グループ企業探訪
蓄積した最先端技術でオープン系ITシステム基盤の設計・構築を支援
NTTデータ先端技術はITシステムの基盤(プラットフォーム)構築、運用監視をはじめとしたITプラットフォーム関連事業、セキュリティ事業を展開している。昨今、セキュリティに関する話題が取り上げられる中、蓄積された高度な技術とノウハウをNTTデータグループ各社と連携しながらお客さまへ提供している。設立20周年を迎えた現在の事業環境や今後の事業展開について青木弘之社長に話を伺った。
NTTデータ先端技術 青木弘之社長
NTTデータグループの技術先導役として高度な技術サービスの提供を行う会社
設立の背景と目的について教えてください。
NTTデータ先端技術は1999年にNTTデータグループの技術の中核を担う会社として設立されました。会社設立当時、IT業界、市場ではクライアント・サーバモデルをベースとしたシステムのオープン化が話題となっていました。そういった時代の潮流の中、オープン系システムの性能、信頼性、安全性担保のための技術を蓄積、集約し、それをNTTデータグループ全体に活用・展開することで、グループ全体としてのITサービス事業の高度化、信頼性向上を図ることを目的として設立されました。設立当初はNTTデータからの出向社員数名程度でしたが、2年目以降にはプロパー採用も始め、現在では当社グループ全体で1200名を超え、売上も500億円に手が届く規模の会社になりました。
事業概要についてお聞かせください。
当社の事業は大きく分けて3つになります。1番目はITシステムの要である基盤(プラットフォーム)関連の事業で、OSやデータベース、ネットワーク、そして昨今は仮想化、クラウド、ビッグデータ処理、AI(人工知能)など、さまざまなプロダクトやサービスを提供しています。この事業取引の90%弱がNTTデータグループ向けですが、NTTコミュニケーションズ様へもデータセンタ周辺のプロダクト提供やクラウド関係の技術サポート、NTTドコモ様についてもさまざまなプロダクトの提供と技術サポートを行っています。
2番目はミドルウェアやフレームワークなどの基幹系ソフトウェアの開発、導入・展開に関する事業です。オープンソースをベースとするさまざまなソフトウェア、アプリケーションの開発をはじめ、プロダクト提供ベンダのパートナーとしてのカスタマイズ、チューニングや、当社独自のソフトウェアプロダクトも提供しています。例えば、「Hinemos」、ITシステムの運用データを収集・蓄積し、システム稼動状況を監視するとともに、蓄積されたデータの分析により将来のシステム稼動変化量を予測することで予防保全を可能にする「運用アナリティクス」を実現しています。
3番目はセキュリティ関連の事業になります。個人情報漏洩対策、情報セキュリティ監査などのセキュリティコンサルティング・監査業務、ネットワークやWebアプリケーションのセキュリティ診断、セキュリティ監視運用、セキュリティ研修など、さまざまなサービスを提供しています。また、認証基盤ソリューション「VANADIS」やセキュリティ対策機能を提供するパッケージソリューション「NOSiDE」など、私たちが持つ独自のプロダクト、技術を提供しています。
独自技術の発展のための技術者確保と育成
貴社の強みと事業環境はいかがでしょうか。
会社設立時からオープン系の技術を蓄積しており、最近では認証やデータ分析に関する技術も蓄積されるようになり、これら技術を有する人材が多く在籍していることが、今、大きな強みとなっています。
昨今、「デジタルトランスフォーメーション」「SoR to SoE」といった言葉が頻繁に飛び交うようになりましたが、そのベースとなるクラウド化の潮流もハイブリッド、マルチ(クラウド)へとシフトしてきています。従来から当社の強みであったITプラットフォームの設計・構築技術、システム運用・監視基盤などのプロダクトの重要性はますます高まっています。そして、IoT(Internet of Things)ですべての仕組みがつながるデジタル時代では、従来にも増して高信頼、高性能が要求されるようになりますので、今以上に技術力を磨き、強みを伸ばしていくのは必定です。
また、ソフトウェア関連事業について、当社技術者の多くはNTTデータのプロジェクトに参画していますが、昨今のデジタルビジネスに関連したプロジェクトを成功に導くには、先端技術に対応できる能力の高い技術者が必要となっています。高度技術者の採用にも力を入れていますが人材マーケットにおけるIT人材、技術者の需要はかなり高く、不足傾向は当面続くと思いますので、当社においては従来にも増して人材開発・人材育成に力を入れていくつもりです。
さまざまなプロダクト、ソフトウェアについて、今の個別技術やその技術の流れに追随できるスキルを伸ばすことは当然ですが、技術者全員がプロジェクトマネジメント(PM)をできる能力も身につけさせたいと考えています。
セキュリティ事業については、コンサルティングを中心に着実にビジネスの足場を築いてきており、従来から認証や監視・管理(SIEMやSOC/IR)の独自サービス、プロダクトもリリースしています。
今後の展開について教えてください。
設立20周年である2019年に、プラットフォーム、ソフトウェア、セキュリティの3事業本部に組織再編し、事業の三本柱を明確にしました。また、営業についても、それぞれの事業領域、技術領域を横断的に連携させ、お客さまのご要望やご期待にワンストップで総合的にこたえる責任部門、営業統括本部を新設しました。
プラットフォーム事業本部については、ベンダ・プロダクトや基盤要素技術に対する知見と構築力を集約することで、プロダクト導入・システム設計から維持までのトータルソリューションを提供するとともに、クラウド系のプロダクト、サービスのラインアップを強化し、ビジネスの拡大を図っていきます。
ソフトウェア事業本部については、プロジェクト参画型のビジネスの継続に加え、アジャイル開発、さまざまなモノやイベントをデータ化し処理するデータフィケーション、SRE(Site Reliability Engineering)などを駆使したSoE対応、技術サポートを強化していきます。
また、ソフトウェア開発とプラットフォーム関連の技術・知見の結集に加え、PM力の強化を図り、新規ビジネス(プロダクトやサービス)の開発も加速します。
この事業領域では人月工数をベースとする稼働提供型ビジネスから、プロダクトやサービスの提供を中心とした高収益ビジネスモデルへの転換を図るのがねらいです。
セキュリティ事業本部については、高度化するサイバー攻撃への防御のみではなく、侵入されることを前提としたレジリエンス、およびクラウドシフトに向けた最新技術・プロダクトを獲得し、サイバーセキュリティ経営を実現するためのコンサルティング能力、およびプロダクト販売から運用までのトータルソリューション能力の強化をめざします。また、トライアル中のものを含め、プロダクトを整理し、ブランド強化を図っていきます。
現在の売上も、500億円に手が届くところまできており、次の10年先、長期的にはこれを1000億円としたいところです。
次の目標に向けて進むには社員の活躍が重要かと思います。貴社の雰囲気を教えてください。
プラットフォームや基幹ソフトウェアの技術に長けている技術系会社・超理系の会社というイメージがNTTデータグループには根付いていると思います。まさに他のNTTデータグループの会社とは異なりアプリケーション(AP)領域ではないところでビジネスを行っています。1200名いる社員の中でSEの数は70%強です。ITシステム開発の根幹を押さえる技術者を育て、そろえ、供給することもNTTデータグループにおける当社の大きな使命でもあります。
先に述べた事業を伸ばすことも、このNTTデータグループにおける使命を果たすことも、まさに当社においてその一番重要な経営資源が人材、社員です。
人材育成には今まで以上に力を入れ投資を行うつもりですし、社員がそれぞれの役割や仕事を通じて自己実現する、各々が自ら成長している、ということを実感できる組織風土、文化を形成していきたいと思います。そのために給与制度や働き方改革、福利厚生の充実等、NTTデータグループ内においても先駆的な取り組みも行います。
“NTTデータ先端技術”という名前に恥じないようさらに洗練された「技術者」の会社にしていきたいと思います。
担当者に聞く
外販ビジネスの推進に大いに期待を寄せるセキュリティ事業
取締役執行役員 CISO
セキュリティ事業本部長
山岡 正輝さん
担当されている業務について教えてください。
私は現在、セキュリティ事業本部を所掌していると同時に基盤ソリューション本部も所掌しています。3つある事業本部の2つをみていますが、本日はセキュリティ事業本部の話をさせていただきたいと思います。
セキュリティ事業は、1999年にNTTデータ・セキュリティという会社で事業を始めたのが最初の取り組みで、2011年にNTTデータ先端技術と合併し、継承されてきました。NTTデータ先端技術では、基盤系のストレージ、ネットワーク、サーバなどをベースとしたビジネス展開をしておりましたが、そこにセキュリティが加わることにより、お客さまに対して新たな付加価値を提供できるかたちとなりました。
事業は、監視・SOC(Security Operation Center)・診断といったソリューション関連、ISMS(Information Security Management System)取得等に関するコンサルティング関連、インシデント発生後の解析・復旧といったレジリエンス関連の3領域で展開しています。これまでセキュリティというと侵入やウイルス等からの防御が中心でしたが、北米では侵入等は100%防げるものではなく、何らかの侵入等がなされるという前提で、インシデント発生後の復旧等のレジリエンスが注目されるようになってきており、日本でも同様に事業領域も少しずつシフトしてきています。また、当社には優秀なエシカルハッカー(高い倫理観と高度な技術を持つハッカー)が在籍しており、お客さまのネットワークやシステムの脆弱性を発見し、コンサルティングを行う、といったビジネスも展開しています。
ご苦労されている点を伺えますか。
セキュリティ事業を始めたころは、世の中に(情報)セキュリティという概念そのものが認知されておらず、それに対して投資すること自体も理解されない状況でした。メディア等で個人情報漏洩等のインシデントが報道されても、自分のところは関係ないという雰囲気もありました。いったんインシデントが発生すると、その対策のために当社のチームが呼ばれることはあるものの、ほとぼりが冷めると忘れ去られ、どこかでインシデントが発生すると再び盛り上がる、といったことの繰り返しでした。もちろんお客さまへセキュリティの重要性を何度も説明してきてはいましたが、なかなかビジネスに結びつくことがなく、事業として難しい領域でした。
2003年に、日本で個人情報保護法が成立・一部施行されたのに伴い、企業にも同法への対応も求められるようになり、こうした社会環境の変化の中でお客さまにおける認知は進んできました。一方、企業における投資の話になるとどうしても費用対効果の話になり、セキュリティ対策は直接的な利益やコスト削減を生み出すものではないため、地味なビジネス展開をせざるを得ない状況はしばらく続いてきました。これは当社だけの話ではなく、同業他社も同様な状況でした。
今後の展望について教えてください。
これまで当社におけるセキュリティは、プラットフォームやソリューションといった、他のビジネスに付加価値をつけるかたちのビジネス展開が中心でしたが、セキュリティとして単独でのビジネス展開を行う機会も増えてきています。現在当社は、NTTデータグループ向けの仕事がほとんどを占めており、そこから外販ビジネスの割合を大きく増やしていこうという動きにあります。こうした中、独自のサービスやプロダクトを有するセキュリティは、外販ビジネスを推進する立場として大いに期待されている分野であると認識しています。
こうした環境の中、レジリエンス関連については、今後市場がこちらの方向に向いてくることもあり、そこに対応するべく強化を図っていきます。ソリューションについては、シングルサインオン等の認証系のパッケージ商品がすでにあり、そのほかSOC等のサービス・プロダクトもあります。今後はこれらに関するチームを増強し、1つでも多くのオリジナリティのあるプロダクト、サービスを出していきたいと考えています。このようなプロダクトやサービスは、まさに外販としての基盤をなすものです。ISMS系のみならず、脅威の特定・防御に関してもお客さまにコンサルティングをしており、これについては継続してお客さまに外販していきます。
当社のセキュリティ事業については、対策のコンサルティング、脅威の特定・防御に関するコンサルティング・実行、侵入の検知から対応・復旧までのレジリエンス、そしてこれらを下支えする各種プロダクト・サービスに至るまで、フルレンジでお客さまに対応していくことができます。これを活かすよう、営業体制との連携やブランド強化を図りつつ、外販増をめざしていきます。
NTTデータ先端技術 ア・ラ・カルト
20周年イベント
創立記念日である8月3日は、午後を特別休暇とする制度があり、4~5年前からこれを利用してイベントを行っているそうです。2019年は会社創立20周年を迎えたため、8月23日に祝賀イベントを水天宮の近くにあるロイヤルパークホテルで開催し、総勢約550人が結集し、さまざまなイベントや芸能人を招いて盛り上がりました(写真1~3)。イベントは原則社員の日頃の貢献に対するねぎらい、おもてなしの場であるため、役員の方々には社員のためにいろいろ働いていただこうという企画で実施したそうです。
写真1
写真2
写真3
地域との密着
事業活動だけではなく豊かな地域社会づくりに貢献するために、また地元の月島弐之部町会に密着した企業となるよう、住吉神社例祭への参加や周辺地域の清掃活動として「中央区クリーンデー」に参加するなど、周辺地域へ溶け込もうと力を入れいるそうです(写真4~6)。特にお祭りでは、社員がびしょ濡れになってお神輿を担ぐということで、ついその盛り上がりを想像してしまいました。
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職場見学DAY
写真7
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