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グループ企業探訪

第231回 タワーレコード株式会社

アーティストを応援するファンを応援する会社としてお客さまに付加価値を提供

CD/DVD等の音楽、アーティスト関連の販売店舗のブランドとして有名なタワーレコードは、NTTドコモグループの会社だ。音楽のダウンロードが普及してきている中、CD等のパッケージメディアを中心にアーティストのファンを応援する取り組みと、将来への展望を嶺脇育夫社長に話を伺った。

タワーレコード 嶺脇育夫社長

マス向け店舗小売り事業を展開する NTTドコモグループ唯一の会社

◆設立の背景と目的について教えてください。

タワーレコードは、1960年に米国カリフォルニア・サクラメントにあるタワーシアターという映画館で中古レコードの店舗販売を始めたのが創業で、これが社名の由来でもあります。1979年に米国タワーレコードの一事業部として輸入レコードの卸業を日本で開始し、1980年に札幌に小売り店舗第1号店を、1981年には渋谷・宇田川町に第2号店をオープン(1995年現在の神南に移転)し、その後日本各地に店舗展開を行い、2020年12月現在では81店舗まで拡大しました。
会社という形態では、1981年12月に日本法人タワーレコード株式会社を設立しました。2005年に携帯電話への音楽配信ビジネスをキーとした新たなビジネス展開における連携を目的にNTTドコモと資本提携を行いました。2012年には、それまでのビジネス連携、特にスマートフォンをベースとしたビジネス連携の強化と、eコマース事業における連携強化を目的に資本関係の見直しを行い、NTTドコモグループの会社になりました。

◆タワーレコードといえば、CD/DVD等の店舗販売のブランドで有名ですが、実際はどのような事業を行っているのでしょうか。

当社の事業は、「音楽」をベースとして、CD/DVD等のコンテンツを中心に、アーティストに関連するグッズや、ファンがアーティストを応援するためのグッズ等の販売がメインです。ファンのためのグッズも充実しています。
販売は店舗とeコマース(オンラインショップ)が2本柱のチャネルです。店舗について、マス向けにリアルな店舗で事業を行っています。2020年12月1日現在で、全国にタワーレコード 70店舗、タワーミニ(駅ナカ駅チカ小型店)6店舗、TOWER RECORDS CAFE (カフェ)5店舗の計81店舗があります。各店舗のスタッフが独自に自分の「推しアーティスト(一推しのアーティスト)」を前面に出して、ポップを作成したり、そのアーティストに関するグッズや情報を取りそろえて陳列しており、そこに全国からファンが集まってきます。まさに「アーティストを応援するファンを応援する」店舗になっています。
eコマースについては、1997年から開始し、2010年に総合音楽ポータルサイト「TOWER RECORDS ONLINE/タワーレコード オンライン」としてリニューアルしました。オンライン上で予約した商品の店舗における「お取り置き・ご予約」サービス等ユニークなサービスも提供しています。eコマース事業については、規模としてはまだ店舗には及ばないものの、非常に伸びてきています。
こうした販売系の事業の周辺事業として、当社はインディーズを中心としたパッケージの卸売業や、アイドル専門レーベル「T-Palette Records」はじめさまざまなジャンルで独自レーベルの運営を行うレーベル事業等も行っています。

アーティスト、そしてアーティストを 応援するファンとともに歩む

◆事業を取り巻く環境はどうですか。

事業に関係する環境としては音楽関係のメディアの変化とAmazon等の流通としてのコンペティタの存在があります。
音楽関係のメディアについては、近年ではダウンロード型や定額制のサブスクリプションサービスなどが広く普及してきており、音楽を楽しむチャネルが増えてきており相対的にCD等の売上は減少傾向にあります。とはいえアーティストや音楽に対するファン層には、パッケージに対する根強い需要があり、その周辺のグッズ類も含めて考えると、ダウンロード型とは異なる市場としてまだまだ需要の大きさを実感しています。さらには、最近はアナログレコードの販売も伸びています。音楽を本格的に聴きだすと音質に対する要求も高くなり、さらにさまざまなチャネルからデジタルの真逆にあるアナログ盤で音楽を楽しむ人が増える傾向になっています。これらはまさに当社の得意とするところでもあります。
一方Amazon等コンペティタ関連については、CD等のパッケージメディアを単なるモノとしてとらまえると非常に大きな脅威です。当社の場合は音楽という比較的狭い市場に特化しており、アーティストを中心としてパッケージメディアや関連グッズ、応援グッズという1つの世界が出来上がっており、ファンの方はその世界観の中でパッケージメディアやグッズをお求めいただいているという状況です。こうしたファンの方々に支えられているので、店舗の「推しアーティスト」をはじめとして、ファンの方々のご要望にしっかりとこたえていきます。
2020年に入り、新型コロナウイルス感染症の影響で、店舗への来客が減少していますが、逆にオンラインが健闘しており、さらにはオンラインで注文し、アーティストの世界観を求めて店舗に受け取りに行くといったお客さまもいらっしゃるので、新しい展開が期待できます(写真1)。

◆今後の展望についてお聞かせください。

コロナ禍で、アーティストのコンサート等の大規模なイベントを開催できない状況が続いています。そこで、渋谷の旗艦店のスペースでアーティストのイベントを開催し、それを全国に配信するという取り組みを開始しました(写真2)。オンラインならば、遠隔地の方も参加できることもあり、リアルの場合とは異なる顧客層の開拓が可能であることが分かりました。
現在は店舗とeコマースの2つのチャネルによる販売系のビジネス全体を伸ばしていく中で、さらにeコマースの売上を高めていくことに注力しているところですが、将来的にはこうした新しいビジネス展開も1つの柱となれるよう、育てていきたいと思います。
2020年3月にNTTドコモは5G(第5世代移動通信システム)のサービスを開始しましたが、5Gは音楽やエンタテインメントの世界にとって大きな可能性を秘めたサービスであり、NTTドコモとの連携も強化・拡大を図っていきたいと思います。
こうした取り組みを通して、「アーティストを応援するファンを応援する」会社として、ファンの皆様に付加価値を提供していきます。

担当者に聞く

イベントの配信でアーティストとファンに付加価値を

リテール事業本部
リテール事業推進統括部 統括部長
小針 勉 さん

◆担当されている業務について教えてください。

マーケットの変化に対応しながらお客さまに付加価値を提供する、新しい事業の種を見つけ、育て、収益化していくことがミッションです。その中で特にアニメやTシャツ等のアパレルをはじめさまざまなグッズ開発と、イベント・催事の主管部門を担当しています。
コロナ禍以前は、店舗でイベントを開催して、ご購入者にイベントに参加していただくというビジネス展開だったのですが、現在イベント開催がままならない状況が続いたため、渋谷店のライブスペースでの生ライブ、収録ライブや、抽選イベント等のオンライン配信をクローズドでの提供を始めました。ライブ感、臨場感を楽しんでいただけるようにチャット機能も付けるなど留意して取り組んでいます。参加申込やライブの際に、参加者の特典を付けてCDやグッズをご購入いただくというイベントを2020年6月から行っています。まさに、リアルなライブイベントがそっくりそのままオンラインで楽しめるようになった感じです。お客さまにはこれを一定期間見ていただくことができます。最近ではアーティストやメーカの皆様にもご理解いただけるようになってきて、2020年10月の例では月に26件、1日1本ぐらいの開催ができています。このライブは、台本づくり、撮影、編集、テロップ入れ、そしてアーカイブ化から配信まで自社で行えるようにしています。
もう1つは当社が企画者として、興行イベントのタワーレコードオリジナルコンテンツ化を行っています。

◆ご苦労されている点を伺えますか。

これまで、お客さまにリアルなサービスを提供してきましたし、年間9000本ぐらいのイベントを行ってきたので、それらに関する知見や運営スキルは蓄積されています。しかし、デジタル・オンラインになると、これまで経験していない、予測していなかったようなトラブルが多々発生します。実際にアーカイブを自動生成させようとして、データが生成されていなかった事例もあります。リアルであれば、その場の判断で対応できることが、デジタルではそれができなくなることもあり、1つのミスによりすべての努力が水泡に帰してしまうようなことが起こり得ます。
こうしたことへ対応できるようマニュアル化を進めていますが、マニュアルに書ききれない部分まで臨機応変に判断・対応できるようなスキルを持った人材の育成も重要だと考えています。

◆今後の展望について教えてください。

音楽系のイベントの集客や盛り上がりは、アーティストやその演奏環境に依存する部分が多いのですが、オンライン配信では、例えばカメラワークの工夫等で、視聴者の盛り上がりを誘引したり、長く観ていたいと思わせることもできるので、こうしたスキルを磨いてアーティストとファン(お客さま)の双方に付加価値を提供できるように努めていきたいと思います。
そして、こうした努力の結果であるコンテンツを海外のお客さまに見ていただくとか、逆に付加価値を評価していただくことで、東京に来ることができないような海外のアーティストのライブ映像等を、私たちのプラットフォームを使ってお客さまに提供していくことを考えています。

リアルな店舗の熱量を eコマースのお客さまへ

リテール事業本部オンライン事業統括部
マーケティング企画・推進部 部長
上田 剛史 さん

◆担当されている業務について教えてください。

eコマース領域の中のデジタルマーケティングを中心とした事業を担当しています。タワーレコードの売上の中心は店舗なのですが、コロナ禍によって当然店舗が営業できない期間があり、この部分がオンラインシフトしているというのが、ここしばらくの傾向で、2020年8月に、eコマースの月間売上の最高値を記録して以来、まさに日々、過去最高を記録しているという状況です。
緊急事態宣言発令をきっかけとしたテレワークの普及等、お客さまの生活様式・行動様式が変化してきており、デジタルマーケティングにおいてもこれまでの理論や経験が通用しない状況になってきています。また、購買活動だけではなく、オンラインショップのサイトを訪問するときの場所、時間、デバイス等も変わってきています。こうした中、ダイレクトメールの出し方や商材の取りそろえ方も変わってきました。
One-to-oneマーケティングができれば理想的なのですが、なかなかそういうわけにもいきません。ただ、当社の場合はお客さまであるファンとアーティストの間を取り持つリアルな店舗があります。そこで、店舗で培ったファンとアーティストをつなぐノウハウを活用したり、店舗のポップをオンラインストアのサイトで映し出したり、店舗との連携をとることでお客さまとのリーチを図ることができます。お客さまを取り合うような関係にある店舗も非常に協力的で良い連携ができています。

◆ご苦労されている点を伺えますか。

オンラインショップというとどうしてもAmazon等と比較されてしまいます。確かに単なる物販であればとても太刀打ちできるような相手ではありません。
一方でオンラインサイトは、お客さまの顔が見えないともいわれています。当社の各店舗はお客さまの顔が見えているうえに、「推しアーティスト」のようにかなりの熱量を持ってお客さまに訴えかけています。店舗の存在はお客さまとのパイプを太くしていくうえで非常に大きな力となります。こうした店舗との連携において、お客さまの顔の見えないオンラインの世界においてこの熱量をどうやってお客さまに伝えていくか、というのが大きな課題であると思います。

◆今後の展望について教えてください。

オンラインショップの中に、リアルな店舗の熱量を持ち込んで、それをお客さまに伝えていくことに注力していきたいと思います。音楽の指向性であるとか、エンタテインメントに関するデータを当社は持っているので、それを活かしてNTTドコモの持つデータベースやプラットフォームとの連携をさらに拡大していきたいと思います。

ア・ラ・カルト

■由緒正しい神席お守り

アイドルなどのアーティストの多くはそれぞれのシンボルカラーがあり、グループの場合もメンバーごとにカラーがあり、その色と関連付けられたさまざまなグッズをファンの方々はお求めになります。こうしたグッズの中でひときわ目を引くのが、“アーティストを応援する人を応援する”「推し活お守り」です(写真3)。最近はたとえファンクラブに入会しても、自分が応援するアーティストのライブチケットが入手困難になることが多く、さらにライブでの「神席」といわれる良席の確保は至難の業です。そこで神席ならではの神頼みということで、お守りがあります。もちろんアーティストのカラーで裏側には写真を入れるポケットもあります。
単なる作り物のお守りと思いきや、京都嵐山にある芸能神社としても有名な車折(くるまざき)神社にご祈祷をしていただいたご神体が入っているとのことです。

■推しアーティストマップ

社員にも音楽好きな人が集まっているタワーレコード。社員どうしの会話も音楽の話が多くなるとか。そんな中、全国の各店舗の「推しアーティスト」をまとめて、日本地図上の店舗の所在地に張り付けたマップが社内に貼ってあるそうです(写真4)。さまざまな部署の人がそれを見に来ては、自分と同じ推しアーティストの店舗を探したり、社員どうしの推しアーティストの会話に花が咲くそうです。中には、自分の推しアーティストを求めてその店舗を訪問した社員もいるとか。