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グループ企業探訪

第250回 NTTドコモ スマートライフカンパニー コンシューママーケティング部

dポイントクラブでお客さまに付加価値を提供

2022年7月1日にNTTドコモにスマートライフカンパニーが誕生した。この中で、顧客とのエンゲージメントおよびサービスのセールスや販促を強化していくため、ポイント・決済をはじめとする各種スマートライフ事業のマーケティングを横断的に担うコンシューママーケティング部伊藤邦宏部長に、プレイヤーが乱立するポイントビジネス市場におけるドコモの取り組みや今後の展望を伺った。

NTTドコモ スマートライフカンパニー コンシューママーケティング部 伊藤邦宏部長

dポイントクラブは顧客起点の発想・行動の基盤

◆コンシューママーケティング部とはどのような組織なのでしょうか。

新NTTドコモグループでは、これまでの法人事業やコンシューマ事業を機能別に統合して、携帯電話サービスを軸に据え、新サービスの拡大、チャネル改革とネットワーク構造の改革に取り組む「コンシューマ通信事業」、顧客基盤の充実を図り、金融・決済やコンテンツ等におけるビジネスの成長ペースの加速に取り組む「スマートライフ事業」、法人ビジネスとしてのクラウドソリューションの拡充を含む新しいサービスへポートフォリオを入れ替え、モバイル・固定・クラウドを融合させたサービスをワンストップで提供していく「法人事業」の3つのセグメントを柱に本格的に再スタートしました。
スマートライフ事業では、サービスやプロダクトごとにマーケティング、営業、開発といった機能が分割していたところ、これを機能単位に集約した組織形態に変え、2022年7月より「スマートライフカンパニー」として事業運営しています。この中で、コンシューママーケティング部は、コンシューマユーザを対象としたデジタルマーケティングやプロモーション、およびその基盤となるdポイントクラブの企画・推進等をミッションとしています。

◆具体的にどのような事業をしているのでしょうか。

dポイントクラブ会員から得られるデータ等を活用し、会員向けの最適な情報提供やサービスのレコメンドを、リアル・デジタルの接点を活用しながら統合的に行うことで、会員1人ひとりにとっての顧客体験のさらなる向上に取り組んでいます。
dポイントクラブには計約9040万の会員がいます。皆さんご存じのように、dポイントは、750ブランドのdポイント加盟店のご利用やdカード、d払いのご利用、ドコモのケータイ電話のご利用等でポイントがたまり、たまったポイントはdポイント加盟店等での利用や、ケータイ電話を購入いただく際やケータイの利用料金等に利用することができます。
コンシューママーケティング部は、dポイントクラブという顧客基盤に加え、dメニュー・dマーケット等のオウンドメディアやリアルチャネルでのユーザとの接点、会員から得られるデータの分析やリサーチ機能、これらの機能を活用し顧客起点でマーケティングを行うための機能を、1つの組織で有しています。会員から得られるデータには、会員の属性に関するデータのほか、サービスの利用履歴、dポイントの付与・利用の履歴等、多種多様なデータがあり、これらのデータをうまく活用することで、お客さま1人ひとりに最適なサービスを届けるための「ユーザ理解の深化」と「マーケティングの強化」が実現できると考えており、当社の事業・サービスはもちろん、パートナーの売上拡大にも貢献できるものと考えています。
このようにdポイントクラブの顧客基盤には、活用価値のある多くの情報を有しています。この価値のさらなる向上には、より多くの、より精度の高い情報をより一層集めていくことが必要であり、このため、会員数増に向けた活動はもちろんですが、さらに、dポイントの利用頻度を高めていくことが重要です。その代表的な取り組みとして、2022年6月に、会員ランクに応じたポイント倍率アップ、ランクアップしやすい条件、長期利用特典の見直し等、dポイントクラブの会員プログラムを抜本的に見直しました(図1)。

顧客起点の発想で、お客さまと一体となって価値の向上を図る

◆世の中には多くのポイントビジネスがありますが、市場環境について教えてください。

ポイントビジネスだけでも、Ponta、Tポイント、楽天ポイント等、まさに乱立状態です。さらに10月から、PayPayも共通ポイントサービスを開始する予定であり、さらに競争が激しくなってきています。
加えて、単一の会社と契約しているお客さまの多いケータイ電話とは異なり、ほとんどのお客さまは複数のポイントカードを保有しています。このような中で、お客さまのdポイントの利用頻度を高めるには、お客さまにメインのポイントとして選んでいただくことが重要です。そのためには、利用いただける加盟店を拡げていくことや、dポイントがおトク、便利であるということをしっかりと実感できるようにしていくことはもちろん、消費・購買におけるおトク・便利だけでなく、社会貢献等のdポイントならではの新たな価値を提供していくことが必要になります。
また、PayPayや楽天は、d払いやdカードといった決済サービスにおいても競合関係にあるほか、楽天は楽天市場から、PayPayはQR決済から、といった入口は異なるものの、各社がそれぞれの経済圏を築こうとしている中では、サービス単位での競争にとどまらず、経済圏レベルでの競争を意識していかなければなりません。

◆今後の展望についてお聞かせください。

従来は、お勧めしたいサービスやコンテンツごとに、それぞれのターゲットとなるお客さまに対して、それぞれがアプローチするといった、個別最適でのマーケティングを展開してきました。コンシューママーケティング部にマーケティングの機能が集約されたことで、今後は、お客さまに最適なプロダクトの組み合わせを、最適なタイミング・接点で提案・提供する(顧客起点の提案・提供)といった全体最適のマーケティングを行うことで、お客さまへの良質な体験を実現するとともに、マーケティング効果の最大化を図っていくことができると考えています。こうした取り組みをより洗練・加速させるために、2022年7月1日より、外部の専門家をマーケティングディレクターとして招聘しました。
さらに、今後は、消費・購買といったマーケティング領域だけでなく、社会課題の解決にも取り組んでいきたいと思っています。例えば位置情報等を活用した行動推定により、お客さまへ移動経路や移動時間をずらすためのレコメンド(ex.ショッピングモールへの立ち寄り等)を行うことで、渋滞の抑制や、渋滞解消に寄与するといったことも可能となります。また、より多くのデータが集まってくれば、ヘルスケア等の領域においても、お客さまのWell-beingへの貢献も可能となり、これは医療費の抑制にもつながると考えます。
このように、dポイントクラブをベースとした顧客基盤の活用により、付加価値が向上・拡大し、社会課題解決や社会貢献につながるとともに、より多くの種類・量のデータの収集が可能となり、それがさらに顧客基盤の拡大とデータの質・精度の向上につながることで、さらなる付加価値が生まれる、といったエコシステムが構築されていきます。このエコシステムを早期に構築・強化すべくチーム一丸となって取り組んでいます(図2)。

ア・ラ・カルト

■外部からの風

7月1日から外部の専門家がシニアマーケティングディレクターとして就任しました(写真)。コンシューママーケティング部の全社員を対象に、毎週3〜4時間のオンラインミーティングが行われ、顧客起点の考え方や他社の事例紹介等、フラットで活発な議論が行われているそうです。外部の人がリーダーになることで、良い意味でカルチャーショックを受けるという話をよく聞きますが、それ以上に客観的な視点からのアドバイスや、新鮮な感覚の情報、新しい気付き等勉強になることが多く、社員の中にも、自分のマーケティング力上がっているという意見も出てきているようです。

■dポイントでES(Employee Satisfaction)向上

リモートワークが広く浸透してきており、コンシューママーケティング部に所属する約900人のうち約1割程度しか出社していないそうです。キックオフや定例会議等により、メンバーがオンライン上で一堂に会して議論や懇親会をするといったことはNTTドコモに限らずさまざまな組織で行われているかと思いますが、よりその文化が定着している印象です。さらに、ここはdポイントクラブの総本山です。過去には、ドコモ全体で、歩数計アプリを利用してチームごとの歩数対抗戦を行い、上位チームに賞品としてdポイントをプレゼントするといったことも企画されていましたが、コロナ禍で難しくなりました。今後も社員のES向上やコミュニケーションの活性化のため、例えば、dポイントを使って社員どうしで感謝を伝え合うようなことも考えているそうです。