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グループ企業探訪

第259回 株式会社NTTコノキュー

NTTグループのアセットを結集し、新たなXRの世界を開拓する

NTTコノキューは、XR(Extended Reality)を用いたさまざまなサービスやソリューションを展開し、「新しいコミュニケーション文化の世界の創造」をとおして社会課題解決への貢献に取り組んでいる。コノキュー(QONOQ)という社名に込められた思いと、XRのリーディングカンパニーをめざす戦略的取り組みを丸山誠治社長に伺った。

NTTコノキュー 丸山誠治社長

デジタル空間が自然と溶け込むリアルな世界(空間)をめざす

■設立の背景と会社の概要について教えてください。

NTTコノキューは、NTTグループにおけるXR(Extended Reality)事業のさらなる推進を目的に、2022年10月1日に事業開始しました。
コノキュー(QONOQ)という社名には、①「Quest Over Network」高度なネットワークによるXRの世界を探求、②ネットワークを軸に「仮想と現実」を行き交う、③XR新時代の始まりの合図「キュー」という意味が込められています。『アイデア・テクノロジーを結集し創り上げた「空間」は、「ヒト」の心を豊かにし、社会(空間)に輝きを持たせる。そのため、我々は探求を続け、デジタル空間が自然と溶け込むリアルな世界(空間)をめざす』という信念の下、会社の事業運営を行っています。
もともとNTTグループ各社は、「リアルな限界を超えて、夢や思いを体験し、共感し合える世界へ」というNTT XRのビジョンの下、各々XRビジネスを展開していました。このビジョンをより強力に実現していくためにNTTコノキューが設立されました。NTTグループの顧客基盤、営業基盤、技術力など、各種アセットを総結集して、XR事業を、個人および法人のお客さまへ展開していきます。
XRはまだまだ発展途上の技術であり、NTTやNTTドコモの研究開発部門と連携し、積極的に技術開発を進めるとともに、新たな顧客価値を提供できるよう、小規模企業ならではの機動的な事業運営を行ってまいります。
またXR空間を構成するための3D空間のデータ量は膨大であり、通信回線の高度化やデバイスの進化が必須となります。さらにデバイス領域では、グループ内にないノウハウを補うため、シャープ株式会社と合弁会社を設立し、製品開発を進めています。

■具体的にどのような事業展開をしているのでしょうか。

NTTコノキューは、個人および法人のお客さまに対して、VR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)、MR(Mixed Reality)などXRを用いて、メタバース事業、デジタルツイン事業、デバイス事業の3つの領域で、さまざまなサービスやソリューションを提供しています(図1)。
メタバース事業では、手軽にスマホのブラウザでバーチャル空間ならではのコミュニケーションをお楽しみいただけるサービス「XR World」を提供しています。また自社IPとしてバーチャルシンガー「Tacitly」を展開し、バーチャルアーティスト向けスタジオソリューション「Matrix Stream」を提供するなど、バーチャル空間におけるアバターを介したさまざまな体験や新しいコミュニケーションのあり方を追求しています。また、簡単に自身で空間クリエイトできるメタバースサービスとして「DOOR」をビジネス展開し、さらには2023年5月にはWebVRを利用して、あらたなECやショールーム体験を展開していく「360Media」を、2023年6月には社内のインフォーマルなコミュニケーションを誘発するバーチャルオフィスサービス「NTT XR Lounge」を提供開始しました(図2)。
デジタルツイン事業では、スマートフォンをかざすと、その場所に合ったAR/MRコンテンツを表示することで商業施設や観光地などリアルなエリアへの回遊促進・店舗誘客などを実現する新感覚街あそびアプリ「XR City」を提供しています。また、MR技術により遠隔作業支援を可能とすることで人手不足や技術継承等の課題を解決するソリューション「NTT XR Real Support」を3月に提供開始しました。
デバイス事業では、自社オリジナルのXRデバイスを開発しています。メタバース事業やデジタルツイン事業と一体で顧客体験や価値を提供できるのがNTTコノキューの強みとなります。
こうしたサービスは既に多くのお客さまにご利用いただいています。例えば、「DOOR」を活用し明光義塾様と共同で、14大学に参加いただき、高校生向け進学説明会をメタバース空間で開催しました。その他、自治体向け就農支援へのソリューション提供を行うなど、特定業界のお客さまに向けた取り組みも実施しています。

迅速な事業展開により、XRといえばNTTコノキューといわれる存在をめざす

■事業を取り巻く環境はどのような状況でしょうか。

複雑で多様化する社会において、少子高齢化、教育問題、技術の継承、脱炭素、デジタルトランスフォーメーション(DX)の促進といった社会課題がクローズアップされ、さらに新型コロナウイルス感染症流行鎮静後のアフターコロナにおける社会活動・経済活動に関する議論も盛んに行われています。一方で、AI(人工知能)やXRなどの技術の進展も著しく、これらを活用したアプリケーションも次々と登場しており、それによる社会課題解決への貢献についても注目が集まっています。
このような環境において、現在XR市場は黎明期にあり、各社も手探りの状態が続いていますが、数年後には市場が大きく成長すると予想されています。その中で、Meta社をはじめとしてGoogle社、Microsoft社、Apple社、Epic games社、Sony社などの有力企業が、XR事業の垂直統合型展開をめざして活発に投資を続けています。
現在の黎明期のXR市場においては、いろいろなビジネスの可能性を探りながら、機敏にお客さまニーズをとらえて、自らの技術と柔軟に組み合わせながら価値提供していくことが必要です。そのためにもXR関連技術やノウハウを自ら蓄積し磨き上げていくこと、そして常にお客さまの声に耳を傾けながらCXの改善活動を地道に継続していくことが最重要です。

■今後の展望についてお聞かせください。

今後も顧客基盤や販売チャネルなどNTTグループ各社が持つアセット、ノウハウ・リソース・技術等を活用しながら迅速にXRサービスを展開することに変わりはありません。XR関連技術や通信回線、デバイスが急速に進化していく中で、そこから生み出される付加価値をいち早くお客さまに届けることで、XRといえばNTTコノキューといわれる存在をめざします。
また、NTTグループでは、「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」において、メタバース空間上で夢洲会場を再現した「大阪・関西万博バーチャル会場」を提供する予定であり、ソフトウェア開発を主にNTTコノキューが担当しています。こうしたビックイベントを契機に、グローバル展開も視野に事業拡大を図っていきます。

担当者に聞く

「XR City」と日常で利用するコンテンツでXRの新たな魅力を提供

XR City
プロジェクトオーナー
岩崎 正典さん

担当
星野 紗希さん

■担当されている業務について教えてください。

デジタルツイン事業における「XR City」ARサービスを担当しています。具体的なコンテンツとしては、有名IP(Information Provider)とのコラボ・自社IPである「Lost Animal Planet」など、ARの新規性や臨場感を活かしたサービス展開を実施しています。
現在、XR自体の具体的メリットが市場認知されていないことが課題ですが、コンシューマの方々に「日常でご利用いただく」コンテンツを提供することをめざして、コンテンツ開発やユースケース開発にチャレンジしています。世界的にも確立されたユースケースがないからこそ、お客さまにXRの新たな魅力を提供できるチャンスがあると思っています。

■今後の展望について教えてください。

現在はAR/MRを楽しむデバイスとしてはスマートフォンが主流ですが、スマートグラスが普及する時代がすぐそこまで来ています。現時点では、あえてスマートフォンでサービス展開をしていますが、AR/MR技術はスマートグラスと非常に親和性が高く、その普及によって利用する層やユースケースが爆発的に増加することが予想されます。「XR City」はスマートグラスの時代が到来したときに、世界を代表するARサービス提供者であるための準備だと考えています。

世の中にはないサービスの価値提供をめざして「NTT- XR Lounge」を提供開始

オフィスDX
プロジェクトオーナー
清水 一郎さん

担当
山内 彩樺さん

■担当されている業務について教えてください。

エンタープライズ向けオフィス領域におけるサービスを担当しており、6月末に「NTT- XR Lounge」をリリースしました。世の中にはないサービスの価値提供をめざして、仮説をベースにお客さまからいただいた声を反映させながら、ユーザ体験設計やバーチャル空間のデザイン検討を行っています。メタバース空間の活用は進んでいますが、その空間に2度、3度と利用していただくためには目的が必要です。
コロナ禍に起因して減った雑談からコミュニケーションを促し「仲間がいる、つながる、また話をしたい!」と感じていただくことにより、心理的安全性を確保し、働きやすいチームビルディングのお手伝いをします。
そのためには、キャンプ場や海中にあるオフィス、かわいい動物アバターも選べるなどバーチャルならではの世界の構築や、今仲間がいるのか、話しかけていいのかが、瞬時に分かるステータス表示等、細部にも目配せしながら、開発を進めています。

■今後の展望について教えてください。

コミュニケーションや生産性向上のためリアルオフィスへの回帰が進んでいますが、リアルオフィスでもコミュニケーションは減少しており、一方で子育てや介護、趣味など自己のライフスタイル実現のために、ロケーションフリーのニーズは根強くあります。また、出社していても組織間連携により他拠点メンバと業務を行うことも珍しくありません。そういった多様な環境の中で、1人ひとりが気兼ねすることなく理想的な働き方を実現できるソリューション・価値を社会へ提供することをめざしています。

熟練者の減少、技能伝承、人手不足等、社会課題を解決するソリューション「NTT XR Real Support」

スキルサポートDX
プロジェクトオーナー
安藤 智浩さん

担当
浅井 勇大さん

■担当されている業務について教えてください。

エンタープライズ事業における、スキルサポートDXプロジェクトにおいて、主に遠隔作業支援ソリューション等を担当しています。その中で「NTT XR Real Support」は、熟練者の減少、技能伝承、人手不足等の社会課題を解決するソリューションです。MR技術により、遠くにいても隣にいるかのように作業支援が可能になります。電話、メール、Web会議ツールなどの既存のコミュニケーションツールでは実現できない価値を、日々お客さまの課題に寄り添いながら、XR技術を活用して追求しています。

■今後の展望について教えてください。

熟練者の減少、技能伝承、人手不足といった社会課題は今後ますます顕在化してくると考えています。また、海外の現地工場に対するサポートなど国境を越えた作業支援が求められるケースも出てくると想定しています。XR技術により、時間、場所を超越し、世界中の方々のあらゆる作業をサポートすることができる世界をめざしていきたいと考えています。

メタバース中核サービス「DOOR」をパートナーとともに育てる

仮想空間DX
プロジェクトオーナー
涌井 道子さん

担当
藤井 里奈さん

■担当されている業務について教えてください。

オンライン3Dバーチャル空間(メタバース)サービス「DOOR」の企画業務を担当しています。「DOOR」は2023年3月末現在、累計ユーザ数220万人超、累計アクセス数は850万超、作成ルーム数約15万ルームを抱えるサービスであり、専用アプリ不要で、ブラウザ上での簡易アクセスに加え、VRゴーグルを用いることで没入感のある体験も可能です。メタバースに触れたことのないユーザを含め幅広い層にご利用いただけ、また、空間クリエイト機能により、豊富なテンプレートを活用した空間制作や、個展やイベントの開催等の独自の空間創作など、個人から企業のお客さままで、非常に多くの用途でご利用いただいています。
「DOOR」を社会に役立つメタバースプラットフォームとして成長させたいと考えていますが、現在、メタバース市場は立ち上がり期にあり、継続的に利用されるユースケースが少ないのが現状です。そのため、まずは目的が明確化された多様なシーンで使っていただく、そういう機会を創出し続けることが重要であり、さまざまな業界のパートナーの皆様と新たなユースケースの議論を進めております。その第一弾として「教育」に注目し、子どもから大人まで、また「教育」にかかわる学校・企業が集う空間の創造を進めております。2023年3月には、明光ネットワークジャパン様、GoGood様をメインパートナーとし、高校生をターゲットとした「DOOR Academia EXPO」として、全国14大学による大学合同ライブ相談会や進路相談会を開催しました。非常に多くの大学進学を意識する中高校生が参加し、アバターを介してコミュニケーションを取ることで、大学の関係者や塾のアドバイザーに、日ごろ聞きにくいことも含め気軽に相談している様子がうかがえました。

■今後の展望について教えてください。

教育、地方創生、医療、エンタテインメントなどのメタバースと相性が良いといわれている領域にとどまらず、多様な利用シーンを創出し続け、関係する個人や企業の皆様が集いたくなる、そんなメタバース空間に「DOOR」を育てていきます。

ア・ラ・カルト

■若手中心で作成した社名に込めた思い

社名・ロゴは若手中心で作成したそうです。もちろん社名に込めた思い(本文参照)も含んでいます。候補にあがる名称はすでに商標登録されているものが多く、大変苦労したとのことです。苦労したからこそ、社員一同社名「QONOQ」に対する思い入れは強く、「デジタル空間が自然と溶け込むリアルな世界(空間)」をめざして日々邁進しているそうです。

■on/offのスイッチを切り替えやすい環境を体現

リモートワークを基本としつつ、オフィスの設備も完備しています。基本的にフリーアドレスで、ミーティングスペースや集中作業スペース、個別ブースなど仕事のしやすい環境が整っています。フロア内にリフレッシュスペースも設けられておりon/offのスイッチが切り替えやすい環境だそうです。オフィスのあるビルからから道路1本隔てれば、そこは赤坂で有名店も多く、おいしい食事を楽しめるのも魅力的です。

■リモート会議にアバターで登場して密なコミュニケーション

各部門とは別に、担当しているプロジェクト単位の所属でもあるため、企画、開発、運用、総括など多岐にわたる業務担当者とコミュニケーションを図ることが可能です。自身で担当している業務以外の内容についても理解を進めやすく、スピード感のあるやり取りができる点も強みです。もちろんコミュニケーションはリモートで行われることも多く、XRの会社らしく、リモート会議にアバターで登場する社員もいるとのことです。

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