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特集 主役登場

人と社会を支えるヘルスケアデバイス・インフラメンテナンス技術

ウェアラブルセンサによる新たな価値をパートナーと共創

高河原 和彦
NTTデバイスイノベーションセンタ
主任研究員

NTTは、東レ株式会社との共同開発によって電気を通す繊維「hitoe®」を創出し、2014年には着るだけで心電位・心拍数等の生体情報を計測可能な着衣型ウェアラブルセンサを提案、他社に先駆けて実用化を行いました。以降、NTTデバイスイノベーションセンタでは、健康で豊かな暮らしの実現に向け、人間に寄り添うウェアラブルデバイス技術の研究開発をミッションの1つとしてきました。
2014年に実用化したウェアラブルセンサでは、マラソンなどにおいて心拍数をモニタリングしながらトレーニングを行うといったスポーツ用途をターゲットとしていましたが、作業者の見守り、安全管理といった用途でも引き合いをいただき、何度かトライアルを実施させていただきました。その結果、激しい動きでも心拍数を正確に計測できるようにチューニングしたスポーツ用ウェアでは、電極を肌に密着させるための圧力が大きく、人によってはきついと感じるため作業者用にチューニングしたウェアが必要であること、心拍数の可視化だけではなく作業者の安全管理に有用な価値を提供する必要があるという課題を見出しました。
特集記事で紹介したウェアラブル生体・環境センサを用いた体調管理技術は、このような経緯から取り組んだテーマです。暑熱対策や身体負荷のマネジメントといった作業者の安全管理にとって大きな課題にターゲットを絞り、それらに対して大きな価値を提供できるよう、温熱生理学や運動生理学を専門とする大学の先生方と共同し、体調不良を防ぐためのウェアラブルセンサの活用方法を検討してきました。その中で、私たちの研究グループの強みであるデバイス技術やデータ解析技術をより深化させて体調管理に必要な生体・環境情報を取得するための新しいセンサ端末を開発しました。並行して、作業者の方にとって着心地の良いウェアを、素材や縫製を得意とする東レ株式会社やゴールドウイン株式会社と共同で開発しました。また、これらの要素技術を統合したシステムを開発し、グループ会社の協力を得て実際の作業現場で本技術を検証しました。このように、本成果は私たちの研究グループだけではなく、専門的な知見・技術を持つパートナーとそれぞれの強みを活かしながら共同することで、初めて創出することができました。本技術を少しでも多くの方に活用いただき、安心して働ける現場の実現に貢献することを願っています。
今後、NTTではIOWN(Innovative Optical and Wire­less Network)の構成要素の1つであるデジタルツインコンピューティングの一形態として、サイバー空間における人それぞれの身体および心理の精緻な写像(バイオデジタルツイン)を実現し、心身の状態の未来を予測することで、人間が健康で将来に希望を持ち続けられる未来への貢献をめざしています。そのためには、さまざまな要因によって日々刻々と変化している個人の生体データおよび環境データの継続的な取得とデータの活用法の開発が不可欠です。本成果をその端緒として、今後も私たちの強みを磨きつつ、パートナーとの協力関係を築きながら研究開発を進めていきます。