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特集1 主役登場

地域の新たな価値創造に向けたNTT東日本の先端技術開発について

最先端AI技術と向き合うその使命感

柴田 高志
NTT東日本
先端テクノロジー部
スペシャリスト

私はAIと通信技術がこれからの世界を変える重要な技術になると確信し、「新しいサービスを開発することで地域社会を良くしていきたい」という想いからNTT東日本に入社しました。入社後は開発系業務を強く希望し、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連の業務に従事することができました。さらに、業務に携わる中でアプリケーション開発の基礎を身につけ、クラウド技術やIoT(Internet of Things)などの幅広い技術を習得してきました。
しばらくすると、ディープラーニングの登場により第三次AIブームが訪れ、NTT東日本もAI分野に注力し始めました。当時、私はAI分野に強い興味があり、ディープラーニングについてゼロから学び始めました。短期間でAI技術を習得するため、資格取得と実務経験の両面からAIに取り組み、AIエンジニアとしての道を歩み始めました。その中で、物体検知・セグメンテーション・音声認識などの多岐にわたる領域において、実績を積むことができました。
私自身のAI技術力が向上し、実績を積んでいく中で、世の中から見て自分の技術力がどの程度なのかと興味を持ちました。また、日々進歩する技術をアップデートしていくためには、トップエンジニアとの交流が必要と感じました。そこで、オープンコミュニティやさまざまなAIイベントに参加し、社外の技術者との交流を深め、回数を重ねることで、技術者としての自信をつけることができました。現在ではAIプロジェクトのテックリードとして、新しい技術の導入やプロジェクトマネジメント、AI開発・運用を推進しています。
私は近い将来、社内のコールセンタ業務の大部分について、生成AIが代行できる可能性を感じています。問合せの一次対応を生成AIへ代行させ、人間のオペレータはお客さまと心を通わせた応対や臨機応変な業務に注力する、そんな未来のコールセンタの実現に向けて研究開発に取り組んでいます。コールセンタ業務は暗黙知が多く言語化されていないため、言語化して形式知を蓄積していくことが、これからの生成AI時代において極めて重要になると考えています。
最近では、生成AI分野のRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)やファインチューニングの最先端技術を保有する海外スタートアップ企業と仕事をする機会がありました。そこでは、最先端技術にもかかわらず要望を出すと即日で対応し翌日には商用環境へリリースするという、海外スタートアップ企業の圧倒的な技術力の高さとスピード感に感銘を受けました。私たちも、今以上に技術力を向上させ、よりスピーディな開発ができる組織をめざしています。また、こうした組織を実現し、AIなどのデジタル技術を使いこなして新しいビジネスを創造していくためには、高度AI人材の育成も欠かせません。私は現在、人材のレベルに応じたAI社内研修を主催し、より実践的なAI開発経験の機会を提供することで、短期集中型の高度AI人材育成に取り組んでいます。そのために、私はAIのコンテストやハッカソンであるKaggle・SIGNATEなどに継続的に挑戦し、社外の技術者と人脈を広げ、相互に有益な関係を築くことで社外技術者の有する最新のノウハウを吸収しています。さらに、学んだことを会社の事業に活かすことができるよう、AI技術の研鑽を日々行うことで、AIエンジニアとして成長しています。これらの活動をとおして、自身と組織のAI技術を徹底的に磨き上げ、生成AIの新規ビジネス開拓に取り組んでいきます。
最後に、生成AI分野において、日本は世界と比較して大きく後れを取っているといわれており、日本企業が急速に生成AI分野へ注力を始めています。そのため、今後はグローバルに活躍できるAI人材やAIビジネスの拡大が求められています。私たちNTT東日本グループは、AI技術が今以上に進歩し新しいアプリケーションが花開いていく先を見据えて、地域の課題解決に向けたAIの社会実装に取り組んでいきます。また、人々の暮らしの中に生成AIを浸透させ、人間とAIが共創する社会の実現をめざしていきます。

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