グループ企業探訪
モバイルとソリューションを組み合わせ、お客さま、地域社会の課題解決のため社会・産業DXを推進していく会社
ドコモビジネスソリューションズは、NTTコム マーケティングを母体としてNTTドコモグループ再編により、法人事業ブランド「ドコモビジネス」を冠して、2022年7月に設立されました。NTTドコモ、NTT コミュニケーションズ、そしてNTTグループ各社の技術とサービス・ソリューションを組み合わせ、地域のお客さまの課題解決や地域協創に貢献していく思いを、事例を交えながら坪内恒治社長に伺いました。
ドコモビジネスソリューションズ
坪内恒治社長
全都道府県への営業拠点と正確かつ丁寧な法人サポート
■設立の背景と会社の概要について教えてください。
ドコモビジネスソリューションズは、中堅・中小企業向けの営業、フリーダイヤルやナビダイヤル等の提案営業支援・バックヤード処理支援、代理店等の販売支援の各業務を主業務として2012年に設立されたNTTコム マーケティングにNTTドコモグループが加わり、法人事業ブランド「ドコモビジネス」を冠して、2022年7月にNTTコミュニケーションズ(NTT Com)の100%子会社として設立されました。
ミッションステートメントとして、「モバイル・クラウドファーストでの先進ソリューションやパートナーとの協創により、Smart X/B2B2Xビジネスを拡大させ、社会・産業の構造改革の実現」をビジョンに、「社会・産業の構造変革と新たなライフスタイル創出により、「あなたと世界を変えていく。」の実現」をミッションに、「DX活用を支援し、お客様、そして地域の課題解決への貢献」をバリューに掲げ、NTT Comとともに中堅・中小企業や地域社会のデジタルトランスフォーメーション(DX)や課題解決の支援をしています。
ドコモビジネスソリューションズ設立により、5G(第5世代移動通信システム)・IoT(Internet of Things)に代表されるNTTドコモのモバイル商材と、ネットワーク、クラウド、セキュリティなどのNTT Comの各種サービスをワンストップで提供することにより、お客さまの期待におこたえすることになり、事業のケイパビリティを高めています。
■具体的にどのような事業展開をしているのでしょうか。
「コンサルティングから、プランニング、ソリューション、サポートまでワンストップで、お客さまに寄り添うDX支援」「ドコモビジネスの総合力で課題解決」「本社および8支社・44支店網による地域密着」の3つの強みを活かして、主として法人営業と事業サポートの2つの領域で事業展開しています。
法人営業については、本社のソリューシヨン営業部、北海道、東北、東海、北陸、関西、中国、四国、九州の8支社および各都道府県に配置された支店が、NTT Comで中堅・中小企業・地域の営業を担当するソリユーション&マーケティング本部、および各支社と連携し、一体となって全国地方自治体や法人顧客へ、モバイルやクラウドを活用したソリューションの提案、パートナー企業のお客さまへの支援などの営業活動を展開しています。これまでのNTTドコモ、NTT Comの顧客層へのクロスセルによる収益拡大に加え、未リーチ層へのアプローチによる顧客拡大を図っています。
事業サポートについては、本社の営業推進部を中心に、法人モバイルサービスの開通、端末キッティング、問い合わせ対応、ネットワークや音声系サービスの営業支援、5G・IoTサービスの提案支援、インサイドセールスなど多岐にわたり、すべての顧客とNTT Com法人事業全体のサポート業務を行っています。
お客さまとともに、社会・産業にイノベーションの創出と、地域社会でのウェルビーイングへの実現
■事業を取り巻く環境はどのような状況でしょうか。
私たちの営業展開の対象である中堅・中小企業においては、人手不足が深刻化しており、それに伴う後継者不足や市場の縮小等により、事業継承も大きな課題となっています。こうした諸課題への対応や地域活性化を視野に入れて、自治体や企業が連携した地域社会のDXに関する取り組みが注目されていますが、DXを行うためのノウハウ不足、有スキル人材の不在、特に利用者側のICT環境の整備が進んでいない等の課題があります。
そこで私たちは、「お客さまとともに、社会・産業にイノベーションの創出と、地域社会でのウェルビーイングへの実現」を掲げ、特に、自治体、医療・病院、地方銀行・信用金庫・金融、文教・学校を軸に業界別ソリューションを展開することで、中堅・中小企業や地域のDXを支援しています。
■どのような取り組み事例があるのでしょうか。
代表的な事例として群馬県長野原町の「Local Government Platform」と聖マリアンナ医科大学病院救命救急センターの「ローカル5Gを活用した地域医療の高度化」があります。
(1) 長野原町の事例(1)
長野原町では、ローカルコミュニティにおいて人と人との関係性がかなり希薄化しているため、コミュニティ再構築のために、「つなぐ」「育てる」を町のスローガンに掲げて取り組んでおり、これを推進する中で、地域による情報格差が課題となっていました。
そこで、すべての機能をモバイルファースト・クラウドファーストで提供する、行政と地域事業者向けの運用管理システム「Local Government Platform」を開発し、住民や観光客向けに町の行政情報・観光情報・災害情報を一元化して配信する「長野原町公式アプリ」をリリースしました(図1)。これにより、従来よりも迅速かつ効率的な情報配信が実現され、スマートフォンの無料貸与やスマホ教室などの実施で高齢者のリテラシーが向上しました。2022年度には体重や血圧などの管理サービスで歩いた歩数に応じて地域の独自特典と交換できる「ながのはらまちウォーキングポイント」の付与、2023年度にスマートウォッチと紐付ける等、ヘルスケア分野への展開を推進しています。なお、この取り組みは、デジタル田園都市国家構想にも採択されています。
(2) 聖マリアンナ医科大学病院救命救急センターの取り組み(2)
一次・二次救急では対応できない重篤患者や特殊疾病患者を受け入れ、より高度な救急医療を提供する、三次救急医療機関である聖マリアンナ医科大学病院救命救急センターでは、「音声に頼った情報のみでは、患者の現状と齟齬が生じることがあり、適切な搬送先・転送先の選定においては不十分である」「複数の専門医を院内に常駐させる体制の維持は、医師の働き方改革との両立が困難であるため、救急医療の質の維持と向上の障害となる」が課題となっています。
これに対応するために、NTT Comとドコモビジネスソリューションズは、学校法人聖マリアンナ医科大学、トランスコスモス、川崎市と共同で、ローカル5Gを活用した救急医療の強化をめざした実証実験を行いました(図2)。ローカル5Gネットワークを構築し、救急車と聖マリアンナ医科大学病院救命救急センター(三次救急)、地域医療機関(二次救急)をつなぎ、救急車内で活動中の救急救命士がウェアラブルカメラを使って音声と映像で患者の映像情報を共有しました。三次救急である聖マリアンナ医科大学病院では、より正確な患者の情報を得ながら、過不足のない効率的な受け入れの準備を開始でき、専門医が不在である二次救急へ搬送された後の診療における専門医への相談や、専門的医療が必要な病態と診断され、救急車を用いて三次救急へ転送する場合にも、三次救急の専門医が救急車で移動中の患者の映像を共有しながら、遠隔支援によって救急車内での急変時対応の質を担保できる可能性を確認することができました。
■今後の展望についてお聞かせください。
地域に根差した営業活動により、ドコモグループの中期計画に掲げている2025年度法人セグメント売上高2兆円以上達成への貢献、およびNTTドコモ、NTT Com、そしてNTTグループ各社の技術とサービス・ソリューションを組み合わせ、お客さまや自治体のDXを支援し、地域社会のウェルビーイングの実現に貢献していきます。
■参考文献
(1) https://www.docomobs.com/case/gunmanaganoharamachi/
(2) https://www.docomobs.com/case/marianna-u/
担当者に聞く
Data Driven Salesで新たな価値の提供と地域社会・経済への貢献
ソリューション営業部
営業戦略部門 担当課長
明時 達也さん
■担当されている業務について教えてください。
当社のソリューション営業部では、2023年2月、Data Driven Sales推進チームを立ち上げ、SFA(Sales Force Automation)などの社内に蓄積したデータを収集・活用し、データを基にインサイトと価値の提供を通じてセールスの高度化を実現する取り組みを開始しました。組織横断のData Driven Salesプロジェクトを開始、ソリューション営業部の全支店・部門からプロジェクトに参画してもらい、メンバー全員で2023年度以降の成長飛躍に向けた基盤作りやデータの蓄積、To Beの構想を策定しました。私はそのプロジェクトリーダーとして、策定したもののアウトライン構築から、戦略、業務への反映、システムの設計を行いました。
システムの構築にはNTT Comのデジタル改革推進部にも協力していただき一緒に取り組み、並行して、分析に必要な営業現場でのデータ入力の定着化を推進しています。現場と一体となった取り組みを行うため、「Data Driven Sales推進チームと支店の推進リーダーを介した意見集約」、営業活動データの量と質の向上のため、「モニタリング状況の共有」により、データ入力の定着化を実現しました。
私が所属するData Driven Sales推進チームでは、入力・収集したデータを基に、可視化・分析に取り組みました。SFAでのパイプライン(PPL)マネジメントを行うダッシュボードに加え、BI(Business Intelligence)ツールを活用して、受注・PPLデータがさまざまなセグメントで分析できるダッシュボードを展開しました。マネジメント層やセールス担当によるタイムリーなKPI・モニタリング指標の確認など、これらのデータを基にさまざまな切り口でデータを分析し営業戦略の策定に活用しています。
■今後の展望について教えてください。
データドリブンなアプローチを通じて、受注データから今後の収益予測、分析結果に基づく営業活動への示唆、業界に合わせたソリューションの展開などセールスの高度化を推進していきます。
当社の生産性のさらなる向上を進めながら、顧客へ新たな価値の提供を行い、企業の成長を支援していきたいと考えています。収集したデータを分析し、効果的に社内展開することで、「地域・社会全体にICT・DXを提供し続ける」、「ICT・DXによる地域社会・経済へ貢献し寄り添い続けること」、その発展につながる重要な一翼を担っていきたいです。
内製開発ツール「RPAka」でキッティング業務の大幅稼働削減を実現
営業推進部
ソリューションサポート部門
プレミアムサービスセンター
池田 智之さん
■担当されている業務について教えてください。
プレミアムサービスセンターは、法人のお客さまが利用するスマートフォン端末・タブレット端末等の紛失対応や故障対応、問い合わせ業務などの運用管理業務を、一元窓口で代行する「モバイル管埋サービス(モバ管)」を提供しています。私はその中で、お客さまから受領した故障端末をメーカへ発送し、修理完了後の故障端末に「キッティング」を行いお客さまにお返しする業務を担当しています。
中でも、端末に各種設定やアプリのインストールなどを行いお客さまがすぐに利用できる状態にする「キッティング」業務については、1台当り約45分かけて月間で約4000台対応する等、多くの稼働を要していました。数10桁に及ぶ英数字を入力していたので、誤入力やチェックミスも起こりやすく、発送の遅れや修理遅延につながることもあり、課題解決に向けたDXを推進するためのプロジェクトが立ち上がりました。
当初はQRコードリーダやRPA(Robotic Process Automation)ツール等、市販の製品を試してみましたが、モバ管業務の要望をカバーできるツールが見当たらなかったため、スキル保有者を中心とした開発チームを編成し、内製にてツールを開発・運用することに方向転換しました。キッティング業務における設定・インストール工程の自動化ツールを開発し、特に多くの稼働を要していたキッティング業務については、「RPAka(RPA kitting assistant:アルパカ)」というツールを実業務の中でチューニングし、キッティング作業が約10分で行えるようになり、年間約42500時間の稼働削減が実現されました。さらに、ツールに起因するオペレーションミスもなくなり、お客さまへのサービス向上につながっています。
■今後の展望について教えてください。
RPAkaが社内で周知されてきたことにより、端末キッティングを行う他の大規模センターにも導入もされました。このような事例を積み重ねる中で、将来的にはRPAkaのパッケージ化も検討し、モバイル管理サービスの新収益モデルとなるツールとして育てていきたいと考えています。現在、特許も出願中であり、今後に向けて、内製化を充実させ、業務のさらなる自動化を行い、生産性向上や業務効率化に貢献していきたいと思います。
ア・ラ・カルト
■第32回地球環境大賞 奨励賞受賞
「離島発×全国初、「持続可能な」スマート棚田農法の実証」の取り組みが、第32回地球環境大賞 奨励賞を受賞したそうです(2024年4月4日授賞式)。地球環境大賞は、地球温暖化の防止、循環型社会の実現に寄与する新技術・新製品の開発、環境保全活動・事業の促進、持続可能な社会システムの探求、地球環境に対する保全意識の一段の向上を目的に、1992年(平成4年)「産業の発展と地球環境との共生」をめざして創設されました。
この取り組みは、生産者、自治体、教育機関、研究機関、パートナー企業などと協創して推進しており、「ドローン空撮による測量」「高度水管理システム」「水田除草ロボット」の3つのICTソリューションからなる「スマート棚田農法」により、減農薬栽培、無農薬・無化学肥料栽培の推進に向けたコスト低減、労力軽減、収益向上などを検証しているものです。
新潟支店で対応しましたが、農業経験者はおらず自分たちなりに必死で勉強するものの、分からないことは、気負わず素直に質問し指南いただき、生産者の「声」に積極的に耳を傾けました。そうしているうちに信頼関係が築け、40人という大所帯でも良好なチームワークが構築され推進力を高められたように思うとのことです。
「受賞は農業の知見を高めていただいた生産者をはじめ、自治体やパートナー企業、専門家の方々のおかげです。目的達成に向けて、皆で試行錯誤することが非常に多かったので、プロジェクトメンバーにもうれしい報告ができました。実証は続いているので、受賞を糧にさらなる成果を出せるよう邁進していきたいと思います」との受賞の弁をいただきました。