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Event Reports

「CEATEC2019」出展報告

NTTは、2019年10月15~18日に幕張メッセで開催された「CEATEC 2019」に3回目の出展となるNTTブースを出展しました。ここでは、本ブースの出展内容について紹介します。

細田 智久(ほそだ ともひさ)/ 松野 恭士(まつの やすし)/ 望月 崇由(もちづき たかよし)

出展コンセプト

「CEATEC 2019」は、あらゆる産業・業種による「CPS/IoT」と「共創」をテーマとしたビジネス創出のための、人と技術・情報が一堂に会する場とし、経済発展と社会的課題の解決を両立する「超スマート社会(Society 5.0)」の実現をめざす国内最大級のIT系イベントです。今年度は「つながる社会、共創する未来」をテーマに2019年10月15~18日の4日間開催され787社が出展し、約14万5000人が来場されました。
NTTグループは、NTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTデータ、NTTドコモ、NTT持株の6社共同で2017年、2018年に引き続き3年連続で出展しました。今年度のテーマは「Start Your Smart World」とし「あなたのSmart World」を始めてみよう・触れてみようをコンセプトにグループ会社の商材・研究成果を展示しました(写真1、2)。

写真1 会場の様子

写真2 ブース展示の様子

展示の紹介

スマート・シティ

(1)深層学習を用いた地震計の異常検知(NTTコミュニケーションズ)
全国に設置された地震計のデータを利用して故障判定の難しい地震計の障害を検知するデモを実施しました。案件ごとに適したAI(人工知能)を、簡単に開発するためのIoT(Internet of Things)向けAI開発支援ツールとしてNode-AIを紹介するとともに、低遅延、高信頼の大きく2つの特徴を有する地震津波火山観測データ伝送基盤サービスである「Ether LAN」について、全国約1300拠点ある地震・火山観測点から、観測データを収集・蓄積・配信を行っている実績のあるネットワークサービスを紹介しました。

(2)AI運行バス®:オンデマンド~公共交通システムのさらなる高度化~(NTTドコモ)
オンデマンドにAIが最適配車を行う乗合型の交通システムを紹介しました。特徴として交通機能だけでなく、地域の施設やサービスとの連携ができ、乗車需要予測AIによる車両運行の最適化が可能なシステムを紹介しました。

(3)地域活性化の取り組み~地域の文化芸術伝承への挑戦~(NTT東日本)
地域活性化に向けた取り組みについて各種ユースケースの概要やデモを行い紹介しました。
・地域文化芸術の伝承(「北斎デジタルミュージアム」):セキュアなNTTの通信ビル、高速な通信回線を活用し、デジタル化した地域の文化芸術を世界に発信する取り組み第一弾として山梨県等と連携し、葛飾北斎の「富嶽三十六景」のデジタルデータをVR(Virtual Reality)、サイネージ、プロジェクションマッピング等にて配信。
・HACCP導入義務化への対応:温度データの自動記録から衛生管理のペーパーレス化による効率化と正確性の向上、衛生教育支援、一元的なシステムサポートといった食品衛生管理ソリューション。
・e-Sports:高品質で安定した通信ネットワークや東日本エリア全域に保有する通信ビルのスペース等を活用し、e-Sportsイベントを推進し地域活性化へ貢献。
・鳥獣害対策:鳥獣被害に悩む木更津市にて、IoTソリューションによる鳥獣害対策。
・作業員の熱中症対策:全農とNTTグループ初の農業×ICT専業会社NTTアグリテクノロジーが協業し、ウェアラブルデバイスや労務管理アプリを組み合わせることで健康状態や作業状況を可視化。遠隔地でも把握することが可能になる取り組み。
・次世代施設園芸:NTTグループ初の農業生産法人を2019年7月1日に設立し、農業を起点に周辺産業(物流、加工等)を集積させる街づくり、ICTを活用した次世代施設園芸の推進をコンセプトとした活動を紹介。

スマート・ワーク

(1)VOCデータからのFAQ自動生成技術を活用した「Q&A Generator」(NTT西日本)
NTT西日本グループのNTTマーケティングアクトのコンタクトセンタ運営事業、FAQコンサルティング事業で利用中であり、VOC (Voice of the Customer)データを活用した問合せ内容における主要キーワード抽出機能、 Q&A自動抽出機能、FAQ関連付け機能等によりFAQのメンテナンス稼働軽減が可能な「Q&A Generator」を紹介しました。

(2)AIを用いた映像編集作業の効率化(NTT西日本)
放送系事業者とともに、NTT西日本において実用化・事業化に向け、検討中であるデモを紹介しました。corevo®等AI技術により、映像に含まれる情報(キーワード、人物等)をメタデータとして付与し、メタデータの類似に基づき映像をシーンに分割、所望のシーン(ロケシーンや、インタビューシーン等)の検索を効率化することができます。また、 映像コンテンツの内容をテキスト化し、映像の内容確認や字幕作成を支援することが可能です。

(3)COTOHA® Meeting Assist(NTTコミュニケーションズ)
「COTOHA® Meeting Assist」はAIを活用して会議をサポートするクラウド型サービスです。PC、iPhoneのブラウザで利用可能で専用アプリは不要であり、AIエンジンが会話の内容からタスクや重要な単語を自動的に抽出し、議事メモとして作成・保存ができます。また、AIの自動ラベル付けにより発話内容を決定・宿題事項に分類可能であり、日本語、英語、中国語を含む10言語に翻訳可能なサービスです。働き方改革を支援する役割として効果の発揮を期待しています。

スマート・ヘルスケア

(1) 暑さ対策のためのウェアラブル生体・環境センサ(NTT持株)
近年の地球温暖化の影響等もあり、特に夏期の工事作業においては熱中症や体調不良による事故が多く発生しています。NTT研究所では大学機関等と連携し、熱中症との因果関係があるとされる深部体温を温湿度情報、心拍情報から推定する研究に取り組んでおり、同情報をリアルタイムに収集可能なウェアラブル生体・環境センサの研究開発の状況を紹介しました。

スマート・インフラ

(1) ローカル5Gの活用も見据えたエッジコンピューティングのシェアリングモデル(NTT東日本)
5Gのメリットである「高速・大容量、低遅延、多接続」と自営(ローカル)のメリットである「高セキュリティ、柔軟な設計・制御、ルーラルエリアでの展開」を掛け合わせたローカル5G、NTT東日本の対応状況や今後の展開について紹介しました。
また、NTT東日本通信ビルに設置したGPUサーバと、お客さま拠点に設置されたネットワークカメラを接続するプラットフォームを介して映像解析AIを手軽にオンデマンドで使えるサービスの展望について紹介しました。

(2) 情報銀行の仕組みを支えるパーソナルデータ流通プラットフォーム(仮称)(NTTデータ)
NTTデータは2018年より、パーソナルデータ流通に関する同意の仕組みや、認証・認可、流通履歴等の機能を提供するプラットフォームを検討しました。個人の意志により、情報銀行に登録したパーソナルデータを活用事業者へ提供することを可能とするプラットフォームです。個人情報(パーソナルデータ)の流通に関する実証モデルとして、仮想パーソナルデータストア(PDS)に転居情報等を登録し、仮想データ活用事業者への連携同意までの一連の流れを、映像を用いてわかりやすく紹介しました。

(3) AW3D®全世界デジタル3D地図(NTTデータ)
「AW3D®全世界デジタル3D地図」は、世界で初めて、5 m解像度という細かさで全世界の地形を網羅した3D地図です。JAXAの衛星画像や都市部では、米国の民間衛星会社の衛星画像を活用し、50 cm解像度まで向上させた高精細版3D地図も提供しています。50 cm解像度では「建物」や「樹木の1本1本」レベルの細かな起伏の表現が可能です。AW3D®は、AI・ビッグデータ・マルチビューステレオ処理(画像処理技術)を活用することで短納期・低コストを実現し、通信・地図・防災・建設・資源・電力・交通等、世界120カ国以上・1100プロジェクト以上で利用されています。地形データ、衛星画像、建物3Dデータ等により緻密に再現された映像を紹介しました。

トピックス

(1) 次世代移動通信技術“5G”(NTTドコモ)
NTTドコモは2019年9月20日から5Gのプレサービスを開始しました。本展示会では可搬型基地局を設置しプレサービスのエリア化を行い以下のコンテンツを紹介しました。
・5G時代の新たなスポーツ観戦~RWCマルチアングル視聴~:試合の多視点映像や解説、スタッツなどの付加情報を、5Gネットワークを通して5G端末に配信します。大容量・低遅延の5Gネットワークにより、多くの映像や情報をスタジアムでの試合観戦と同時に手元で自由に選択して確認できるため、試合観戦をより楽しめます。
・5G時代の音楽ライブ体験~新体感ライブ(5G×MUSIC)~:5G2画面端末ならではのライブの一体感や臨場感を体験していただきました。2019年4月28日に横浜スタジアムで行われたコンサートの映像を用いて、あたかも生配信で視聴しているかのようなライブ体験をしていただきました。
・5G時代の新たな観光スタイル~新体感観光サービス~:5Gならではのリッチな観光情報をインタラクティブに提供し、これまでにない高臨場感な観光体験が可能です。また、5Gの高速・大容量、低遅延の特徴を活かし、移動中のモビリティ内でも車窓の風景に合った観光情報を最適なタイミングでお届けします。360度パノラマ映像のような大容量コンテンツにより、最高のコンディションでの絶景や上空からの景色などを、時間や視点を超えて体験することができます。実端末でデモを行い多くのお客さまに体感いただきました。
・AceReal:熟練技術者の高齢化、不足の対策として、遠隔地から複数の作業者の作業指示ができるソリューションを用意しました。リアルタイムに映像を伝送することで、その場面にあった指示を送ることができ、両手を使うような作業の際でも、AR(Augmented Reality)グラスを用いることで、作業に支障なく、指示を受けたり、マニュアルを確認したりすることが可能です。
・Magic Leap×docomo:Magic Leap Oneは空間コンピューティング技術により、デジタルコンテンツをインタラクティブに体験できる軽量ウェアラブルデバイスです。Magic Leap Oneにはライトウェア(ヘッドマウントデバイス)、ライトパック(プロセッサ)、コントローラが含まれ、Lumin OSという世界初の空間OSによって稼動します。装着しても環境を遮断せず、周りが見え、聞こえる状態で、アプリケーションを楽しむことができます。Magic Leap端末を用いて、没入型ゲーム(Dr. GRORDBORT’S Invaders)を体感いただき、期間中50分待ちの行列が常時できるほど多くの方に体感いただきました。

(2) 超ワイド映像合成・伝送技術(NTT持株)
実際の観客席にいるような臨場感の高い観戦体験を感じていただくことが可能な技術です。複数の4Kカメラ映像をリアルタイムに合成し、あたかも現地スタジアムにいるような視野での観戦が可能です。超ワイド映像を野球・陸上・サッカー・テニス等さまざまなスポーツでの映像を基にデモを実施することで多くのお客さまに新たなスポーツ観戦スタイルを体感いただきました。

セミナー

各社から出展したサービスを中心に旬なテーマを選定し、セミナーステージにて実施しました(写真3)。用意した座席だけでなく通路まで1500名を超える多くの来場者に参加いただきました。

(1) NTT東日本
・HACCP導入に向けたIoT活用事例
・押さえておきたい“e-Sports”の可能性
・「地域の伝統文化芸術プラットフォーム」による文化資源の存続・承継を通じた地域創生の取り組み

(2) NTTコミュニケーションズ
・いつもの会議に頼れるパートナー「COTOHA® Meeting Assist」
・Smart Factoryを実現するためのAI開発事例の紹介と今後の展開
・Cloud/AIを活用した大規模データ分析基盤の構築とその裏側

(3) NTTデータ
・情報銀行ビジネスの今と将来
・衛星で実世界をデジタル化する高精細3D地図「AW3D®」のご紹介

(4) NTTドコモ
・ドコモの二次交通の充実による移動課題解決の取り組み
・5Gのリアルとフューチャー

(5) NTT
・NTT研究所の「暑さ対策」への取り組み
・IOWN構想について

写真3 セミナーステージの様子

出展を終えて

「CEATEC 2019」の出展にあたりグループ6社のご協力の下、 50名を超えるVIP視察や4万人(推定)の来場者にブースを訪問していただきました。今回得られたお客さまの声を各社のサービス開発や研究開発につなげていきたいと考えています。

(左から)松野 恭士/細田 智久/望月 崇由

「CEATEC」等各種展示会は、NTT R&Dの日頃の研究成果をかたちにしたり、グループ各社サービスを分かりやすく紹介し、普段リーチする層に限らず多くのお客さまに体験いただくことで、貴重なフィードバックを得ることができる数少ない機会となっています。言葉だけでは伝えられない最先端の技術を体験することができるNTT R&Dのイベントに是非お越しください。

問い合わせ先

NTT研究企画部門
R&D推進担当
E-mail rdexpo@hco.ntt.co.jp