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2026年3月号

グループ企業探訪

第287回 NTTスマートトレード株式会社

多様な決済・送金サービスをワンストップで提供するFinTech企業

FinTech業界はデジタル通貨やブロックチェーンの普及等、急速な技術革新と規制環境の変化により、金融サービスのあり方を根本から変革し続けています。特に日本市場においてもキャッシュレス決済やデジタルバンキング、資産管理アプリ、デジタル給与などのサービスが急成長し、従来の金融機関との協業や競合が活発化しています。そういった市場環境の中、決済ゲートウェイサービスにより、法人・個人に各種決済・送金サービスとその周辺業務をワンストップで提供することで成長し続けてきたNTTスマートトレードの福田直亮社長に提供するサービスの特長と今後の展開について伺いました。

NTTスマートトレード株式会社
福田直亮社長

「エッジの効いた決済・送金ソリューション」を信頼性高く、迅速で、安全な金融サービスとして提供

■設立の背景と会社の概要について教えてください。

NTTスマートトレードは、2006年にNTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)の100%子会社として設立されたFinTech*1企業です。私たちは、法人および個人のお客さまに対して、エッジの効いた決済・送金ソリューションを信頼性高く、迅速で、安全な金融サービスとして提供することを使命としています。主な事業は「決済代行」「送金」「電子マネー」の3つを柱で展開しており、特に多様な決済手段をワンストップで提供する決済ゲートウェイを活かした決済代行は当社の主力事業です(図1)。現在、幅広いお客さまにご利用いただいており、業界経験豊富なプロフェッショナルが集う精鋭組織として、内製による高い開発力ときめ細かなサポートを強みとして活動しています。

*1 FinTech:金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、金融サービスと情報技術を結びつけたさまざまな革新的な動きのこと。

■どのような事業展開をしているのでしょうか。

当社の主力である決済代行サービスは、法人向けと個人向けに大別されます。個人向けには電子マネー「ちょコムマネー」や「ちょコムポイント」、オンライン送金サービス「ちょコム送金」や「学費公共スマート払い」を提供しています。一方、法人向けには「クレジットカード決済」や「コンビニエンスストア決済」「口座振替」「電子マネー(ちょコム)決済」といった決済・送金サービスを中心に展開し、お客さまにさまざまな決済手段を提供するだけなく、個別ニーズに対応できるソリューションも提供しています。その中の電子マネー(ちょコムeマネー)を活用した独自サービス「ちょコムクレジット支払い」は、ネットショップでカード情報を渡すのが怖いといった利用者の不安を解消しつつ、加盟店にとっては決済コストを抑えやすい仕組みとして高い評価をいただいています。加えて、「学費公共スマート払い」は、高額な学費や公共料金を、セキュアかつ簡単にオンラインでクレジットカード決済できるサービスで、クレジットカード利用による資金負担の軽減や窓口に行く手間を省く利便性を提供しています。このように、当社は“かゆいところに手が届く”実用的なサービスで独自価値を創出しています(図2)。

「決済・送金を取り扱う企業」として、経済の“血液”を流す役割を担う

■市場環境はどのような状況でしょうか。その中で、どのような点に注力されていますか。

決済・送金市場にはメガPSPをはじめとした強力な競合が多数存在し、業界の競争は激しさを増しています。当社は大手と同じ土俵で戦うのではなく、専門性と機動力を活かし、独自性の高いソリューション提供によって存在感を発揮しています。サービスをご利用いただいている中小企業は、日本企業の99.7%を占める日本経済の屋台骨です。地域の雇用や生活を支える存在である一方で、紙の請求書や銀行振込に依存した業務は長年にわたり時間・コストの負担を強いてきました。こうした課題を背景に、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進や資金繰りの改善は中小企業における重要テーマとなっています。デジタル送金やキャッシュレス決済は、業務効率化だけでなく、災害時の非接触取引や資金移動の透明性向上といった社会課題の解決にも寄与する、いわば現代のインフラです。当社は、年間6000億円に上る決済・送金を取り扱う企業として、経済の“血液”を流す役割を担っていると考えています。
現在、特に力を入れているのが、第一種送金免許の取得であり、2025年度中の取得を目標としています。この免許は取得難易度が極めて高く日本国内でもわずか5社しか保有していないものです。取得すれば送金額の上限が撤廃され、銀行と同等レベルの送金業務が可能になるため、サービス展開の幅が飛躍的に広がります。同時に、マネーロンダリング・テロ対策を含んだ厳格な運用体制を構築することで、企業ブランドや信頼性の向上にもつながります。
社内においては、2025年11月に新オフィスへ移転し、コミュニティスペースを整備するなど職場環境の刷新を図りました。当社はリアルコミュニケーションを重視したオフィススタンダードの勤務形態(必要に応じてリモートワーク可)を採用しており、行間まで伝わる密度の濃い対話が高い生産性を生み出す基盤となっています。AI(人工知能)活用と業務のDX推進にも積極的に取り組み、幹部自身がAIで競合分析レポートを作成したり、日常業務への活用を促すための勉強会を開催したりと、組織全体でデジタル・リテラシー向上を進めています。業務プロセスの可視化からAI-OCR導入、Business Intelligenceツール整備まで、具体的な改革も着実に実行されています。加えて、オフィシャルサイトのリニューアルを通じたデジタルマーケティング強化も進行中で、「仕組みで売る」体制の構築によって事業のレバレッジを高めていきます。

■今後の展望についてお聞かせください。

当社は今後も、FinTechの力を通じて日本の中小企業の成長を支え、NTTドコモビジネスにおける金融領域の強化にも貢献していくことを事業の大きな方向性としています。中小企業にとって「DX推進」や「資金繰り」は依然として大きな課題であり、当社の決済・送金サービスがその改善を後押しできる余地は広がり続けています。第一種送金免許の取得は、今後の事業展開を左右する重要なマイルストーンです。このライセンスを活用した新たな送金サービス・ソリューションにより、顧客提供価値を高めてビジネスを拡大していきます。
また、既存の事業においては価格競争に巻き込まれることなく、当社ならではの機動力と独自性を武器に堅実かつ着実に事業拡大させていきます。デジタルマーケティングの強化によって汎用サービスを効率的に拡大し、直営のリソースは深い課題解決に集中できる体制へと変革を進めていきます。キャッシュレス決済比率が42.8%へと伸びる中、日本のキャッシュレス化や地域経済の活性化に貢献する企業として、これからもNTTドコモビジネスグループとともに日本を元気にする存在であり続けたいと考えています。

担当者に聞く

顧客ニーズへ柔軟に対応できる内製化されたアプリケーションを開発

情報システム部 部長
岡 泰之さん

■どのような業務を行っているのでしょうか。

システム開発・運用を中心に、法人のお客さまとの連携に関する技術支援や自社の情報セキュリティ対策など、幅広い業務を担当しています。特にアプリケーション開発は内製化を強みとしており、顧客のニーズを迅速に反映できる柔軟な対応力が自慢です。また、運用面では細やかなサポートを提供し、信頼を積み重ねています。一方、少人数で多様な業務を担うため、効率化とマネジメントの強化は課題です。これに対しては、AIを補助的に活用し、業務支援や自動化を進め、負荷軽減と品質向上をめざしています。

■今後の展望についてお聞かせください。

今後は、開発力の強化と社内業務の効率化の二軸を推進していきます。開発面では、アプリケーション開発のスピードと品質を高めるため、開発プロセスの見直しや標準化を進め、生成AIはコードレビューやテスト補助などのサポートに活用していきます。これにより、第一種資金移動業における送金サービスの拡張やワンストップでのサービス提供を加速し、顧客体験を向上させます。一方、社内業務では経理や営業活動の効率化をめざし、請求書処理や入金確認の自動化、BIツールによるデータ活用を進めます。これらの取り組みにより、業務スピードと精度を高め、全体の生産性向上を実現していきます。

法的視点からのビジネスリスクの見極め

管理部 部長
佐々木 孝さん

■どのような業務を行っているのでしょうか。

当社は決済ビジネスおよび送金ビジネスを営んでおり、常にシビアな法的視点を持ちながら事業を展開しています。その中で管理部は、法令遵守を中核とし、ビジネスリスクの見極めおよび金融庁への対応など、コンプライアンスの推進・維持・管理を行っています。管理部が特に注力しているのはAML(Anti-Money Laundering)/CFT(Countering the Financing of Terrorism)*2等法令に対する適応強化です。決済および資金移動業は金融犯罪リスクを伴い、社会的責任が大きい業態であるため、国内規制の強化に対応することが不可欠です。このため、常に課題として挙げられるのが、金融を含めた法的な規制改正への迅速な対応、システムや人材の高度化、そして社内全体へのコンプライアンス意識の浸透です。こうした課題に対して、管理部では金融庁や業界団体との情報連携を強化し、最新の規制動向を迅速に把握する体制を整えています。さらに、外部専門家との協働やシステム改善を通じて、コンプライアンス体制の強化を進めることで、現状のリスクを最小化し、安定した事業運営を行っています。

*2 AML/CFT:マネーロンダリングとテロ資金供与を防止するための組織的な仕組みのこと。

■今後の展望についてお聞かせください。

法令遵守の徹底を基盤としながら、より高度なガバナンス体制を構築し、事業の信頼性を一層高めることです。そのためには、リスク管理の精度向上と規制動向を先取りした柔軟な対応力が不可欠と考えています。具体的なアプローチとして、AIやデータ分析を用いた取引モニタリングの高度化により、リスク検知の効率と精度を高めるとともに、業務負荷の軽減を図ります。また、社内全体でのコンプライアンス意識をさらに浸透させるため、教育・研修の強化にも注力していきます。

最適な決済・送金スキームを提案し、他社にはない差別化した付加価値を提供

アライアンス営業部 マネージャー
萩原 浩司さん

■どのような業務を行っているのでしょうか。

アライアンス営業部に所属し、主に「決済・送金事業」を担当しています。具体的には、新規加盟店や販売パートナーの獲得、既存加盟店・販売パートナーへのリテンション活動、調達事業者(クレジットカード会社・収納代行事業者)の拡大・対応、新規ビジネスの企画・立案など、幅広い営業活動を行っています。クレジットカードや口座振替、コンビニ決済、電子マネー、BPO(Business Process Outsourcing)など多様な商材やサービスをワンストップで提案し、顧客のニーズに合わせた最適なソリューションを提供しています。
現在、特に注力しているのは「新規加盟店の獲得」「既存加盟店のリテンション強化」「調達コストの最適化」です。これらに注力する背景には、サービスの差別化が難しい領域での価格競争、顧客要望の多様化・高度化、そしてコスト構造の変化といった課題が挙げられます。これらの課題への対応として、NTTブランドの信頼性、システム開発やBPO運用の柔軟なカスタマイズによる対応力を活かし、顧客ごとに最適な決済・送金スキームを提案することにより、他社にはない付加価値を提供し差別化を図っています。また、カード会社やBPO事業者などとの継続的な交渉を通じて、調達コストの低減にも努めています。

■今後の展望についてお聞かせください。

今後は、決済・送金事業のさらなる拡大と顧客満足度・収益性の両立をめざします。また、公共サービスやサブスク型ECなど、継続的な決済が見込める加盟店獲得のために販売パートナーやNTTグループ、サービスプロバイダとの連携を強化し、案件発掘力をさらに高めます。SEO対策やインバウンド施策も継続的に強化します。新たに始まる第一種資金移動業をベースとした送金サービスにおいては、パイロットユーザの獲得をめざします。今後も市場環境や顧客ニーズの変化へ柔軟に対応し、営業活動の質と効率を高めることで、持続的な成長と収益拡大をめざしていきます。

ア・ラ・カルト

■15年ぶりのオフィス刷新、新しい働き方へ

創業から15年間、拠点にしていたオフィスビルが、周辺の再開発計画に伴い取り壊されることになりました。これを機に、NTTスマートトレードは新しいオフィスへ移転しました。旧オフィスでは、NTTドコモビジネスから譲り受けた古い什器を使い続け、会議室不足や休憩スペースの欠如、デスクトップPCと有線LAN、電話はビジネスフォンという、ひと昔前の環境でした。社内ではNew Officeプロジェクトを立ち上げ、「Flexible」「断捨離」「DX」をキーコンセプトとして、誰もが働きやすい環境づくりを検討してきたようです。
新オフィスでは、コミュニケーションを促すデスク配置や打ち合わせスペース、充実した会議室と休憩室を整備。全員がノートPCを使用し、社内ネットワークはWi-Fiへ、電話はクラウドフォンへ刷新したとのこと。さらに、植栽を取り入れた癒しの空間演出も加えています。こうして2025年11月、真新しいオフィスが完成し、NTTスマートトレードは新たな一歩を踏み出しました。「新生NTTスマートトレード」として、この場所から事業拡大をめざしています(写真1)。新しいオフィスにはソファーや小上がりのあるラウンジ(休憩室)をつくり、お昼休みにはくつろぎながら昼食や休憩がとれます(写真2)。オフィスの周辺にはランチに使えるお店が豊富です。神保町はカレーで有名ですし、ラーメン激戦区でもあり、中華料理店も多数あります。また、九段下周辺では複数個所にキッチンカーが出店しており、お昼の楽しみの1つとなっているようです。

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