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最先端の農業ロボット技術と情報通信技術の活用による世界トップレベルのスマート農業およびサステイナブルなスマートアグリシティの実現に向けた産官学連携協定を締結
国立大学法人北海道大学(北大)、岩見沢市、NTT、NTT東日本、NTTドコモは、最先端の農業機械の自動運転技術に高精度な位置情報、第5世代移動通信方式(5G)、AI(人工知能)等のデータ分析技術等を活用した世界トップレベルのスマート農業の実現と社会実装およびスマート農業を軸としたサステイナブルな地方創生・スマートシティのモデルづくり等に取り組んでいくこと、また将来の革新的ネットワーク技術のスマート農業への適用に向けてともに検討を開始することに合意し、2019年6月28日、産官学連携協定を締結しました。
取り組み概要
北大、岩見沢市、NTT、NTT東日本、NTTドコモは産官学連携協定を締結し、以下の3つのテーマを設定して取り組むことに合意しました(図)。
(1) 高精度測位・位置情報配信基盤
農機が自動運転を行うためには、正確な測位・位置情報が必要となります。そのため、精度、経済性等で最適な測位・位置情報配信方式の検討を行います。準天頂衛星みちびきを含むGNSS、国土地理院の提供する電子基準点に加え、独自固定局を設置・運用し高精度の位置測位を実現するNTTドコモが提供予定の「GNSS位置補正情報配信基盤」や統計処理を用いた独自の衛星信号選択アルゴリズムにより、精度の高い測位情報を提供するNTTの最新技術等、新たな方式を含めて検討、検証を行います。
(2) 次世代地域ネットワーク
自動運転農機に求められる最適なネットワークの検討、検証を行います。第5世代移動通信方式(5G)、岩見沢市が現在整備中のBroadband Wireless Access等の最新技術を組み合わせ、遠隔監視による無人状態での完全自動走行(レベル3)に求められる、高速・低遅延で信頼性の高いネットワークの実現をめざします。
併せて、自治体に整備されている各種通信(有線・無線)を統合し、住民の暮らしやすさ、産業振興および防災・防犯等に貢献するスマートシティの通信基盤構築にも取り組みます。
また中期テーマとして、NTTが提唱する光ベースの革新的なネットワークの構想IOWN(Innovative Optical and Wireless Network:アイオン)に基づき、より大容量、低遅延で柔軟性に富み、消費電力に優れたオールフォトニクスネットワーク、特に用途ごとに波長を割り当てる機能別専用ネットワークの適用可能性の検討も進めます。
これらの技術を活用し、ロボット農機システムを含む農業分野をユースケースの1つとして位置付け、新たな価値創出をめざします。
(3) 高度情報処理技術およびAI基盤
自動運転農機等からの映像・画像を含むさまざまなデータを効率的に伝送・圧縮するための高度情報処理技術の検討を行います。
また、自動運転農機等から収集されたデータを分析し農作業の最適化を図るための地域AIプラットフォームの検討を行います。NTT東日本の通信ビルをエッジ拠点とし、閉域ネットワークによる低遅延かつセキュアな通信や、GPUサーバによる膨大なデータの高速処理が可能なラボ環境を活用することで、車体情報・カメラ映像や作業ログ、圃場のIoT(Internet of Things)機器から収集されたデータ(生育・収量・品質・流通・消費者等)、外部データ(気象等)を高速に分析し、農業者や自動運転農機へタイムリーにフィードバックする仕組みをめざします。
農作業の記録を簡易的に行うため、作業者の発話を音声で認識し、文字データに変換する音声認識技術にも取り組む予定です。
図 全体概要と取り組みテーマ
契約期間
2019年6月28日~2024年6月30日(5年間)
今後の展開
今後は、北大、岩見沢市、NTTグループが連携し、農業のデジタルトランスフォーメーションによるスマート農業の実現と社会実装およびスマート農業を軸としたサステイナブルな地方創生・スマートシティのモデルづくりによる社会課題解決にともに取り組みます。
また、本モデルを確立し、将来のグローバル展開も視野に入れて取り組み、世界の食料不足の改善にも取り組みます。
問い合わせ先
NTT経営企画部門
広報室
TEL 03-5205-5550
E-mail ntt-cnr-ml@hco.ntt.co.jp
URL https://www.ntt.co.jp/news2019/1906/190628a.html
パートナー紹介
ICTを活用したスマート農業 ―― 農業のロボット化と情報化
岡本 博史
国立大学法人北海道大学大学院農学研究院 ビークルロボティクス研究室
准教授
現在、農業の現場では就農者人口の減少や高齢化が進み担い手不足が深刻化しています。こうした状況を見越し、当研究室では30年ほど前から無人ロボットトラクタの研究開発を行っています。ロボットトラクタは運転者を必要とせず完全無人でトラクタ作業を行うものです。高精度GNSS受信機などのセンサ情報を利用することであらかじめ計画された経路を高精度で自動走行します。昨年末には大手農機メーカ各社からロボットトラクタが発売され、ついに農業の現場に導入されることになりました。
ロボット農機では障害物検知など安全性の確保が重要です。そこで、農林水産省はロボット農機の実用化にあたって安全ガイドラインを制定し、人間の目視による監視を義務付けています。
しかし、次の目標として目視による監視に代わって遠隔地からの監視を行うための技術が求められています。ロボット遠隔監視のためには高画質で低遅延の映像伝送が必要となり、それに対応できる無線通信技術が必要となります。また、農業のロボット化だけでなく情報化(営農支援システムなど)のニーズも高まっています。
当研究室、岩見沢市、NTTグループの3者で実施している共同プロジェクトではNTTグループの持つ先進的な通信技術やデータ分析技術が農業分野においても効果的に導入されることを期待しています。
パートナー紹介
産学官連携による「スマート・アグリシティ」をめざします
黄瀬 信之
岩見沢市 企画財務部 情報政策推進担当
次長(総務省地域情報化アドバイザー)
行政面積の42%が農地であるなど経済の基軸を農業とする岩見沢市では、経済活動の活性化はもとより、地域の持続性を確保するためにも、農業の生産性向上や付加価値形成が重要ととらえています。
ICT活用による「市民生活の質の向上」と「地域経済の活性化」を重要施策とし、自営光ファイバ網やクラウドデータセンタ等の社会基盤を構築するとともに、教育や医療、健康、安全、雇用創出など利活用モデルの社会実装を進めている当市ですが、2013年からは生産者による研究会設立のもと、農業気象システム(市内13カ所に気象観測装置を設置 50 mメッシュで各種予測情報を配信)や高精度位置情報配信システム(市内4カ所にRTK基地局を設置。誤差数cmの環境実現)など、生産者が求める機能を全国に先駆けて整備し活用を進めてきました。
このような生産者と行政が連携する取り組みに加え、2019年度からはNTTグループと国立大学法人北海道大学、岩見沢市による産学官共同研究のもと、Society 5.0時代を見据えた地域社会づくりがスタートしています。
この共同研究では、ロボット農機に関するネットワークの最適化など、「スマート農業」の社会実装に向けた検証を進めるとともに、少子高齢化や人口減少に伴いさまざまな課題が顕在化する農村地域においても、安心・安全で快適に生活できる社会「スマート・アグリシティ」の実現もテーマとしており、課題への対処手法創出のもと新たな地域環境が具現化していくことを期待しています。
開発者紹介
ICT×ロボット農機で新たな価値を創出します
久住 嘉和†1/
村山 卓也†2
NTT研究企画部門
食農プロデュース担当 担当部長†1/担当課長†2
(左から)久住 嘉和/村山 卓也
NTTグループでは、さまざまな分野のパートナーとのコラボレーションによりイノベーションを起こし、社会課題の解決を通じて、人々が豊かで幸せになる未来の実現をめざしています。その中で、就業人口減少や高齢化が急速に進む農業は、スマート化・自動化の早期実現が求められています。
一方、農業のスマート化・自動化はICTだけでは実現しません。機械(ロボット)とのコラボレーションで実現します。メーカではなく、実証フィールドを持たないNTTグループにとって、世界最先端の農機の自動走行技術を持つ北海道大学、農業を軸としたスマートシティのモデルづくりを掲げる岩見沢市との連携は戦略上、非常に意義のあるものでした。
NTTグループ(NTT、NTT東日本、NTTドコモ)の高精度測位・位置情報や5Gなどの高速ネットワークなどを組み合わせ、農機の完全自動走行(レベル3)の技術体系確立を通じ、人手不足解消の実現をめざします。将来は、光ベースの革新的なネットワーク構想であるIOWNにより、さらに大容量、低遅延で柔軟性に富み、消費電力に優れたネットワークの適用可能性の検討を進めます。
これらのイノベーションを通じ、例えば、岩見沢市の監視センターを活用し、請負業者が地方農場にある多数のロボット農機やドローンを遠隔地から監視・制御を行うような世界観をめざします。また地球規模では人口爆発により、食料・水の争奪戦になるといわれています。そのため、本技術体系のグローバル展開も行い、人類の食料不足の改善にも貢献します。
今後もグループ総合力で農業分野に取り組みますのでぜひご期待ください。