2025年6月号
グループ企業探訪
科学者ニュートンの確固たる技術力、そして発明家エジソンの柔軟な発想を社名に託す、創立50周年超のシステムインテグレータ
NTTデータ ニューソンは、組込み開発を得意とする「日本アプリケーション株式会社」を前身とし、NTT DATAの技術力を駆使して、「アプリケーション開発」「IT基盤」「デジタルソリューション」の3軸で事業展開するシステムインテグレータです。2024年に創立50周年を迎え、その歴史を基盤にお客さまの“Best IT Partner”をめざす活動と、AI(人工知能)をはじめとする新技術を活かしたオファリング投入による新規のビジネス領域と新規のお客さま獲得、そのための人材育成に対する考えを上原智社長に伺いました。
NTTデータ ニューソン
上原智社長
組込み開発をベースに、NTT DATAの技術を活かし、「アプリケーション開発」「IT基盤」「デジタルソリューション」の3軸で事業展開
■設立の背景と会社の概要について教えてください。
NTTデータ ニューソンは、1974年2月21日に設立された「日本アプリケーション株式会社」を前身とし、その後ニューソン株式会社となり、2001年に富士ゼロックスと、さらに2005年にNTTデータとそれぞれ資本提携および業務提携を行い、業容を拡大してきました。2017年6月にNTTデータ先端技術の子会社としてNTT DATAの一員となり、社名も「NTTデータ ニューソン」に変更しました。そして、2024年2月には創立50周年を迎えました。社名にある「ニューソン:NEWSON」は、ニュートンとエジソンの名前を掛け合わせたもので、科学者ニュートンの確固たる技術力、そして発明家エジソンの柔軟な発想を信条に、1974年の設立以来、システムインテグレータとしてソフトウェアとハードウェアの融合を行っています。
当社は、"Best IT Partner"をビジョンとして掲げており、誇りを持ったプロ集団として挑戦を続け、お客さまの発展にこたえ、さらに社会のために新たな価値を創造するために努力を続けています。国内4拠点、587名(2025年4月現在)の社員の力により、業種や業態を問わず幅広い分野と最新テクノロジに対応し、お客さまに最適なソリューションを提供しています。
■どのような事業展開をしているのでしょうか。
当社は、得意領域の技術をベースとして、「アプリケーション開発」「IT基盤」「デジタルソリューション」の3つを事業の主軸に置いています(図1、2)。
「アプリケーション開発」では、豊富な開発経験や蓄積されたノウハウに裏打ちされたソフトウェアエンジニアリング力およびプロジェクトマネジメント力により、金融、製造、流通などの多種多様なビジネス分野のお客さまのニーズに即し、Web系、オープン系、モバイル系などのさまざまな業務アプリケーションを開発・構築します。また、高品質な業務アプケーションの基礎となるアプリケーション基盤の設計から構築を得意としており、そのために必要なアーキテクチャ設計、フレームワーク選定、開発標準プロセスやツールの導入支援なども行っています。
「IT基盤」では、「クラウドインテグレーション」「ミドルウェア基盤」「運用管理」の3つを主軸に置き、お客さまの業務を支援しています。
近年のDX(デジタルトランスフォーメーション)化やクラウドの進展により、クラウドネイティブ技術の活用が進む中、当社ではパブリッククラウドを中心とした基盤構築や運用改善を支援する「クラウドインテグレーション」を提供しています。また、IoT(Internet of Things)やDXで活用される大量データの処理に向けたOSSベースの「ミドルウェア基盤」構築支援も行っています。さらに、運用自動化やセキュリティ対策を含む「ITシステム運用管理」により、お客さまのDX推進を総合的に支援します。
「デジタルソリューション」では、「アジャイル」「モビリティソフトウェア開発」「ビッグデータ」の3つの領域でお客さまのビジネスの成長を支援しています。
「モビリティソフトウェア開発」では、車載制御やADASなどの先進領域で豊富な実績を持ち、Automotive SPICE準拠の開発プロセス導入も支援します。また、変化の激しい市場に対応する「アジャイル」開発を専門組織と認定資格者によって支援し、迅速な価値提供を実現します。さらに「ビッグデータ」領域では、TableauやSnowflake、Databricksなどを活用し、データ基盤構築から分析・可視化までを一貫して提供します。
AI技術を新たな技術の柱として、顧客課題、その先の社会課題を解決することで、お客さまの真のパートナーとして伴走をめざす
■市場環境はどのような状況でしょうか。その中、どのような事業に注力されていますか。
国内IT市場におけるユーザ企業の投資意欲は高いレベルを維持しており、当社を含むNTT DATAにとって追い風となっています。さらに、生成AIの登場により、これまで適用領域が限られていたAI技術のビジネス活用が大きく進むことが期待されており、技術を武器とする当社にとって大きなビジネスチャンスとなるととらえています。
NTTデータ ニューソンは、NTT DATAの中でも組込みソフトウェアから最新技術を使った業務アプリケーションまで幅広く対応できるという特長を持ち、それを強みとしている会社です。当社はこれまで半世紀以上にわたり、その技術力を武器にお客さまの課題を解決し、単なるベンダではなく、ITパートナーとなるべく努力してきました。今後は新技術への対応力をさらに強化し、お客さまが直面している課題のさらにその先を見据えた提案ができるコンサルティング力を高めることで、長期的なパートナーシップを拡大し、市場の成長を上回る持続的成長を実現したいと考えています。
こうした中、今後の普及・展開が期待される、①次世代モビリティ開発、②生成AIに注力していきます。
経済産業省と国土交通省は、2030年、SDV(Software Defined Vehicle)日系シェア3割を目標とするロードマップを含む「モビリティDX戦略」を2024年4月に発表しました。通信機能を持つ自動車の普及が進み、これまでOTA(Over the Air)によるアップデートが可能であったインフォテイメント系などに加え、制御系などの車載ソフトウェアもOTAによるアップデートが可能となってきています。急速に高性能化、高機能化する自動車(SDV)に搭載される車載ソフトウェアは、ハードウェアとソフトウェアの分離が進む中で、より複雑さが増しており、2030年のロードマップに向けてSDV国際競争力維持のためにも開発スピードを高める必要があります。
「次世代モビリティ開発」は、SDV開発・モビリティサービス開発・データ利活用領域がそれぞれ必要となりますが、SDV開発には組込み開発技術、モビリティサービス開発にはアジャイルでの開発技術(アジャイルタレントプール)、データ利活用にはビッグデータのプロフェッショナル(長年のノウハウの蓄積・Tableau/Snowflake/Databricksなど)といった、当社が得意とする領域です。こうした技術力をNTT DATAと連携して活用し、今後のモビリティ分野におけるDXを共に推進していく一員となるべく、日々技術力の向上に努めています。
「生成AI」のビジネスにおける利用ケースは2パターンあります。顧客変革と開発者変革です。顧客変革は、例えばエンドユーザが利用しているアプリにおいて入力を補助するなど、顧客側の体験の変革を指します。一方で開発者変革は、ソフトウェア開発において、AIの力を用いてより高度な開発を実現することを指しています。
当社には30名程度のAI開発者が在籍しており、さまざまな業界からの引き合いに応じたいろいろな案件に対応しており、事業領域の3つの軸の中で、AIに関する取り組みを強化していきます。
■今後の展望についてお聞かせください。
NTTデータ ニューソンはこれまでも中期経営計画(中計)を策定してきていますが、2025年は2027年までの新中計がスタートします。
新中計では、これまでに蓄積してきた技術と実績を最大限に活かして従来ビジネスを拡大すると同時に、AIをはじめとする新技術を活かしたオファリングを投入し、新規のビジネス領域と新規のお客さま獲得に積極的にチャレンジしていきます。
それに向けて、なくてはならないのはビジネスを支える人材の確保ですが、IT業界全体で人手不足と売り手市場が続いており、当社にとっても厳しい状況が続いています。新中計では、新卒・経験者共に採用を強化するとともに、社員の自律的な成長に向けた新たなキャリアモデル制度をスタートさせ、社内にとどまらず、市場でも高く評価される人材の創出と定着率の向上を図ります。さらに働き方改革、労働環境の改善にもより積極的に取り組むことで社員のQoL(Quality of Life)を向上し、人と会社が共に成長し、発展する姿を追求していきます。
担当者に聞く
セキュリティに配意した生成AIアクセス環境を整備し、PoCによる知見を集約してお客さまにサービスを展開
AIビジネス推進室
長谷川 貴士さん
■担当されている業務について教えてください。
AIビジネス推進室でAIビジネスの方向性検討、R&D活動を行っています。
AIビジネスに関しては、生成AIに関する導入事例も増えています。その内容を調査・分析し、社員の業務効率の向上とAIリテラシの向上をめざして、社内向けにセミナーの開催などを行っています。また、ChatGPTなどは社内OA環境からは直接アクセスできない場合があるほか、機密情報の扱いに関する懸念もあるため、社内OA環境からアクセス可能なAIチャット環境を構築しています。
さらに、お客さま向けには「行政の生成AI利活用」の開発案件など、高度な案件にNTTデータ、NTTデータ先端技術と共に参画しています。このほか、NTT研究所が開発したLLM(Large Language Model)「tsuzumi」の精度向上や評価、AIエージェントツールの評価といった要素技術のR&Dに近い案件から、バックオフィス業務への適用トライアルのような実際のユースケースを検討・実装する案件まで、幅広く対応しています。
生成AIを活用し ていくうえで、事実に基づかない情報を生成するハルシネーション、AIスキルを持つ人材の確保、生成AI活用に関する知見の集約、ユースケースの開拓とビジネスへの展開といった課題があります。また、生成AIをビジネスの中で活用していく際には、その出力に揺らぎがあるため、100%の精度を前提に業務を代替するのは現時点では困難です。これらの課題に対しては、実践をとおしたPoC(Proof of Concept)等による検証が不可欠です。その中で、単に精度を求めるのではなく、お客さまと共に「どのような品質が必要なのか」「どの程度の自動化が実用的か」といった視点で議論を深めながら、ケースごとに最適な活用のあり方を見極めるとともに、それを知見として集約していくことで対応していきます。また、将来的に社外向けに生成AIソリューションを提供していくために、まずは社内でノウハウの蓄積をし、今後につなげていくつもりです。
■今後の展望について教えてください。
NTT DATA全体の知見を活用することで、ただつくるだけではなく、セキュリティやガバナンスといった重要な品質基準を満たす「ものづくり」を提供していきます。
ア・ラ・カルト
■札幌に拠点開設、さらに本社移転も
2025年6月、北海道・札幌に新たなオフィスが開設されます。NTTデータ ニューソンにとって、北海道は、東海・関西・九州に続く地域拠点であり、地域の優秀な人財の採用・育成を目的に立ち上げたそうです。
札幌拠点は、NTT DATA各社と連携を図りながら、SDV(Software Defined Vehicle)開発の中核となる拠点として、ダイバーシティ&インクルージョンを重視した事業展開を進めていくとのことです。
地元とのつながりを大切にしながら、従業員のエンゲージメントが高い拠点をめざして、これからのモビリティ社会を支える仲間と一緒に、札幌の地で新たな一歩を踏み出す意気込みが伝わってきます。
さらに、2025年12月には本社の移転も予定されており、NTTデータ ニューソンの勢いはますます増していくことでしょう。
