from NTT西日本
IOWN時代を見据えたNTT西日本の研究開発の取り組み
NTT西日本は、社会を取り巻く環境変化がもたらすさまざまな課題に対し、ICT を活用して解決する先駆者「ソーシャルICTパイオニア」として社会の発展に貢献し、地域から愛され、信頼される企業に変革し続けることをめざしています。その中で、2030年のIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想の実現と、2025年大阪・関西万博を見据え、IOWN準備ワーキンググループ(WG)を設立しました。ここでは、IOWN準備WGのめざす未来と研究開発している具体的な事例を紹介します。
IOWN構想実現に向けたNTT西日本での取り組み
NTT西日本では、2020年11月より、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想の実現による社会課題の解決という中期的な視点のもと、IOWN技術等を活用したユースケースの創出、早期ビジネス化に向けたサービス実現を目的にIOWN準備WGを設立しました。
IOWN準備WGでは、将来、地域で抱える課題等をユースケースとして、IOWN構想の概念や技術とこれまでR&Dセンタ等で培ってきた技術を組み合わせ、NTT西日本の強みを活かした新しいビジネス価値創出をめざしています。また、ベンチャーやスタートアップ企業との共創による新サービス・アイデアの検討を行う予定で、それに向けた市場リサーチと、オープンイノベーションを生むため各企業や大学などと議論を交わす場を積極的に設けています(図1)。
IOWN準備WGでは、図2に示す方向性で技術開発を進めています。
・光アクセス、Wi-Fi、ローカル5G(第5世代移動通信システム)等、異なる種類のアクセスを統一的なインタフェースで収容するマルチアクセス技術
・特定の地域内において、より低遅延でよりセキュアにデータの処理を可能とする地域エッジコンピューティング技術(地域エッジ)。
これらのお客さまとの接点、データの入り口であるアクセスライン・エッジを強みとして快適なIoT(Internet of Things)プラットフォームの提供と新たな技術やリソースの提供による今までにない新たなデータ活用ビジネスの創出による地域社会の活性化をめざしています。
これらの技術開発に向けてはNTT研究所やNTTコミュニケーションズなどから積極的に技術を取り込むことでスピード感のあるサービス展開をめざし、NTT西日本ではこれらの取り組みをPre-IOWNと位置付け、2025年大阪・関西万博への展開をめざします。
お客さまニーズに柔軟に対応できるネットワークの構築
地域エッジを推進するうえで、ユースケースに応じて最適なアクセスラインに接続する必要がありますが、複数のユースケースに対応する中で、さまざまなアクセスライン、端末、アプリケーションが混在している環境の運用が必要になり、その環境下では柔軟にアクセスラインと、端末、アプリケーションを追加することができるマルチアクセスという概念が必要となります。マルチアクセスの実現に向けて、複数のネットワークとの接続を想定したネットワークスライシングと、さまざまなベンダーの端末との接続を想定したProgramming Protocol Independent Packet Processors(P4)の研究開発を進めています。
ネットワークスライシングは広域イーサネット網や地域IP網等、他ネットワークを重畳することをめざすものです。現在はネットワークごとに装置を設置しサービスの提供をしていますが、今後は、4K・8K映像配信、自動運転、遠隔医療、IoT等の発展に伴い、ネットワークの重畳化が求められます。そのためには、多様化する事業者(Middle B)のニーズに柔軟かつ迅速に対応できるアーキテクチャを構築しなければなりません。しかし、現在の方法では新サービスを導入するたびに新装置を導入する必要があり、期間およびコストがかかるという課題があります。こうした課題を解決するために、NTT西日本は、新たな転送技術として複数のネットワークを重畳するネットワークスライシング技術の1つであるセグメントルーティング(SR)の検討を進めてきました。SRの運用により、シンプルなネットワーク設計と柔軟なサービス提供が可能となります(図3)。NTT西日本は、すでにネットワークスライシング自体の機能、複数スライス時における影響、異メーカー間の接続等の試験を実施し、基本的な技術確認を完了しています(図4)。今後、SRの他キャリアとの相互接続を含め、運用面での課題抽出・検討を行い、早期の商用導入をめざす予定です。
もう1つ技術開発を進めているものはP4です。P4とは、特定のメーカーに依存しない柔軟なネットワーク機能の追加を実現するため、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)によるパケット転送処理をプログラム可能とする技術です。さまざまなものをシームレスにつなぎ、ユーザーの要望に応じた適切なネットワーク環境を提供するためには、固定網とは異なるプロトコルのネットワークとの連携、パケット制御が必要になります。しかし、データプレーン処理機能はルーター・スイッチメーカーの実装に依存しているうえ、メーカーの機能追加は大手ユーザーの意向に影響されるため、必要な機能を必要なタイミングで利用することは難しいものです。そこでNTT西日本では、P4を用いたキャリア網でのパケット制御の実現に取り組んでいます。
地域エッジの実現に向けた取り組み
現在、NTT西日本で技術開発を進めている地域エッジとは、特定の地域で生成されたデータを、その地域のデータセンタで集約、加工、解析などを実施することで、より早くより安心してさまざまなデータ活用ビジネスの創出を推進する技術です。例えば、防犯カメラなどの画像解析などには高価なGPUサーバーが必要となりますが、地域エッジにGPUサーバーが搭載されているとお客さま自身が高価なサーバーを準備することなく画像解析サービスを活用することができるようになります。NTT西日本では地域エッジのユースケースを検討しており、その1つとしてゲーミングエッジに関する実証実験を行いました。
近年、eスポーツの市場が拡大し、関心が高まっている一方で、快適にプレイできる環境を整備するには、高価なものでは数十万円規模のゲーミングPCを準備する必要がある、また、さまざまな場所で快適にプレイするためには、ゲーミングPCをプレイ場所ごとに用意しなければならないといった課題の解決に向けて、NTT西日本は、ゲーミングエッジ技術の実証実験を行いました。具体的には、熊本県の公立高校2校とともに、高速に画像を処理するGPU サーバーをNTT西日本のネットワーク上に設置し、ゲームの高精細な画像処理を行い、手元のPCに処理後の映像を転送しました。実験の結果、安価なPCでもゲーミングエッジ技術により低遅延でe スポーツを実施できることが確認することができました(図5)。
また、地域エッジについては地域創生クラウドでの活用やヘルスケアに関する実証事業に取り組んでおり、GPUサーバー等を活用した地域エッジ技術のユースケースの検討を進めていきます。
今後の展開
このように、NTT西日本R&Dセンタでは、IOWN構想の実現に向けて、将来的に実用化が期待される新技術の開発や検証による知見の蓄積だけでなく、実際の社会課題やビジネス課題の解決に向けたトライアルや実フィールドでのPoC(Proof of Concept)にも積極的に取り組んでいます。今後も、こうした実際のユースケースへの適用を通じて、お客さまへの価値提供をめざしていきます。
問い合わせ先
NTT西日本
デジタル改革推進本部 技術革新部 R&Dセンタ 開発推進担当
TEL 06-6450-6451
E-mail ks-jimu-rdc@west.ntt.co.jp
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