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2026年10月号

トップインタビュー

街に住む人、働く人、訪れる人が豊かさや便利さを実感できる街づくりを実現していきたい

「あなたと、まちと、みらいをつなぐ。」を掲げ、ICT、不動産、エネルギー、環境技術を融合した街づくりを推進するNTTアーバンソリューションズグループ。社会課題の解決や地域価値の向上へつなげる街づくりを全国で展開しています。発足8年目を迎え、NTTグループに深く縁のある日比谷での「NTT日比谷タワー」の開発と“「光の街」づくりpowered by IOWN”、これまでに手掛けてきた全国各地での不動産開発・設計・管理・運営など、池田康NTTアーバンソリューションズ代表取締役社長に、NTTグループが街づくりにかかわる意義と今後の展望について伺いました。

NTTアーバンソリューションズ
代表取締役社長 社長執行役員
池田 康

PROFILE

1986年日本電信電話株式会社に入社。2013年NTT総務部門 担当部長、2015年NTT西日本取締役、2022年NTTアーバンソリューションズ代表取締役副社長、2024年よりNTT都市開発代表取締役社長、2025年6月より現職。

地域に寄り添い、技術と地域、人と街、現在と未来をつなぐ

会社発足8年目となりました。改めてNTTアーバンソリューションズグループについてご紹介ください。

NTTアーバンソリューションズは、NTTグループの不動産・建築事業を担う中間持株会社として設立されました。もともとNTTグループには、不動産開発を推進してきたNTT都市開発と、建物や設備の設計・建設・維持管理を手掛けてきたNTTファシリティーズがありました。その2社を両輪として、NTTグループが持つICT、不動産、エネルギー・環境技術などのリソースを活かし、地域社会の課題解決と街の価値向上に取り組んでいくという考えのもと2019年に発足、その後2021年に街づくりに関するコンサルティングなどを行うNTTアーバンソリューションズ総合研究所、建物の管理・運営を担うNTTアーバンバリューサポートを加え、現状の5社体制になりました。
発足から8年目を迎えた現在は、全国各地での不動産開発・設計・管理・運営はもちろん、2025年の大阪・関西万博でのAIレコメンドアプリ(Personal Agent)の開発、データセンタエンジニアリング分野での事業拡大、省エネ建築の価値を新しい尺度で評価するNEBs(Non-Energy Benefits)の開発など、不動産の枠を超えた取り組みも進めています。また、脱炭素社会の実現に向けた取り組みも積極的に推進しており、2026年3月時点で、国内外の全保有物件(273物件)において、使用電力の実質再生可能エネルギー100%化を達成しました。

NTTアーバンソリューションズグループがこれまで取り組んできた街づくりについて教えてください。

NTTグループの不動産・建築事業は、電話局を中心としたグループ資産の建築・管理から始まり、民営化後には、オフィスビル開発を中心とした土地の利活用などに広がりました。NTTアーバンソリューションズグループではこれまで、オフィス、住宅、ホテル、商業施設、文化・公共施設、教育・研究施設、データセンタなど多彩なアセットにおいて事業を展開しています。その中で常に大切にしてきたのが「NTTらしい」街づくりです。
例えば、旧NTT仙台中央ビル跡地に2024年に開業した「アーバンネット仙台中央ビル」は、NTTグループ、仙台市、東北大学との連携により実現した象徴的なプロジェクトです。共創・賑わい拠点「YUI NOS」を配置し、NTT東日本の「スマートイノベーションラボ」や仙台市の「仙台スタートアップスタジオ」等とも連携するなど、多様な人材の交流や共創を促進しています。
また、NTT西日本本社跡地に開発した「パティーナ大阪」および⼤阪市初のPark-PFI 事業として進めた「難波宮跡公園・なノにわ」も代表的な事例です。2025年の大阪・関西万博の開幕に合わせ、国際競争⼒強化に資するホテルを誘致し、大阪の東西軸における賑わいの創出に寄与しました。「パティーナ大阪」は今年7月「World's Best Awards 2026」において日本のホテルとして初めて世界ベストホテル第1位に選ばれています。
ほかにも、宮崎市で2025年に開業した「HAROW」は、宮崎駅前と中心繁華街の中間に位置するNTT西日本宮崎支店敷地を活用し、低下していた中心市街地の回遊性と日常的な賑わいを高めた事例です。グループCREを活用し、投資を抑えながらコンテナ商業施設とリノベーションオフィスを整備した事例であり、地域からも高い評価を得ています。
NTTアーバンソリューションズグループは、全国各地さらには海外でも事業を展開しており、それぞれの地域が育んできた歴史や文化を活かしながら、地域に寄り添った課題解決や価値創造に取り組んでいます。私たちが取り組む街づくりは、技術と地域、人と街、現在と未来をつなぐことに価値があると考えています。

昨年末にNTT日比谷タワーについて記者会見されました。日比谷一帯の開発には注目が集まっていますね。

NTT日比谷タワーは、NTTグループにとって特別な意味を持つプロジェクトです。この地にはかつて電電公社やNTTの本社があり、旧NTTコミュニケーションズの本社もありました。まさにNTTグループの歴史が刻まれた場所であり、私たちにとって非常に思い入れの深い場所です。
だからこそ、この再開発で「NTTを象徴するビル」を実現したいと考えました。その中核となるテーマが「Powered by IOWN」です。2025年12月にNTT島田社長とともに登壇した記者会見では、“「光の街」づくりpowered by IOWN”というコンセプトを掲げ、IOWNをはじめとするNTTグループの最先端技術を結集した街づくりの概要を発表しました。
IOWNやAIなどの先進技術を活用し、グローバルな共創を支える新たなビジネス環境や、リアルとバーチャルが融合した次世代のライフスタイル・エンタテインメントを創出します。併せて、建物仕様の設計工夫に加え、光電融合デバイスの活用による圧倒的な“超・低消費電力化”やAIによるエネルギー最適化により、省エネと快適性を両立し、持続可能な社会の実現をめざします。こうした取り組みを通じて、NTTグループの技術力と未来の街づくりを体感できる都市空間を創出していきます。
一方で、未来ばかりを見ているわけではありません。歴史の継承も重要なテーマであり、旧日比谷ビルの象徴であった泰山タイルを保存し、NTT日比谷タワーの内装の一部に活用する計画を進めています。過去から未来への連続性を大切にしたいと考えています。
NTT日比谷タワーから得られる経験や知見は、今後の街づくりとデジタルの融合、環境配慮、人に優しい都市空間の実現など、NTTグループがめざす未来の街づくりに大いに活かすことができると考えています。

本当に大切なのは相手に関心を持ち、その人の考えや思いを引き出すこと

NTTにおける池田社長のこれまでの歩みとそこから得たご教訓をお聞かせいただけますか。

私は1986年、NTTが民営化された翌年に入社しました。当時は通信業界そのものが大きく変化しようとしていた時代で、「新しいことができる会社」という期待を持ってNTTを選びました。また、もともと私は前面に出て目立つ仕事よりも、見えないところで人と人とのつながりや社会を支える仕事に魅力を感じていたこともあり、通信という社会インフラを担うNTTに強く惹かれたことを覚えています。
ところが、入社後に携わったのは通信そのものではなく、人事・労務の分野を中心に、「人」にかかわる仕事を長年にわたり担当してきました。NTTグループには非常に多くの社員がいますが、人事や労務の仕事は、制度をつくること以上に、人と人との信頼関係を築く仕事だったように思います。
さまざまなことを学びましたが、もっとも大きな教訓は、「自分1人でできることには限界がある」ということです。会社も組織も、多くの人の力が集まることで初めて成果を生み出せます。だからこそ、周囲への感謝を忘れないこと、そして一緒に働く人たちが前向きな気持ちで仕事ができる環境をつくることが重要だと考えています。
そのために私は相手の話を聞くことを大切にしています。人は往々にして自分のことを話したいものですが、本当に大切なのは相手に関心を持ち、その人の考えや思いを引き出すことだと思うのです。社員1人ひとりを理解し、やりがいや誇りを持って働ける環境を整えることが、トップとしての役割ではないでしょうか。
座右の銘としてよくお話しするのが、「他人と過去は変えられない。自分と未来は変えられる」という言葉です。また、「楽観は意志で、悲観は気分」という言葉も好きですね。未来は待つものではなく、自らの意思で切り拓いていくもの。多くの人の力を借りながら、一緒に前へ進んでいけるトップでありたいと考えています。

街づくりの主役は、街に住む人、働く人、訪れる人

今年度の後半をどう展開し、次年度へつなげていこうとご計画されていますか。

現在、不動産業界は建築費の高騰や資材価格の上昇など、大きな環境変化に直面しています。しかし、そうした環境下でも、社員1人ひとりの努力と創意工夫により、今年度の事業運営は比較的順調に推移しています。
むしろ重視しているのは、その先の未来です。不動産・建築事業は、今取り組んだことがすぐ結果になるわけではなく、計画から完成まで何年もかかるプロジェクトが少なくありません。だからこそ、今年度後半は足元の成果だけでなく、5年先、10年先を見据えた仕込みを進める期間にしたいと考えています。
その中心となるのが、NTTグループ各社とのシナジーをさらに高めることです。NTT日比谷タワーに代表されるように、IOWNやAIなどグループが持つ先端技術を都市空間へ実装する取り組みも本格化しています。街づくりとデジタルを融合し、人々の暮らしや働き方をより豊かにする新たな価値を創造していきたいと考えています。
次年度につなげるためにも、不動産・建築事業の枠を超え、ICT、エネルギー、環境技術を組み合わせながら社会課題の解決に取り組む企業グループとして進化していきたい。そのための基盤づくりを今年度後半の大きなテーマとして取り組んでいきます。

社員の皆さん、研究者、技術者の皆さん、パートナー企業の皆さんへ一言お願いいたします。

まず社員の皆さんには、ぜひ自分の仕事に全力で向き合ってほしいと思います。私は常々、結果責任はトップが負うものだと考えています。失敗を恐れず、自分が正しいと思うこと、新しいことに思い切って挑戦してほしい。前例や慣習にとらわれず、新しい価値を生み出すチャレンジを続けてほしいと思っています。
研究者や技術者の皆さんには、ぜひ街づくりというフィールドに関心を持っていただきたいと思います。NTTグループにはAI、IOWN、データセンタ、通信インフラ、エネルギー制御技術など世界有数の技術があります。そして私たちは、それらを実際の街や建物に実装できる場を持っています。街に住む人、働く人、訪れる人が豊かさや便利さを実感できる技術を、一緒に社会実装していきたいと思います。研究や技術を単なる開発成果として終わらせるのではなく、地域社会の課題解決や新しい都市の価値創造へ結び付けていきたいと考えています。
パートナー企業の皆様には、ぜひ私たちを積極的に活用していただきたいと思っています。私たちがめざしている街づくりの主役は、街に住む人、働く人、訪れる人です。その人たちにとって価値のあるものであれば、業種や分野を超えてさまざまな方々と連携したいと考えています。
NTTグループには長年培ってきた信頼と全国規模のネットワークがあります。その強みと皆様の知見や技術を組み合わせることで、これまでになかった街づくりが実現できるはずです。「こういう技術がある」「こんなアイデアがある」という提案があれば、ぜひ声をかけていただきたい。未来の街を共につくる仲間として、これからも挑戦を続けていきたいと考えています。

(インタビュー:外川智恵/撮影:大野真也)

インタビューを終えて

コーポレートカラーを思わせる爽やかな水色のネクタイで迎えてくださった池田社長。撮影前には「緊張しますね」と率直に話され、写真撮影では「軽く微笑むのは難しいですね」と照れたような笑顔を見せられる場面もありました。
印象的だったのは、最後に建築の話題になったときのこと。フランク・ロイド・ライトの建築がお好きだという池田社長は、NTTアーバンソリューションズグループの物件では2020年に開業した、京都の小学校建築を保存・活用した「ザ・ホテル青龍 京都清水」がお気に入りとのことです。最先端の街づくりに取り組む一方で、歴史ある建物の価値を未来へ受け継ぐという過去と未来をつなぐ街づくりへの熱い思いが伝わってきました。
穏やかな語り口で相手の話に耳を傾けながら、お話を進めてくださる池田社長の人を大切にするご姿勢と未来への前向きであたたかな視線。誠実に、そして自然体で臨むことの大切さを教えていただいたひとときでした。

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