特集
農業を起点にしたコネクテッド・ドローンの開発と社会実装
- ドローン
- スマート農業
- IoT
2021年2月に事業を開始したNTT e-Drone Technologyは持続可能な社会の実現に向けてドローンの社会実装を推進するミッションを持って立ち上がった会社です。地域の主要産業である農業を起点にドローンの利活用を推進することで地域の拠点づくりをお手伝いするところからまずは始めています。本稿では、主に農業分野の取り組みについて紹介します。
山﨑 顕(やまさき あきら)/関口 勇二(せきぐち ゆうじ)
鈴鹿 真也(すずか しんや)/北川 侑(きたがわ すすむ)
佐瀬 穂高(させ ほだか)/堤 美音(つつみ よしと)
NTT e-Drone Technology
NTT e-Drone Technologyの設立背景
NTT e-Drone Technologyは2021年2月に、NTT東日本、株式会社オプティム、株式会社WorldLink & Companyの三者合弁で設立したドローンメーカーです(図1)。出資三者はいずれも、以前からスマート農業に取り組んでおり、農薬散布・肥料散布・センシング・播種等さまざまな農作業においてドローンの利活用が進む状況を事業機会ととらえて当社設立に至りました。当社は出資三者と緊密に連携しながら、農業を起点とした「社会課題の解決に資するドローンの社会実装」をめざし、ドローンの機体開発・運用受託・人材育成まで幅広い事業に取り組んでいます。
NTTグループ会社としては珍しく、機体開発まで手掛けるメーカー機能を有することもあり、研究所から事業会社まで幅広くお声がけいただき、社内外問わず案件を頂戴していますが、本稿では特集テーマである農業分野における取り組みについて、「現在の取り組み」「将来に向けた開発」に分けて紹介します。
農業分野における現在の取り組み
■農業ドローン「AC101」
「全ては、長く、安心してご利用いただくために」という想いを込めた「AC101」2022モデルは、日本の圃場に合った「軽量」「コンパクト」「省エネ」といった従来の機体コンセプトをさらに強化し、より軽く、より強く、初めての方にもよりやさしい機体を実現しました(図2)。それに加えて、「2〜3年で部品供給が途絶えては農機具としては困る」といった多数のユーザの声を踏まえ、ドローン業界の常識を覆す日本初の「7年サポート」を保証しています。さらに、「充電の手間をなくしたい」「そもそも1本のバッテリーでより長く散布したい」といった声も重視し、プロペラはカーボン製に変更しました。「より軽く」なった機体と「よりやさしく」なった操作感との相乗効果により、ホバリング時間が多少長くなった場合や変形な圃場で時間をかけて散布した場合でも、バッテリー1本で、これまでよりも簡単に最大2.5haを散布できるようになっています。
■農業用ドローン「AC101」の普及に向けて
会社設立以降、デモ会等のイベントを100回以上実施し、農家、JA関係者、農政関係者2000名以上の方々とお会いし、農業の現場におけるドローンの利活用について意見交換を重ねてきました。「AC101」のさらなる普及に向けては、遠隔操縦や完全自動航行による省人化の実現や、ドローンにて農薬を散布可能な対象作物の拡大の要望等を頂戴しています。農林水産省ではドローンで散布可能な農薬の拡充を推進しており、「AC101」での試験散布や実証についても積極的に実施しています。直近ではキャベツでも試験散布し機体を購入いただくケースもありました。また、りんごの授粉作業へのドローンの活用も検討しています。現場の要望を1つひとつ解決していくことで、さらなる普及を推進していきます。
将来に向けた取り組み――コネクテッド・ドローンの開発&人材育成
2021年7月に、当社はAuterion(1)との提携を発表しました。Auterionは企業や政府機関といったエンタープライズ向けに、それぞれのニーズに応じた機体、ペイロード、アプリケーションとの連携を容易に実現する、ドローン向けオープンソフトウェア・プラットフォームを提供している米国、スイス、ドイツに拠点を構える企業です。当社は、この提携を通じてコネクテッド・ドローンの開発を進めています。コネクテッド・ドローンは、無線〔LTE(Long Term Evolution)、5G(第5世代移動通信システム)、ローカル5G〕を介してドローンとクラウドが常時接続可能となることで、「ドローンの遠隔操作」と、ドローンが取得したデータを「リアルタイムに遠隔地に伝送」することを実現します。農業用ドローンや、測量・点検・災害対策・物流向けのドローンにも実装されるべきものと考え、開発を推進しています。すでに、ドローンの制御装置であるフライトコントローラの試作に成功し量産に向けて開発を進めています(図3)。また、クラウドについてもAuterionとの共同開発により効率的かつ高機能なアプリケーションの開発を推進しています(図4)。
NTT e-Drone Technologyではこのような開発を通じて、社会課題の解決に資するドローンの社会実装に貢献していく考えです。農業以外の分野については、当社のWebサイトや公式SNS等(2)〜(5)もご確認ください。
■参考文献
(1) https://auterion.com/
(2) https://www.nttedt.co.jp/
(3) https://www.youtube.com/c/NTTeDroneTechnology
(4) https://www.facebook.com/NTTdrone
(5) https://twitter.com/NTTdrone
(左から)北川 侑/佐瀬 穂高/山﨑 顕/関口 勇二/堤 美音/鈴鹿 真也(右上)
問い合わせ先
NTT e-Drone Technology
E-mail contact@nttedt.co.jp
1人ひとりや、1つの会社でできることは限られているかもしれませんが、私たちの強みである社会とパートナーとテクノロジを「つなぐ」力を発揮することで驚きのドローンを創出することができると信じています。