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将来のデジタル社会を支えるネットワークの変革─ネットワーク基盤編─

新アクセスシステムアーキテクチャ:FASA®

NTTアクセスサービスシステム研究所では新アクセスシステムアーキテクチャ「FASA®(Flexible Access System Architecture)」を提唱し、アクセスシステムを構成する機能の部品化について研究開発を進めてきました。本稿では、その研究開発成果として2018年11月に報道発表し、NTT R&Dフォーラム2018(秋)で出展した、DBA(Dynamic Bandwidth Allocation)機能のソフトウェア部品化技術について紹介します。

栩野 貴充(とちの たかみつ)/ 西本 恵太(にしもと けいた)/ 秦野 智也(はたの ともや)/ 浅香 航太(あさか こうた)/ 可児 淳一(かに じゅんいち)/ 寺田 純(てらだ じゅん)

NTTアクセスサービスシステム研究所

背 景

NTTアクセスサービスシステム研究所では2016年2月に将来光アクセスシステムの新コンセプト「FASA®(Flexible Access System Architecture)」を発表し、研究開発を進めてきました(1)。FASAではアクセスシステムを構成する機能を徹底的に部品化し、それらを自由に組み合わせ可能にすることで、サービス要件に応じて柔軟かつ迅速に機能を入れ替えられる光アクセスシステムの実現をめざしており、競争力のあるネットワーク基盤技術の研究開発に取り組んでいます。
現在広く普及しているアクセスシステム「PON(Passive Optical Network)システム」は、光分岐器(光スプリッタ)を介して1心の光ファイバを複数ユーザで共有するポイントツーマルチポイント型のネットワーク構成をとっており、通信帯域を複数ユーザで分け合います。この、PONシステムの性能をつかさどる機能としてDBA(Dynamic Bandwidth Allocation)機能があります。DBA機能はユーザの帯域要求に合わせて動的に帯域を割り当てます。
NTTアクセスサービスシステム研究所では、PONシステムのDBA機能を自由に入れ替えることで、光アクセスシステムを多様なサービスに適用できると考え、 DBA機能のソフトウェア部品化技術を確立するとともに、同機能を組み込み可能な2つのOLT(Optical Line Terminal)構成モデルを提案し、それぞれのOLT構成モデルでDBA機能のソフトウェア部品化が可能になるよう研究を進めてきました(図)。

図 DBA機能のソフトウェア部品化

DBA機能のソフトウェア部品化技術

DBA機能は、変動するユーザの帯域要求に応じて各ユーザへの帯域割り当てを行うため、サブミリ秒オーダでの高速な処理を必要とします。高速な処理を実現しながら自由な入れ替えを可能にするために、DBAの機能部をサービスに依存しない高速処理部と、サービスごとに仕様の異なるアルゴリズムとに部品化し、前者をハードウェア部に、後者をソフトウェア部に実装しました。また、ソフトウェア部とハードウェア部のインタフェースをAPI(Application Programming Interface)*として定義したうえで、標準化団体Broadband Forumでの標準化を推進し、2018年に完了しました。
その結果、 DBA機能は高速な処理を実現しながらも、サービス要件に応じて機能を入れ替えることが可能となりました。

*API:部品間で情報をやり取りするためのインタフェース仕様。

2つのOLT構成モデルとAPIの実装

PONシステムを多様な利用シーンで利用可能とするために、2つのOLT構成モデルを定義し、それぞれの構成モデルにあったOLTをプロトタイプ検証機として開発しました。
1番目はボックス型OLTです。これは、通信事業者の収容局内などの環境下で用いることを想定しており、従来のFTTH(Fiber To The Home)サービスに加え、5Gモバイルシステムなどへの適用が期待できます。2番目はモジュール型OLTです。これは、従来のOLTの機能のうち、ハードウェアによる実現が必須となる機能のみを小型のモジュールに収めたもので、ソフトウェア部品化されたOLT機能が格納された汎用サーバとの組み合わせにより、工場および大学・オフィスビル内などの構内LANなどへの適用が期待できます。
いずれのOLT構成モデルも上記APIを実装することで、利用シーンに応じたDBA機能を入れ替え可能になり、サービス要件に応じてハードウェアレベルから大幅に装置をつくり直すことなく、光アクセスシステムの適用領域を拡充できるようになりました。

今後の展開

今後は、世界中のキャリア・システムベンダ・標準化団体・オープンソースソフトウェア団体と協調し、DBA機能以外のソフトウェア部品化に取り組む予定です。これにより、光アクセスシステムをより多様なサービスに適用していくことをめざしています。

■参考文献
(1) https://www.ntt.co.jp/news2016/1602/160208a.html

(左から)可児 淳一/秦野 智也/栩野 貴充/浅香 航太/寺田 純/西本 恵太(右上)

私たちはFASA®を通じて、新たな機能を柔軟かつ迅速に組み込むことができるアクセスネットワークシステムを構築するという観点から、競争力のあるネットワーク基盤技術の研究開発に取り組んでいます。

問い合わせ先

NTTアクセスサービスシステム研究所
光アクセス基盤プロジェクト
光アクセス基盤SEグループ
TEL 046-859-4958
FAX 046-859-5513
E-mail fasa-support-ml@hco.ntt.co.jp