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特集 主役登場

2次元半導体を用いたプラズモン制御技術

2次元系における高速電荷ダイナミクス研究

熊田 倫雄
NTT物性科学基礎研究所
グループリーダ(特別研究員)

私は大学で研究を始めて以来、2次元系における電子物性を主なテーマとして研究を行っています。2次元系は、比較的単純な0次元系(量子ドット)、1次元系(量子細線)より多彩な物性が現れ、3次元系より理解しやすいという側面があり、量子ホール効果(1985年)、分数量子ホール効果(1998年)、グラフェン(2010年)、トポロジカル相転移(2016年)と多数のノーベル賞対象となる現象が発見されています。私自身は、極低温において電子間の相互作用によって引き起こされる量子多体現象に興味を持って研究を進めてきましたが、発見した新規現象の応用の可能性を探索するためには外部から与えた刺激に対してどのように応答するかを調べる必要があるという視点に立ち、2010年ごろから電荷ダイナミクスの測定を開始しました。その過程で出てきた研究テーマが、本特集の対象である2次元系におけるプラズモンです。
プラズモンは電荷の疎密波であり、電圧パルスによって局所的な電荷密度に偏りが生じた際に電気的に均一な状態に緩和するまでの過渡現象として現れます。プラズモンには量子多体状態に表れる電荷ダイナミクスとして基礎物性の観点から興味深いだけでなく、本特集記事で述べられているとおり、プラズモニクスとしての応用が期待されています。一般的に、プラズモニクスの研究は金属の表面に励起されるプラズモンに対して光学測定技術を用いて行われていますが、金属表面プラズモンは散逸が大きいことや制御性のなさから応用範囲が限られています。
2次元系におけるプラズモンは特性が電気的に制御であるという大きな利点があるものの、実験には光学測定技術とともに電子デバイス作製・測定技術が要求され、その両方の技術を単独で持っているグループがほとんどないということもあり研究が進んでいませんでした。
一方、私たちのグループでは、もともと、電子デバイス作製・測定技術に強みがあり、そこにマイクロ波技術を適用し、さらにテラヘルツ測定に発展させているというユニークなバックグラウンドを持っています。世界でも同様のアプローチをしているグループはほとんどなく、このバックグラウンドが私たちの強みとなっています。個人的な感覚として、何かもう1つブレークスルーがあれば、独創的であることにとどまらず、世界をリードするような研究に発展するのではないかと期待しています。近い将来、そのような状況になれるよう、引き続き研究を推進していきます。