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グループ企業探訪

第218回 ドコモ・サポート株式会社

NTTドコモの五感としてお客さまと向き合い、時代やニーズの変化と共に新たな価値を創出

ドコモ・サポートは、お客さまからの問い合わせ対応を中心としたカスタマーサポートを行い、NTTドコモの五感としてお客さまの声を受け止めて顧客満足度(CS)向上に貢献している。その最前線である、カスタマーサポートの現状や環境、時代の変化への対応などを含め、今後の展望について古川浩司社長に話を伺った。

ドコモ・サポート 古川浩司社長

NTTドコモへお客さまの声をつなぐお客さま第一主義のサポートを行う会社

設立の背景と事業概要について教えてください。

ドコモ・サポートは、1997年にドコモショップ等の営業窓口業務中心の会社として設立されました。その後、電話受付業務、代理店サポート業務等、順次業務拡大・変更していく中で、現在はNTTドコモのカスタマーサポート業務を一元的に行う会社となっています。
カスタマーサポート業務においては、お客さまからのお問合せ、ご要望、ご意見などが直接寄せられており、まさにお客さまとの接点です。この接点を通して得られるお客さまの声を、五感を研ぎ澄ませて聞きとり、それをNTTドコモのサービスや顧客満足度(CS)向上につなげていくこと、それが当社の最大の付加価値です。つまり、私たちがNTTドコモの五感としての役割を担い、お客さまとドコモをつないでいるのです。
こうしたお客さまの声は、電話、メール、チャット等さまざまな手段により寄せられます。これらの声を、コールセンターによる電話受付・支援をベースとしたコール事業本部と、NTTドコモHPでの情報提供、オンラインによる受付・支援をベースとしたWebコミュニケーション事業部の2本柱で対応しています。
コールセンター事業は、設立当時から、当社の基幹となる事業です。こちらは、NTTドコモのサービス・製品を中心としたお客さまからの各種ご注文・お問合せ応対をメインに行っています。オペレータについては、マルチスキルで対応してきたところですが、問合せ対象が増えて、細分化してきたことに伴い、専門的なスキルのチームも構成されてきました。また、オペレータの応対品質向上や業務効率化のためのツールの導入やセンターを支援するチームもいますが、NTTドコモの五感としてお客さまに向き合っていくために、支援チームも自ら応対現場に入っていくことで、お客さまに向き合う感覚を研ぎ澄まして業務に取り組むような工夫もしています。
Web、メール、チャットといったオンラインでの受付は近年、お客さまのWebシフト化とともに、着実に増加しています。それらのニーズに対応できるようNTTドコモ公式HP等の見直しも提案しています。
お客さまとの接点であるチャネルとしては、電話なのかオンラインなのかといった区別がありますが、応対を支えるFAQ等のツールやナレッジについては共通的な部分も多く、これらの充実・強化を図り、コンタクトチャネルがそれぞれシームレスに連携していくことが理想であると考えています。

社内からの改善事業を取り巻く環境の変化へプロアクティブに取り組む

コールセンターへのAI(人工知能)の導入をはじめ、事業を取り巻く環境の変化が大きくなってきています。こうした変化への取り組みについて教えてください。

オンライン受付が拡大基調にあるとはいえ、コールセンターがなくなるわけではなく、顧客応対接点としてのオペレータの重要性も変わるものではありません。一方、当社に限った話ではなく、世の中のコールセンター一般として人材不足に直面しています。単なる人数の問題のみではなく、短期間の離職に伴い、スキル向上を図ることができないといった問題も内在しています。
そこで、コールセンターの立地や、オペレータの労働環境や処遇の見直しのほか、ソーシャルスタイル診断(コミュニケーションの傾向診断)をし、それぞれの個性、向き不向きから、個人に合わせた指導育成方針を打ち出すといった人材育成に関する取り組みも行っており、こちらは現在特許申請中でもあります。
また、AIを活用したチャットボットやFAQツールを導入し、受付支援を行うことで、お客さま自身での「自己解決率の向上」や「自動回答」の促進とともに、必要稼働を削減する取り組みを進めています。このAI活用による支援については、電話、オンラインといった受付チャネルにとらわれない共通部分であるため、全社横断プロジェクトとして取り組み、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を図ることで、NTTドコモのビジネスモデルの変革に貢献し、新たなビジネスの創出をしていきたいと考えています。

お客さま応対や全社プロジェクトなど、社員の活躍がその成否に直結しそうですが、貴社の雰囲気はいかがでしょうか。

お客さま応対や全社プロジェクトなど、社員の活躍がその成否に直結しそうですが、貴社の雰囲気はいかがでしょうか。

NTTグループでよくいわれている真面目さ、真剣で期待を裏切らない姿勢は当社も当てはまります。別の言い方をすると、何事にも一生懸命取り組む姿勢を感じます。もちろん業務経験等により個々のスキル差は若干ありますが、全員が自分なりに真剣に取り組んでいくところがあり、なおざりにはしないという点が強いと思います。その中で、さまざまな組織から集まって半日間かけてしっかりと議論するような社員どうしでコミュニケーションを取る仕掛けづくりや、スタッフ・社員を最大限に尊重した働きやすい職場環境づくりなどは、当社として力を入れている部分です。これらの取り組みは、それぞれの部署でも同様であり、社長である私自身も社員に対するメッセージを出したり、さまざまなイベントなどを通じて、社員とのコミュニケーションをしっかりとるよう心掛けています。こうした環境の中で社員自らが考えて取り組んでいると思います。

第5世代移動通信システム(5G)が導入されてくると、お客さまとの会話も変わってくると思います。今後の展開について教えてください。

5Gは高速・大容量、低遅延、多端末同時接続が特徴で、その特徴を利用してパートナー企業がさまざまなサービスを提供する、B2B2Xの形態が多くなると考えられます。そのため、パートナー企業からサービス提供に関するお問合せがくることが新たに想定されます。パートナー企業からの問合せに当社が対応することで、当社の持つポテンシャルと、付加価値としての五感を最大限発揮し、パートナーのサービスにチューンしていくことで対応し、パートナー企業とともに新たな価値創造の提供をサポートしていきたいと思います。
パートナー企業といっても、お客さまという点には違いありません。これまでにお客さま対応で培った五感をしっかりと活かし、パートナー企業のビジネススタイルに合わせて、応対内容やスキームを整理することで新たな関係を築いていきたいと考えています。
こうした新しい概念、サービスへの対応や、さらなるCS向上をめざして、DXを推進していきたいと思います。これまで行ってきたAIを活用したチャットボットやFAQによるサポートなどに加えて、先述の自然対話技術による自動応答の導入、さらにはお客さまの感情を把握した応対にも取り組む予定です。お客さまの感情について、対面であれば顔の表情や雰囲気である程度はお客さまの感情を想像できますが、電話による応対の場合、例えば声のトーンは冷静であるにもかかわらず実際にはお客さまがお怒りの場合があり、オペレータがお客さまの感情を把握するのは困難な状況です。そこで、AIを活用し、声のトーンや発話内容などからお客さまの感情を推測し、それに応じた応対を行うことができれば、お客さまの満足度向上に役立てることができます。
こうしたDXの推進により、効率化のみならず五感のさらなる先鋭化が期待でき、その先の顧客満足度の向上につながっていくものと思います。

担当者に聞く

前例のない取り組みへAIを活用した音声認識IVR運用事例

<ナレッジセンター>
業務企画担当課長 山本 智寛さん
業務推進担当主査 池田 沙織さん

(左から)山本智寛さん、池田沙織さん

担当されている業務について教えてください。

山本:NTTドコモのフリーダイヤルにおいて、AIを活用したお客さまの発話による音声認識IVR(Interactive Voice Response)の運用を行っています。
池田:コールセンターにおいて音声認識機能付きのIVRは一般的に普及していますが、私たちは、自然対話技術を活用した自動音声応答機能により、お客さまの発話から問合せ内容を自動的に判断し、最適なセンターへ接続するということを実現しています。本サービスは2017年9月から開始し、2019年6月からはシナリオ対話機能とFAQボット機能を追加して、聞き返しによるスキル別オペレータ接続の精度向上や自動回答によるお問合せ解決の推進を図り、同時にコールセンターの稼働削減に取り組んでいます。この取り組みは、国内のコールセンターでは前例のない取り組みと聞いています。
山本:NTTドコモが開発したAIエンジンを導入し、都度発生した運用課題について技術支援をいただきながら、シナリオ作成・チューニングなどを実施してきました。

ご苦労されている点を伺えますか。

池田:新機能の自動回答に向けた準備に苦労しました。Web問合せであれば、テキスト以外に図や表を活用して回答することもできますが、電話の場合は音声で回答することから、説明が長すぎても短すぎても理解いただくことが難しくなります。そこで、試行錯誤を繰り返しながら、最適な文字数や説明時間を設定し、その範囲内で自動応答の回答データを作成しました。これに限らず、辞書登録などの細かいチューニング作業や、AIMLによるプログラミングなど、毎日が試行錯誤の連続です。

今後の展望について教えてください。

山本:音声認識IVRの課題として、基本的な部分ではありますが、お客さまに発話していただけないと接続先の判断ができないという点があげられます。本当に話すだけで大丈夫なのかという不安をどう解消するか。最初の第一発話を引き出すために、1つひとつのコールをより詳細に分析することが重要だと考えています。また、新たな取り組みとして、回答メールの配信により、お客さまご自身で解決できる方法を検討中です。将来的には、本人確認機能の追加などにより、応対時間のさらなる短縮が期待できると考えています。そして、私は、DX推進に関する全社プロジェクトのメンバーでもあります。その活動を通して、当社にはさまざまなコンタクトチャネルがあり、そこの業務を分析していくと共通的な業務・ノウハウが意外と多くあることを再確認しました。DXを推進していく中で、こうしたチャネルをうまく融合させていくことでお客さま応対や、NTTドコモに対して付加価値を出していけると考えています。

my daizTM(マイデイズ)パートナー企業への効果的な運用支援により、サービス拡大に貢献

<スマートライフサポートセンタ>
AI支援担当主査 柏葉 幸恵さん
AI支援担当 金森 剛さん

(左から)金森剛さん、柏葉幸恵さん

担当されている業務について教えてください。

柏葉:2018年5月30日に提供開始したmy daizTM*のパートナー企業向けの運用支援をメインに行っています。my daizTMはお客さま接点の1つとして、現在NTTドコモで力を入れているサービスの1つとなり、端末の位置情報や登録したスケジュールなど、さまざまな情報を基に、お客さま1人ひとりの生活リズムや好みを学習。暮らしに合った幅広い情報を、お客さまに合ったタイミングでお伝えするサービスです。
お客さま1人ひとりのニーズにあったより良い情報を提供するためには、パートナー企業の拡大と情報配信の促進が必要となります。全体的には主に下記の運用支援を行っています。
① パートナー企業参画時の申請受付、審査、各種問合せ対応などの「申込・運用支援業務」
② パートナー企業へ、対話・雑談シナリオ改善提案や情報配信などのサポートを行う「開拓支援業務」
③ 対話形式で回答するためのチャットボット作成、チューニング、ログ分析など

金森:私は主に「FAQチャットボット作成・運用業務」を担当しています。昨今のトピックスとして、お客さまとのコンタクトポイントとしてチャットベースのコミュニケーションが拡大していますが、my daizTMパートナー企業からのご要望によるFAQチャットボットの新規作成はもちろん、利用動向をアクセスログから分析し、お客さまへ適切な回答ができるよう日々改善に取り組んでいます。
また、2019年4月にFAQチャットボットシステムが新しくなり、今までより安価にFAQチャットボットを導入できるようになりました。そのため、企業からの作成依頼も来るようになり、企業向けのFAQチャットボット作成対応も行うようになりました。

ご苦労されている点を伺えますか。

柏葉:サービスの提供元である、NTTドコモ コンシューマービジネス推進部より業務を受託した際に、my daizTM立ち上げのプロジェクトが短期間であったため、運用フロー検討からシステム投入まで、質と量をどちらも落とさず業務を遂行するのが大変でした。
FAQチャットボット作成業務についていうと、サービスイン直前まで商用のFAQシステムは出来上がらないため、当時は、私たちにもまだノウハウがあまりなく、そのような状況の中FAQチャットボット作成や確認をしていくことはとても大変でしたが、サービス提供元と協力しながら、何とかリリース日までに満足できる性能のFAQチャットボットをつくり上げることができました。
金森:4月のFAQチャットボットシステム更改時の話ですが、お客さまへ提供していた17サービスのFAQチャットボットの基盤の仕様変更があり、すべてのFAQチャットボットを新しいシステムに合わせた仕様につくり替える作業を約2カ月半という短い期間で行いました。期日が決まっている中で、FAQ担当スタッフのスキルに合わせて効率良く業務を割り振るなどの工夫とスケジュール管理の徹底により、無事に移行作業を成し遂げることができました。

今後の展望について教えてください。

金森:お客さまの生活に役立つためにも、今後はパートナー開拓の販売主管であるNTTドコモ法人営業部門と連携し、引き続き、パートナー企業の拡大支援をしていきたいと思います。また、FAQチャットボットを通じ、お客さまのコンタクトポイントの多様化にも対応していきたいと思います。
柏葉:一方でNTTドコモ自体も今後DXを推進していく状況にあるので、それに貢献できるよう、「NTTドコモのサービスについてはmy daizTMに聞けば、何でもこたえてくれる」サービスをめざします。

* 「my daizTM」は、株式会社NTTドコモの商標です。

ドコモ・サポート ア・ラ・カルト

ドコモ・サポート業務改善大会

年に1度、日々取り組んでいる品質向上や効率化の取り組みを発表するドコモ・サポート業務改善大会を開催しています。ドコモ・サポートならではの特徴として、発表にも力を入れているようで、発表者どうしで掛け合いをしたり、コールセンターの応対模様を劇仕立てでプレゼンテーションするとのこと。
実業務の内容や困りごとを分かりやすく表現しているだけでなく、プレゼンを見ているだけでも楽しめそうですね(写真1)。

写真1

ファミリーデー

ドコモ・サポートの業務を社員の家族により理解してもらうため、職場見学を開催しました(写真2)。内容は、携わっている業務の仕事体験や、社内見学です。会議室で子どもたちがPCを使って名前を入れるといった会議資料作成体験、Webカメラ越しにご両親に向けてその資料を発表するといったWeb会議の模擬体験をしてもらいました。また、チャットボットや、my daizTMへの話しかけによる利用体験、ヘッドセットをつけて話をしてみるというコールセンター体験の時間も設ける等により、楽しみながら子どもがご両親の仕事に対する理解が深まったそうです。

写真2