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from NTTコミュニケーションズ

リアルより気軽に話しかけられるオンラインワークスペース「NeWork™」

NTTコミュニケーションズは、リモートワールド(分散型社会)の実現に向けオンラインワークスペース「NeWork™」の提供を2020年8月末より開始しています。本プロダクトは2020年6月からコンセプト検討を開始し、3カ月弱という短い期間で開発を行いローンチに至りました。ここでは、プロダクト開発の裏側とNeWork™を支える技術について紹介します。

リモートワールドにおけるオンラインワークスペース「NeWork™」開発の取り組み

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、ソーシャルディスタンスの確保という観点から、日本の多くの会社がリモートワークを導入しました。これにより、社員がオフィスに一同に集まって働くという働き方から、それぞれの自宅に分散して働くという働き方が当たり前になるという社会の変容がありました。
緊急事態宣言などでリモートワークを行う会社が増え始めたタイミングでは通勤時間が不要になるなどポジティブな話題が多かったのですが、リモートワークが常態化すると、生産性の低下や孤独感を感じやすいなどネガティブな側面が話題に挙がるようになりました。
NTTコミュニケーションズ(NTT Com)では、市場にWeb会議システムが多数ある状態でさえこういった課題が残っていることに着目しました。そして、社会が急速にリモートワールドへと向かう中で、「人と世界の可能性をひらくコミュニケーションを創造する」を企業理念とする私たちが、どのように社会貢献できるかを考えていきました。さまざまな立場のリモートワーカーへのインタビューや社内アンケートなどでユーザのインサイト(潜在ニーズ)の抽出を行い、「コミュニケーションの絶対量の減少」「会議時間以外の余白の消失」「新しい気付きや雑談の減少」の3つが現状のリモートワークへのユーザの不満だと仮説を立てました。これらの不満は既存のオンライン会議システムでは解消できないと考え、「リアルより気軽に話しかけられるオンラインワークスペース」をキャッチコピーとした、オンラインワークスペース「NeWork™」を開発しました(図1)。
また、なるべく早くユーザのリモートワークへの不満を解消できるように、NeWork™はプロジェクト始動から3カ月弱という短期間でローンチを行いました。以下に、どのようにプロダクト開発を進めていったのかを紹介します。

■コンセプト策定

NTT Comが持つデザインスタジオ KOELと、KESIKI INC.を中心にデザイン思考を取り入れて検討しました。
大きく4つのPHASEに分けてコンセプト策定を進めていきました。各PHASEのイメージは図2のとおりです。
PHASE1ではリサーチを中心に行いました。この段階での私たちが定義していた「問い」は「新たなビデオコミュニケーションサービスをつくる」というものでした。既存のWeb会議システムの問題点や、ユーザが求めるビデオコミュニケーションを知るべくインタビューを行いました。
PHASE2ではアイデアを発散させます。PHASE1でのリサーチ結果を基に、コアコンセプトを5種類用意してそれぞれUI(User Interface)プロトタイプを作成しました。
PHASE3にて、複数のコアコンセプトを比較検討したり磨き上げたりしながら、つくるサービスのコンセプトを決定します。PHASE2で出たコンセプトを基にチームで議論をするうちに、私たちがつくりたい・つくるべきサービスはWeb会議サービスではないという重要な気付きを得ました。私たちがつくりたいサービスは会議だけにとどまらず、リモートワークしている最中にいつでもチームメイトと気兼ねなくつなぐことができるサービスでした。ここで「問い」を「NTT Comはリモートワークにおける未来のスマートなコミュニケーションをどう再定義していくのか」というものに再定義しました。この「問い」をつくることでプロジェクトの核ができました。この「問い」に答えられるコンセプトという観点で議論を続け、「リアルより気軽に話しかけられるオンラインワークスペース」というサービスコンセプトに決まりました。
PHASE4ではこのプロダクトの意義が外部に伝わるようなストーリーの作成に始まり、このコンセプトを実現するためのUI設計やスクラム開発のためのプロダクトバックログをつくっていきました。

■アジャイル開発

NeWork™はアジャイル開発の手法の1つであるスクラムのフレームワークを採用して開発を行いました。
ウォーターフォール型の開発スタイルでなく、アジャイル型の開発スタイルを採用したのはウィズコロナの時代にユーザが求めるリモートワーク支援ツールが何か分からないからです。私たちの立てた仮説を試すためのMVP(Minimum Viable Product)*1をなるべく早く市場に出してみることから始め、試行錯誤を大前提として、ユーザの反応を見ながらユーザが求めるプロダクトを開発していきたいというねらいがありました。
1スプリント*2の期間を1週間として高速にフィードバックループを回しました。1スプリントのレビューのときには必ず「動くモノ」を用意しました。NeWork™での例を示すと Sprint1ではUIはほとんどないが複数人で通話できる状態、Sprint2ではルーム一覧からルームに入室して複数人で通話できる状態といったようにインクリメンタルな開発を心掛けるようにしました。
開発物は常に開発者だけでなくビジネスサイドのメンバやステークホルダも触れることができるようにしていました。フィードバックをもらいやすいことに加え、認識の齟齬が起きていないことやゴールまでのイメージがつかみやすくなっていたと思います。
レトロスペクティブなどのスクラムイベントを通して開発チームのベロシティを測定し、それに基づき現実的に次スプリントの計画を立てることで、副産物として本当に必要な機能だけを実装することができました。タスクの優先度をつける際にはNeWork™チームが立てた仮説を検証するのに本当にこの機能は必要なのかということを常に自問し、YESと答えられるものの優先度を高くすることを心掛けていました。
また、ローンチの2週間前から社内でのドッグフーディングを開始しました。ドッグフーディングとは自社内でベータ版の試用を行う取り組みのことです。ここで多数の改善案やバグ報告をいただいたことで、プロダクトに磨きをかけてからローンチすることができました。
ドッグフーディングと並行して、社内のセキュリティの専門チームに依頼してペネトレーションテストを行っていただきました。このようにチーム内に不足しているスキルについては、グループ内の豊富な人材の協力をいただき短期間開発ながらもセキュアなプロダクトを開発することができました。

*1 MVP:実用最小限の製品。
*2 スプリント:4週間以下のタイムボックス。NeWork™チームでは1スプリントは1週間。

■NeWork™を裏で支えるWebRTC基盤:SkyWay

リモートでコミュニケーションをストレスなく行うには、低遅延で双方向通信を行うことができるのが絶対条件です。この条件を満たす通信プロトコルの1つとしてWebRTC(Real-Time Communication)が挙げられます。WebRTCは音声・映像・データのリアルタイム通信のオープン標準技術です。WebRTCを利用すればネイティブアプリだけでなく、PCやスマートフォンのWebブラウザで機能追加なしでリアルタイム通信を実現できます。
しかし、WebRTCを利用するには通信相手のIPを知るための仲介サーバ等が必要になり、それらを用意するにはネットワークの知識やブラウザの知識などWeb開発者にとって難易度の高い部分が多くあります。これらを自前で用意するには時間と習熟コストがかかるので、ここがWebRTC利用の足かせになるという課題があります。
この課題を解決したものが NTT Comで開発・運用を行っているSkyWayというWebRTC開発者向けプラットフォームです(図3)。SkyWayを利用することで、開発者は仲介サーバの用意も高度な専門知識を前提とすることもなくWebRTCを利用することができます。
NeWork™ではSkyWayを利用して1対1の通話やルームでの複数人通話を実現しています。通話部分はすべてSkyWayに任せることでNeWork™の開発期間を短くすることができました。
今回、NeWork™開発チームからSkyWayへの改善要望も多く発生し、実際にSkyWay側で改善が行われるといった動きもありました。NeWork™だけに役立つ変更ではなく、SkyWayを使う他のお客さまにとっても嬉しい変更です。この動きにみられるように、NeWork™がSkyWayの改善に貢献し、SkyWayが改善されることでNeWork™ならびにSkyWayを利用するお客さまのアプリケーションが改善されるといった良いフィードバックサイクルが生まれました。

今後の展望

ここではオンラインワークスペース「NeWork™」のコンセプトがどのようにして生まれ、どのように開発してきたのかについて紹介しました。
ユーザの要求・要望を満たすことと「人と世界の可能性をひらくコミュニケーションを創造する」というNTT Comのビジョンの達成を両立する道を今後も探求し続けます。その結果、NeWork™が働く人皆が使い続ける、もっとも愛されるコミュニケーションツールになると信じています。
急速に変容する社会の中でスクラム開発を続け、小さく何度も仮説検証を繰り返しながら、リモートワールドにおけるコミュニケーションの課題の解決をめざしていきます(図4)。

問い合わせ先

NTTコミュニケーションズ
イノベーションセンター
E-mail skyway@ntt.com