テクニカルソリューション
端末ログを活用した通話状況(回線使用状況)の即時見える化
ビジネスフォン等を利用されているお客さまから、「発信できないことがある」「他のお客さまからお話し中が多いと言われた」などの申告をいただいた場合は、利用可能な回線数(チャネル数)が不足している可能性が考えられるため、お客さまの同時通話数(チャネル利用数)を確認する必要があります。NTT東日本 技術協力センタでは、ビジネスフォンやひかり電話ルータ等の通信機器内に蓄積されているログを分析することで、簡易に回線の使用状況を見える化するツールを開発しました。
開発の背景
NTT東日本 技術協力センタでは、フィールドで発生した解決が難しい故障について、現場保守担当者等から相談を受けて原因究明し対処を行っています。音声系サービスに関連する相談として、「外線発信できない場合がある」「ある内線グループへの着信が話中になることが多い」といった問合せがあります。このようなケースでは、利用可能チャネル数の不足や、特定の内線グループへの利用可能チャネル数の割当て不足が原因として考えられます。解決のためには、利用可能なチャネル数の確認をする必要があり、従来の手法では、相談を受けてから現地の通話情報を収集する機器を設置していたため、情報収集に時間を要していました。また、情報収集後も通常1週間以上の大量の通話データから利用可能チャネル数を解析しており、非常に長い時間がかかっていました。今回、これらの作業効率の改善のため、機器のログファイルを集計することで、解析期間を大幅に短縮する「通話ログ整形ツール」を開発しました。
例えば、最近相談の多いひかり電話を考えてみると、従来手法には3つの大きな課題があります。1点目の課題は、キャプチャにかかる手間と、大量のデータ分析にかかる時間です。通話データをキャプチャするためには、キャプチャ装置を手配したうえで、お客さまと設置可能な日程を調整して、キャプチャ装置を設置、1週間から1カ月程度のキャプチャを行うことになります。お客さま環境からキャプチャ装置を回収した後も、大量のデータを分析、集計する必要があり非常に時間がかかっていました。
2点目の課題は、お客さま通信を最低でも2回切断・接続しなければならないことです。キャプチャ装置の設置時には、お客さまの回線の途中にキャプチャ装置を設置する必要があります。そのため、作業の都度、通信を切断・接続せざるを得ませんでした。
3点目の課題は、キャプチャデータの解析スキルです。大量に取得したデータから通話に関連する情報だけを選別し、通話ごとに通話開始・終了時刻を読み取ることができるスキルが必要です。現地担当者の方にこのような解析を行う手順をドキュメント化して提示する方法も考えられますが、スキルを習得するまでの期間が必要となります。
本ツールは、このような課題を解決し、データの収集・解析をスキルレスで容易に行うことができます。まず、通話開始・終了時刻が残されているひかり電話終端装置等のログを取り出し、ツールに読み込ませます。ツールを起動すると一定時間ごとに同時通話チャネル数のカウントを開始します。そのためログファイルの取得だけで同時通話数が解析できることから、キャプチャ装置が不要であり、お客さま通信にも影響を与えません。またログファイルの解析はデータの読込みと同時に実行されるため、通話時間を個別に分析する必要がありません。さらに、本ツールには通話数を簡易なレポートにまとめて出力する機能を具備しており、ログファイルを取得したと同時に通話状況のレポートを作成してお客さまに説明することが可能です。
「通話ログ整形ツール」の機能と利用方法
本ツールは汎用PC上で利用することが可能なソフトウェアで、以下の機能を具備しています。
①取得した通話ログを解析し、同時通話数、呼量を計算して表示します。
②通話ログの解析結果を「簡易レポート」として定型フォーマットで出力します。
③通話ログを整形して定型フォーマットでファイル出力します。異なる機器の通話ログを他のソフトウェアで集計、分析するなど、柔軟な解析を可能とします。
④本ツールにあらかじめ設定されている通信機器だけでなく、新たな機器を解析対象として追加することが可能です。新たな機器のログファイルフォーマットを新たに定義するときは、通話開始時刻、通話終了時刻が記載されたフィールドを判別できるようにログファイル構造を指定します。新たに定義した機器のログファイルフォーマットの設定は保存可能で、その後の解析で再定義せずに使用できます。
本ツールの利用概要を図1(データ収取から簡易レポートまでの概要)に示します。通信機器に蓄積されている通話ログは、対象装置のマニュアル等に記載されている方法で取り出します。ログの中には、機器が保存できる一定期間分の通話情報が自動で記録されているためデータの取得を開始・終了する操作が不要です。また、お客さまが普段機器をご利用いただいている状況でログの取得が可能です。
通話ログ整形ツールにログファイルを読み込ませる前に、入力する条件〔機種、取得したログの期間、解析内容(同時通話数、呼量、切断理由)〕等を設定します。条件指定画面を図2(ツール画面)に示します。
次にログデータを読み込ませると、ツール内で自動的に設定された解析内容の算出が実施されます。
解析結果を簡易レポートとして出力した例を図3に示します。例えば、お客さまが契約されている通話チャネル数が5チャネルのとき、図3のレポートの各時刻での同時通話数を見ると、契約チャネル数の上限まで利用されていることが分かります。例えばお客さまから「発信できないことがある」といった内容の相談を受けている場合には、レポートに基づいて、契約チャネル数の追加によって状況を改善する提案ができます。
本ツールの利用は、現在NTTグループ内に限定されています。入手方法については、技術協力センタHPを参照するか、問い合わせ先までご連絡ください。
今後の予定
本ツールは、トライアルを行っており、保守の現場等においてお客さまの通信端末からログデータを取得しています。このトライアルの結果からフィードバックを行い、さらなる機能改善の検討を進めています。
技術協力センタ ネットインタフェース技術担当では、これまで培ってきた通信にかかわるデータの解析手法やスキルを活用して、現場稼働の効率化に資するような新たなツール開発を検討しています。また技術協力センタでは、引き続き現場の課題解決に向けた技術協力活動を推進し、通信設備・サービスの品質・信頼性向上に貢献していきます。
問い合わせ先
NTT東日本
ネットワーク事業推進本部 サービス運営部
技術協力センタ ネットインタフェース技術担当
TEL 03-5480-3702
E-mail nif-ml@east.ntt.co.jp