NTT技術ジャーナル記事

   

「NTT技術ジャーナル」編集部が注目した
最新トピックや特集インタビュー記事などをご覧いただけます。

PDFダウンロード

特集

NTTグループのICTソリューション

新型コロナ禍における新しい体験型美術展「Digital×北斎」【破章】の開催

NTT東日本では、同社が保有するICTやアセットを活用し、新型コロナ禍においても時間と場所を超え、地域の文化芸術を楽しむことができる分散型デジタルミュージアムのショーケースとして、2020年12月1日から体験型美術展「Digital×北斎」【破章】を開催しています。本稿では、その取り組み内容について紹介します。

鈴木 健広(すずき たけひろ)
NTT東日本

背 景

NTT東日本では、地域の価値ある文化芸術を発信し地方創生に寄与する取り組みとして、2019年11月1日~2020年2月28日まで、体験型美術展「Digital×北斎」【序章】(1)を開催し、鑑賞された方々より、時間と場所を選ばず地域の価値ある文化芸術を体感することができるデジタルミュージアムの魅力や可能性について多くの期待の声をいただきました。
一方で、昨今の新型コロナウイルス感染症蔓延により、地域の美術館・博物館が新型コロナウイルス感染防止に配慮した運営にシフトするなど、文化芸術鑑賞の楽しみ方も新しい行動様式に合わせていくことが求められています。
こうした状況の中でも地域の価値ある文化芸術を伝えたい、楽しみたいという多くの声や、デジタルデータを活用したニューノーマルな文化鑑賞のあり方についてのニーズの高まりを受け、体験型美術展「Digital×北斎」【破章】の企画を進めることになりました。

体験型美術展「Digital×北斎【破章】」の概要

NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]ギャラリーEにて、代表的な日本文化芸術の1つである葛飾北斎や歌川廣重の作品等を題材とした体験型美術展を開催しています。
なお本美術展は、山梨県立博物館やフランス国立オルセー美術館から、絵画のマスターレプリカの公式認定を受けている株式会社アルステクネと協力し開催しています。

■高精細技術により再現された所蔵元認定のデジタルデータやマスターレプリカの展示

・山梨県立博物館 葛飾北斎 「冨嶽三十六景」 47作品
・大阪浮世絵美術館 歌川廣重 「東海道五十三次」 55作品
・フランス国立オルセー美術館 ゴッホ 「ローヌ川星降る夜」等 17作品
・神奈川県立歴史博物館 五雲亭貞秀
「神名川横浜新開港図」等 4作品
美術館・博物館での原画の展示は、これまで傷みやすい等の理由により公開が制限され、照明下や至近距離の鑑賞ができませんでした。また、高解像度デジタル化においても、素材や絵筆などの微細な凹凸などの質感を再現することは難しいとされていました。今回の協業パートナーである株式会社アルステクネでは、高精細多角度光記録といった特長を持つ独自の三次元質感画像処理技術DTIP(Dynamic Texture Image Processing)*1により、疑似立体画像合成変換処理、原画との3次元色域分解校正を行い、浮世絵版画であれば、原画の和紙の繊維1本1本まで忠実に再現し、作家の超絶技巧を伝えることができました(図1)。

*1 DTIP:株式会社アルステクネ社独自の特許取得技術。

■地域との連携

本美術展を開催するICC内ギャラリーEと、展示作品とゆかりのある地域の施設や拠点を高速ネットワークで連携させ、より多くの人が地域の日本文化芸術作品に触れることで、時と場所を超えて楽しめる世界を皆様とともに創出していきます(図2)。

■最新のデジタルアプリケーションを活用した新しい体験機会の提供

ゴーグルなしでVR(Virtual Reality)を体感できる裸眼VRや、絵画の中に没入するように作品の世界観を全身で体感できる3Dダイブシアター、リアルな絵画が動くムービングアートピクチャー等の最新のデジタルアプリケーションを駆使し、新しい文化芸術鑑賞の体験機会を提供しています(図3)。

■デジタルデータの高品質な配信・セキュアな集積

NTT東日本通信ビルや高速ネットワークの「閉域網でセキュアな環境」「低遅延」「耐災害性」という特性を活かし、文化芸術のデジタルアーカイブの活用において求められる「文化財の権利保護」「滑らかなコンテンツ配信」「ディザスタリカバリ*2」等のニーズにおこたえしていきます。

*2 ディザスタリカバリ:災害などによる被害からの回復措置、あるいは被害を最小限に抑えるための予防措置。

■安心・安全な非接触型ミュージアムソリューションの提供

裸眼VR、3Dダイブシアター、ムービングアートピクチャー等による、全コンテンツ非接触で楽しめる仕掛けや、AI(人工知能)カメラによる混雑検知、AIロボットによるご案内により、新型コロナ禍においても来場者が安心して鑑賞できるミュージアムソリューションの提供に取り組んでいきます。また、本美術展のホームページ(2)上では、会場まで足をお運びいただかなくても展示の一部を鑑賞できるよう、360度ビューによるバーチャル鑑賞を提供しています。
本美術展については、NTTが提供するリモートワールドを体現する3D空間型オウンドメディア「DOOR」(3)との連携も準備していきます。

■参考文献
(1) https://www.ntt-east.co.jp/pr/hokusai.html
(2) https://www.ntt-east.co.jp/pr/hokusai-hasyo/
(3) https://www.ntt.co.jp/news2020/2011/201106b.html/

鈴木 健広

長い歴史を持つ日本は世界的な文化国です。そして日本の地域には数多くの魅力的な文化芸術が存在します。これらをデジタル技術やICTにより「守り」、「活用する」ことは、今、我々日本人が取り組むべき使命ではないでしょうか。

問い合わせ先

NTT東日本
経営企画部 営業戦略推進室
TEL 03-5359-3460
E-mail eisen-bunka-ml@east.ntt.co.jp