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将来のデジタル社会を支えるネットワークの変革─ネットワーク基盤編─

映像転送を支えるデータストリームアシスト技術

NTTネットワーク基盤技術研究所では、高機能・高性能なIoT(Internet of Things)デバイスを活用した複雑なサービスを支えるネットワークを提供するために、軽量かつ柔軟に配置可能なデータストリームアシスト技術の研究開発を行っています。本稿では、具体的なユースケースとして、カメラ映像を多種多目的の利用用途に応じて、通信プロトコル・通信タイミング・通信量を変更し、ネットワークの利用効率を向上させるとともに、IoTサービス事業者の利便性向上につなげる技術の紹介をします。

肥後 直樹(ひご なおき)/ 鍔木 拓磨(つばき たくま)/ 越地 弘順(こしぢ こうじゅん)/ 椿 俊光(つばき としみつ)/ 桑原 健(くわはら たけし)

NTTネットワーク基盤技術研究所

映像IoT時代の幕開け

近年、AI(人工知能)を活用した映像解析の本格化、および通信回線の広帯域・高速化により、映像IoT(Internet of Things)が普及してきました(1)。
カメラを使った映像サービスとして防犯・警備などのセキュリティサービスが挙げられますが、お客さまの購買行動を把握するためのマーケティングや製造業における商品の外観検査などへの活用にも注目されるようになり、映像自体の利用目的が多様化しています。

映像IoTシステムの構成変更の難しさ

映像IoTを導入する場合、そのシステムは、ユーザの構内に構築することが一般的です。しかし、ユーザの設備内にシステムを構築する場合、メディアサーバなどの専用設備が必要になり、映像用途の変化に伴うシステム構成の変更が難しいため、映像IoTの導入障壁が高いです。
カメラの映像は、その用途によっては、常に取得する必要がないものもあります。例えば、視聴用途の場合、平常時に視聴するケースは少なく、事件や事故などのイベントが発生した非常時だけ、状況把握のために視聴するケースが多いです。このような場合、平常時も映像を取得していると、ユーザのLAN(Local Area Network)を輻輳させる可能性があります。また、視聴や分析を遠隔地で行う場合は、通信キャリアのネットワークも輻輳させる可能性があります。したがって、必要なときだけ映像を取得する構成に、動的に変更する必要があります。

データストリームアシスト技術による課題解決

データストリームアシスト技術は、この課題を解決すべく、映像IoTをマネージド・サービスとして利用するネットワーク機能の実現をめざしています。
本技術は、映像ストリームの転送を行う「転送系機能」と、転送系機能を管理する「連結制御系機能」の2つで構成されています(2)(図1)。これらの機能は、既存映像IoTシステムとの組合せや分散配備を可能とする軽量なソフトウェアを設計指針としています。したがって、プロトタイプ(図2)では、機能のプロセスが動作する環境としてDocker(3)、コンテナのオーケストレータとしてKubernetes(4)を採用しています。映像ストリームの登録時に、利用する物理マシンやエリアを宣言することで、各マシン上で待機状態のコンテナが展開され、映像のメディア情報の取得や転送を担うストリーム管理機能が立ち上がります。その後、宛先となる視聴デバイスなどからのリクエストに応じて、映像ストリームを配信します。このように、必要な機能を動的に配備可能とすることで、イベント発生時の必要な映像のみの取得を実現し、ネットワークやコンピューティングリソースに制限のある環境においても、柔軟にシステムを構築することができます。

図1 データストリームアシスト技術の構成例

図2 プロトタイプを用いたデモンストレーション

今後の展開

データストリームアシスト技術は、キャリアエッジクラウド*やパブリッククラウドを組み合わせたマルチクラウド環境との親和性が高いと考えます。映像の用途に応じて高効率かつ安全に映像を配信するネットワーク機能を動的に配備することで、映像IoTの迅速な展開と高いスケール性の実現をめざしていきます。

*キャリアエッジクラウド:通信キャリアがキャリアネットワーク内にクラウド基盤を構築し、ユーザに提供するクラウド環境。

■参考文献
(1) 特集:“映像IoTが、来た!、”テレコミュニケーション、No.409, pp.6-25, 2018。
(2) 肥後・鍔木・越地・椿・桑原:“IoTサービスを支えるデータストリームアシスト技術、”NTT技術ジャーナル、Vol.30, No.7, pp.19-24, 2018。
(3) https://www.docker.com/
(4) https://kubernetes.io/

(左から)桑原 健/椿 俊光/鍔木 拓磨/肥後 直樹/越地 弘順

さまざまなサービス事業者とのコラボレーションを通じた研究開発のアプローチにより、IoTサービス事業者の利便性向上と高機能IoTデバイスを活用したサービスの実現をめざし、データストリームアシスト技術をはじめとする新たなネットワークアシスト技術の研究開発に取り組んでいきます。

問い合わせ先

NTTネットワーク基盤技術研究所
コグニティブファウンデーション
NWプロジェクト
TEL 0422-59-3810
FAX 0422-59-6364
E-mail toshimitsu.tsubaki.zs@hco.ntt.co.jp