グループ企業探訪
デジタルテクノロジーによる学び体験で誰もが自信を持って自分の人生を選べる世界をめざす
ドコモgaccoは、デジタルテクノロジーを活用したリカレント学習包括プログラム「gllap(gacco lifelong learning & work action program)」をベースに、オンライン動画学習サービス「gacco®」や法人向けeラーニングサービス「gacco for Biz」などを展開している。「誰もが自信を持って自分の人生を選べる世界を」を会社のパーパスとしてかかげ、学びをとおしてWell-beingを追求する思いを佐々木基弘社長に伺った。
ドコモgacco 佐々木基弘社長
リカレント学習包括プログラム「gllap(グラップ)」で多様な学び体験を
◆設立の背景と会社の概要について教えてください。
ドコモgaccoは、2009年9月に教育、特にeラーニング分野において、ブロードバンドを活用した新しい「学びの価値」を提供することをめざし、NTTのグループ会社「NTTナレッジ・スクウェア」として設立されました。2015年8月よりNTTドコモグループの会社として「ドコモgacco」に社名を変更し、米国発のオンラインで海外や遠方の教育機関の講義を受講できる大規模公開オンライン講座「MOOC」として日本初となる「gacco®」の提供をベースとして、事業基盤の強化と、さらなる学習サービス事業の推進をめざして、新たなスタートを切りました。
現在は、「誰もが自信を持って自分の人生を選べる世界を」を会社のパーパスとしてかかげ、自分の人生を選べる世界にするための手段として、テクノロジーによる学び体験を提供しています。
◆どのような事業をしているのでしょうか。
まず創業以来提供しているのが、オンライン動画学習サービス「gacco」です。「gacco」では、本格的な大学レベルの教養講座からリスキリングのためのビジネススキル講座まで、学びたい気持ちにこたえる幅広い講座をラインアップしています。さらに、講座によっては、動画等の視聴だけではなく、ディスカッションや課題提出、相互採点レポート、対面授業など、双方向でアウトプットしながらの学びも提供し、所定の基準を満たすと修了証も発行されます。2022年12月現在で約100万人以上が登録しており、「MOOC」プラットフォームとしては日本最大となります。
創業当初は個人向けのMOOCサービスとしての「gacco」のみの提供でしたが、法人も含めた世の中のニーズに合わせて事業を拡張・変遷を重ね、2022年4月からは個人・法人向けに「gllap(gacco lifelong learning & work action program)」という包括学習プログラムをベーシックなプログラムとして展開しています(図)。
gllapは、利用者の「知的好奇心」、「入出力経験」、「自律性」の3つを学び続けるためのラーニングデザインとして、「テクノロジータッチポイントの拡張」「国内の地域エリアの拡張」「ステークホルダーの多様性の拡張」の3つの拡張アプローチにより展開する包括的な学習プログラムです。「gacco」以外にも、企業研修向けに受講状況の確認からリマインドまで簡単に実施できる学習管理機能やコンテンツ登録機能・確認テストやディスカッション等の受講機能等からなるLMS(Learning Management System)を提供する「gacco for Biz」、AIによる動画自動生成「gacco Ai movie」、VR技術を活用したチームビルディング研修、地方エリアで新しいことにチャレンジしたい方にデジタルテクノロジーによる学びで支援する「学びの地域協創アクション」など多岐にわたるプログラムで構成されています。これまで大企業から中小企業まで 300社以上のお客さまにご利用いただいてきています。またB2B2Xの取り組みとしても、日本航空株式会社が「gacco」会員向けにJALの各職場で働く人々にスポットライトを当てた「航空業界で働く人々」講座を提供しました。講座の反転学習の一環として、受講生限定のJAL工場見学を実施しました。本取り組みについてはJALグループの統合報告書「JAL REPORT2022」にも掲載いただきました。
これらの取り組みやその背後にあるコンセプトが評価されて、2022年11月に開催された日本e-Learning大賞において厚生労働大臣賞を受賞しました。
リベラルアーツを充実させて自分の人生を選べる選択肢を増やす
◆事業を取り巻く環境はどのような状況でしょうか。
「リスキリング」という言葉を、新聞などのメディアで見ない日はないほど注目されています。政府も成長分野に移動するための学び直しへの支援策の整備や、年功制の職能給から、日本に合った職務給への移行など、企業間、産業間での労働移動円滑化に向けた指針を2023年に発表する予定です。特に、リスキリングに対する公的支援については、人への投資策を「五年間で一兆円」のパッケージに拡充するとされています。国を挙げて「学ぶ」ことへの支援を強化している状況です。ドコモgaccoとしても、創業以来テクノロジーによる学び体験の提供を行っていく中で、AIやVRといった最新の技術を取り入れながら進化し続けています。さて、2016年に文部科学省により実施された「社会人の大学等の学び直しの実態把握に関する調査研究」では、62.4%が大学等において「学び直し」を行いたくない、という結果が出ており、一方で神戸大学社会システムイノベーションセンターによる「年収と学歴と自己選択の3つと自分の幸せとの相関関係の強さ」の調査では、自己選択に一番相関が強いという結果があり、研修・教育分野における私たちのパーパス「誰もが自信を持って自分の人生を選べる世界を」の世界観のベースとなっています。
ドコモgaccoは、もちろん社会の潮流を意識したビジネス展開を行っていますが、Well-beingを指向したパーパスに立脚した研修・教育の提供という点において、稀有な存在だと思います。そして、それを実現していくために、DXリスキリングに加えリベラルアーツに関する講座等、Well-beingと密接な関係のある講座も多く取りそろえ、自己選択の幅を広げています。
◆今後の展望についてお聞かせください。
コロナ禍でオンラインで学習するということも当たり前のような環境になり、オンライン学習の市場も2021年で3000億円以上といわれています。また、政府や企業による人的資本の強化などが追い風となると思われます。そして、さまざまなツールや学びの場が提供され、個人個人の学びに対して背中を押すような状況にあります。一方で、何から学べばいいか分からない、どうすればいいのか分からないという意見も多く、なかなか一歩を踏み出すことができないという現状にあります。
ドコモgaccoのパーパス「誰もが自信を持って自分の人生を選べる世界を」を、DXリスキリングとリベラルアーツを車の両輪として個人・法人向けコンテンツを充実させ、こうした人たちが一歩踏み出し、Well-beingの世界に向けて歩み続けることに、そっと手を差し伸べることで実践していきます。そして、その中での1つの目標としては、まずは「gacco」の会員を1000万人に増やしていきたいと考えています。
担当者に聞く
ステークホルダーとの共通言語でeラーニングに付加価値を
サービス事業部
佐野 隆貴さん
◆担当されている業務について教えてください。
サービス事業部で、「gacco」「gacco for Biz」を中心にシステム・サービスの開発・保守を担当しています。開発はアジャイルの開発体制をとっているので、営業や運用チーム、お客さまからの要望に優先度をつけながら、新しい機能開発、メンテナンスをしながらより良いサービスを創出しています。
「gacco」にはお客さまだけではなく、社外のコンテンツホルダー、社内の営業部門、コンテンツ制作・運用部門等、多くのステークホルダーがかかわっています。サービスやシステムに対して、それぞれの立場でさまざまな要望が出てくるのですが、それに加えて使っている用語や要望の背景も異なることが多く、すべて共通に理解できるように話をまとめていく必要があります。とはいえ、全員が満足いくような解を出すことは不可能に近いので、最大限納得のいくところに帰着させることに苦労しますが、やりがいもあります。幸いにも当社でコンテンツ制作・運営に関する仕事をしていたこともあり、そのときの経験も活きています。
◆今後の展望について教えてください。
お客さまの要望をきちんとサービスに反映していくのは当然として、お客さまに対してデータに基づいてお薦めの講座をレコメンドする機能の追加、AI やVRとの連携等、 eラーニングに付加価値を与えてより使いやすいものにしていくことで、お客さまを増やしていきたいと思います。
ドコモgaccoならではのコンテンツで登録数を増やす
ビジネスプロデュース事業部
馬服 美季さん
◆担当されている業務について教えてください。
ビジネスプロデュース事業部で、「gacco」の公開講座の提供元や、法人向けeラーニングサービス「gacco for Biz」の法人営業を担当しています。6名のチームなので、直接営業だけではなく、Webによるオンライン営業、代理店営業も行っています。
営業活動をするうえで、コンテンツは非常に重要なポイントになります。100講座以上の数量、バリエーションはもちろんですが、ただ集めるのではなく、他にはないコンテンツ、ドコモgaccoならではのコンテンツにより訴求していくことになります。そのうえで、こうしたコンテンツを組み合わせてパッケージ化していくことで、より付加価値の高い、便利で役に立つコンテンツに仕上げていくことに注力しています。
◆今後の展望について教えてください。
教育をとおして人のWell-beingを追求するような壮大で息の長いテーマのビジネスですが、それを着実に進めていくためにも、サービスを磨き続けていきたいと思います。おかげさまで「gacco」の会員数も100万人以上と順調に伸びてきておりますが、より多くの人に学ぶ楽しさを伝えていけるように私自身も努力していきます。
レコメンドに向けて質の高いデータを提供するために日々勉強
コンテンツ事業部
沼尻 茉梨さん
◆担当されている業務について教えてください。
コンテンツ事業部で、法人向け講座に関する講座提供元からの動画を含む素材の編集、「gacco」「gacco for Biz」のプラットフォームに向けた変換や登録等を担当しています。お客さまのご要望に応じて、撮影から、コンテンツ制作・編集まで行うこともあります。
素材単位に役割分担しながら一連の業務を行っているのですが、入社配属されて1年目でもあり、まずは個々のプロセスを確実に遂行するとともに、各プロセスがスムーズに連携して業務が回せるように自身のスキルアップを優先課題として取り組んでいます。
◆今後の展望について教えてください。
「gacco」のプラットフォームでの、レコメンド機能の開発に取り組んでいきたいです。役に立つレコメンドにするためには、その基となるデータの質が大きく影響します。良いデータを提供していくためにも、お客さまと接する機会等を利用して、自らの知見を広め、高めていきたいと思います。
ア・ラ・カルト
■全員参加のオンライン社内研修
リモート環境下のコミュニケーションが課題といわれていますが、大学教授が制作したチームビルディングプログラムを、ドコモgaccoのスタッフ向け社内研修として、社員、派遣社員等約40名がオンライン参加で実施しました。研修では、音声のみのコミュニケーションで試してみる等、いくつかの試みがなされ、結果は大学教授の研究サンプルになったり、自社のサービス提供方法へのフィードバックにつながったりと、良い成果が出たそうです。もちろん研修そのものの成果もあり、コミュニケーションが活性化し、円滑になったことはいうまでもありません。
■「ありがとう」を伝えるキックオフ
ドコモgaccoでは半年に一度キックオフを行い、佐々木社長よりその時の会社を取り巻く状況や今後の会社の戦略などを、契約形態にかかわらず全スタッフに向けて1時間かけて説明しています。
説明の中では、途中でクイズを入れたり、スタッフからはチャットでコメントをしたりするなど、双方向でのコミュニケーションも意識したドコモgaccoならではの全員参加型キックオフになっています。
そんな一体感のあるキックオフの中で最後に佐々木社長が必ずお伝えしている言葉があるそうです。それは、「ありがとう」の反対語は「当たり前」。事業は変遷する中でもスタッフへの感謝の気持ちを忘れない、スタッフ間でもお互いに感謝の気持ちを忘れないでほしいという熱い想いを表す言葉です。スタッフ間にもその気持ちは浸透していて、インタビューに応じてくれた人たちからも互いへの感謝の思いがひしひしと伝わってきました。
■組織横断プロジェクトチーム
四半期を周期に3項目程度のテーマで組織横断のプロジェクトチーム(ワーキンググループ)が立ち上がり、検討から実行まで行われるそうです。サービス開始から一度も変わっていない、一度も手を入れていない「gacco」のサービストップページをリニューアルするというテーマのチームに参加したメンバーは、一体感を感じながら通常業務とは異なる視点で取り組むことができ、新鮮で面白かったうえに、その経験が日々の業務にも活かせると目を輝かせながら話していました。