グループ企業探訪
「Changing The Way You Work:企業の“働く”を変える」をスローガンに、「ビジネスイノベーションを通じた驚きと感動のCX提供」と「社会貢献」の両輪で実現
2020年の新型コロナウイルスによる感染拡大をきっかけとしてテレワーク導入が加速し、就労形態の1パターンとして定着してきました。コールセンタの世界では、自宅でコールセンタ業務を行う「在宅コールセンタ」が急増しています。NTTコム チェオでは2002年の会社設立当初から、テレワークを導入しており、全国各地の在宅オペレータを活用したOCNのテクニカルサポートから事業をスタートしています。その後、お客さまのニーズに呼応するかたちで、Microsoftサービス(Windows、M365等)のテクニカルサポートやその他のヘルプデスク、IT機器端末のLCM(ライフサイクルマネジメント)、さらにはサービスマイグレーションやアウトバウンドコール等のアップセルを含めたアウトソース受託といった一連のサービスフローに業務範囲を拡大しています。NTTコム チェオ 木全真吾社長に、スローガン「Changing The Way You Work:企業の“働く”を変える」で「ビジネスイノベーションを通じた驚きと感動のCX提供」と「社会貢献」の両輪を実現する姿勢を伺いました。
NTTコム チェオ
木全真吾社長
「コンタクトセンタ事業」「フィールドサービス事業」「BPO事業」の3領域で事業展開
■設立の背景と会社の概要について教えてください。
NTTコム チェオは、NTTコミュニケーションズ全額出資により、ICTアウトソーシングを事業の柱として、2002年11月に設立されました。
「Changing The Way You Work:企業の“働く”を変える」をスローガンに、従業員:約250名、パートナー社員:約350名、所属フリーランス(CAVA*等):約800名の多様な人材が多様な働き方を体現しながら業務を拡大・進化させ、幅広いBPO(Business Process Outsourcing)ソリューションを提供しています。
* CAVA:.com Advisor & Valuable Agent (在宅スタッフ)の略。
■どのような事業展開をしているのでしょうか。
NTTコム チェオは、主として「コンタクトセンタ事業」「フィールドサービス事業」「BPO(Business Process Outsourcing)事業」の3領域で事業展開しています(図1)。
「コンタクトセンタ事業」は、2002年の創業以来、全国各地のフリーランスとの業務委託により在宅でコンタクトセンタを行う仕組みを先駆的にスタートさせ、一般的なカスタマーサービスから高度な技術知識が必要なテクニカルサポートまで、お客さまのサービスや業務に関するさまざまなサポートについて、アップセル・クロスセル勧奨を含めて代行します。「拠点型」「お客さま拠点常駐型(インハウス)」「在宅型」など、業務の規模や条件に応じた最適なセンタ構築やマネジメントの提案を行います。それらを活かし、これまでインターネット接続サービスOCNのテクニカルサポートやMicrosoftのサービス(Windows、M365等)のテクニカルサポートのほか、モバイル端末サービスデスクなど、さまざまな分野においてサービスを提供しています。
「フィールドサービス事業」は、全国のIT専門スタッフが、お客さま指定の拠点を訪問しIT機器の設置・設定や保守、アプリケーション導入などの作業を行う訪問型サービスを提供しています。当社が全国一括で、スタッフをアサインし、複数拠点の同時対応、土・日・祝日や早朝、夜間の作業など、お客さまのさまざまなご要望にも柔軟に対応します。2003年からOCNテクニカルサポートセンタと連携してOCN訪問サポートを行ってきましたが、その後、無線基地局工事立会、温度センサ・スマートメータ取付け等、さまざまな業務を対象に事業展開しています。
「BPO事業」は、PC・タブレット・スマートフォンなどのIT機器端末のキッティング(導入時の設置・設定作業)や配送、資産管理、廃棄までのLCM(ライフサイクルマネジメント)や、サービス終了時のエンドユーザ対応(サービスマイグレーション)、各種社内ヘルプデスク代行業務など、広くBPO分野での実績を積み重ね、「BPOのプロ集団」として、さまざまなお客さまにきめ細かいソリューションを提案しています。
人材不足、スキル不足という社会課題解決のBPOソリューションを提供
■市場環境はどのような状況でしょうか。その中、どのような事業に注力されていますか。
CX(Customer Experience)・顧客接点という概念が広く意識されるようになり、その実現の場としてのコンタクトセンタの役割はますます重要なものとなってきています。その一方で少子高齢化などの影響もあり、世の中全体が人材不足の傾向にあり、特にコンタクトセンタをはじめ、スキルを要する業務の場合、この傾向がさらに顕著なものとなっています。そのうえ、諸物価高騰や人件費高騰といった環境の中、コスト削減要請は依然継続しています。
私たちのコンタクトセンタは、全国各地の在宅スタッフをICTにより組織化し、既存の拠点型センタと在宅スタッフを連携させたハイブリッド型のセンタとして、20年以上の実績があります。在宅スタッフは、多様な人材の多様な働き方を実現するテレワークモデルを先導し、就業上のさまざまな制約(育児・介護・居住地・通勤・時間)を抱えた方のライフスタイルに応じた柔軟な働き方を提供しています。このようなビジネスイノベーションをとおして、人材確保、オフィススペース削減によるコスト低減、地方活性化、ダイバシティ推進を実現しています。さらに、全国分散型のコンタクトセンタを構成しているため、CX・顧客接点という重要な課題に対して、BCP(Business Continuity Planning)による事業継承性確保という付加価値を提供しています。
(1) BCP対策に有効な災害に強い分散型コンタクトセンタ
近年、南海トラフ地震臨時情報が発表され、あらためて大規模地震発生のリスクの高まりとともに、BCP対策の重要性が注目されています。2011年3月の東日本大震災発生時には、当社仙台コアコンタクトセンタも被災しましたが、サポート業務を中断することなく、1時間後には応答率90%以上回復し、センタ拠点分散以上のBCP対策効果があることが実証された実績があります(図2)。
(2) IT機器の導入〜廃棄までワンストップでお預かりするLCMサービス
人手不足・スキル不足は、企業のシステム導入・セキュリティ対策・ヘルプデスク業務にも影響が出ています。私たちは、PCやスマートフォン等のIT機器端末の調達からキッティング、故障時交換などを行うLCMサービスを提供することで、お客さまのこうした課題へ対応しています(図3)。業務端末を一元的にアウトソースし、コスト最適化・社員稼働を本務に集中させたい大企業のお客さまから、IT導入やセキュリティ対策への課題認識と重要性は理解しているものの「本業務に追われ考える余裕がない」等、抜本的に取り組めるリソース・ノウハウがない中小企業のお客さまなど、さまざまな課題に対応しています。当社では、NTTコミュニケーションズの商材と組み合わせることで、従来型のLCMを発展させ、加えて個々の社員が端末利用時に発生する疑問・問題点に対して、煩わしい登録や操作が不要で直感的に利用できるDXポータル「ヘルプデスクDXツール セルフアシスト」を用意し、LCM全体のDX化にも取り組んでいます。
(3) ネットワークサービスの円滑な終了や乗り換えを実現するサービスマイグレーション支援
さらに、人手不足・スキル不足は企業で臨時的に発生する業務への対応も困難となります。最近、引き合いが急増しているのが、サービスマイグレーション支援事業です。NTT東日本・西日本やNTTコミュニケーションズをはじめとするNTTグループでは多くのネットワークサービスを提供していますが、新サービスのリリース時にその前身のサービスが終了することも多く、旧サービスを利用中のお客さまにサービス終了や後継サービスのご案内をする必要があります。サービスによっては何万社・何万人もの利用者に案内ハガキやメールを送ることもあります。今年度はNTTコミュニケーションズのネットワークサービスのマイグレーションを全体として管理統括する業務、「アップセルセンタ」を受託しています。アップセルセンタでは、サービス終了時期や利用者情報を基に、全利用者様にアプローチし、きめ細かく対応を行います。単なるマイグレーションに終わらず、アップセルをすることでお客さまの利便性をさらに向上させるとともに、顧客の流出を防ぎサービス収益の向上にも貢献しています。
■今後の展望についてお聞かせください。
社会情勢の変化やお客さまのニーズの多様化など、私たちを取り巻く環境は大きく変わりつつあります。社会に先駆けてテレワークを実践してきた企業として、時代に追いつかれることがないよう、企業や地域の皆様への新たな価値を生み出し、期待を超える「驚きと感動」のCXをお届けすることで幸せな世界を創っていきたいと思います。
また、当社が運用してきた在宅型コンタクトセンタは、地方での就業機会創出、柔軟な働き方の実現、人口減社会における労働力確保など、日本の社会が直面しているさまざまな課題の解決に貢献できる事業モデルです。社員や在宅スタッフの皆さんとともに、新しいチャレンジをし、さらに変革していきたいと思います。
■参考文献
(1) 総務省:“令和4 年通信利用動向調査”
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/230529_1.pdf
担当者に聞く
大企業の情報システム部門の責任担当者や社内ヘルプ部門からのテクニカル、プロフェッショナルな問合せ対応業務を実施する仙台コアコンタクトセンタ
仙台コアコンタクトセンタセンタ長
松岡 重樹さん
■どのような業務を行っているのでしょうか。
仙台コアコンタクトセンタで実施しているMicrosoft業務(M365)は、法人向けプレミアムサービスを対象としており、問合せ元が大企業の情報システム部門の責任担当者や社内ヘルプ部門からのテクニカルな問合せ対応業務を実施しています。
本業務は、お客さま社内で困っている事象・情報をトリガーに情報システム部門の担当者がテクニカルな内容を問い合わせしてくるため、問合せ内容からお客さまシステム環境を把握し何がネックになっているのかを推測し、検証環境を構築・確認したうえで解決策(回答)を用意し、1件の問合せに対して複数のやり取りを介し約10~15営業日を要してご回答しています。
Team Manager
長田 崇さん
Microsoft365契約者向けのテクニカルサポートチームのTM(チーム・マネージャー)に就いています。法人向けサービスということもあり、クライアント、ユーザいずれの要求水準も非常に高いのが特徴です。誤った案内をしてしまうと、ビジネス的なインパクトが大きくなるリスクがあるため、お客さまとの認識のすり合わせ・動作検証の徹底・最終回答時のクロスチェック実施など、緊張感を持って業務に取り組む必要があります。だからこそ、検証した想定動作を確認のうえでお客さまへ回答報告をする際はもちろんのこと、お客さまアンケートでの高い評価を獲得した際や、月・四半期・年ごとに設定したKPI(Key Performance Indicator)を達成したときの喜びはひとしおです。
Technical Lead
岩本 侑大さん
TL(テクニカル・リード)として、実際にお客さま対応を行うエンジニア担当からの対応相談を受け、お客さまに送付する回答内容のレビュー、チームのスコアや業務量のマネジメントを行っています。私のポジションはお客さまとの直接のコンタクトがないため、お客さまが何を求めているのかを把握することが難しく苦労する場面もあります。エンジニア担当からの相談内容から、お客さまの状況やお問い合わせいただいた背景を把握し、お客さまが真に求めている回答を、エンジニア担当を介して提供できるよう意識しています。
Quality Manager
安達 楓さん
QM(クオリティマネージャー)として、エンジニア担当の対応品質・アンケートスコアの維持・向上の施策を実施しています。クライアントから求められている高いKPIを達成するために、どのような施策を実施することがアンケートスコアの向上につながるのか、日々模索しながら改善・指導を続けています。各エンジニア担当との地道なコミュニケーション・フィードバックと並行して、品質に関するナレッジを日々更新して全体展開を行うなど、エンジニア個人にもチーム全体にも自身から積極的にアプローチすることを心掛けています。
■今後の展望について教えてください。
M365におけるコムチェオ担当業務は大規模な法人ユーザから来る高い難易度のプレミアム対応のみとなっています。こうした高難易度のテクニカルサポート業務を対応・解決するセクションとしての立ち位置をしっかり確立・維持し続けることでクライアントからの高い信頼を得ることになります。そのため、日々の業務を通じ人材・スキルの高度化を図り、今後さらに高いスキルが求められる法人向けテクニカルサポート業務を新たに開拓していくことにチャレンジしてまいります。
ア・ラ・カルト
■全国に広がる優秀なスタッフとCX向上の取り組み
コムチェオでは、約800名の在宅スタッフ・訪問スタッフが全国で活躍中です。スタッフの1人、新潟県佐渡市のAさん(写真1)はこの仕事を始めて5年目ですが、業務のかたわらボランティアとして高齢者の通院や買い物のサポートを行い地域社会にも貢献しながら充実した毎日を送っています。さまざまな制約があっても優秀な人材がキャリアを継続できるのがこの仕事の魅力。スタッフの多様な働き方を支えるため、スキルアップやメンタルケアについても基本的にオンラインで実施しています。旬なテーマを取り入れたり、理解度や臨場感を高める工夫を凝らしながらCX向上に向け取り組んでいます(写真2)。