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主役登場

人と環境が調和したスマートな世界を実現するICTの研究開発の取り組み人と環境が調和したスマートな世界を実現するICTの研究開発の取り組み

移動予測技術の構築をめざして

大川 真耶

NTTサービスエボリューション研究所
研究員

私たちが取り組んでいる人の移動行動の理解・予測は、機械学習・データマイニング分野において近年注目を集めているテーマの1つです。近年、計測技術・通信技術の発展により、大規模な人の移動データが自動で取得できるようになりつつあります。このような背景から、人の移動行動の理解・予測をテーマとする研究が、大規模データからの知識獲得をめざす機械学習・データマイニング分野において中心的なテーマの1つになっています。
人の移動行動の理解・予測を研究テーマとして選んだのは、応用分野が幅広く、社会的意義が大きいと感じたためです。人の移動情報の理解・予測は、都市計画や交通の最適化、防犯・防災、観光、感染症予防等、幅広い応用分野で重要な役割を持っています。例えば、都市の各エリアにおける近未来の混雑度を正確に予測することができれば、混雑予測情報の配信による自律的な交通分散の促進、交通機関の運行スケジュールの最適化、警備配置の最適化による犯罪防止に役立てることができます。私自身は元々、NTTに入社する前は、物理学分野で素粒子に関する基礎研究をしていましたが、その際に培った数理的素養を混雑緩和・防犯対策など身近な社会的課題の解決に役立てることができるという点に大きな魅力を感じ、入社から6年間、継続して本テーマに取り組んでいます。
この分野は、技術トレンドの変化のスピードが予想以上に早く、ハイスピードな国際的競争の中で存在感を出すためには、技術の最新動向を常に把握し、その最先端を走る必要があります。元々基礎研究分野にいたこともあって、短期間で研究のサイクルを回さなければならないということに初めは戸惑いもありましたが、戦略的に技術領域を選ぶことでそれが実現できるようになりつつあると感じています。直近の研究では、最近のトレンドの技術を伝統的な確率モデルの枠組みの中に取り入れ、国際的な評価を受けることができました。これは、画像や文章等の複雑な形式で表されるデータから人の移動行動に影響を与える因子(道路ネットワーク、コンサート等のソーシャルイベントなど)を自動で抽出することで、高精度な人の移動予測を実現するものです。このような学術的・実用的価値を両立した技術を一人称でつくるということに、今は大きなやりがいを感じています。
機械学習・データマイニング技術を用いた人の移動行動の予測・理解は近年活発に研究が進展している分野ではありますが、あらゆる条件下において常に高精度な予測ができる手法はなく、まだ技術発展の余地があります。また、移動行動において蓄積されてきた人の行動に関する知見や確率モデリング技術は、医療や金融など、幅広い応用分野にも適用できる可能性が高いと考えられますが、他の応用分野への展開については道半ばというのが現状です。今後もこれまでの取り組みの中で培った知見や技術を活用しながら、学術的・実用的価値の高い技術を確立し、創出した新規技術の実用化によりNTTグループのさまざまな事業へ貢献できるよう、着実な努力を続けたいと考えています。