2026年6月号
グループ企業探訪
信頼の伴走者として企業の進化を支え抜く――NTTドコモビジネスXが描くデジタライゼーションの姿

2012年の設立以来、デジタルマーケティングを軸に事業を拡大してきたNTTドコモビジネスX(旧:NTTコム オンライン)は、2026年1月にDX(デジタルトランスフォーメーション)とCX(顧客体験)の実現支援を自らの提供価値として再定義し社名を改めました。現在は、3本の事業を柱に展開し、これらを横断するプラットフォーム「NTT CPaaS」を通じ、認知症介護向けAI(人工知能)電話サービスへの技術提供など社会課題解決にも取り組んでいます。生成AIを全事業に組み込む一方、AIに代替されない「信頼の伴走者」を差別化の軸に据え、企業や公共セクター等顧客におけるデジタルフロントエンドのオンリーワンプロバイダをめざしています。今回、稲葉秀司社長に、事業の方向性や最新の取り組み、今後の展望について伺いました。
NTTドコモビジネスX
稲葉秀司社長
社名にXを冠してDXとCXの実現を支援する企業へと進化する
■設立の背景と会社の概要について教えてください。
NTTドコモビジネスXはインターネットを活用したデジタルマーケティングやオンラインリサーチなどの領域で専門性を高めることを目的に、NTTナビスペースを母体として、NTTコミュニケーションズ(マーケティングソリューション推進室)、デジタルフォレスト、NTTレゾナント(リサーチ部門)の4社4組織を統合するかたちで、2012年10月に「NTTコムオンライン・マーケティング・ソリューション」として設立されました。
設立以来、デジタルマーケティングを軸に事業を拡張してきた当社は現在、「CX/デジタルマーケティング事業」「コミュニケーションサービス事業」「データ活用ソリューション事業」の3本柱で事業を展開しています。
そして2026年1月、NTTドコモグループ内で法人事業を担うNTTドコモビジネスグループの一員として、データ活用と最適なテクノロジの導入によるDX(デジタルトランスフォーメーション)と、それらを通じたより良いCX(顧客体験)の実現を支援することを、自らの提供価値として再定義しました。
その象徴として、共通する文字であるX(エックス)を社名に取り入れ、現在の「NTTドコモビジネスX」へと社名を変更しました。このXには事業の核となる「DX」と「CX」、そして両者に対する「無限の挑戦」という3つの意味が込められており、併せて新ブランドメッセージ「DIGITALIZE TO REALIZE by CX/DX」を策定しました。
3事業とNTT CPaaSを掛け合わせ顧客接点全体を最適化する
■どのような事業展開をしているのでしょうか。
当社が展開する3つの事業領域はいずれも、力強い成長トレンドの只中にあります。まず、CX/デジタルマーケティング事業領域では、2025年の日本の総広告費は前年比105.1%の8兆623億円となり、4年連続で過去最高を更新しました(電通調べ)。中でも動画・SNS広告の伸長を背景にインターネット広告費が4兆円を突破し、初めて総広告費の過半数(50.2%)を占めました。次に、コミュニケーションサービス事業領域において、国内法人向けSMS送信市場は2024年度に対前年比115%の市場成長率を記録し、2025年度も同等以上の成長が見込まれています(ミック経済研調べ)。二要素認証や業務連絡での活用が堅調な一方、企業におけるCX向上への取り組みが強化されていることを背景に、SMSにとどまらず音声・チャット・Eメールなど複数チャネルを横断するオムニチャネルコミュニケーションへの期待も高まっています。さらに、データ活用ソリューション事業領域において、国内のアナリティクス/BI(Business Intelligence)プラットフォーム市場は、2025年に対前年比117.5%の市場成長率を記録しています(Gartner調べ)。
こうした市場環境の中、当社が特に重要視しているのが生成AI(人工知能)です。いずれの事業領域においても生成AIの波は大きく、当社としてはすべての事業においてAIを活用したソリューションを提供するとともに、AIに代替できない価値の提供として「信頼の伴走者」を極めていきます。
CX/デジタルマーケティング事業では、最適なマーケティング・テクノロジの導入とデータドリブン・マーケティングによるカスタマエクスペリエンスの向上を図り、企業と顧客の「絆(エンゲージメント)」の創出や売上向上につながるマーケティングソリューションを提供しています(図1)。コミュニケーションサービス事業では、企業と顧客との迅速かつ円滑なコミュニケーションチャネルとして、SMSを中心としたメッセージサービスを提供しています(図2)。なお、国内シェアNo.1を10年連続で獲得するSMS送信サービス「空電プッシュ」はその代表的なプロダクトです。ITR社調べによると売上金額ベースでは2015~2024年度に10年連続1位であり、金融業(49.3%)・通信業(25.4%)においても10年連続でシェアトップに立っています。データ活用ソリューション事業では、Cloud Software Group社との提携により、あらゆるデータの収集・統合・管理から解析・可視化・予測・検知まで、データ活用のすべてをワンプラットフォームで実現するサービスを展開しています(図3)。
そして、これら3本の柱事業を横串するかたちで、API(Application Programming Interface)/SDK(Software Development Kit)ベースのオムニチャネルソリューションである「NTT CPaaS」を2025年1月にリリースしました。



生成AIとオムニチャネルを組み合わせ、認知症介護家族を支援する
■最近のホットなテーマについて教えてください。
生成AIの活用がもっともホットなテーマです。
具体的な取り組みの一例として、株式会社オノゴロが提供する認知症患者/家族向けAI電話サービス「DELNE(デルネ)(1)」へのNTT CPaaSのVoice API提供が挙げられます(図4)。認知症の方を介護する家族は昼夜を問わずひっきりなしにかかってくる電話への対応に追われ、夜中も十分に休息が取れないという深刻な悩みを抱えていることが少なくありません。DELNEはそうした電話をAIが自動応答することで介護家族の負担を軽減するサービスです。
当社のNTT CPaaSが担うのは音声応答(Voice)にとどまりません。通話内容をSMSやメールで介護家族へ共有するといったオムニチャネルの活用も実施されています。介護家族という社会的に孤立しやすい人々の課題解決に直結するこの事例は、当社が掲げる「信頼の伴走者」という姿勢を体現するものです。

■今後の展望についてお聞かせください。
私たちがめざす方向性は一貫しています。「CX/デジタルマーケティング」「コミュニケーションサービス」「データ活用ソリューション」の3分野に「NTT CPaaS」を掛け合わせ、エッジの効いたソリューションを提供することで、企業や公共セクター等顧客の「デジタルフロントエンド」におけるオンリーワンプロバイダになることです。その実現を通じて社会や人のコミュニケーションをより豊かにしていきます。
また、NTTグループ各社との連携もさらに深めていき、グループ各社のサービスに当社が提供する各種ソリューションやファンクションを組み込んでいただければ幸いです。
■参考文献
(1) https://lp.delne.jp/
担当者に聞く
グローバル基準のプロダクトを「日本品質」へ昇華させる
CXソリューション部
矢代 冬音さん

■担当されている業務についてお聞かせください。
私は現在、次世代コミュニケーションプラットフォーム「NTT CPaaS」のプロダクトマネジメント(PM)を担当しています。具体的には、個別のコミュニケーションチャネルの1つである「メール」の機能開発と、他チャネルも含めたプラットフォーム全体の戦略立案・統括を担っています。
NTT CPaaSの最大の強みは、各チャネルのプロフェッショナルが結集し、常に最新のアップデートを反映させることで「ケイパビリティの最大化」を図っている点にあります。また、グローバル市場で実績のあるInfobip社のOEMプロダクトをベースにしながら、日本国内向けへの最適化(ローカライズ)に徹底している点も大きな特長です。
海外プロダクトにありがちな「エンドユーザが致命的に困っていなければ改修不要」という割り切ったスタンスに対し、私たちは日本のユーザが求めるきめ細やかなケアや使い勝手の良さも追求しています。Infobip社と定期的なミーティングを重ねることで日本独自の要望をダイレクトに伝え、品質改善やドキュメントの最適化(単なる翻訳ではなく、日本の開発者が理解しやすい内容への書き換え)を自ら行うことで、Twilioなどの海外競合にはない「日本企業に寄り添ったプロダクト」を実現しています。
■今後の展開についてもお聞かせください。
NTT CPaaSはお客さまの業務システムの中核にAPIとして組み込まれるため、一度導入されると日常業務に深く浸透し、非常に高い信頼関係が築かれています。よって私たちの営業活動はこのプラットフォームの単なる物売りではなく、顧客のコミュニケーションフロー全体を最適化するコンサルティング的なアプローチが求められ、経営戦略にも掲げる「アカウント営業」と親和性が非常に高いビジネスと考えています。
今後は、RCS(Rich Communication Services)やWebRTC(Real-Time Communication)といった市場ニーズの高いチャネルの拡充を急ぐとともに、企業とユーザを円滑につなぐハブとして「コミュニケーションフロー全体のプロフェッショナル」のポジションを確立していくことをめざしています。PMとして経験豊富な社内メンバと対等に渡り合うためには、APIドキュメントを読み込み自ら手を動かして確信を得る「仕組みの完全理解」が欠かせません。年次や役職に関係なく既存の制約に屈せず、顧客の要望をかたちにするために積極的にトライし続けること――この「攻めの姿勢」こそがドコモビジネスXのPMの醍醐味であり、私がもっとも大切にしているプロフェッショナルとしてのプライドです。
国内最大級の基盤をAWSへ全面刷新
開発部 マネージャー
田川 幸仁さん

■担当されている業務についてお聞かせください。
私は現在、開発部のチームリーダーとして、国内シェアNo.1を10年連続で獲得しているSMS送信基盤「空電プッシュ」を担当しており、当該プロダクトの次世代化プロジェクトを牽引しています。このプロジェクトは、従来のオンプレミス環境からAWSへのクラウドネイティブ移行を目的としており、エンジニアと営業が一体となった総勢30名の大規模なクロスファンクショナルチームで推進されています。
本プロジェクトの大きな転換点となったのは、徹底したコストシミュレーションです。市場からの価格競争力強化への要請に対し、運用原価を「半分(50%削減)」にするという大胆な試算を提示したことで、経営層から迅速な実施判断を引き出すことができました。
一方、技術的な道のりは平坦ではありませんでした。当初チーム内では「24時間稼働し続ける大規模サービスを、一切停止させずにクラウドへ移行することは物理的に不可能だ」という声が大勢を占めていました。それでも諦めず、粘り強くアイデアを出し合い、数々の技術的障壁を1つひとつクリアすることで、この難題を突破することができました。
私たちの最大の強みは、社員自らが手を動かす「完全内製開発」にあります。全員がシステムの内部構造を隅々まで熟知しているため、万が一のトラブル時も個人のスキルに依存しない「組織としての深い知見(勘所)」に基づいた迅速な状況判断と復旧が可能です。クラウド化という手段の先に、常にお客さまへ高品質なサービスを提供し続けるという真のゴールを見据え、日々開発に取り組んでいます。
■今後の展開についてもお聞かせください。
今後は、今回構築した堅牢な新基盤を「NTT CPaaS」の強力なエンジンとして明確に位置付け、SMSだけでなくメール、ボイス、アプリ通知といった多種多様なコミュニケーションチャネル、さらには生成AIをはじめとする最新技術とのシームレスな統合を加速させていく予定です。
SMSというサービスは非常に奥が深く、この業務に携わって10年目になりますが、いまだに日々新たな発見があります。携帯キャリアごとに異なる接続仕様や毎年行われる細かなアップデートなど、常に最新の動向をキャッチアップし続ける必要があります。この「常に勉強し続けなければ追いつけない」という環境こそが、技術者としての私にとって大きな刺激であり、楽しさの源泉となっています。
今後は生成AIなどを活用した開発工程の高度化や、AIO(AI検索最適化)時代に対応したデータ処理能力の強化にも積極的に挑戦していきたいと考えています。変化の激しい市場環境を楽しみながら、常に「お客さまに選ばれ続ける圧倒的なコストパフォーマンスと信頼性」を追求し、ドコモビジネスXを象徴する次世代プラットフォームへと成長させていくことが私の使命です。
ア・ラ・カルト
■受け継がれる「サービス愛」とAllHandsでの栄冠
NTTドコモビジネスXが誇る最大の資産は、メンバ1人ひとりが抱く「異常なまでのサービス愛」とのことです。この文化の源泉は、「お客さまの通信を何としてでも守り抜く」という強烈な愛と、24時間365日サービスを止めないという覚悟にあるようです。その熱量はチーム全体に深く浸透しており、単なる業務知識を超えたプロフェッショナルとしてのプライドを醸成し、困難なプロジェクトにおいてもメンバを突き動かす原動力となっているとのことです。
この組織文化が最高潮に達したのが、2025年12月に開催された全社イベント「AllHands」でした(写真)。これは、その年の優れた施策を全社員の前でプレゼンし、社員投票で「ベスト6Value賞」を決定する、同社でもっとも注目される場だといえます。開発チームは、技術的な難易度の高さだけでなく、その技術がいかにお客さまのニーズにこたえているかを熱弁し、多くの社員からの投票を集めた結果、最優秀賞を受賞したとのことです。受賞後には部署の垣根を越えて多くのコメントや相談が寄せられ、技術者としての喜びを全社で分かち合えたことは、チームにとって大きな自信となったようです。
なお、このプレゼンテーションではAIを使って資料と音声の両方を作成するという、歴代AllHands史上、初めての試みだったとのこと。こうした強い結束力と尽きることのない好奇心を武器に、世の中のコミュニケーションをより良く変えていく挑戦はこれからも続いていくことでしょう。

