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トップインタビュー

入社当時と変わらぬ希望と熱意を胸に。陸・海・空・デジタル空間にチャレンジ

新ドコモグループの法人事業ブランド「ドコモビジネス」の展開に伴い、グループ全体の法人向けサービスやソリューションをワンストップで提供するNTTコミュニケーションズ。社会・産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する丸岡亨代表取締役社長にNTTコミュニケーションズの方向性とトップの姿勢を伺いました。

NTTコミュニケーションズ
代表取締役社長
丸岡 亨

PROFILE

1982年日本電信電話公社に入社。2012年NTTコミュニケーションズ取締役、2018年代表取締役副社長を経て、2020年6月より現職。

Go Togetherプロジェクト:リスペクトによる新たな価値・文化の創造に期待大

新ドコモグループとして本格始動しました。新しいフォーメーションのスタートはいかがでしょうか。

2022年7月に再編成が行われた新ドコモグループは、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアの3社の経営方針を統一し、機能を統合して、法人事業とスマートライフ事業の拡大、通信事業の構造改革を加速させています。また、新ドコモグループにおいて、NTTコミュニケーションズはグループの法人事業を担う企業として、大企業から中小企業まですべてのお客さまにワンストップで対応し、社会・産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する役割を担っています。
新ドコモグループとなってから、非常に充実した時間を過ごしてきました。7月の本格始動前から「Go Togetherプロジェクト」を掲げて準備を進め、満を持して新体制となり、お互いのカルチャーやビジネスの理解に努めながら日々の業務にあたっています。このプロジェクトにはグローバルビジネスを展開するときの基本でもある相手への「リスペクト」を基軸に、新たな価値や文化を共に生み出していきたいという思いを込めました。
実際に各所で良い相乗効果が生まれ、課題はあるものの職場ごとに創意工夫をしながら良い刺激を与え合っているのがとても伝わってきます。やはり物理的に同じオフィスで仕事をしていることが大きいのではないかと思います。別の拠点で働いていた人がすぐ目の前にいることで、意思疎通がよりスムーズにできて、連携がしやすくなるなど、そんな動きに期待しています。

事業の滑り出しも順調でいらっしゃいますか。

「Go Togetherプロジェクト」によって企業文化や手法の融合が進みました。この結果、実際にお客さまへの提案内容も変化し、スピードも増したことで受注が生まれ、新しい事業を順調にスタートさせることができました。新法人事業ブランド「ドコモビジネス」の下、各社のリソースを組み合わせることで提供できるようになった移動固定融合サービス(FMC)のほか、5G(第5世代移動通信システム)・IoT(Internet of Things)等の先端ソリューションを通じて、社会や産業の構造の変革を促すイノベーションの創出に臨み、その成果が出始めています。
新ドコモグループの再編成において、NTTコミュニケーションズとNTTドコモのビジネスは、いわば補完関係にあります。NTTコミュニケーションズは大手企業や大都市圏での法人ビジネスを得意とし、通信サービスだけでなくデータセンタやクラウド、セキュリティなどのICTソリューションを担ってきました。そして、NTTドコモは国内におけるトップブランドであり、全国各地で法人営業の足場を築き、中小の顧客企業へのリーチ力を活かしてきました。両社の法人事業における得意領域を融合することで、全国の大手企業のみならず中小企業に至るまで、営業のカバレッジが広がりました。
今後の成長領域としては、従来のソリューションにIoT/FMC等のモバイルソリューション、アプリケーション、NTTドコモが保有する膨大なマーケットデータ等を組み合わせ、「統合ソリューション」としてワンストップで提供していきます。

OPEN HUB Parkで未来の社会を実感していただきたい

有意義な相乗効果を実感されているのですね。

新ドコモグループとして今後特に力を入れたいのは、中小企業のお客さまへのアプローチです。「スタートダッシュプログラム」と銘打ってお客さまのご要望をしっかりと伺っているところです。約160万社のお客さまのご要望は千差万別です。地域によっても事情が異なりますから、地域各拠点のトップが中心となってNTTコミュニケーションズとNTTドコモそれぞれが得意とするスキルを融合させて臨んでいます。
また、新ドコモグループは次世代に向けて、XR(Extended Reality)事業を手掛けるNTT QONOQを創設するとともに、ブロックチェーン技術などを活用した次世代インターネットである「Web3」の技術開発および社会実装についても取り組みを開始しました。このような新しい領域を統合ソリューションに組み込むことによって、その売上に占める比率を、現在の35%程度から2年後の2025年には50%以上とし、事業構造を変革していきたいと考えています。新ドコモグループにおける法人セグメントとしては、2025年度に営業収益2兆円をめざしています。大きなチャレンジではありますが、実現不可能な数字ではないと思っていますし、その期待にこたえていきたいです。

ところで、NTTコミュニケーションズは本社のある大手町プレイスにOPEN HUB Parkを開設されましたね。

OPEN HUB Parkは、DXによって社会的課題が解決された持続可能な未来の世界「Smart World」の実現をめざす共創の場です。NTTコミュニケーションズの変革の象徴として、オフィス空間として利用していたフロアの1つを、新たな共創のためのワークプレイスに生まれ変わらせました。お客さま・パートナーの皆様をはじめ、各分野に精通した400名規模の社員、および社外の専門家である「カタリスト」が共創し、それぞれの技術や知見を掛け合わせることで、新たなビジネスを創出するとともに社会への実装をめざしています。これまでに約1000社、2500名にご来訪、活用いただいています。
ここでは想像力を掻き立てる体験ができます。例えば、5G、SD-WAN/LANや、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)の主要サービスであるAPN(All-Photonics Network)など最先端のICTインフラを配備し、それらを活用したロボット管制の実験が日常的に行われていたり、XR上でさまざまな技術者がコラボレーションできる体験などもできるようになっています。お客さまが保有している技術やアセットをOPEN HUB Parkに持ち込んでいただき、ドコモグループの最新のICTソリューションと組み合わせることで、ビジネスコンセプトの創出にとどまらず、社会へ実装するためのさまざまな実証実験をすることができるのです。

IOWNへの期待も高まっていますね。

IOWNに対する期待値は非常に高いと感じています。昨年のNTT R&DフォーラムにおいてIOWNのロードマップが示されましたが、この構想における私たちの役割は、NTTの研究所で生まれた技術を活用し、次世代のICTインフラ基盤となるリモートワールドやデジタルツインコンピューティングの基盤などを実装することです。IOWN構想がめざす社会、「スマートソサエティ」「低炭素社会」「Well-being」の実現をめざして日々取り組んでいます。
IOWN構想では、通信ネットワークで増加する情報流通量に対応しつつ、劇的に消費電力を抑制・削減できます。NTTグループは新たな環境エネルギービジョンであるNTT Green Innovation toward 2040をリリースしましたが、これらの技術を活用して、2040年度までにカーボンニュートラルの実現をめざします。中でも、データセンタにおいては、再生可能エネルギーへの転換と低消費電力技術の導入を加速させることで、2030年度のカーボンニュートラル実現をめざしています。
お客さまのグリーン化に対する意識も非常に高まっていて、多くのお声がけもいただき、NTTアノードエナジーと協働してさまざまな提案をしています。例えば、再生可能エネルギーの電源を新たに設置し、その発電電力を企業に供給する契約であるオフサイトPPAをコンビニエンスストア等と結ぶ取り組みや、再生可能エネルギーを活用し、電気代ごとにdポイントがたまるドコモでんきにも、お客さまから大きな期待を寄せていただいていると実感しています。他にも一部のデータセンタでは、グリーンメニューを提供し、お客さまのご要望に応じた再生可能エネルギーを選択できるようにしました。

ドコモグループの総合力を発揮して社会的責任を果たす

お客さまに対してどのようなことに注力しているのでしょうか。

IoTが社会生活の中に深く浸透してくる中、ドコモグループの一員となってIoT領域の案件が増えてきたことで、これまで以上に通信キャリアが持つ社会的責任の大きさを実感しています。故障などが発生した際には、ドコモグループの総合力を発揮して迅速に対応しなければなりません。NTTコミュニケーションズとしては、法人事業ならではのCX(Customer Experience)を徹底的に追求し、顧客接点における体験価値を全社横串で継続的にブラッシュアップしていきます。つまり、サービスの提案・導入時から導入後の運用フェーズ、トラブル発生時まで、カスタマージャーニーの入り口から出口に至る顧客体験を、総合的に高めていくことが重要だと考えています。
そして、CXを高めていくためには社員1人ひとりのEX(Employee Experience)がカギとなります。私たちはこれまで先進的なワークスタイル変革を推進してきました。例えば、「フレキシブル・ハイブリッドワーク」です。私たちのリモートワーク率は恒常的に70〜80%で、時間や場所にとらわれずに働けるようにツールとルールを整備しました。一方で、コロナの収束が見えてきて社会活動が活発化する中で、チームビルディングやお客さまとの共創などにおけるフェイス・トゥ・フェイスでのコミュニケーションの重要性も実感しています。単純にリモートワーク率を数値化することを目標に据えるのではなく、ベスト・パフォーマンスを発揮でき、社員のWell-beingが実現できるバランスを各部署で追求してもらっています。そして、これにより得られた知見をお客さまに展開することで、より社会のお役に立てるのではないかと思います。

最後に研究開発を担当する皆さん、そして社員の皆さんにエールを送っていただけますでしょうか。

私がNTTに入社したのは40年前です。当時はまだ電電公社で、INS(高度情報通信システム)構想を掲げていました。電話という身近なサービスが従来のアナログ主体のものからデジタル主体に変わり、音声だけでなくデータや画像などあらゆる情報が流通するとともに、通信の主体が人対人から人対機械、機械対機械にまで拡大し、世の中が大きく変わっていくという世界観が非常に魅力的でした。民営化を間近に控えた、あの頃に抱いたわくわく感や熱意は今も変わることはありません。
NTT研究所の技術をはじめとしたグループのケイパビリティを活用し、私は「陸」だけでなく「海」「空」「デジタル空間」もチャレンジの舞台に加えたいと考えています。陸上における固定・モバイル通信はもとより、海では、2022年末に完全遠隔無線制御型水中ドローンを実現し、また、2021年よりNTT研究所とリージョナルフィッシュは藻類と魚介類にゲノム編集技術を適用して、海洋中に溶け込んだ二酸化炭素量を低減させる二酸化炭素変換技術の実証実験を開始しています。加えて、空では宇宙開発やHAPS、ドローン。特にドローンの規制緩和に伴うサービス拡大への期待値は高いです。
このような取り組みを通じて6G-IOWNがめざす「超カバレッジ拡張*」に向けて前進することで、陸海空における通信を実現していきたいという熱意を持っています。
NTTの研究開発力は世界でもトップレベルです。そこから生まれた製品やサービスはお客さまに高い関心を持っていただいています。私は前職で音声事業を担当していたこともあって、音声認識技術は特に思い入れがあり、こうした技術が活かされているForeSight Voice Mining(FSVM)やAIチャットボットなどを組み合わせながら自社やお客さまのコンタクトセンターの高度化を実現してきました。最近の例では、世界初のPersonalized Sound Zone(PSZ)技術を活用して製品化した、NTTソノリティのイヤホンMWE001に注目しています。リモートワールドが進んでいる中で、世に出すタイミングが非常に良かったと感じています。こうした研究、開発はNTTの事業全体の底上げになると思いますのでぜひ頑張っていただきたいですね。
また、事業の成功は全社員の皆さんにかかっています。社員の皆さんの成長がすなわち事業の成長です。Withコロナの中で対面・リモートを組み合わせた新しい働き方を実現しながら、1人ひとりのキャリア形成を通して、皆さん自身の成長につなげてほしいと思っています。皆さんと会社が共に成長していく好循環の実現をめざします。社員の皆さんもどのようにしたらお客さまの信頼を得られ喜んでいただけるかを考えて行動していただきたいと思います。最先端の技術を活用して、わくわくする世界を創り出していきましょう!

* 超カバレッジ拡張:基地局が移動局端末との通信を行うことができるエリアを、現在の移動通信システムがカバーしていない空・海・宇宙などを含むあらゆる場所へ拡張すること。

(インタビュー:外川智恵/撮影:大野真也)
※インタビューは距離を取りながら、アクリル板越しに行いました。

インタビューを終えて

「トップとはどのような存在だとお考えでしょうか?」トップインタビューで数多くの方々に伺っている定番の質問です。この質問に、丸岡社長は「トップに必要なのはアイキュー(IQ)とアイキョー(愛嬌)です。先日あるトップに伺った言葉なのですが」と、愛嬌たっぷりな笑顔で答えられました。続けて丸岡社長は「私のIQを高めるには限界があるけれど、意思と愛嬌だけは持ち続けていたいと思っています」と、どんな質問にも嫌な顔一つせず、冗談をはさみながら軽快なトークをご披露くださいました。しかも、どんなお話もエビデンス・ベースド。ご発言への責任感が伝わってきます。こんな社長のあり方に、愛嬌という表現は単に物腰の柔らかさではなく、他者を思いやるお心遣いが含まれていることを実感しました。インタビュー終了後の写真撮影中も会話は止むことなく、さまざまな知見を授けてくださる丸岡社長。大切なのは「リスペクト」「信頼」という丸岡社長が入社当時からお持ちの信念は、こうしたご姿勢に表れているのだと実感したひと時でした。