グループ企業探訪
クラウドで新しい働き方を お客さまと一緒にデジタルイノベーションの実現をめざす
ネクストモードは「クラウドで新しい働き方を」をキャッチフレーズとして、基本的に全社員がテレワークでパブリッククラウド関連のサービス、インテグレーションを提供している。今後さらなる普及が見込まれるクラウド市場において、時代の先端を行く業務スタイルによる事業の取り組みと、セルフブランディングによる社員個々人が活躍する企業カルチャーへの思いを里見宗律社長に伺った。
ネクストモード 里見宗律社長
自社で利用しているサービスを提供するバーチャルショールーム
◆設立の背景と目的、事業概要について教えてください。
ネクストモードは、NTT東日本とクラウド(Amazon Web Services:AWS)に関するコンサルティング・設計・構築・運用を中心にビジネス展開を行う国内屈指のAWS技術集団であるクラスメソッド株式会社の出資により、2020年7月に設立されました。ガートナーによるバイモーダルITと呼ばれているMODEの概念で、安定性や不変性を重視するMODE1と、スピードや柔軟性を求めるMODE2がありますが、比較的MODE1に近いNTT東日本と、MODE2に近いクラスメソッドが連携して、次なるMODE(MODE1とMODE2のハイブリッドで事業をドライブする概念)をめざそう、ということで社名を「ネクストモード」としました。
パブリッククラウド導入による業務改善やDX推進等のニーズが顕在化してきている中、クラウドに関する認知が十分ではないことにより、クラウドの導入に躊躇しているお客さまも多数いらっしゃいます。そこで、クラウドをはじめとする新しい技術を多くのお客さまにとって、もっと身近なものにすることをめざしています。
事業はAWSに限らず、パブリッククラウドにおけるPaaS(Platform as a Service)やSaaS(Software as a Service)をベースとし、①IaaS(Infrastructure as a Service)を中心とした「SI構築(コンサルティング含む)」、②クラウドの監視・運用代行をサポートする、運用アシスタントサービスを提供する「保守運用」、③コロナ禍で急速に普及が進むDocusignやAsana、Google Workspace、さらにはゼロトラストネットワーク商材であるNetskopeやOktaといった「SaaS導入支援」、の3つのドメインで構成されています。クラウド上のアプリケーション構築等については、専門家を擁する最適なパートナーと連携してお客さまに提供しています。
お客さまと一緒にデジタルイノベーションを実現することをめざしていくうえで、自分たちがまずは実際にサービスを利用して自らがショールームとなることで、まさに「お客さまと一緒に」を体現しています。
◆事業を取り巻く環境はどうですか。
情報システムという観点からみると、AWS社の話では世界の9割近くが自社内にコンピュータを保有するオンプレミスで、クラウドはまだ1割程度とのことです。お客さまの状況としては、クラウドの利用はマーケティングでいうところの“Early Adopter”から“Late Majority”に差し掛かってきたくらいのレベルの普及で、まさにこれから一気に伸びていこうとしている市場です。国内にもいくつかクラウドをベースとした事業展開をしている会社がありますが、現在の市場環境を考えるとそれぞれが競合会社というよりも、一緒になってクラウドを盛り上げていこうというフェーズです。
このような環境の中、当社としては先頭グループにいるお客さまではなく、クラウドの導入に対して様子を窺っている第2集団のお客さまをターゲットとしてビジネス展開をしています。コロナ禍による影響なのか、想定を上回る引き合いが来ていて、この状況・原因分析もできないほど忙しくなり、案件に対応できずにお断りしているような部分も出てきています。おかげさまで会社設立後半年も経たないうちに事業計画を達成し、このままいくと1桁上のレベルをかなり上回る利益を出せるのではないかと思います。
テレワーク・リモートワークを支える企業カルチャー
◆全社員がテレワーク・リモートワークとのことですが、お客さまとの対応もリモートなのでしょうか。
ネクストモードでは、基本的に、テレワーク・リモートワークで働いている環境や、自社で利用しているサービスを、そのままお客さまにも販売しています。つまり、自らがショールームとなっているのです。会社として最低限の登記場所はありますが、全社員が好きな場所で働いています。
もちろん、お客さま対応につきましても自らがショールームとして、リモートで行っています。全社員を挙げて技術イベントやセミナーへの登壇、コミュニティ活動、さらにデジタルメディアへの登場等を行い、そこで会社紹介をすると、世の中の関心が少しずつクラウドに向いてくる中で非常に特徴的な事業形態であり、しかもショールームがお客さまの目の前にあることで問い合わせや引き合いが来る、というインバウンドの営業をしており、これが非常に効果を上げています。
テレワークが主体の業務形態なので、社員個々人のパフォーマンスが重要になってきます。そこで、
①オープンであること
②楽しく働くこと ひらめき、意欲、情熱を大切に
③フラットな人間関係(パートナーシップ)を保つこと
④全員がリーダーシップを持つこと
⑤謙虚であること 感謝の気持ちを持つこと
⑥いいところを凝視し、人・組織をけなさないこと
⑦フィードフォワード 早く失敗して、次に活かしていくこと
⑧テクノロジー好きであること
を求める人物像として掲げ、全社員で共有しています。そして、これを実践していく中で、お互いに役職名ではなく「さん」付けで呼び合う、アイデア・ノウハウはWikiで社内に積極的に広める、社員の会話はオープンな場で行う(ダイレクトメールによるコソコソ話の禁止)等のカルチャーづくりと大幅な権限移譲を行っています。また、情報セキュリティへの留意は必要ですが、社外に対しても積極的に発信していくことも推奨しており、それがセルフブランディングとなることで各社員のブランド力が高まることにもつながっています。これは、社内に閉じた話ではないので、世の中の技術者・研究者1人ひとりがセルフブランディングを行い、技術力を世界にアピールしていくことで、それが技術の発展や仕事にもつながるはずだと思います。
◆今後の展望についてお聞かせください。
会社設立から間もないこともあり、スモールスタートをしてきたところですが、ありがたいことに、お客さまからの引き合いに対応できず、ご迷惑をおかけせざるを得ない状況になっています。この解消のために、人材の採用と育成が最優先の課題です。
これにより、お客さまのご要望にこたえていくことができるばかりでなく、新たに仲間となる社員全員がネクストモードの求める人物像に成長し、セルフブランディングにより世の中に発信していくことで、さらにお客さまの関心を呼んで引き合いにつなげていくという、良い循環をつくっていきたいと思います。そして、それを大きな原動力として、クラウドの普及とその先の働き方の改革につなげていきたいと思います。
担当者に聞く
クラウドで提供されているサービスを組み合わせて新サービスを実現
取締役インテグレーション事業部長
西澤 徹訓さん
人材育成が大きな課題
◆担当されている業務について教えてください。
クラウドのシステムインテグレーションを担当するチームの責任者をしています。ネクストモードは技術者が社員の約8割を占めており、そのほとんどがインテグレーション事業部に所属しています。その中で、特に、クラスメソッド社のパブリッククラウド活用ノウハウをネクストモードに展開し、それを実現していくことをメインに行っています。
当社で行っているクラウドのシステムインテグレーションは、クラウド・プラス・インフラレイヤがメインで、パブリッククラウドで準備されている各サービスを組み合わせてアーキテクチャをつくり、それをベースとした各機能の部品を用意します。それらを利用した最終的なアプリケーションは、お客さまもしくはパートナー会社で担当していただきますが、クラウドの最適な使い方のアドバイスと、そのための環境づくりは当社で行っています。
クラウド市場が急速に立ち上がってきている中でインテグレーションを行っていくにあたり、人材育成というのは大きな課題で、継続的に取り組まなければいけないものだと思っています。技術的なスキルアップという部分に関して、なるべくモチベーション駆動、つまり本人がやりたい分野・部分に取り組んでもらうことが、一番パフォーマンスが出るという考えの下、研修やトレーニング、OJTを行い、そこから先は本人が自発的に取り組んでもらうよう働きかけをし続けることによって対応しています。
◆ご苦労されている点を伺えますか。
コロナ禍の最中に生まれた会社ということで、基本的に会社をつくるというところがすごく大変でした。私たちとしてはクラウドを使った新しい働き方を提案していこうというキャッチフレーズの下、パブリッククラウドあるいはSaaS等により、お客さまの働き方を変えていけるようなものを次々と採用・提案していくことを行ってきましたが、単にツールだけで解決しない問題もあります。しかし、私たちが、既存のサービスを組み合わせてお客さまに提供して、ご支援にも活かそうとやってきた取り組みが、ここにきてやっと上手く回ってくるようになったと思います。
組織づくりという意味では、会社設立初日こそ全員で集まったのですが、それ以降、全員で集まったことは一度もありません。基本的にオンラインでしかコミュニケーションをとれないので、一般的にいわれているコミュニケーション不足は常に課題としてはあります。それならばと、私たち自身が工夫して週報会や月報会等のかたちで施策展開して、その中でお互いのプライベートを含むコミュニケーション、情報交換、ディスカッション、チームづくりを行ってきて、それが奏功して非常に良いムードのチームができあがっています。
クラウドで日本における働き方改善にチャレンジ
◆今後の展望について教えてください。
ありがたいことに、多数お引き合をいただいており、まさに大きなビジネスチャンスに向き合っています。そして、クラウド市場は今後非常に大きく広がっていくビジネス領域だと感じていますので、2021年度、そして数年先まではアクセルを踏んで、とにかく大きなビジネスを動かせるようにしていきたいと思います。そのためにも体制強化を図り、パブリッククラウドのご相談であれば、ネクストモードに任せれば安心だとお客さまに言っていただけるようにしていきたいと思っています。そして、お客さまのご要望におこたえしていく中で、お客さまの働き方を変え、さらには効率が悪いといわれている日本の働き方を少しでも改善することに、一石を投じられるようチャレンジしていきたいと考えています。
これを実現していくためにも、私たちの力のみでできることは限られてくるので、NTTグループの会社をはじめとするパートナーとの連携も広げていきたいと思います。
ア・ラ・カルト
■リモート雑談
社内のコミュニケーションツールとして“Slack”というチャットツールを利用していますが、その中で「雑談チャネル」が一番盛り上がっているそうです(写真1)。社員は基本的にリモートワークなのですが、なぜか数人の出社しているメンバが、「今日お昼何食べようかな」という話をしていれば、ほとんど会社に出社することのない社員から会社付近の店を知っているかのようなアドバイスが飛び交うなど、まさに雑談コミュニケーションが活発に行われているようです。
写真1
■ワーケーション
テレワークが基本の会社なので、もちろんリゾート地等でくつろぎながら仕事をする、「ワーケーション(workとvacationを合わせた造語)」も可能です。里見社長自ら北海道や沖縄等で積極的にワーケーションされており、そこに社員も合流したり、仲の良い社員どうしで旅行がてら週末をはさんでワーケーションしたりと、結構盛んに行われているようです(写真2)。中には実家への帰省ついでのワーケーションもあるようです。新型コロナウイルスには万全の対策で臨んでいるのですが、旅行の費用やリゾート地でリラックスしている中での仕事、逆に家族を帯同しない場合の家族からの視線等、会社の外の環境による制約もあるようです。
写真2
■オンライン懇親会
テレワーク基本の会社とはいえ、全員集合の懇親会を企画したこともあるそうです(写真3)。ところがコロナウイルスの関係等もあり、集合型は断念し、結局オンラインで行ったとのこと。フードのデリバリー等もリモート懇親会用のサービスを使い、オンラインビデオ通話サービスで自分のアバターがある部屋に行くとそこの部屋にいるメンバと雑談ができ、しかも近くに行くとその声がよく聞こえるようなオンライン通話スペースをつくり、そこを懇親会会場にしました。その中では、オンラインのアンケートツールを使って投票したり、オンラインのクイズサービスを使って一番成績が良かった人を表彰したり、そしてオープンな会社ならではの締めの挨拶はルーレットで決める等、オンラインのツールをフル活用して、大いに盛り上がったそうです。
写真3