NTT技術ジャーナル記事

   

「NTT技術ジャーナル」編集部が注目した
最新トピックや特集インタビュー記事などをご覧いただけます。

PDFダウンロード

グループ企業探訪

第236回 株式会社ドコモ・インサイトマーケティング

リサーチとプロモーションを相互連携させた高度なソリューションで企業のマーケティング活動を支援する

ドコモ・インサイトマーケティングは、“個客理解”中心のマーケティングプラットフォームや、新型コロナウイルス感染対策において一躍知名度が向上したモバイル空間統計®の提供を通じて、ドコモグループのデジタルマーケティングビジネス拡大に取り組んでいる。大きく変化する社会において、生活者理解に取り組む思いを三毛孝彦社長に伺った。

ドコモ・インサイトマーケティング 三毛 孝彦社長

マーケットリサーチ・リサーチデータ活用事業とプロモーション事業を展開

◆設立の背景と目的、事業概要について教えてください。

ドコモ・インサイトマーケティング(DIM)は、大規模な顧客基盤・情報を有し、これらを活用したマーケティングビジネスへの進出をめざすNTTドコモと、マーケティングリサーチの有力会社であり、データの分析・価値化に関するノウハウを有する株式会社インテージ(現 株式会社インテージホールディングス)の出資により、スマートフォン等を活用した企業のマーケティング支援事業を新たに展開することを目的に2012年4月にジョイントベンチャーとして設立されました。
事業内容としては、①1000万規模のモニター会員(dポイントクラブ会員、インテージ独自モニター)を活用したアンケートによる高品質なリサーチ「マイティモニター」、②ドコモユーザの実行動データとリサーチデータを組み合わせ、マーケティングPDCAをワンストップで提供するプラットフォーム(DMP: Data Management Plat­form)「di-PiNK」、③NTTドコモ契約の携帯電話がアクセスしている基地局エリア情報を基に、時間帯別・居住エリア別に推計した人口統計「モバイル空間統計®」等のリサーチ・データ活用事業、④dポイントクラブを対象にしたアンケート形式のプロモーションで、ドコモプレミアパネルとしての商品提供の他ダイレクトメールやサンプリングなども展開する「対話型プロモーション」、⑤dポイントを活用したdポイント加盟店での販促サービス「ポイントボーナスチケット」等のプロモーション事業を展開しています。

◆まもなく会社設立10周年を迎えますが、事業を取り巻く環境はどうですか。

会社全体的にみると、収益、営業利益ともにこの5年間で約2倍の伸びとなっており、急激な成長とはいえないまでも、結果として6期連続での増収増益を達成し、着実に手ごたえを感じています。とりわけ、前述のDMP関連はここ5年間で約8倍、モバイル空間統計®は約4倍の成長を遂げるなど、今後も成長させたいと考えているところです。
こうした良い状況が続く中で迎えた2020年度は、新型コロナウイルスの影響で市場の先行きの不透明感が増す中、さまざまな分野の企業においてプロモーションや販売促進関連の費用を削る傾向が強まり、その影響を大きく受けたプロモーション事業もかなり苦戦を強いられました。しかし、新型コロナウイルスに起因するさまざまな環境変化は、新しい生活様式ニューノーマルの定着や、それに伴うマーケット、顧客の変化をしっかりと把握していこうというクライアントの新たな動きを生み出し、結果としてモニターを含む調査関係の新たな需要創出につなげることでプロモーション事業の苦戦をカバーすることができました。2021年度についても、当面同様の傾向が続くものと予想していますが、例えば、ワクチンの接種状況やオリンピックのようなイベントにより環境が一変する可能性もあり、これにどう柔軟に対応していくかという点が課題と考えています。
当面はこの短期的な課題に対応していきつつ、中期的な視点で事業そのものを取り巻く課題もあります。マーケティングリサーチ市場は約2000億円規模で、年2%程度の成長を続けている市場でありますが、この市場において、どのようにビジネスをスケールさせるかということが課題になっています。調査のみでは限られた市場ですが、調査結果を活用してプロモーションに展開していくことで隣接する市場でビジネス展開が可能となります。また、調査結果も2次加工することで、多様な業界におけるマーケティングへの活用や、その隣接市場への展開も可能となります。これはDIM単独ではできない部分もあり、パートナー企業との連携が不可欠となることから開拓を進めていきます。

モバイル空間統計®やワンストップマーケティングでお客さまに付加価値を提供

◆新型コロナウイルスの影響を受けつつも順調にビジネスが進んでいるようですが、その要因は何でしょうか。

DIMの保有するデータは、dポイントクラブを含むNTTドコモの顧客基盤・情報がベースであり、大規模で年齢や性別等の偏りの少ないデータといえます。この基盤にアンケート情報や外部メディアの接触情報等を統合し、インテージのデータ解析、情報の価値化のノウハウを活用することで、“個客理解”中心のマーケティングプラットフォームをお客さまに提供することができます。
さらに、例えば旅行会社がマーケット調査結果に基づいてキャンペーンを行い、モバイル空間統計®を活用したキャンペーンによる旅行地への人流予測を行ったうえで効果測定し、次の施策に結びつける、といったようにPDCAをワンストップで回すことができることも大きな付加価値になっています。
また、モバイル空間統計®についていえば、新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、政府や各自治体が人流を抑制する目的で、定量的に人流の変化を示すためのツールとして、大いに活用をいただくことができました。新聞やテレビ等のマスメディアからも、日々の変化を示す指標として引き合いをいただき、これまでの都市計画、防災対策、観光促進、商圏分析といった目的とは全く異なる目的で大きく注目されました。基本的にtoBのサービスでありますが、一般の皆様にも広く認知をいただくことができたと思います。
DIM の事業が少しずつ認知されるようになるとともに、これらの付加価値をお客さまやパートナー企業に認めていただけるようになってきたことが、業績に結び付いてきたのだと思います。

◆今後の展望についてお聞かせください。

マーケティングリサーチの市場のみでは、急激な成長を望むことができませんがDIMが提供するDMPや位置情報を活用したソリューションを組み合わせることにより、クライアントのマーケティングニーズにワンストップでこたえることができるのではないかと期待しています。ただ、こういった取り組みはDIM単独では限界もあり、パートナー企業との連携が重要になってきます。パートナー企業の開拓に注力し、ともに新しい分野、事例を創り出していきたいと考えています。
また、これまでのビジネスモデルは、単発でのリサーチ、プロモーション等がビジネスのベースとなっています。そのため、2020年度のコロナ禍による環境の変化に限らず、毎年のようになんらかの外的要因の影響を大きく受ける可能性があり、会社業績に顕著な影響を与えるおそれが生じかねません。こうした状況は経営上の課題であると認識し、これを解決するための方法として、サブスクリプション型のビジネスモデルを組み合わせることにより、このリスクを軽減したいと考えています。まだまだ検討を始めたところではありますが、これを加速することで安定したビジネス展開を図るようにしていきたいと思います。

担当者に聞く

モバイル空間統計®で新しいマーケティング

エリアマーケティング部長
鈴木 俊博さん

◆担当されている業務について教えてください。

モバイル空間統計®を活用したデータ解析から、パートナー開拓、営業活動まで全般を担当しています。
モバイル空間統計®は、スマートフォン等のつながる仕組みを利用して、ある時間にエリア内に存在する端末数からその時々の人口を推測するもので、NTTドコモでは2008年から取り組んでいます(商用開始は2013年)。DIMでは、NTTドコモが作成したモバイル空間統計®を基に、それを、例えば、地図上に示した「モバイル空間統計® 人口マップ(https://mobakumap.jp)」のようなサービスを作成・提供しています。
モバイル空間統計をイベント情報と重畳することでイベント会場周辺の人流調査、天気情報と重畳させることで小売店における当日の売れ筋情報の予測、観光地への移動情報と組み合わせることで帰路の高速道路の渋滞予測等が可能となります。こうしたデータの“加工”により、小売・流通業、交通インフラ、観光・旅行業、防災・都市計画、イベント、不動産、投資といったあらゆるシーンにおいてデータの活用が見込まれます。
DIMでは、パートナー企業と連携することで、さまざまな業界や自治体様の課題を解決できるようにモバイル空間統計®に“加工”を加えて提供しています。また、モバイル空間統計®をパートナー企業のプラットフォームにオンライン連携することで、お客さま向けにさまざまな情報サービスも提供しています。

◆ご苦労されている点を伺えますか。

2013年から取り組んでいるモバイル空間統計®が、どのようなもので、どのような効用があるかをなかなか理解してもらえず、説明に苦労してきました。しかし、コロナ禍で緊急事態宣言が発出されたターミナル駅等の人口の増減が報道番組等に登場し、画面に「NTTドコモ提供」と文字が露出してくることで、モバイル空間統計®の認知は一気に向上しました。
一方で、別の報道番組では他社提供の文字も出ており、そちらのデータと混同されることが多くなり、今度はこの説明に苦労することが多くなってきました。結果の対象は同じ人口なのですが、数字の精度やそれに伴う応用の範囲が大きく異なります。他社はGPSにより位置情報を把握しています。基地局による位置情報の把握の場合と比較して、GPSのほうがエリアを特定する範囲が細かいため、GPSを利用した人口統計のほうが高精度と誤解されてしまいます。ところが、基地局位置情報を利用したほうが実態に近いものになります。理由は、個人を把握するのは1つひとつのエリア特性程度が高いGPSが良いのですが、集団を把握するためには位置情報の連続性や量が重要で基地局位置情報を利用するほうが優位なためです。基地局位置情報はつながる仕組みの根幹の技術のため、スマートフォン等の電源さえ入っていれば継続的に取得することができるのですが、GPSの場合は、利用者がGPS関連アプリをインストール、データの利用許諾をし、さらに、アプリ自体が動作していないと位置情報を取得することができません。つまり、位置情報把握がアプリの利用状況に大きく依存し、エリアや時間に応じて位置情報が取得できる状況が違ってきてしまうため、原理的に、エリア間比較や時間帯別の比較ができません。一方、基地局位置情報を利用しているモバイル空間統計®の場合は、電源さえ入っていれば、エリアや時間にかかわらず常に位置情報を取得できるため、より実態に近く、精度の高い人口を推計できます。
このようなことを、いかにお客さまやパートナー企業に簡単に分かりやすく伝えていくかということを試行錯誤しています。

◆今後の展望について教えてください。

モバイル空間統計®開始当初から、「モバイル空間統計®で世の中を変える」をキャッチフレーズとして、「数千万の動態情報」と「インテリジェンス」を活用して、産業と都市基盤の高度化を行い、豊かな街づくりを行っていくことをめざして活動してきました。
そこに向けて、1つでも多くの事例を増やしていくことに注力していきたいと思います。より多くの分野でモバイル空間統計®を活用していただくためにも、それぞれの分野に精通したパートナー企業との連携は欠かせません。そのためにも、さまざまなアイデアを携えてパートナーを開拓していくことを推進していくつもりです。

ア・ラ・カルト

■放課後バドミントン部

月に数回、終業後に任意のメンバーが集まって公営の体育館でバドミントンをしているそうです。横で見覚えのある顔の人たちがフットサルを行っていて、それがインテージ(親会社)のメンバーだと分かると、競技種目が変わってしまうメンバーも登場し、なんともユルイ雰囲気のチームです。終了後はもしかしたらこちらがメインかもしれない、行きつけの居酒屋での懇親会。コロナ禍で懇親会ができないばかりではなく、体育館の開館時間短縮や閉館でバドミントンすらもできない状況とか。オリンピック後の再開をめざして、イメージトレーニングに励んでいるメンバーもいるそうで、やはりバドミントンがメインなのですね。

■ランチ探検隊

2020年11月に新橋から池袋へオフィスを移転しました。リモートワークの多い中の移転とはいえ、社員の気になるところはやはり食生活。新橋が特に恵まれていただけに、どうなるものかと池袋に来てみると、安くていい店がたくさんあって安心したとのこと。出社した社員がランチで訪問した店の名刺、メニュー、コメント等を休憩コーナーにあるホワイトボードに地図とともに貼って情報交換しています(写真1)。ただ、客層が新橋のサラリーマンから、池袋は若者中心なので料理もコッテリ・ガッツリ系が多いようです。「安くておいしい寿司が食べたい」といったボヤキが聞こえてくるとかこないとか。

■オンライン懇親会

リモートワークが中心で、どうしても社員どうしのコミュニケーションや雑談がやりにくくなり、また、人事異動後も新チームに溶け込みづらくなっているので、会社主催でオンライン懇親会を行っているそうです(写真2、3)。特徴は全社員一斉参加ではなく、身近なコミュニケーションを目的に部署単位で開催することです。とにかく全員が参加できるように、メンバーを変えながら少人数の部屋を設定したり、ゲーム大会のようなイベント形式にしたり、部署ごとに趣向を凝らした企画が盛りだくさんだそうです。中には企画・準備段階からすっかり楽しんでいる幹事担当の社員もあちらこちらにいるようです。