「地域の活性化(ビタミン)活動」を2019年に開始しました。その中でインバウンドに着目した観光は、地方の関係人口創出、ならびに輸出産業として、外貨の獲得に効果が期待できる非常にいいテーマであり、三国湊エリアにおけるインバウンド向けの観光を通じた地方創生を目標に取り組もうと考えていました。
NTT西日本のメンバと三国湊の地域の皆さんで勉強会をスタートし、そこに当初から、学識経験者やまちづくりや課題解決に取り組んでいる地元企業の方々等のキーマンに参加していただきました。
以降は、他の場合と同様に事業計画策定、出資者募集といった、会社設立に向けた準備を進めるのと並行して、観光事業をスタートするための最大の課題である町家探しを行いました。これは地元でなければ分からないことなので、この地域の皆様から町家のリストアップをしていただきました。町家探しをはじめ、地域の皆様の協力がなければ進まないので、地域の皆様との対応、理解をいただくことを最重要課題として注力してきました。
会社設立が明確になった時点では、Actibaseふくいの拠点を地域の皆様がすぐに手の届く、この町の中心に設置することにしたため、親近感、信頼感の向上にもつながったと思います。逆に、皆様が今どのようなことを考え、どのような動きにあるのかといった地域の温度感を確認でき、これにより距離感はかなり縮まったのではないかと思います。このような取り組みを経て、地域の皆様とは良好な関係を築くことができ、2023年2月3日の会社設立の記者会見、オーベルジュの名前が決まったとき、あるいは開業日が決まったとき等、さまざまなタイミングで地元の新聞にも掲載していただき、おかげさまで地域の皆様には好意的に応援をいただいており、こうした期待感を地域貢献・活性化につなげていくという思いを強く持ったところです。

■今後の展望についてお聞かせください。

Actibaseふくいは、観光サービスと町並み整備を通じて、「古き良き三国湊」の価値を高め、国内外へその情報を発信することで、観光客誘致とエリア内消費の促進を図ります。そのために、三国湊にお住まいの方々の現在の暮らしと、旅行者の皆様が求められる異日常との心地良い共存と感情的つながりを創出したい、さらには観光を起点として地域に喜ばれるかたちで地域課題解決への貢献をしていくことが、結果として国内外でリスペクトされる町としての三国湊エリアのブランド化につながり、地域の存続・発展への貢献につながるものと信じています。だからこそ、この地域の活性化に対して、私としては責任を持って、1つでも2つでも答えを出していくための取り組みを進めていきたいと思っています。

ア・ラ・カルト

■吉野建シェフプロデュースによるフレンチレストラン

「オーベルジュほまち 三國湊」のフレンチレストラン、「タテルヨシノ 三國湊」はフレンチの巨匠、吉野建シェフのプロデュースによるものです。「世界の期待を超える」ことをめざし、海産物を含め福井は最高の食材がそろうところであり、それを最高のかたちで提供するには世界で勝負してこられた吉野シェフにプロデュースをお願いしたいと考え提案したそうです。吉野シェフには実際に三国湊に来ていただき、ホテルやレストランの場所、当地の食材も確認していただいたとのことです。
町家をレストランに改修するにあたり、建物の損傷が激しく安全性の観点から、蔵を残して母屋を解体せざるを得ない状況で、一部の地元住民の方の心配の声が新聞で大きく報じられたとのこと。構造耐力の確保を前提に、かぐら建ての形状、建物の高さ、間口・屋根の形状等は解体前の建物を極力踏襲し、部材も可能な限り元のものを利用することを改めて地元住民や協議会等に説明し、ご理解をいただいたそうです(図4)。
また、料理・サービス・営業時間等に関して、プロフェッショナルな仕事が要求されていく中で、NTT側のメンバは専門用語が理解できなかったこともしばしばあったそうです。吉野シェフや実際の運営を行うコアグローバルマネジメント社が丁寧に説明してくれたこともあり、何とか議論についていくことができたそうです。
こうした苦労を乗り越えた結果、現在のところ評判は上々とのことです。もしかしたら、ミシュランへの登場も夢ではないかもしれませんね。

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