from NTTファシリティーズ
太陽光パネルの故障検出技術の開発
NTTファシリティーズでは全国86カ所、合計307 MWの太陽光発電所の保守・運用を行っており、保守業務の中で検出した故障パネルのデータを蓄積しています。これらのデータを活用し、保守作業の迅速化・効率化を検討しています。ここではメガソーラの太陽光パネルについて、ドローンによって撮影したサーモ画像や遠隔計測データを学習させることにより、パネル故障を検出するという技術開発について紹介します。
太陽光パネルの故障
NTTファシリティーズでは、全国86カ所、合計307 MWの太陽光発電所の保守・運用を行っています。太陽光発電所ではさまざまな種類の異常・故障が発生します。太陽光パネルの異常には、パネル割れ、汚れ、電柱や雑草による影などがあります。太陽光パネルの故障には、太陽電池セルの故障、太陽光パネル内の半田不良で発生するクラスタ故障があります(図1)。
太陽光パネルは通常3つのクラスタで構成されているため、クラスタ故障では太陽光パネルの3分の1が機能しなくなることで太陽光パネル出力が66%まで低下します。クラスタ故障は目視点検では発見できないため、テスターを使用して抵抗を測定するかサーモグラフィカメラを使用して故障に起因する異常発熱を検出する必要があります。しかし、抵抗測定は1回当り数分かかることやハンディタイプのサーモグラフィカメラでは広い範囲を撮影できないため、これらの方法では大量の太陽光パネルを検査するのには、多くの時間がかかります。例えば、約1万枚の太陽光パネルから構成される3MWの太陽光発電所では、すべての回路の抵抗測定に十数時間もの時間がかります。そのため、効率的な太陽光発電所の保守作業のために短時間で大量のパネルを検査する方法が求められています。
図1 太陽光パネルの故障と異常
ドローン点検
NTTファシリティーズはサーモグラフィカメラを搭載したドローンによるドローン点検の検証を行っています。ドローンを使うことで短時間に広い範囲の太陽光パネルを検査することができ、例えば3MWの太陽光発電所の場合、10分程度で撮影可能です。太陽光パネルの故障・異常部分の多くは発熱するため、サーモ画像上では白色の高温として観測されます(図2)。サーモ画像では、太陽電池セルの故障、クラスタ故障のほかに、影や汚れ等による異常も検出されます。従来、人がサーモ画像でこれらの故障を確認することで検出していましたが、この確認作業に時間がかかる、検出位置の誤記載や検出漏れなどのミスが発生するという課題がありました。そのため、NTTファシリティーズでは、サーモ画像からクラスタ故障を自動的に検出してドローン点検レポートを作成するソフトを開発しています。
まず、撮影したサーモ画像の正規化を行い、それぞれの画像の明るさを均一にします。次に複数枚のサーモ画像を結合するオルソ処理を行い、発電所全体の画像を作成します。その後、ディープラーニングによる故障検出を行い、故障パネルを検出します。最後に、点検者の位置を表示させるためにオルソ画像を地図上に貼り付けます(図3)。
ドローン点検レポートでは故障パネルの位置を一目で認識できるとともに、オルソ画像を拡大することでパネルの発熱している部分を確認できます。また、現地でタブレットなどを用いれば、GPS情報に基づいて点検者と故障パネルの位置を表示でき、効率的に故障パネルを検査できます(図4)。
図2 太陽光パネルの故障と異常(サーモ画像)
図3 ドローン点検レポートの自動作成
図4 ドローンレポート
ストリング診断
NTTファシリティーズの発電所では、12~20枚のパネルを直列に接続したストリング単位での電流・電圧を計測するストリング計測装置を設置しています。このストリング計測装置により常時、遠隔で計測することができるため、発電所に駆けつけることなく太陽光パネルの発電状態を把握することができます。しかし、12~20枚直列に接続されているパネル中の1枚にクラスタ故障が発生しても、低下する発電量が小さいことや、天候や雑草等の外的な影響でも発電量が低下することがあるため、単純に発電量の大小だけでは、発電量の低下の原因を判断できません。
そこで、ストリング計測データを学習することで、遠隔にて故障を検出するシステムを開発しています。具体的には、計測値の欠損の除去やリサンプリング等の前処理をした後に、一次元の計測値を二次元のデータに変換します。この二次元データを畳み込みニューラルネットワーク(CNN: Convolutional Neural Network)で分類することで、正常、故障、影を分類することができます(図5)。
図5 ストリング診断
今後の展開
太陽光発電の導入はFIT買取価格の低下とともに鈍化してきていますが、第5次エネルギー基本計画(1)で再生可能エネルギーの主力電源化の方針が示され、太陽光発電は今後も導入が見込まれます。また一方で大量に導入された太陽光発電を維持していくために安価で安全な維持管理手法が求められています。最新のドローン技術やAI(人工知能)を用いることで現地作業時間の軽減、コスト削減および維持管理の品質向上を行うことが可能です。
NTTファシリティーズはICTを使って維持管理の品質向上と安価で安心・安全な太陽光発電所の実現により、Smart&Safetyで持続可能な社会の実現に貢献していきます。
■参考文献
(1) https://www.meti.go.jp/press/2018/07/20180703001/20180703001-1.pdf
問い合わせ先
NTTファシリティーズ
研究開発部 データマネジメント部門
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