グループ企業探訪
DoCANVASを基盤にしたスマートマンションプラットフォームでステークホルダーの課題解決をめざす
NTTメディアサプライは集合住宅向けのインターネット接続サービスや店舗向けのWi-Fiサービスを提供している。競争が激しくなる中、新たに「スマートマンションプラットフォーム」で集合住宅のステークホルダーである入居者様・管理会社様・オーナー様の利便性向上や業務効率化をめざす。新規事業に至った事業環境や経営戦略について高橋寛社長に伺った。
NTTメディアサプライ 高橋寛社長
NTTグループの総合力とグループ会社の機動力を活かしてサービスを提供
設立の背景をお聞かせください。
NTTメディアサプライは、1985年にキャプテンシステムの画像の企画や制作を目的に、NTT中国メディアサプライというかたちで広島県に誕生し、1999年に現在のNTTメディアサプライに社名変更、2003年に本社を大阪に移転しました。現在はNTT西日本グループの一員として西日本エリアを中心に、マンション等集合住宅向けのインターネット接続サービスや店舗向けのWi-Fiサービスを提供しています。
事業概要について教えてください。
大きく2つの事業を行っています。1番目は集合住宅向けインターネット接続サービス「DoCANVAS」を中心とした、集合住宅トータルサポート事業です。DoCANVASでは、通常のインターネット利用のほか、スマートフォンやタブレットのトラフィックのオフロードとして使っていただくという目的でマンションの各部屋までを有線でつないで、部屋の中にWi-Fi環境を構築します。Wi-Fiのところまでを当社がレンタルで提供させていただいており、入居者様はスマートフォンやタブレットで使われるのが主流になってきています。基本的にはプロバイダをバンドルしたかたちで提供しているため、DoCANVASを利用していただくと、入居者様はお部屋に入ったらその日からWi-Fiを使える環境を提供しています。Wi-Fiだけでなくネットワークカメラや宅配ボックスといった利便性を向上させるためのサービスにも取り組んでいます。
2番目は店舗向けWi-Fiサービス「DoSPOT」を中心とした、地域社会活性化支援事業です。DoSPOTは、基本的には飲食店や理美容店向けのサービスで、お客さまが来店して、しばらく滞在されるような店舗の中でWi-Fiが使えるような環境を提供しています。Wi-Fiを提供するだけではなく、お客さまが使われたとき、いろいろなデータが蓄積されるので、そのログを分析してお客さまの動線の分析や、店舗向けの音楽配信サービス・コミック配信サービスといった付加サービスも提供しています。また、Wi-Fi整備に関しては自治体様からもお引き合いいただいており、地域の名前を冠したかたちにカスタマイズした、ご当地Wi-Fiの構築も行っています。DoSPOTの利用は通常では1日のうち15分を4回までという制限がありますが、災害が起こったエリアでは制限を解除するといったことも可能です。こういった災害時の対応という面からも自治体様からは評価いただいています。
貴社の強みについて教えてください。
まず、DoCANVASは約14万戸、DoSPOTは約4万アクセスポイントという多くのお客さまにご利用いただいており、それらの顧客基盤そのものが当社の強みとなっています。なかでもDoCANVASについては、2001年から集合住宅向けのインターネット接続サービスを提供させていただいており、競合他社に比べ提供実績が長く、サービスの販売・構築・運用ノウハウだけでなく、入居者様や管理会社様の業務・課題ノウハウも蓄積されています。実際、契約期間が6年以上と長期であることに加え、契約期間満了後も9割以上の方に継続してご利用いただいており、お客さまと強固な関係性を維持できています。当社としても末永くお付き合いいただくことによって、オーナー様や管理会社様が抱える課題をタイムリーにとらえることができ、その解決のお手伝いをさせていただく多くの機会に恵まれていますし、加えて、新たなサービスを生み出すことにもつながっています。
また、当社はNTT西日本グループの会社であり、他のグループ会社との連携により、包括的にお客さまへサービス、バリューを提供できるという強みを持っています。子会社ならではの機動力もあり、設立からさまざまな事業への取り組みを繰り返し今日に至っているように、私たちは80人というコンパクトな組織で小回りが利くことなど、いろいろ決めていく中でも、フラットな体制でスピード感を持ってやっており、リスクを考慮しながら、外部企業とのアライアンスやサービス提供を迅速に意思決定できる強みがあります。
そして、サービス提供に必要な要素、機能をNTT西日本のグループ総合力を活かして調達する仕組み、関係性を持っています。例えばDoCANVASに何か不具合が生じたときには、駆けつけ対応が必要な場合がありますが、これをNTT西日本グループのNTTフィールドテクノにお願いしています。NTTフィールドテクノは各地に技術者のいる拠点を持っているので、迅速な対応ができます。ほかには同じくNTT西日本グループのテルウェル西日本はビルやマンションのマネジメントサービスを提供しており、NTT西日本アセット・プランニングは不動産利活用事業を展開しています。このように、グループには当社にない強みを持っている会社があるので、それらをまとめて提供できることも当社の強みだと思っています。
ステークホルダーの課題を解決するスマートマンションプラットフォーム
事業環境や経営戦略についてお聞かせください。
集合住宅向けインターネット接続サービスの業界も競争が激しくなってきており、特にここ数年は料金競争の側面が強くなってきています。また、いったん契約されればチャーン(契約先変更)されることはあまりないので、ある意味安定はしており契約数そのものも少しずつ増えてきていますが、逆にこのままではこの先の大きな収益増も期待できません。
DoCANVASは集合住宅の入居者様向けのサービスではありますが、集合住宅オーナー様や管理会社様とも深い関係があり、この3者あるいは生活圏としての周辺の店舗等も含めてバリューを提供していくことで、ビジネスを拡大していこうと考えています。現在は入居者様向けにインターネット接続以外に、スマートロックやルームセキュリティ、ネットワークカメラ、宅配ボックスなど、集合住宅生活を便利にするサービスを提供させていただいていますが、それぞれのサービスは単体で機能する仕様になっています。これらのサービスやデバイスを追加・連携させ、さらにバリューを高めていくとともに、その対象をオーナー様や管理会社様等へ拡大できるよう、スマートマンションプラットフォームとして展開していきたいと考えています。
スマートマンションプラットフォームについてもう少し具体的にお聞きすることはできますか。
スマートマンションプラットフォームではまず、スマホのアプリを介してマンションの共用施設を予約する機能や、いろいろな問い合わせをする機能など、管理会社様と効率的にやり取りする機能を持たせたいと思っています。
また、入居者様が帰ってくると、本人認証をされて、物理的な鍵を使わずに自動的にドアが開く、入居者の方を特定して、その方に何か宅配物が届いていれば、サイネージに荷物が届いていますというようなことを表示するなど、これまでに提供しているデバイスやサービスを活用したシナリオ連携も考えています。そして、入居者様向けだけでなく、管理会社様の業務効率化などのサービスをつくっている会社とも連携して、管理会社様へバリューを提供するサービスを展開し、その先のオーナー様も視野に入れたサービス展開を図っていきたいと考えています。とにかく入居者様、管理会社様、オーナー様の3者すべて喜んでいただけるものをつくりたいので、自己満足にならないように、この3者に喜んでいただけるものは何かを見極めるのが、大きな事業課題だと思っています。
どのような戦略で展開していくのでしょうか。
すでに個別に提供させていただいているデバイスやサービスといった商品については手ごたえがあるので、入居者様向けにはその延長線でサービスを拡充していきたいと思っています。管理会社様やオーナー様までを対象に、いきなり大きなプラットフォームをつくってしまうと身動きが取れなくなってしまうので、徐々に拡大していくことになりますが、これも世の中にあるものをうまく活用し、なるべく早い段階で、サービスを提供させていただく予定です。スマートマンションプラットフォームとしての最初のサービスについては、可能な限り早く市場投入したいと思っています。当社には、すでにDoCANVASでお付き合いがある管理会社様、オーナー様がいらっしゃいますので、まずはASPで提供できるようなサービスを出させていただいて、その反応を見ながら拡張していくつもりです。
最後に社員へのメッセージをお願いします。
当社は創立以来30年以上にわたり、その時代、時代の変化に合わせ業容を変えて進化してきました。この時代や市場の変化に柔軟に対応できてきたのは、前向きに行動してくれる社員の皆様のおかげだと思っています。これからも皆で一緒になってNTTメディアサプライ社の新たな歴史を刻んでいきたいと思います。
当社は「夢をカタチに 未来をもっと近くに」というスローガンを掲げています。まさにこの気持ちを大切にし、皆で「夢」を語り合ってその夢の実現に向かって「挑戦」していきましょう。
担当者に聞く
強みに寄り添った継続性のある新サービスの開発
取締役 企画部長 三宅 正明さん
企画部 新サービス企画グループ 佐々木 栄治さん
(左から)三宅正明さん、佐々木英治さん
業務内容を教えてください。
佐々木:当社はDoCANVASとDoSPOTの2つの事業を柱にしていますが、変化に呼応していく中で新たな事業の柱を確立し、収益基盤のさらなる安定化を図るために2017年に企画部の中に新サービス企画グループをプロジェクト的に組織化し、新しい取り組みを進めています。その中で、当社が持っているWi-Fiや無線系のアセット、集合住宅をベースとした顧客系のアセットに親和性の高いものを中心に、いろいろなものに取り組んできました。
例えばNTT研究所の超高臨場感通信技術を使った「Kirari! for Mobile」、これに関する特許の使用許諾を得て当社から販売できるようなスキームをつくって、ミュージシャンのCDと組み合わせて提供しました。また、お化け屋敷にIoT(Internet of Things)、ITを組み込んだ「スマート光お化け屋敷」では、来場者にバイタルを計測できる腕時計を着けていただいて、「びびり度」を数値化したり、コースを誘導するのにNTT研究所の「ぶるなび」という触覚デバイスを使って誘導してみたり、こういった新しい技術を使って何かできないか模索してきた経緯があります。いろいろな経験を経たうえで、現在は集合住宅の入居者様の利便性向上、管理会社様・オーナー様の業務効率化を実現するスマートマンションプラットフォームの開発に取り組んでいるところです。
スマートマンションプラットフォームに注力することになった理由を伺えますか。
三宅:新しいサービスをやろうとして、いろいろ試行錯誤してきましたが、単発で終わってしまい、事業の柱とするのに必要な継続性がなかなか難しいところがありました。そこで、もう一度私たちの強みとは何かを見直したときに、既存の事業の柱に寄り添い、元の幹のところからの延長にしたほうが良いのではないかという結論に達しました。
集合住宅向けのIT化の話の中でもよく耳にするのが、占有部といわれる入居者様の部屋の中のIT化です。スマートスピーカが脚光を浴びて、私たちもそこに少し興味を持って突き詰めてみましたが、単品が安価に発売されており、入居者様の興味やニーズへのマッチを考えると、サービスとして提供して毎月料金をいただくモデルで継続的に事業収益を上げるのは難しそうだというところに行き着きました。そこから、管理会社様の業務効率化のようなところにも目を向けて、マンションにかかわるすべての人にITで付加価値を提供できるような仕組みであればビジネスとして成立するのではないかと考えました。
佐々木:私たちはもともと入居者様への付加価値を向上することで、管理会社様に「マンションインターネットは空室対策になりますよ」「入居者様が魅力を感じられて、ほかの物件よりも多く入ってくれますよ」といったところを訴求してきました。その延長で、「宅配ボックスが入っている物件って選ばれやすいですよ」「ルームセキュリティやスマートロックが入っている物件は選ばれやすいですよ」という話もさせていただいていました。現在、当社が提供しているルームセキュリティ、スマートロックを利用していただくと、それぞれの制御用の機器を部屋の中に設置する必要があります。プラットフォームを整備することで、制御用機器も1つにしてしまえば、例えばルームセキュリティが扉の開閉を検知したら自動的に鍵が閉まるなどのシナリオも実現できるでしょう。そういう発想から、入居者様への付加価値向上をめざしたラインアップをそろえています。
また、管理会社様向けには、入居者様からの問合せ対応のためのチャットボットを提供したり、将来的には特定の問合せへの回答を自動で返す仕組みとか、さらには問合せをAI(人工知能)で分析をしたうえで回答を返すとか、そういったところまで進めていくと業務の効率化になります。ニーズのある機能はだいぶ見えてきたので、できるだけ早く有償トライアルを開始できるようなスケジュール感で進めています。
新しい事業を始めることへの不安感などはありませんでしたか。
佐々木:今はインターネット以外の商材も販売できる体制になってきていますが、長年集合住宅向けインターネット、公衆Wi-Fiの販売を中心に業務を行ってきた当社からすると、新しいことに踏み出すのは勇気が必要でした。そこで、現社長就任後間もなく、社長と社員5、6人ぐらいの対話会を全社員対象に行い、社長から、NTTメディアサプライの将来の発展に向けた課題感、その克服のためのビジョン、そして一緒になって頑張りましょうというメッセージを発してもらいました。それに対して、少人数ということもあり社員からはすごく活発に意見が出ました。その結果、本当に小さなことから、少しずつ前に進んでいくことができるようなマインドを醸成できたのかなと思っています。加えて、事業計画をつくるタイミングでも、常勤の3人の取締役から、事業の方向性は間違っていない、今年度はこんなことに取り組むといったことを、全社員を対象に説明会を開いて発信するようにしています。
したがって、こういった取り組みで新しいサービス、事業の柱をつくっていかなければいけないという課題感は共有できており、その実行のために社内の有志を集めて新しいビジネスを考えていく新規サービス創出ワーキングをつくり、活動してきました。それをさらにパワーアップしていくために、2017年7月に企画部の中に新サービス企画グループというかたちで組織化されました。こういった経緯もあり、この新組織が中心となって新サービスの企画を行っていますが、例えばお客さま訪問時にはDoCANVASの営業チームに協力いただくなど、全社一丸となって新サービス企画をしているような雰囲気が出来上がっています。
今後の展開について教えてください。
佐々木:入居者様向けの個別のサービス・デバイスの提供はすでに開始しており、これからはスマートマンションプラットフォームとしての有償トライアルを予定しています。当社のサービスをご利用いただいているお客さまの9割以上は、最低契約期間を過ぎても継続していただいており、長期にわたるお付き合いで信頼関係ができているので、有償トライアルの話になったときに一緒に協力して、「空室対策で本当に効果があるのか確かめてみませんか」というようなアプローチもしやすくなりますし、フィードバックをいただける関係もできています。
三宅:例をあげると、当社のマンション向けのサービスの1つに、マンションの施設案内などができるポータルサイトがあります。それに対して、実際にうまくこの機能を活かすには、マンションに住んでいる方々が施設を使ったときの利用額請求みたいな機能もつけてもらえるともっと良いという要望をもらい、そういう仕組みはどうすればできるか、その場合に必要な要件は何かを検討しています。
困っていることは何かを知るのは重要ですし、自分たちだけではなかなかそこに行き着けない部分もあるので、間口を広く情報収集して、スマートマンションプラットフォームの機能拡充を進めていきます。
NTTメディアサプライ ア・ラ・カルト
全社一体となっての動画作成
NTTメディアサプライでは1年に1回、全社でキックオフ(写真1)を行う際の余興としてベストテンと今年の1文字の発表、管理職も含めた全社員がダンスの動画を作成し披露しています。今年はすでに『U.S.A.』という曲をベースにダンスの撮影を始めているとのこと。この動画はキックオフの場を盛り上げるだけでなく、撮影で一体感の醸成や、お客さまにも喜んでいただくなど社内外から好評を得ているそうです。
写真1
イベントのない月は社長が幹事の「ゆるガヤ会」
毎年実施される忘年会やキックオフのほか、夏休みや正月明けなどには会議室で社員がいろいろ持ち寄って物産展などが開かれます(写真2)。それ以外に何も懇親会的イベントがない月は、社長が幹事となって、「ゆるガヤ会」という名前の飲み会が開催されます。場所のセッティングから精算、会計報告まですべてやるうえに、それが恒例になっているそうで、こういう部分も対話会の延長として一体感につながっているのでしょう。
写真2