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2026年5月号

特集

NTT技術史料館25周年記念──過去と未来をつなぐ知の架け橋

NTT技術史料館一般公開の運営およびOB運営サポーターの活動

NTT技術史料館は、開館から10年を迎えた2010年に第一次グランドデザインが制定され、それまでの完全紹介予約制から、より開かれた運営方針へと変わりました。そして、一般公開およびOB運営サポーター制度が始まってから15年、現在では多くの来館者が訪れるようになりました。本稿では、一般公開の開始から現在までの取り組み、OB運営サポーターの活動(ガイド、動態展示復元等)について紹介します。

岩田 玲子(いわた れいこ)†1/塚田 雅人(つかだ まさと)†1
古海 美穂(ふるうみ みほ)†2/横瀬 史拓(よこせ ふみひろ)†3
NTT技術史料館(NTT-AT アイピーエス)†1
NTT技術史料館(NTTアドバンステクノロジ)†2
NTT技術史料館(NTT情報ネットワーク総合研究所)†3

一般公開およびOB運営サポーターについて

NTT技術史料館は現在、毎週木曜日・金曜日午後の2回一般公開を実施し、累計3万人を超える来館者をお迎えしています。来館者には当館の“名物”であるNTT-OBのボランティアガイド「OB運営サポーター」が手厚く解説を行い、好評をいただいています。最近では遠方からお越しいただく方や、交換手をされていた方が家族を連れての来館なども増えており、技術的な興味をお持ちの方から、ファミリーヒストリーを紐解く方など、さまざまな方々に来館いただいています。本稿では、2010年から始まった一般公開とOB運営サポーターについて紹介します。

2010年の運営方針転換

■完全予約紹介制からの方針変更

NTT技術史料館(史料館)の開館から10年を迎え、設備の老朽化対策や展示項目の更新、これからの史料館運営のあるべき姿を共有するため、5カ年計画のグランドデザインが策定されました。維持管理するだけでなく、さまざまな人やNTTグループなど外からの史料を「吸収」するとともに、中から外に向けても、史料公開や活動を通じて「発信」していく、「呼吸感」のある施設運営がコンセプトとして挙げられました。具体的な施策として挙げられた中で、本稿で扱うのが以下の2点です。
・一般公開の開始:社会への史料公開の促進として完全予約・紹介制の廃止
・OB運営サポーター制度の開始:持続的な運営への取り組みとしてOB技術者の支援協力(ボランティア)体制の確立

一般公開の開始

■開始概要

2000年の設立当初から史料館は完全予約・紹介制で来館者を受け入れてきましたが、2010年7月から、最終的には「予約不要で来館いただけること」を目標として、予約制の一般公開を開始しました。その後、対象を限定しての予約不要化、10月からは一般公開用に南門を開放し史料館へ直接来館できるオペレーションが可能となり、予約不要の一般公開(毎週木曜日・午後)が実現しました。
少しずつ来館者が増える中、2011年3月に東日本大震災が発生し臨時休館を余儀なくされましたが、館内の修繕を終え2011年10月には一般公開を再開しました。以降、順調に来館者数は伸び、要望の多かった公開日の拡大として2014年10月に金曜日午後の公開を開始し、現在に至ります(図)。

■東日本大震災の被害、節電要請への対応

2011年3月の東日本大震災では、史料館の一部展示物等が転倒、間仕切りのガラス板が損壊するなどの被害がありました。それらの修理や天井に吊り下げられていたETS-VI(通信衛星)の移設工事等のため、しばらくの間臨時休館としました。工事終了後は、節電要請に応じるため限定的な予約見学を再開し、一般公開はピーク時電力削減のため開館時間を従来の午後(13〜17時)から午前中に変更して実施するなどの対応を行いました。ピーク時電力削減対策での午前中の一般公開は2014年の夏季(7〜9月)まで継続しました。

■コロナ禍休館

2020年の新型コロナウイルス感染症の発生とその後の緊急事態宣言等により史料館も複数回にわたり臨時休館となりました。
手指消毒やソーシャルディスタンスなどの新たなスタンダードに即応し、またOriHime(遠隔操作ロボット)を使用して、OB運営サポーターが自宅からクイズや史料解説を行うイベントを開催するなど、新しい試みも行いました。
また、来館が難しい方に向けてインターネットでバーチャルに史料館を見学いただける「VR NTT技術史料館」を開設したほか、展示説明動画をNTT公式YouTubeチャンネルに登録し、ホームページでも公開しました。

一般公開施策

■一般公開でのシーズンイベントの実施

予約不要の一般公開が始まってからは、小中学校の長期休暇期間において「特別公開/スペシャルイベント」などさまざまなイベントを実施しています。OB運営サポーターやスタッフが特定の史料などを説明するギャラリートーク、テーマに沿って館内をめぐるスタンプ・クイズラリー、夏休み期間中の自由研究需要に応じるための自由研究シートなど、来館された方により深く興味を持って見学いただけるようなコンテンツを提供しています。

■案内ツール等の導入と研究所成果の活用

一般公開の来館者が充実した史料館見学をしていただけるように、さまざまなツールを取り入れてきました。
・音声ガイド:史料館設立時には自由見学の際での利用を想定して制作。各コーナーの展示内容の説明をしました(日英対応・現在使用中止)。
・タブレットガイド:音声ガイドに代わる展示解説ガイドとして設計。音声だけでなく映像で館内をガイドするほか、研究所成果である「かざして案内」を使用した展示史料解説も提供しました(現在使用中止)。
・NTTむさし(ロボコネクト):研究所成果のロボコネクトを受付サポートとして設置。Q&A対応や自由会話などをお楽しみいただきました(終了)。
・OriHime:遠隔操作ロボットとしてコロナ禍での一般公開・イベント時にOB運営サポーターが自宅からクイズや展示解説などを実施しました。現在でも一般公開時に活躍中です(メンテナンスにより中止している場合があります)。

■お客さまの声

・次世代の技術が実用化するには見えない努力と多大な時間を要していることが分かりました。
・これまで深く考えずに使っている通信には裏にもの凄い技術が詰まっていることが目に見えて分かり大変有意義な時間になった。
・開発品が展示してあり、先人の努力に対するリスペクトを感じるとても良い展示だと思いました。
・Iʼve been in a few technology museums before,but this one was the best! The exhibitions were very detailed and rich. We are very thankful for the guide.
・ケーブルから社内ネットワークまであらゆるものを自前で開発していたことに驚いた。

OB運営サポーター

NTT-OBの方々とはOB運営サポーターが発足する前から、子どもイベント対応などで協力いただくことがありました。2010年の一般公開の実施に向けて、現役スタッフが持ち得ない知識や経験を史料館で活かしていただくため、NTT-OBの方々に協力を仰ぎました。
現在では、一般公開やイベントでの展示解説、体験展示物の製作や保守、技術者マインド継承として語り部の会やNTT語り部シリーズ「温故知新」映像制作に協力をいただいています。

サポーター制度の発足

■日比谷同友会の協力・意見交換会

OB運営サポーター制度の発足にあたっては日比谷同友会通研支部事務局に全面的に協力いただきました。2009年9月から、有志の通研支部会員と史料館運営事務局とで複数回にわたる意見交換会を行い、主に技術的な知識や経験に基づく展示解説とする活動内容の骨子が固まりました*1。

*1 現在では日比谷同友会会員だけでなく、NTT-OBOGの方を対象に史料館ホームページで広く募集をしています。

■サポーター制度開始

2009年11月開催のミーティングにより「OB運営サポーター」の名称も決まり、具体的な展示解説ガイドを実施することとなります。12〜1月のトライアル期間を経て、2010年2月に開催されたNTT R&Dフォーラムでは、10名のOB運営サポーターがそれぞれの専門分野の展示説明を行うなど本格的に活動を開始しました。

OB運営サポーターの活躍

■一般公開・学生特別見学会・イベント時のガイド

一般公開のガイドでは、実際に研究や事業に携わったOBから直接話を聞くことができる、と参加者から高く評価をいただき、ご自身の経験を踏まえた豊富な知識による展示解説ガイドは史料館の名物となっています。OB運営サポーターの解説を確実に聴きたい!との要望におこたえして、2024年1月からは、毎週金曜日限定で予約制の「電伝探訪(OB運営サポーターガイドツアー)」を開始し、多くの来館者からご予約をいただいています。
学生特別見学会でもその知見を活かし、理系文系問わず学生の興味に応じてNTTの研究開発の歴史やご自身の研究への熱い想いを語っていただいています。

■お客さまの声抜粋

・現役時のエピソードを交えての展示品の解説が分かりやすく、解説者の知識の広さにも感心した。
・説明員の方の裏話がとても面白かった。
・展示を観るだけでは分からなかった内容の説明があって理解しやすくて良かった。
・OBの方の解説が大変面白く、3時間、大変充実した時間を過ごせました。
・OBガイド最高でした!

■東日本大震災の閉館中の史料整理サポート

前述のとおり、2011年の東日本大震災では史料館の一部に被害が発生し臨時休館を余儀なくされました。その後の節電要請のため、一般公開も予約制となりました。その間OB運営サポーターにはその知見を活かした、保管史料の整理や調査をお願いしました。その後、一般公開が従来の運用に戻ってからも、並行して史料整理・調査にご協力いただきました。

■復元体験展示物の作成

OB運営サポーターによる復元体験展示の代表的な例を紹介します。
(1) A形自動交換機 2013年
OB運営サポーターによる動態展示用の復元として初めて成功したのは「A形自動交換機」(写真1)のスイッチとコネクタの動態モデルでした。史料館の倉庫に眠っていた部品を集め、着想から2年かけて復元したものです。「来館者に交換機の動く姿を見てほしい!」という交換系のサポーターの熱い想いにより始まりました。
図書館の回路図集を読み解き、実物と回路図を突き合わせながら1本1本確認し配線、電話機を接続し動作したときの喜びはひとしおだったそうです。接続した4号自動式卓上電話機の調整は宅内系のサポーターが担当、そのほかのサポーターからの助言や応援により復元に成功したA形自動交換機は、今でも来館者に人気の体験展示として活躍しています。
(2) 磁石式手動交換機 2014年9月
2013年に閉館した逓信総合博物館から、磁石式手動交換機(写真2)を含む数点の史料の寄贈を受けました。その手動交換機を復元し、来館者に交換手の実体験をしていただきたい、と次の復元プロジェクトが開始しました。
前回のA形交換機よりさらに古い磁石式手動交換機は回路図等の資料があまりなく、まさに手探りで配線や各スイッチの機能を確かめていきました。また真鍮製のプラグやジャックの酸化被膜にも悩まされました。さまざまな苦労を乗り越え実際に使用できる状態となった磁石式手動交換機は、「動態である」ことが評価を受け国立科学博物館の重要科学技術史資料(愛称:未来技術遺産)に登録されました。
(3) デルビル磁石式電話機 2015年7月
デルビル磁石式壁掛電話機(デルビル電話機)(写真3)は「当時の部品だけで復元し、来館者には当時の音質を体験いただき、古い電話機に触れることで昔を偲ぶよすがとなれば」という宅内系サポーターの思いで復元されました。それまで体験していただいていたデルビル電話機は、現在の技術で補強したものだったのです。手動交換機と同様に回路図がほとんど残っていない状況で、部品を動かしながらその機能を確かめました。また、炭素紛や振動板といった材料の確保にも苦労をしました。電池以外すべて当時の部品で復元されたデルビル電話機は、子どもから大人まで多くの方に「テレビや映画で見た古い電話機はこうやって使っていたのですね!」と好評を博しています。
(4) 大形青公衆電話銭音体験
全国自動即時化が完了するより前、公衆電話機から市外に電話をかけるときは交換手から指定された料金を公衆電話機に入れ「交換手は硬貨が投入された際に音叉にぶつかってでる銭音(せんおん)を確認していた」との記述が、古い時代の公衆電話機の説明文には散見されます。銭音はどのような音だったのか、と興味を持ったサポーターにより銭音を聴くことのできる貴重な動態展示が実現しました。復元に使用したのは5号自動式ボックス公衆電話機で、3カ所に分かれた硬貨投入口に5円、10円、50円のそれぞれの硬貨を入れると、高さの違う音がスピーカーから聴こえる仕組みです。音の差を聞き取って料金確認を人力で行っていたのですね、と驚かれる来館者が多くいらっしゃいます。
(5) シャーペン電話・ブレゲー指字電信機再現モデル等
電気通信黎明期の各史料の仕組みや原理を再現し、体験できるデモ機を作成する新しい試みも行われています。
シャーペン電話は、デルビル電話機でも使われているカーボンマイクの仕組みを身近なシャープペンシルの芯や紙コップを使って体験できるデモ電話機です。2024年の夏休みスぺシャルでは、吹き抜けを挟んだ約15メートルの距離で通話を体験いただきました。
「ブレゲー指字電信機」は電報サービス開始時に使用された最初期の電信機ですが、実物史料は貴重であり展示ケースの中に収められています。その仕組みを再現し、実際に体験できるようにしようという試みが行われました。その詳細については本特集記事『初めての電報機械「ブレゲー指字電信機」の仕組みと動作』をご覧ください。

■技術者マインドの継承

2015年の第2次グランドデザインでは史料館のミッションの1つとして「技術者マインドの継承の場としての機能」が掲げられました。これまで一般公開、学生特別見学会でのガイドに加え、さらに専門技術分野における研究開発の知見や、そこで培われた技術者マインドを次世代に継承していくことを目的として、さまざまな取り組みに協力いただきました。
・語り部の会:NTTグループの若手社員、理系学生向けの講演「語り部の会」を実施し、現在まで25回開催しています。
・社会科見学:学校教育と連動した社会科見学プログラムで、当時の研究開発での苦労話や次世代へのメッセージビデオに出演したり、新入社員研修の一環としてトークセッションをしたりなど多方面で協力をいただきました。
・NTT語り部シリーズ「温故知新」:2020年からはNTT語り部シリーズ「温故知新」として、論文や研究資料では言及されない「研究者の想い」を語っていただく映像アーカイブに出演いただいています*2(写真4)。

*2 現在10作品をNTT公式YouTube、史料館ホームページで公開しています。

まとめ

2010年の一般公開・OB運営サポーター開始から15年、さまざまな出来事があり多くの出会いもありました。
サポーターが復元したA形交換機に興味を持った当時小学1年生だった方が、その後も折に触れ一般公開やイベントに参加してくださり、先日「高校3年生になりました。理系の大学へ進学するために勉強しています」と来館されたり、「電話交換手をしていた祖母にもう一度手動交換機を扱ってみてほしい」と遠方より来館された方もいました。
一般公開の実施・OB運営サポーターの運営は、日々史料館業務を担っている福田敦子氏をはじめとしたスタッフや現在活動いただいている28名のOB運営サポーターはもとより、かつて活動いただいた15名のサポーターの協力あってのものです。うち4名は残念ながら鬼籍に入られましたが、残された功績は今でも史料館の活動を支えてくれています。技術や人はその時代により移り変わりますが、根底に流れる人々の生活をより豊かにと技術開発を進めた熱意や想いを、史料館スタッフと現役のOB運営サポーターとで語りつないでいきたいと思います。
故きを温ねて新しきを知る。これからも、史料館が新たな知識や体験との出会いの場となり、これまでの経験や思い出に思いを馳せ、またそれらをとおして人との対話を促す場であればと思います。OB運営サポーターと共にあなたのご来館をお待ちしています。

■参考文献
(1) https://journal.ntt.co.jp/backnumber2/1505/files/jn201505067.pdf
(2) https://group.ntt/jp/newsrelease/2016/05/30/160530b.html
(3) https://group.ntt/jp/newsrelease/2020/07/01/200701a.html

(左から)塚田 雅人/岩田 玲子/古海 美穂/横瀬 史拓

NTT技術史料館の一般公開は原則毎週木・金曜日13:00〜17:00に行っています。OB運営サポーターによる館内ガイド「電伝探訪」の開催は金曜日13:30〜、予約必須です。皆様のご来館をお待ちしています。

NTT情報ネットワーク総合研究所
企画部

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